0.迫りくる影
闇夜。
か細い月明かりを頼りに森を走り抜ける、3人の男達。
「聞いてねえよ!あいつらがいるなんて!」
「とにかく走れ!この先に崖があったはず!そこから飛び降りれば・・・・・・!」
逃走経路を見出した男達は、一筋の希望を賭けて安全地帯へと全力疾走していた。
だが彼らの足が追手を撒くことはなかった。
3人の頭上で閃光が轟き、彼等は成すすべもなく吹き飛ばされる。
「ぎゃああああっ!」
最早逃げ切れないことは明白だった。
倒れた3人に追いついてきたのは、喪服のようなロングコートを羽織った不気味な集団。
その先頭に立っていたリーダーらしき大男は3人の下にしゃがみ込むと、地を這うような低い声で問いかけた。
「いい夜だな。雲一つない、満月のよく見える大空。こんないい夜に魔物の群生地で星空観測か?」
「お、俺達はただアジトに戻る道中だっただけでさぁ・・・この山とは何の関係もねぇっすよ・・・・・・」
3人のうち一人が、額に汗を浮かべながら自分たちの経緯を答える。
だが黒服の大男は、弁明する男の言い分などどうでもいいように別の問いを投げかけた。
「なあ、お前ら。『閻魔』って男の事、知ってるか?」
「『閻魔』・・・?『閻魔』っていや、あんたらンとこの、あの『閻魔』か?」
脈絡もなく飛び出した問いかけに戸惑いながらも応じようとする男。
この黒服集団の仲間に関係する質問らしい。
「そうだ。この山で大事な仕事をしようって時に昨晩から行方がわからなくなってな。いい話を持ってるってんなら生かしてやってもいい」
行方をくらました仲間の捜索。
その情報集めに大男は問いを投げたのだった。
「そ、その『閻魔』ならついさっき立ちションしてんのを見かけたぜ」
何とか難を逃れようと、嘘の目撃情報を提供する男。
だが次の瞬間、何の前触れもなく閃光が走ると、答弁した男の体が爆発した。
飛び散った肉片や血糊が残りの2人に浴びせられる。
「言葉は選べよ。テメェらに許されたのは、情報を吐くかミンチになるかのどっちかだ」
「知らない!本当に知らねえよ!俺達はただここに財宝が眠ってるって言うから盗りに来ただけで、お前らにも『閻魔』にも何の関係もねえ!」
まさか殺されるとは思っていなかった二人目は焦って本当のことを答える。
だが「知らない」とはっきり口にしたことで、用済みと判断された二人目も首から上を吹き飛ばされ崩れ落ちた。
残った最後の男は完全に恐怖し、目の前の集団に喚き散らした。
「なんなんだよ!ただクエストを横取りしようとしただけじゃねぇか!結局宝は取ってもねぇってのに!テメェら冒険者パーティーなんだろ!?国の英雄なんだろ!?こんなことしていいと思ってんのかよ!!」
だが男は言い終わったタイミングで気づく。
こちらを見下ろす黒服連中の目が、何の感情も抱いていないことに。
大男は、最後に言い放った。
「テメェらには何の価値もねえ。人知れず消えても、誰も文句は言わねえ」
「まっ待ってく──」
命乞いの言葉を言い終える間もなく、男は轟音とともに爆散した。
不届き者の粛清が終わったところで、後ろに控えていた部下が大男に報告する。
「ボルガンさん。200の山賊組織に片端から当たりましたが、目撃情報はありません。やはり『魔大陸』にいる可能性が高いかと」
「『バルムンク』、『パラポネラ』からの返答は?」
「知らない、の一点張りです。どちらも捜索には協力的な姿勢を見せてくれているようですが」
「奴等、シラを切ってんのか・・・それとも本当に何も知らねぇのか・・・?」
ボルガン、と呼ばれた大男は眉をひそめた。
部下からの情報をまとめても、見失った仲間の手がかりは依然として拾えない。
ボルガンはその場の部下全員に向き直った。
「万が一のことを考えりゃ、事態は一刻を争う。多少手荒にしても構わねえ。なんとしても見つけ出すぞ」
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