~DIMENSION BIRD~序章その⑤
序章はこれにて終わりです。ここまで読んでくださりありがとうございます、
「行くぞ!!」少年はアクセルを回し。走らせた。
「うわあああああああああああああ!!!!!!!!!!うぎゃあああああああああああ!!!!!!!」
信哉は真っ暗な空間で叫ぶ。体をとてつもない勢いで引っ張られる感覚を食らいながら信哉は悟る。
ああ、これが死ぬってことなのか、そういえば俺って人生の半分どころか三分の一も生きていないんだよなと思い泡を吹いて気絶した。
その気絶した信哉を気にすることをなく少年はアクセルを強く回し加速する。
すると壁は開き、すさまじい勢いで外へと射出される。
射出された瞬間、信哉の体はものすごいGを受けるが気絶したままだからなのか何も反応がない、それを見て少年は笑った。
少年はホバーバイクのギアをチェンジ、機体を浮かせ、空中に静止させた。
信哉の体が重力に従い落ちていく。
信哉はやっと目が覚めたのか悲鳴を上げながらも必死に座席にしがみつく。
「すごいなお前。よくあんな状態ですぐしがみつけたな、」少年は感心している。
「ああああああああああああああああああ!!!!!怖えええええええええええええ!!!!!!」
信哉は涙をためて恐怖を訴え、声も震える。
「それにこのレベルGと風をもろに食らって平然を保っていられる精神力と肉体素晴らしいな」
そんな信哉を見て少年は、「ふっ、面白いやつだな」と微笑み、再びホバーバイクを飛ばす。
「すっげえ…」信哉は思わず口から言葉を漏らした。
信哉の目に映る世界はすべてが新鮮だった。
信哉の生きていた時間では、こんな体験ができるなど思ってなどなかったからなのだ。
空から見る世界はそれはもう素晴らしいものであった。
「感動する暇なんてないぞ。やつが来る。」少年は冷静に、そして厳しく告げた。
「やつ…?」
「ああ、あの扉があるだろ。あそこからやってくるやつを倒すためにお前はこれからあのビヨンドに乗らなくてはならないんだ。」
信哉は扉に目を向ける。
その扉からは巨大な黒い物体が現れた。
その物体はまるで生きているかのように動き回り、そしてその物体はビヨンドと似ている人型のものへと変化した。
竜のような首と顎をしている。ボディは神話に出てくるドラゴン、角はヤギと酷似していてまさしく悪魔を連想させる。
「あれはなんだ!ビヨンドじゃないのか!?」
信哉は驚き、そして少年に向かって質問を問いただす。
すると、少年は静かに口を開き答えた。
「やつらはビヨンドを殺すために生まれた存在。イヴィルだ、あいつらも同じようにロボットとは違う、生き物でもない、だが化け物であることに変わりはない…っ!?」
少年は厳しい口調で信哉に言った。
イヴィルがその強靭な口を開くと何か光を収束させている。
「くそっ!!」と少年はホバーのスピードを上げ、ビヨンドから離れる。
少年はハンドルを大きく左に切り避けようとするが間に合わない。
その刹那、光はビームとなって放たれ、それがビヨンドに直撃する。
装甲は貫かれたかと思いきや全くの無傷であった。
「あれはR.W!!くそっ!!あの時と同じようには!!!」
少年はそう叫ぶと、ホバーのアクセルを全開に加速し、奴の後ろへ回りこむ。
ビヨンドが展開したバリアはイヴィルの光線を防ぎ、拡散させる。
光線はあたり一面に散らばり、建物や山、生き物が焼かれてゆく、
信哉はというと、何が起こったかわからない、目の前に見える世界は地獄だと錯覚する。
すると後ろから乱反射していた光線がホバーの近くまでやってくる。
「うわああああ!!!!」
信哉は叫ぶ、少年は「行くぞ!しっかり捕まれ!!」と信哉に向って大きな声で叫ぶ。
すると、ホバーは急上昇し、少年はやつらの攻撃を華麗に避けるかのようにそのホバーバイクを器用に動かす。
「はあ…はあ…すごいな…君の力がなかったら俺死んでたよ…ありがとう」信哉は汗だくになりながら少年に敬意を表した。
「はあ…はあ…当たり前だ…出なけりゃここまで生きちゃあいない…」少年は息切れしながらアクセルを握っている。
その時少年の目には涙が浮かんでいた。
その少年の表情を察するに、イヴィルとは何かあったのだろうと思い、信哉は何も言えなかった。
少年は信哉に問う。
「なあ。お前は…どうしたい?お前が決めることだ。俺は…あいつらを好き勝手にさせるのが気に食わない。」
その言葉は信哉にとってはとても重いものだった。あの時と同じようにはと少年は言っていた、
それは彼にとってトラウマになったものなのだろうか、それは俺に何かをやってほしいということなのだろうか、それとも、あのイヴィルを倒すことこそが彼の願いなのだろうかと考えさせられる。
でも、それが仮に本当だとするのなら、あの時のビヨンドに乗るか乗らないかの話も本当になる。ならば
「ああ、俺は乗る。さっき君が言った俺がもし乗らなかったらの話をしたね。その話を聞いたとき、ビヨンドに乗らないと街をめちゃくちゃにされるって。でも、そんな規模の話じゃないと思うんだ。だから行く、それが俺の運命なんだろ?」信哉は銀髪の少年の目を見つめながら言う。
その言葉を聞き、銀髪の少年はほっとしたかのようににやりと笑う。
「わかった。じゃあ早速行くか。」
「ああ、俺、憧れていたんだよ漫画とかの主人公みたいに自分にしかなせないもので戦うってことに、今がそうだ。」
すると、少年は突然、「俺の名前はプレアだ。」と名乗った。
「俺の名前は河隅信哉、よろしく。」
「信哉。やれるのか」
「ああ、そのために聞くが残り稼働時間と最高時速は?」
「あと40分帰りの分を入れたら25分だ。最高時速は400キロ。でもその速度を出したらお前は死ぬぞ?」
「構わない、それに死ぬつもりなんて最初からない、」
「そうかい、なら分かった。」
「それと垂直に飛ぶことはできるか?そのホバーバイク」
信哉は聞く、
「ああ、飛べる、でもなぜだ。」プレアは質問に答え聞き出す。
信哉は答える。
「やつは、イヴィルはあの俺が乗るべきビヨンドと戦っている。そのまま直で行くとこのバイクにあのイヴィルの光線が当たって俺たちも含めてお陀仏になる可能性がある。だけど、今さっき急上昇してくれたおかげで俺たちはあの二体のバケモンの頭の上だ、さらにビヨンドの死角に回り込んで俺が落ちる、このカギを持ちながらな。」
プレアにカギを見せて言う。
「成功する可能性は!?」プレアは信哉に聞く。それもそうだ、素人がとっさに考えた戦略なんてふつう信じられない。
「俺以外だったら0%だ!!お前だったら?」
信哉はプレアに向かって笑いながら答えた。
それを聞いたプレアはというと、信哉のほうを見てにやっと笑った。
「いいだろう。お前に賭けてみるのも悪くはないだろう!」
そういいプレアはホバーバイクを急上昇させる。
信哉は自信に満ちている表情をしているが心の中ではなにか疑問を感じている、そうだ。あの時の少女の言葉が脳裏に浮かぶ。
『私はあなたの味方よ』彼女はビヨンドが来ることを知っていたのだろうか、じゃあなぜ俺にあのことを教えたのだろうか、
だが、今はそんなことを考えられる余裕はない。信哉はあの言葉を信じ、この言葉を奴に送る。
「俺は決めた!お前を剣としてお前と戦う!!!そうだ!俺に従えっ!!!!!」
信哉は鍵を強く握りしめ、飛び込んだ。
その瞬間、ロボットの目が光り、信哉は急に体が消えてゆく感覚に襲われた。
まるで透明な空のようだ、何もかもを包める海のようだ、頭の中にはたくさんの情報が入ってゆく、今ならどのようなことでも理解や実行をすることができる万能感、優越感、そして孤独を思い出させてくれる。
この世界のすべてが自分のためにあるのか、もしくは自分以外のためにあるのか。
信哉の脳内は理解と苦悩のリフレインの渦に刻まれてゆく。
そして信哉の意識が覚醒し、ここはどこだと周りを見回すとそれはまるでスノーボールの中だった
信哉はそれをあのビヨンドのコックピットの中だと彼は本能的に理解した。
「そうか…成功したのかうぅッ!!!」信哉は急に現れる頭痛に頭を押さえる。
ビヨンドは信哉の脳内にある情報の海に電流のようなものを流し込む、
すると信哉は理解したような表情をする。
「そうか…お前の名前はシェレスタっていうんだ…ふふっ⋯じゃあ、シェレスタ…!!俺と敵を倒そうか!」信哉は鼻血を垂らし、目を充血させながら操縦桿を握る。
信哉はそうシェレスタに問いかけるとモニターが起動を開始する、
起動完了した瞬間、正面にイヴィルが口を開き光を集めているのが見えた。
信哉はその姿を正面で見たとき、体が固まり、息が苦しくなった。
「アレを倒せってことか…、うっ‥‥うおおおおおおおおおおおお!!!!!」
信哉は恐怖心を必死に殺すように叫び、操縦桿を力強く握る。
すると、シェレスタはイヴィルに向かって左のマニピュレーターを前に突き出し凄まじい勢いで突進をかました、
イヴィルの腹部に左が突き刺さる。
完全に相手の懐に入り切った。
信哉はモニターに映る敵を睨みつけ、操縦桿を勢いよく倒した。
すると、シェレスタは右マニピュレーターを石のように丸め敵に向かって拳として、敵に振りかざす、
「でやああああああああああああ!!!!!!!」何度も何度も拳を敵にふりかざす、敵に攻撃をさせる暇を与えないように顔面に向かって何度も殴る。反撃の隙なんか与えるかという勢いで、
すると、敵はヤギに酷似した角を急激に成長させる。
信哉はまずいと察したのかとっさに敵から離れ、すぐさま防御態勢に入ろうとする。
なにか自分を守れるものがないか焦る信哉、そうするとまた脳内に電流が走る。
あの時、シェレスタはこのイヴィルから出たあの光線を防ぐために使ったあれを出せばいい、
信哉はR.Wを展開する、なぜ展開する方法を知っていたのか、多分それはシェレスタに乗ったときにやってきたリフレインから持ってきたものだと信哉は確信する。
すると敵は先ほどの角がより巨大になり、光の粒子を放つ、
イヴィルはその強靭な口から粒子を集めエネルギーをためる。
信哉はビームがくると確信し、R.Wを限界にまで展開をする。
展開をし終わった瞬間イヴィルの強力な光線が発射された。
R.Wは光線を反射をするがその一撃はとても重く、いとも簡単に壊されてしまう。
ある程度R.Wで打ち消しはしたらしいがもろに食らってしまう。
光線で受けた衝撃により、信哉は吐血する喉と肺が熱い、
信哉はまたすぐに元の体制に戻ろうと操縦桿を握ろうとしたが、手からも大量の血液が出ており、信哉は一瞬痛みを感じたが、そんなことは気にせず操縦桿を握った。
信哉は再び敵の攻撃を避けようとするが、意識が薄れているせいか避けきれず直撃してしまい、シェレスタは吹き飛ばされ倒れ、
「ぐあっ‥‥かぁっ…」信哉はシェレスタの倒れた衝撃でともに気を失う。
意識は暗闇の海の中、信哉は心中でああ、もう自分は死ぬんだな、死ぬことってこんな簡単であっけないものなんだと心の中でつぶやいた。
今まで自分は普通に生きて、普通に生活して、普通に夢を追いかけて、叶うか叶わないかの夢の狭間に置かれて、命が枯れてゆくものだと思っていたのだ。ああ、俺は生きたい、生きられるのであればあのカギの事と、あの扉から現れた化け物の事、そして何よりもあの少女の言葉を‥‥
「ん…なんだ…お…俺は…生きているのか…」
信哉は目を覚ますとそこは、ベッドの上で見たこともないような場所だった。
信哉は周りを見ると、ここは病院だということを即座に理解する、なら自分は誰かに見つけられ、助けられたということ、言い方を変えれば助かったとも言える。
信哉は慌てて自分の体を触ってみる、すると、傷はどこにもなく、信哉は不思議に思った。
だが、ポケットをあさってみるとそこにはカギがあり、夢じゃない、これは現実だという事実を突きつけられた。
信哉はかかっている布団をどけ、ベッドの上に寝転がりこうつぶやいた。
「どうして俺は…アレに乗ったんだろう…」と…