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王子、何も考えていないのは貴方だけです。  作者: 亜鉛
ウェルリンテとスクルビア家
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第二話 計画をたてた理由

タイトルを少し変えました。

 自分の屋敷に着く前辺りでレイラに起こして貰った。馬車で寝るなんてよほど疲れが溜まっていたのだろうと気付く。


「ウェルリンテ=スクルビアただいま戻りました。」


 レイラに扉を開けて貰って中に入る。その瞬間、奥の方から走ってくる音がする。


「姉様っ‼」


 物凄い勢いで走ってきたのは私の協力者リシス=ヘルマイドだ。艶のある金髪に可愛らしい顔、目もくりっとしていて、好かれる顔として全ての条件を満たしているのではないかとも思う。


 そして、私の胸元に犬のように飛び込んでくるのをいつものように避ける。そのまま地面にぶつかるが、何事もなかったかのように振り返ってそのまま喋り続ける。


「姉様、お怪我はありませんでしたか?あんな糞王子ぶっ殺しましょう!」


 見た目に反して言うことは毎度怖い。リシスは12歳で背も低く、よく9歳に見間違われるのだが剣術においては王宮の騎士に劣らないほど強い。


「リシス待て、今お前の大好きなウェルリンテ様は大仕事を終えて帰って来たばかりだろう?疲れているだろうから今は休ませてあげなさい。」


 そう言って奥の方から出てきたのは、彼女の兄であるハンス=ヘルマイド。彼女とは違い母譲りなのか茶髪で、くっきりとした目鼻立ちは若いながら威厳を感じさせる。


「ふふっ、ハンスお気遣いありがとうございます。でも私も皆に話したいこともあるので、一緒にお茶でも飲みながらと思っていたところです。リビングに行きましょう。後リシス、何度も言っていますが私は貴方の姉ではありません。」


「姉様と一緒だ‼久しぶりだなぁ。」


 これも毎度言っているが、全く聞く耳も持たない。自分の妹であるリシスに厳しいハンスも、諦めたのか最近はこのことについて注意をしない。


「ウェルリンテ様がそう言うなら分かりました。レイラ、私とリシスはいつものお茶を頼む。」


「かしこまりました。」


 私の家族はここに居ない。死んだとかではなく、別のところに住んでいる。どうせ後で、私の家族に関しては嫌というほどわかると思うから、ここでは一旦話さないでおく。


 私達はリビングに来て、暖炉の前の椅子に座ってお茶を待つ。赤く輝いている火は疲れた私にとって、少し眩しく感じる。


「姉様、でもやっぱり軍隊を出せば良いのではないでしょうか?今のスクルビアとヘルマイドの兵力ならこの国を支配することも出来ますよ。」


「リシス、ウェルリンテ様は何度も計画の内容について仰ってきたでしょう。人の話を聞きなさいとあれ程......」


「大丈夫よハンス。この計画もだいぶ進んできたから、そろそろおさらいがてら話そうと思っていたから。」


 お茶が来るまで、私は再度リシスに計画の内容を伝える。


 計画を起こそうと考え始めたのは、私があの第一王子カイルスと婚約を結んで1年たった11歳の時だった。あの時、私のカイルスに対する評価は一つ「こいつは絶対にだめだ。」というものだった。


 ここルイト王国は南側が海に面していているので貿易が盛んであり、また北には麦を始めとした農作物が良く育つ肥沃な土地が広がっている。魔法の分野においても研究が活発に行われており、軍事面でも強力なので大陸屈指の大国である。


 そして、貴族や王族は基本長子相続制なので次の国王はもうお分かりの通りカイルスだ。つまり、私は未来の王妃として結婚相手として選ばれた。元々公爵家の娘として、充分に家柄として釣り合っているし自慢じゃないが当時私は同世代の子達と比べて頭一つ抜けて賢かった。まあ、そんなわけで10歳の頃に婚約し1年間カイルスの側に居て分かったのがさっき言ったことだ


 当時から、傲慢で横柄で王家のプライドだけは高く、何も努力もせず他人を妬み権力を使ってその相手をいじめたりしていた。勿論最初の方は私も何とかしようと奮闘したが、そもそも私という自体カイルスから妬まれる要素を全部詰め込んだ感じだったので散々邪魔されて、心身ともに疲れ果て1年後には諦めた。


 諦めた時、私が最も懸念はスクルビアのことだ。あの第一王子が国王になれば、各地で暴動が起こるのは目に見えている。最悪反乱が起こって王家が死刑となったときに、スクルビアも連座となる可能性だってある。


「姉様は11歳の時に、もうそんなことまで考えていたなんて本当に凄いですね。」


 ここまで話し終えた私に、リシスが興奮気味に話しかけてくる。


「ありがとう。でもね、計画の案については全然思いつかなかったの。」


 当時私は焦りに焦っていた。自分のせいで代々続いていたスクルビアがなくなってしまうのだ、と。そして、計画は焦って根を詰めすぎ、倒れて医者に運ばれた時に思いついた。

「なら、私が煽ればいいんだ。」


「どういことですか?姉様?」


「うーん、その時すでに私は第二王子が王座を狙っていたのと、宰相が独立を企てていたのを知っていたの。最初はどっちかの計画に協力しようと思ってたんだけど、第二王子の方に協力したら、カイルスが失脚した後に婚約者である私はどんなに協力していたとしても幽閉が関の山でしょうし、宰相の方に協力したら兵力的に負けて国家反逆罪で死刑っていう可能性もあったから止めにした。だから、何とかして第二王子と宰相をぶつけて有耶無耶にしてカイルスの政治を見えにくくしようと思ったの。でも、ファリシスが工作員って分かった時に、これは婚約破棄に持って行けると思ったから急遽変更して、今の計画にしたって感じかな?」


 ついリシスの可愛さにつられて、素の口調が出てしまう。


「じゃあ、今日は婚約破棄をさせる為だったんですね‼」


「それもあるけど、一番の目的は第二王子と宰相の計画を止めるための時間稼ぎなの。元々あの二人には私があの場で証拠を挙げて、仕返しをするっていう情報を流しておいた。その隙にそれぞれ目的を果たそうとしたんでしょうけど私は無惨にやられましたから。」


 ここまで言うとレイラがお茶を持ってきてくれた。丁度本題に入るところだ。お茶を飲んで一息いれてから続ける


「今ので大体流れが分かったと思うから、この後についてハンスとリシスには話しておきたいの。しっかり聞いててね?」


 ハンスとリシスが大きく頷いたのを見て、私は計画のこの後について予想を話す為に口を開けた。



新規登場人物

・リシス=ヘルマイド

・ハンス=ヘルマイド


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