表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

晴れ時々晴れ

三話目です。



 早速ゴブリン退治……いや、こっちの都合でヤらせていただく以上、討伐とか狩りの方が正しいか。

 改めて『ゴブ狩り』の準備と洒落込もうか。



 とは言ったものの、先刻の動画の彼らのように、街中であからさまに武器になるものを振り回して大暴れするのは大変いただけない。

 今の時代、どこに『目』があるかわかったものではないし、とっくの昔に成人を迎えている俺は、ワンミスで簡単に人生が詰んでしまうのだ。

 いや、今も半分詰んでいるようなものだが。

 何を隠そう、俺っちってば年単位の無職なもんでね! HAHAHA!!



 さて、ゴブ狩りに向かうにあたって必要なものを集めなくてはならない。

 まずはばっちい(と思われる)爪や牙を防ぐ為の厚手の服だ。



 これはMA-1やら革ジャンが候補に挙がる。

 しかしここがいくら北国とはいえ、六月に革ジャンの男がウロウロしていたら怪しすぎる。

 今の時点で警察が万全に機能しているかどうかは別として、俺が警官なら真っ先に職質する。

 「は~い、危ないもの持ってないか確認だけさせてくださいね~」

 ってな具合だ。



 バリバリ危ないことをするつもりの俺としては、そのような展開は極力遠慮願いたいので、パーカーの中にスウェットを着こむことにする。

 少々頼りないが、何の対策もしないよりかはマシだろう。



 それよりもだ。

 身長差から被弾の可能性が高い下半身こそ、重点的に守るべきである。

 なので俺はいつもの楽ちんな恰好ではなく、パリッとしたジーンズを重ね履きすることで防護点を得るつもりでいたのだが。



 は、入らん……



 二年ぶりに会ったジーンズちゃんは、まるで最初から俺のものではなかったかのように拒絶の意を伝えてきた。

 無理やり両足をねじ込んだものの、ボタンがどうやっても閉まらない。フンッ! フンッ!!



 あっれ~? おっかしいな~??? もしかして、押し入れの中で縮んじゃったかな~?????



 ま、ダメなものは仕方ない。普段のままでいいや。



 という訳で、もこもこしたトップスにダボっとしたボトムスをあわせた『ぽっちゃりを隠し切れない休日の中年スタイル』に変身完了だ。

 辛口のファッションコーディネイターにねちっこくディスられる覚悟はとうに出来ている。



 現在の俺の装備は、さしずめ


 E:ぬののふく

 E:ぬののふく

 E:ぬののズボン


 といったところか。

 外に出るときはスニーカーを履くので、さらに E:うんどうぐつ も追加だな。

 うん、王様に50ゴールド握らされて放流される勇者の方が、まだマシなものを装備しているね。



 俺としてはすべての装備個所に全身鎧をつけて出陣したいところだが。

 まあ、動画で見た限り、あの緑色のちびっこギャングにはこれでも過剰なくらいだろう。

 カンフーマスターならバスタオル一枚で勝てるよ。

 ”パシーン”ってな具合にね。



 あとは武器になるものを持ってデッパツ……とはいかない。



 闇雲にゴブリンを探し回っても、空振りに終わる可能性が高いからだ。

 せっかくそこら中に『目』があって、それらをリアルタイムで閲覧できる時代なんだから、それを活用しない手はない。

これだけホットなネタだ。バズり狙いでネットは今頃お祭りだろう。



 早速、近所でゴブリンの目撃情報がないかを検索する。



 ……あった。

 投稿はほんの数十秒前。近所のスーパーの店員が品出し中にガラスを割って入ってきたゴブリンを激写してご丁寧に呟いてくれている。

 有益情報のお礼に、しっかり『いいね!』ボタンを押下する。

 情報提供者が無事でいるなら、続報にも期待が持てる。



 併せて、『ゴブリン倒したら手からなんか出た』のショート動画にも『いいね!』した。

 若人が両手の指先から勢いよく水を噴射しながらくるくる回るだけの動画だ。

 『袖にホースを通している』『釣り乙』といったコメントが目立つが、この際、釣りかどうかは置いておく。

 真実を確かめるには検証が必要だし、科学の発展に犠牲はつきものなのだ。

 最低限の情報は集められたとして、俺はスマホをポケットに仕舞い込む。



 これで行先は決まった。

 あとは武器か……



 定番のバールのようなもの、は健全な市民を地で行く俺は持ち合わせていないし、金属バットも、残念ながらウチには無い。

 ナタやピッケルといった攻撃性能の高い道具も、あるといえばあるのだが、今は物置から引っ張り出すのに時間を掛けるぐらいなら、さっさと出発してしまいたかった。



 ま、これでいいか。



 俺は玄関に立てかけてあった紺色の傘を引っ掴むと、数日ぶりに外へと繰り出した。



 「どうやら一雨来そうだな……」



 朝の心地よい風を受け、そう独り言ちる。

 頭上には、雲一つない青空が広がっていた。

 六月の、ある晴れた日のことだった。



E:超合金スーツ

E:超合金スーツ

E:超合金スーツ

E:超合金スーツ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ