第38話:成長し過ぎじゃね?
皆に討伐訓練に行くと告げてから3日後、第三王子からの遠征の許可を貰い、明日から本格的な戦闘魔法についての訓練の準備を終えた後、ギルドへ入ると、受付嬢のミミルちゃんから声をかけられる。
「ホウショウさん、ギルド経由でお手紙が届いてます」
「手紙? 一体誰から?」
「えっと、エルヴィール家のエルヴィール男爵夫人からですね」
そういえばシテュリ婆さんからの依頼の大元は、エルヴィール男爵夫人だったな。
「ありがとう、返答はいつまでとか言伝はあるかい?」
「ありません!」
「了解、それじゃあ家に帰ったら開けるよ」
トレーに入った手紙を受け取り、空間収納へ仕舞う。
「では受領印をお願いします」
「ほいっと、ありがとうな」
ささっと受領証にサインを書いて終了だ。
「そうだ、ギルマスからお二人と、ホウショウさんにお話があるそうです」
「了解、じゃあ二人を迎えたらその足で行くよ」
「わかりました!」
ミミルちゃんと別れて二人の元へ向かう、今日は確か訓練場だったよな。
訓練場へ入っていくと剣戟の音が響いている、二人共まだやってるのかな?
人だかりの方へ視線を向けると、たった3日で身体強化をマスターした二人が獣人の女性冒険者と打ち合いをしている。
「はぁ! ネモフィラ!」
「わかりましたわ、ミモザちゃん!」
恵さんの大振りの一撃を受け止めた女性冒険者に蒼井さんが細剣で追込みながら連撃を浴びせる。
剣自体は軽いのだが、引いてから突くまでの動きが早いので後手に回らざるを得ない。
「うにゃうぅ~これは厳しいですよぉ!!」
攻撃を受けている、女性冒険者も受けるのが精一杯だ。
「おいおい、あの嬢ちゃん達ランクは幾つだよ……」
「知らないのか? 青銅級だよ」
「マジか、俺あのお嬢様の剣見えないぞ……」
「俺、あの両手剣受けきれるかなぁ……」
「青銅級のお前じゃ無理だろ、あの受けてる冒険者、銀等級だぞ?」
「えぇ!? 二人がかりとは言えよくも押し込めるな……」
なんか凄い絶賛されてるけど、確かにあの動きを視てたら納得だよな。
「そろそろ止めるか、ギルマスの話もあるようだし」
周囲の人を掻き分けながら進む、近づいた所で女性冒険者の方が俺に気付いたようだ。
「にゃにゃ! 二人共ストップです! ホウショウ先生が来ました!」
「「えっ!?」」
二人が声を上げた瞬間、猫獣人の女性冒険者が、蒼井さんの細剣を尻尾で絡め取り、恵さんの両手剣を膝と肘で挟み動きを止める。
「お疲れ、二人共。サリアもありがとう」
サリアと呼ばれた猫獣人の女性冒険者が二人に武器を返すしかし、尻尾で剣を絡め取るとか器用だな……。
「にゃにゃ、私は先生の依頼ですにゃで。それに二人共呑み込みが早くて助かってますにゃ」
「うん、見てたけど。正直驚いたよ」
多分勇者の力が関係してるんだろうけど、メキメキ成長してて驚いている。
「そういえば、お二人共身体強化が凄いですが。何か特訓をしていたのですかにゃ?」
使い終えた貸し出し用の剣の手入れをしてる二人を眺めつつ、サリアがとんでもない質問を飛ばしてくる。
「あー……うん、秘密の特訓ダヨー」
「なんで目を逸らすにゃ?」
言えないだろ! まさか身体強化を教えたら夜の運動会で使って滅茶苦茶上達したなんて。
「仕方ないですにゃ、冒険者の手の内は安易に明かさない方が良いと教えて下さったのは先生ですにゃ。食い扶持になる事にゃし、しかたないにゃぁ……」
「あーうん。これは秘中の秘だからね……」
「ざんねんにゃ。まぁいいにゃあ、私はそろそろ夕食に向かうにゃ、二人によろしくにゃ」
「今日もありがとうな、そう言えば飯はどうするんだ? 世話になってるし飯くらいなら……」
最近は俺も料理を覚えて来た……とは言っても、二人に指示されながらだけどね。二人が剣術訓練を始めてから家事も分担してるし、流石におれも少しづつ出来る様にしないと悪いしな。
「リュリュのとこで食うにゃ、それと先生の家は私が惨めになるから嫌にゃ……」
とぼとぼと影を落として出口へ向かって行った。
「お待たせしました旦那様……サリアさんは?」
「あぁ、先に帰ったよ。二人によろしくって」
「そうなのね、夕食を一緒にしたかったのに残念」
二人共、使った剣は戻して来た様だ。成長具合が半端ないし早めに専用の武器を作っても良さそうだ。
「あー、この後ギルマスから俺達三人が呼ばれてるんだ」
「そうなの? じゃあ仕方ないわね」
「それですと遅くなりますよね、本日の御夕食どういたしましょうか?」
「うーん、ギルドの食堂で食べていくかな? この時間なら酒場の方が混んでるだろうから空いてるだろうし」
三人でギルマスの部屋へ向かう、いつの間にか居たギャラリーも解散している。
「それで旦那様、ギルマスの用事って何か聞いてるの?」
「いや、聞いて無いな? 蒼井さんの回復魔法訓練の事かな?」
「うーん、どうでしょう。最近は魔法の使用も安定しますし……」
顎に指を添えてむむむと唸る、可愛らしいな。
「じゃあ思い当たる節は無いか……」
そうこう話してる間に扉の前に到着した




