第31話:各人の思惑と意外な商才?
◇アメラドレク=アークフォートside◇
式典の後、本日王城の警備をしていた第二騎士団、その団長、アデマール=ライトライドより本日城門前で起きた事故の報告を聞いていた。
「それで、狙われた者は?」
「はい、エルヴィール男爵夫人でございます」
「エルヴィールというと王家の馬を納めている所だな?」
「はい、何者かが馬の興奮する薬を用いたようです。薬は針に塗られていて、確認のところ城の馬に刺したのてすが、興奮して暴れ回る事を確認しました」
第二騎士団長が薬の塗られた針をトレーに置く。
「ふむ……まるで、暗器の様だな……」
「恐らく暗器で間違い無いかと……」
私は考え込む、普通に考えればエルヴィール家に何かしら恨みがある者の犯行だろう。
「順当に考えればエルヴィール家に対する恨みだろうな……影を呼んでくれ、この件はこちらで調べよう、騎士団はネファキュルの件の裏取りを頼む」
「はっ! かしこまりました」
第二騎士団長が出て行くと静寂が支配する、しばらく考えていると部屋の端に気配が現れる。
「王よ、お呼びになられましたか?」
「どうやらまた、何か足元で面倒事を画策している者がいるらしい。これが証拠だ」
証拠の針を示すと影は様々な角度から検分している。
「それと、狙われたのはエルヴィール家だ、あの家の繋がりから怪しい所を探してくれ」
「はっ!」
瞬きをする間に影は消え去っていた。
「まったく、ネファキュルを捕縛した事を大々的に広める事で、釘を刺したと思ったのだがな……」
ネファキュルだけで相当数の貴族が関わってる、今第一から第四騎士団に各地のアジトへ踏み込ませているが上がって来る報告を随時聞くだけで頭が痛い。
「はぁ……」
椅子に深く座り込み大きくため息を吐く。
「もうさ……こっちはやる事多いんだから、余計な事するなよ!!」
私の叫びが闇に吸い込まれていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇???side◇
「——様、お待たせしました」
暗闇の中、顔に傷を持った男が現れる、その顔を見ると叱責したくなるが怒りを堪える。
「何故失敗するんだ!!」
酒の入ったグラスを投げつける、男に当たりガラスが砕け酒がかかる。
「あの者が居るのは想定外でした……」
「また、ホウショウか! クソッ悉く僕の邪魔をしやがって!!」
あの事件を起こす為に、わざと街路を渋滞にして遠回りさせたというのに……!
思い返すと、腸が煮えくり返る……折角、男爵を失墜させ、あの女《性奴隷》を手に入れるチャンスが……。
「あの女は! 僕が! 3年前!! 嫁に! するはず! だったのにぃぃぃ!!」
あのクソ国王め、碌でもない男爵に嫁がせおって……!!
「だが、3年は待った甲斐がある! 極上の女に仕上がっているな……」
どうせ枯れた爺だ、手を出される事は無い筈。
「じっくり、押し進めるしか無いな……。次の手はどうするか……」
次はあの男の偶然も起きないだろう。
あの肢体を今から支配できる事、その綿密な計画を考えていると思わず笑みが零れてしまうのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇ホウショウside◇
「流石です! いつか私はやると思ってました!!」
帰りがけにお祝いとして、ちょっと豪勢な食事をした後、大旦那を呼んで我が家でチョコレートの試作品を食べてもらっている。
「それは良いからさ、味と組み合わせはどうだ?」
ネファキュルの件で興奮している大旦那にチョコレートを促す。
「あぁ、コイツはかなり美味い。正直、貴族の食うチョコレートなんか目じゃないぞ」
どうやら、蒼井さんの作ったチョコは大好評の様だ。
「それで、コイツは量産出来るのかい?」
「出来ないわけは無いが、量産は人手がいるぞ?」
「そこはお茶引きや手の空いた娼姫にやらせるさ、それでも足りなきゃ禿達にやらせるよ」
こう、言ってるがアラビアンナイトは聖王国で一番の娼館だ、そんな所に手隙の娼姫なんか居る訳無い。
「すみませン、一つ提案があるのですガ。恐らク、かなりの売り上げガ、確保出来まス」
拙いがこちらの言葉で細野さんが割り込んでくる。
「ふむ、聞かせてくれたまえ」
「最上位ノ、娼姫の方々ニ、手作りをして頂くのハ、どうでしょうカ?」
その発言にハッとする俺と、首をかしげる大旦那。
「手作り? 何か変わるのか?」
「えェ、今現在ハ、娼姫の方々かラ、渡される物ハ、ありませんよネ?」
「そうだね、私達は一夜の寝物語《夢》を提供している。朝がくればそれは淡い夢となる。と言う事にしていて、特に物品は渡したりはしていないな……」
「ですガ、淡い夢の実感ガ、増す事になれバ?」
そこまで言ってピンと来たようだ。
「そうか、男は残り香を求るようになるという事か……」
「はイ、後ハ、名刺というものヲ、作るべきかト……」
「メイシ? なんだいそれは?」
首を傾げている大旦那、割り込むのは悪いと思うけど、代わりに説明させて貰おう。
「細野さん、名刺は俺が説明するよ。大旦那、名刺とは紙を複数重ねた厚いものに、個人の名前や所属を書いた手の平くらいの紙の事さ」
ジャスチャーを交えながら説明をする、ふむふむと頷く大旦那。
「ほう、それを渡す事で付加価値を付けるという事か……」
「はイ、例えばそこニ、紅を引いタ、口付けの印ヤ、娼姫が使う香水ヲ、振りかけれバ、更に特別な物になりまス」
そう言って妖しく笑う細野さん何でそんなこと知ってるんだろう。
「成程……流石ホウショウ殿の見初めた相手、流石の知識量です……」
いえ、俺も舌を巻いてます……。




