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37.死の未来予想図

「現実は非情ね・・・・・・」


ミアさんが呟く通り、このままではスズランは追ってきたアンデッドに捕まり蹂躙されることとなる。

俺達は命からがら辿りついたクエストを目の前にして、途方に暮れることとなった。

そんな時、アリシアさんが口角を上げた。


「じゃあ、ここからが第2プランの出番ってことだな!」


彼女の笑顔に元気付けられるように、各々は気持ちを切り替え始める。


「・・・そうだな。クヨクヨしてても仕方ないし、他に閻魔に縁がありそうな場所を探して──」

「何言ってるんだ?私達でこの『箱』、開ければいいじゃないか」


だが次の行動を起こそうとした皆は、彼女の一言に動きを止めることとなった。


「お前・・・何を考えてる?」


フランクさんは目を丸くしてアリシアさんに意図を尋ねる。


「私は最初に言ったはずだぞ。ヒイラギがアンデッドを抜けるにあたって一番の障害となるのは、『箱』に関する情報を要求されることだとな」


最初の根城で口にしていたことをここでもう一度出してくる。


「だから『箱』をここで開けてクエストをクリアしてしまえば、ヒイラギは心置きなくアンデッドから抜けるための話し合いができる!」


そこまで聞かされたことで、俺達は彼女の目的を理解させられる。

皆は俺を元の閻魔に戻してアンデッドに返すつもりだったが、はじめからアリシアさんだけは俺をアンデッドから切り離すつもりでいたのだった。

彼女の話では、この宝箱さえ開けば俺達とアンデッドとの確執は全て解消できるという。


「そこの宝箱、どうやら魔術認証のセキュリティがかかっているみたいでな。本来解除するには予め登録してある魔術回路を読み取る必要があるんだ。恐らくだが、その登録してある魔術回路というのが閻魔の持つそれだったんじゃないかと私は推測する」


よくわからないが、指紋認証のようなシステムで閻魔にしか解除できないロックがかかっているということだろうか。


「触ってみろヒイラギ」


フランクさんに言われて認証部分らしい箇所に指で触れてみたが、宝箱が開くような気配はない。


「開かないな。お前の説は間違っているみたいだぞアリシア」


フランクさんが彼女の考えを否定すると、残念そうに肩を竦めるアリシアさん。


「そう簡単にはいかないか。だが、諦めるにはまだ早いぞフランク。私は推測を述べたが、登録してある魔術回路が閻魔のものだったかどうかはまあ、この際どうでもいい。話はここからだ」


そしてアリシアさんは、俺の想像を上回る作戦内容を説明した。


「この『箱』は正攻法じゃ開かない。だが内部の構造を調べてみるに、魔術認証などなくても私ならサイコキネシスの魔法を使ってピッキングで解除できなくないぞ」


なんと、念動力の魔法で直接物理的に内部のピンを動かし、宝箱のロックを解除しようと言うではないか。

宝箱は鍵を鍵穴に差し込んで開けるタイプの構造じゃないので、道具を用いたピッキングとは難易度が違う。

錠内部のピンの位置関係を正確に把握できなければ念動力で動かすことも叶わない。

だが、確かに千里眼のような力を持つ彼女にならその芸当もできるかもしれない。

果たして上手くいくのだろうか。


「ここに巣食っている魔物はこれまでと違って魔力を敏感に察知するタイプのものもいる。下手に魔法を使えば俺達の存在を勘付かれて厳しい戦闘になるかもしれん。その上、アンデッドの刺客もこっちに向かっていて時間に猶予はない。それでも無事に『箱』を開けられる保証は?」

「私ができると言っているんだ」

「どうだかな」


フランクさんに作戦のリスクを指摘されるも、得意げに鼻を鳴らすアリシアさん。

意気軒昂な彼女への反駁にヤリスさんも加わる。


「無茶苦茶だ!あまりにも非現実的っていうか・・・仮に奴らでさえ手こずっている難関クエスト攻略が奇跡的に上手く行ったとしても、それでアンデッドがヒイラギを諦めてくれる保証はない!不確定要素が多すぎる!」


ヤリスさんは宝箱に目を向け、皆で生き残るために考えを巡らせる。


「せめて場所を変えるってのはダメなのか?さっきの洞穴まで持ち帰るとかさ」


彼の提案した通り、フランクさんが試しに持ち運びしようとするも宝箱はびくともしなかった。


「どうだ?」

「ダメだな。空間に固定されているのか、超強力な強化魔法で固定部分の強度を上げているのか・・・いずれにしても物理的に持ち出しは不可能だ」


一体どこの誰がこんな仕掛けを作ったのだろう。

そんなことを考えていられる場合でもない。


「じゃあまあ、作業はここでするしかないわけだな」


事態を軽々しく口にするアリシアさんの腕を、ヤリスさんが掴んだ。

宝箱を放棄して下山することを促すように腕を引っ張る。


「本気かアリシア。お前はもう、魔力のストックだってあまりないんだろ?」


ここに来るまで、アリシアさんはずっと周囲の探索に魔力を消費し続けていた。

元々持っていた魔力量がどれほどだったのかはわからないが、ほとんど魔法を使っていない俺やヤリスさんとは違ってその減りは比べ物にならないだろう。


「それが何だ」

「殺されるって言ってんだよ!」


魔力切れ。

それはつまり、魔法を抜きにして魔物の群れやアンデッドと対峙しなけらばならないということを意味する。

昨日の夜中に俺がタイマンを張ったレプタイル戦なんかとは比べ物にならない難易度だ。

間違いなく命を落とす。

だがアリシアさんは死の未来予想図を突きつけられても尚、笑った。

●海岸部ギルド冒険者パーティー1381番『スズラン』

〇アリシア・ワルツ

本作メインヒロイン。猟銃を背負った赤髪の少女。好奇心旺盛。破天荒で遠慮のない言動。後先考えず行動するため危なっかしい。自由人。イタズラ好き。好戦的。仲間を傷つけられると本気でキレる。射撃の腕は一流。人間。


〇フランク・バースタイン

鋼鉄の盾で武装する大男。責任感の強い常識人。『スズラン』の隊長。人間。


〇ヤリス・カイザー

長剣で武装する少年。ビビりの常識人。虫が苦手。人間。

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