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尊氏について
目の前にいる尊氏は、うどんを愛していない。好きだが愛には届かない。
「ところで」
尊氏は私の隣に座って箸を割り、うどんを食べ始めた。そして言った。
「お前は未来から来た後藤か」
「そうだ。私は未来から来た後藤だ。知っていたのか、私がテレポーテーションができることを」
「ああ」
尊氏はいたって普通に言った。
「驚かないのか、友人が超能力者だということに」
「驚かない。なぜなら俺も超能力者だからだ」
「なに、そうだったのか。どんな能力だ」
「正確なところはわからない。ただ、何もないところから七味唐辛子を出すことはできる」
そう言って尊氏は、右手を軽く握り、パッとうどんの上で開いた。うどんの上に、七味唐辛子が散る。
「最高じゃないか」
「ああ。うどんを食べるのにとても良い能力だと思う」
「それは、他のものも出せるのか?」
「わからない」
「試したことはないのか?」
「ない。七味さえ出れば俺は満足だ」
尊氏は、足ることを知る男だ。
「お前はいい男だ。私もそうありたい」
私は言った。
尊氏は、うん、と満足そうに頷いた。




