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アウトローズ

読んでくれる皆さんのおかげで三日坊主にならずに続いています。



 二人で便所の落書きや、信憑性の乏しい個人の日記などから拾ってもよさそうな情報を集めていく。

 色々と記事を漁る中で目に付くのは、スキルのランダム性や使いにくさに対する不満や、強化レベルのショボさ、元から鍛えている人間との格差が広がることについての不満、人型生物を殺してスキルを得ることに対する不満……


 なんだこいつら不満ばっかりだな!


 まあ、俺も今の糞ったれな社会に不満たらたらタラの介だから気持ちはわからんでもない。

 だからってこいつ等ブー垂れすぎでしょう? 人生をどんだけヌルゲーに考えてるんだよ。



 「予想通りというかなんというか、荒れていますねえ」


 俺はため息交じりにそう溢す。


 「そうですね……でも、ゴブリンが居なくなってきているっていうのは安心です。 早く散らかったお店も片づけてしまいたいですし」



 そう、そうなのだ。目下に迫るのはゴブリン枯渇問題。

 世界ファンタジー化運動(仮)に乗り遅れないようにスタートダッシュをキメたかったのに、ゴブリンがもう居ないのでは話にもならない。

 だが、ゴブリンの枯渇に関しては早々に解決されるであろう、という確信に近い予感がある。

 こんなボヤ騒ぎのために『仕掛け人』が態々システムボイスまで用意したとは考えにくいからだ。



 「んん、またすぐに出てくると思いますけどね。ゴブリン」



 ゴブリンじゃないかもしれんけど。

 


 その後は、ネットで見つけた動物の擬人化について、ああだこうだと意見を交わした。

 玉城さんはウサギを飼っているらしい。

 もし、スキルが手に入るなら自分も統率:獣が良いと言っていた。


 そういえば、掲示板で報告されていたスキル名は、『獣』ではなく『犬』だった。

 純粋に俺のスキルが上位互換の当たりなんだろうか? 獣は獣でも、冒涜的な獣を使役するスキルだったら普通に嫌だぞ。


 俺だってもふもふが好きなんじゃい。



 しかし、俺はペットを飼っていないんだが……

 既に仲間扱いになっているこの二体は何なんだろう?



 休憩室に移動して10分ほど経ったころだろうか。

 店舗の電話に着信が入る。


 どうやらセコ〇のガードマンがこちらに急行中で、間もなく到着するとのことだった。

 流石は頼れる警備会社だ。予想していたよりもずっと早い。



 「それなら、俺はそろそろお暇しますかね。 不審者と間違われて制圧されたくないですし」


 「あ、じゃあそこまでお見送りします。 あの、本当にありがとうございました! 落ち着いたら連絡します! 今度は寺田さんの仲間の子、見せてくださいね!」



 俺はお代わりしたコーヒーをグイっと飲み干し席を立つと、ぺこぺこと頭を下げる玉城さんに見送られながらスーパーを後にした。


 玉城さん、連絡くれるって言ってたけど……まあ、社交辞令だと思っておこう。期待するとその分だけダメージが深くなる。



 店を出てから、このままゴブリンを探して少しぶらつこうかとも考えたが、まっすぐ帰ることにした。

 本音を言えばもっとゴブリンを倒して色々と検証したかったが、掲示板で見た限りだと既にレアモンスター化してしまっているようだし、スキルが得られただけ万々歳としておこう。



 【統率中の生命体と合流しました】



 自宅へと歩き出して間もなく、システムさんがそう告げる。

 ほぼ同時に、俺は二つの黒い影に揉みくちゃにされた。


 一つの影は、バサリと1メートル程もある翼を羽ばたかせ、パーカーのフードに入り込もうとする。

 もう一つはくるりと周囲を旋回した後、俺のボサボサ頭に堂々と停まり、自信たっぷりにこう鳴いた。



 「カァ」



 仲間になったのお前らかい!

 っていうか後ろの奴! めっちゃ翼で打ってくるやん。



 「わかった! わかったわかりました! ま、これからよろしくな」



 人の後頭部を散々叩き倒し、なんとかフードに無理やりもぐりこんだ後、後ろのソイツもこう鳴いた。



 「カァ」



 こうして社会のはみだしものと、世間の嫌われもののパーティーが誕生したのである。




ぺんぎんはカラスが好きなので味方サイドで登場させます。

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