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【第13回ネット小説大賞・金賞】異世界に落ちて10年、高校時代のクラスメイト達が勇者召喚されました。  作者: ふぇありす
1章

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第30話:褒賞・下

馬車の暴走事故からしばらく、馬の治療を終えたエルヴィール夫人の頼みでエルヴィール男爵家が所有する王都の家にやって来ていた。


「では、ホウショウ殿。こちらをご利用下さい」


少し不満そうな爺やに通されたのは、使用人が使用するシャワーだ。本当は来客用のお風呂を用意すると言っていたのだが断ってシャワーだけを借りる事にした。


「うーん……やっぱり駄目になっちゃったか……服屋で直してもらえるかな……」


馬車を止める際に色々と擦り切れてしまった服を空間収納アイテムボックスへしまいシャワーを浴びる。


それからタオルと魔法で水を乾かしてから、持っている中で3番目に良い服へ着替える、すると扉がノックされた。


「ホウショウ様、よろしいでしょうか?」


女性の声が響いた、屋敷のメイドさんだろう。


「あ、はい。大丈夫です」


俺の返答に扉が開く、すると先程馬車に乗っていたメイドさんが顔を出す。


「奥様がお呼びになっておりまして、ご都合はよろしいでしょうか?」


「あ、はい。身綺麗にしたので大丈夫です」


「かしこまりました、では案内しますね」



◇◆◇◆

「ホウショウさん。この度は、私と従者コレットを助けていただき、ありがとうございます」


「ホウショウ様が居なければ大惨事が起きていたと思います。救っていただきましてありがとうございます」


広間に通された後、改めて二人に頭を下げられる、こんな丁寧に貴族から感謝される事は少ないので困惑の方が勝る。


「いえいえ、あの時にも言いましたが一歩間違えればお二人に怪我をさせてしまったかもしれません、ですので褒められたものではありません」


「だとしても、助けられた事には変わりありません」


譲らないといった顔ではっきりと言うエルヴィール夫人、どうしよう……。


「それに、ホウショウさんに助けられるのは2度目なのです……今回はちゃんとお礼をさせていただきます!」


「えっと、2回目?」


思わず、声が出てしまった。すると、少し悲しそうな顔をするエルヴィール夫人。


「やはり、忘れていらっしゃったんですね。3年前、ホウショウさんを含む十数名の冒険者に輿入れの際の護衛を頼んだのです」


そう言われて、記憶がカチリとハマった。微妙に思い出せなかったのは、あの時のエルヴィール夫人は淡い紫色の髪でまだ少女だったからだ。


「す、すみません……。3年前と違いとても美人に成長されておりましたので気付かなかったのです」


そりゃ3年前から美人だったけど……性格と背丈とスタイルが成長し過ぎて別人だよもう!


「という事で、あの時と今回、両方合わせてお礼をしたいと思います」


にこりと笑うエルヴィール夫人、昔の気弱な性格とは違い、強かさが備わっている。


(まぁでも、今回お礼をして貰えば今後は断れるか……)


「わかりました、降参です……。逃げれそうにないので、お礼を頂戴いたします……」


両手を上げて降参のポーズを取る、ベルを鳴らすと爺やが現れる。


「馬車の準備は?」


「既に」


「では、ホウショウさん参りましょうか」


断りを許さない圧に負けて、連れて行かれるのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆

それから汚れてしまった代わりの服と、刃こぼれしてしまった剣の替えをお礼として買ってもらい、更には王城へ送ってもらえることに。


「まさか、ホウショウさんが王様に呼ばれるとは……」


「あはは……完全に偶然なんですけどね……」


王城へ向かう道中の馬車の中で会話を続ける、貴族の馬車に乗るのは久しぶりだが本当に乗り心地が良い。


「ですが。あの、死神を捕縛してしまうとは流石としか言いようがないです……」


「本当にギリギリでしたけどね……」


この、絶賛の嵐が無ければ良いんだけどね……。


馬車の窓から外を見る、先程の事件があった場所に近づくと少しピリッとした空気になる。


(流石に二度目を仕掛ける程、アホじゃないか……)


相手が誰だかわからないけど、男爵とは言え貴族を狙ったわけだ。同格以上の貴族でなけば相当の処罰を受けるだろう。


城内に入り込むと大きく息を吐くエルヴィール夫人、顔も強張っていて緊張していたのだろう。


それからスッと馬車が停まる、城の侍従が馬車の扉を開けるので俺が一番最初に出る。


「どうぞ、コレットさん」


「ありがとうございます、ホウショウさん」


コレットさんの手を取り、降りるのをサポートする。


「どうぞ、エルヴィール夫人」


「ありがとうございます、ホウショウさん」


少し恥ずかしそうにしているエルヴィール夫人、彼女が降りるのをサポートした後、一礼下がる。


「ありがとうございました、エルヴィール夫人」


「いえ、馬車を止めていただいたお礼をしなければ旦那様に怒られてしまいます」


少し大きな声で聞こえるように言い合う、不倫とか囁かれるのは勘弁だし周囲の皆に周知してもらわないと。


「では、一度騎士団の詰所へ顔を出して来ますね」


「えぇ、もし無実の証言が必要であれば頼って下さい、私達がお口添え致しますね」


「ありがとうございます、心強いです」


少し仰々しいが周囲の侍従達も「あぁ、あの馬車の件」みたいな感じで納得してくれている様だ。


それから、エルヴィール夫人と別れて騎士団詰所の方へ足を向けるのだった。


◇◆◇◆

「此度の貴殿の働きによりこの聖王国を覆っていた影は晴れた、騎士団でも追い詰める事の出来なかった悪賊を、向こうから現れたのを返り討ちにしたとはいえ捕縛した事は非常に素晴らしい功績である」


その良く通る声に拍手が再び巻き起こる。


「それと、本日城下で起きた馬車の暴走事件。被害の拡大を防いだ事も聞いている」


陛下の声に他の貴族達がざわつく、「冒険者が~」とか「我々も助かったので感謝だな」とか聞こえてくる。


「その二つの多大な働きに報いる為、白金貨30枚とアークフォート聖勲章を褒賞として与える」


「「「「「!?!?!?!?!?」」」」」


会場がざわつく、「高々悪賊を捕まえただけで……」という声もあれば「あのネファキュルだぞ? それでも足りないだろう……」と言う声が聞こえてくる。


(というか勲章って!? だから、どうしてこうなった!?)


それから近づいてきた国王陛下によって勲章を付けられる。


「貴殿の働き、真に感謝をする」


「こ、光栄です……」


(流石に、国王は魔眼持ちじゃないよな?)


緊張で冷や汗をかきつつ一歩下がり礼をする、さっさとこの場から逃げ出したい気持ちだが、ゆっくりと壇上から下に降りてから再度礼をして会場から退場するのだった。

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― 新着の感想 ―
これだけあったら一生遊んで暮らせるじゃん、ちょっと前まで金ない言ってたのが嘘みたいだな。
 身請け代、ペイ出来ちゃった!
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