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王子、何も考えていないのは貴方だけです。  作者: 亜鉛
ウェルリンテとスクルビア家
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第十四話 闇魔法

第五話において、最後の方にウェルリンテが「ヘルマイド兄弟の付き合いは2番めに長い」という発言をしていましたが、その部分を削除しました。

膝をついたのも一瞬で、すぐに立ち上がって机に渡した紙を叩きつけた。


「こんなの……偽造に決まってる!ライラス様、ここにいる兵でこの女を捕まえてください。偽造罪で突き出しますので。」


(まあ、言うとは思っていたけど……)


 私が渡した紙は、ある手紙。ガルハンデ家がランディ家に送った手紙。


「『第一王子カイルスを暗殺せよ』……何のことですか?これは?」


 ライラスが机に置いてある手紙を読む。あまりの突飛な内容に、他の人も手紙の周りに集まった。


「違う!……そう、だから、この女が手紙を偽装して私を貶めようとするのです。」


 感情的になりながらも、必死に冷静さを取り繕っているようだ。側から見れば自白したようなものである。


「あら、じゃあこの印は何処の家のものなのかしら?私は頭が良くないから間違っているかもしれないけど、記憶が確かならガルハンデ家の印だったような……間違ってたらごめんなさいね。」


 後ろにある印をさしながら言う。まごうことなきガルハンデの印だ。貴族の印は複製不可の魔法がかけられているので、偽造は出来ないとされている。私は王家とユライン家以外の印の複製を持っているが。


「うっ……私が家を留守にしている間に使ったのだ。そういえば先月、誰も触っていないのに印の保管場所から少しズレていたという報告を受けた。貴様が……いや、誰かを雇って偽造したのだろう。」


 勿論これは嘘だ。ガルハンデ家の印の複製をとるために忍び込んだのはもっと前で、そもそも私がやるにしても、私の部下がやるにしても、そんなヘマは絶対にしない。


「そもそも暗殺など起きていないじゃないですか!」


 ライラスが早く終わってくれという感じでユーリエストを睨みつけていたので、そろそろ終わらせる。


「逆に、私がこれを手に入れた経緯を話すと、ランディ家に偶然立ち寄ったら、屋敷が襲われていまして。その不届き者を捕らえたら、何とこの手紙を持ってたの。」


 彼は大きく目を見開いた。一流の傭兵を頼んだのに、まさか逆にやたれていると思っても見なかったのだろう。確かに部下からは「最近のやつでは1番骨がありました。」との感想だったが、それでも制圧に10分も要しなかった。


「……」


 これ以上反論しても、その傭兵が証人としている以上覆すことはできないと思ったのだろう。


「沈黙したってことは認めたってことでいいのね……そうね、例えば今まで捕まったのはこの暗殺計画を知っていて、未然に防ぐためにわざと牢屋に入って相手を油断させていたとかなんとか言えば、私の罪はなんとかなって死刑になるのはガルハンデ家だけで済むんじゃないかしら?」


「っ……それだけは。お願いします。何でもしますので!」


 驚くほど手のひら返しが速い。貴族として悪いわけではないが、信用に欠ける。最初から信用していないので、どうということはないが。


「私も自分の派閥の家を死刑にできればしたくないわ……そうね、このことを黙ってあげる代わりに私が牢屋を出ていることを秘密にしてくれないかしら。」


 顔をガバっと上げて、さっきより大きく目を見開いてこちらを見てくる「そんなことでいいのか」という疑惑の目だ。


「黙ってるってことはこの取引に乗らないの?じゃあやっぱりこれを国に渡すってことで……」


「受けます!その取引をお受けします……ですが、本当によろしいのでしょうか?」


「言っているように、私の派閥の家が死刑なんて嫌だからね。貴方達はどうするの?」


 後ろを振り返ってライラスとエルサイデ家の面々を見据える。


「私が間違っておりました。もう一度忠誠を誓う機会を頂いてもよろしいでしょうか?」


 打ち合わせ通り、ライラスが丁度のタイミングで言葉をかけてくる。


「許す」


「では……私、ライラス=ドレイン及びドレイン家は命に変えてもウェルリンテ様をお支えすることを誓います。」


 言い終わったあと、すっとワンリルが前に出てきて頭を軽く下げた。


「ワンリル=エルサイデ及びエルサイデ家も命に変えてもウェルリンテ様をお支えすることを誓います。」


 色々なことが起きて放心状態だったエルサイデ伯爵夫妻も、ハッとした様子でワンリルに続いて頭を下げた。忠誠の誓いは本来、家の当主がするものなのだが、今回はしょうがなかったのだろう。


「そう、じゃあこの面白そうな小説の案は残念だけどはボツね。」


 再度契約書を持ち上げて、ビリビリに破く。


「では、また面白い案が思いついたら呼んでくださいね?」


 ゆっくり、扉の方へ向かう。扉のすぐ横の花瓶に入っていた薔薇を1つ手に取る。


(……光魔法と暗黒魔法……)


「この薔薇はとても綺麗ね。」


 そう言って薔薇を抜き取ると、花も茎も枯れて茶色に朽ち

た。それと同時に、私のドレスが深紅になる。


「次に合うときにこれが貴方の血でないことを祈るわ。」


 扉を開けて部屋から出た。扉を閉める瞬間「……闇魔法」と聞こえた気がしたがもう一度扉を開けることは無かった。





 応接間でお茶を飲んで待っていると、ライラスが入ってきた。


「ウェルリンテ様……その、何から申し上げて良いのか分かりませんが、無事成功したことは喜び申し上げます。」


「ふふっ、ありがとう。言いたいことがあるのなら言ったらどう?顔に出てるわよ。」

 

何も伝えてなかったから、聞きたいことが沢山あるのだろう。


「ではまず……あの手紙のことから。あれは本物ですか?」


「ええ、そうよ」


「では、いっそガルハンデ家を切るというのはどうでしょうか?ウェルリンテ様の質問の意図にも全く気付かず、あんな愚かな貴族はこのあと足を引っ張ってくるだけだと思いますが?」


 ライラスが言っている意味も分かる。私もただの貴族なら直ぐに切り捨てていた。


「貴方が次に聞きたいことは最後に使った闇魔法のことでしょう?」


 闇魔法とは、生き物を死滅させる魔法とされている。代わりとして生まれるのが、その生き物の最も美しい部分。


 そして、この魔法は力が強すぎるゆえ禁術として封印され、使える者は誰一人としていない。


「はい」


 そんな闇魔法を使ったのだから聞きたくて当然である。


「どっちも同じ理由だから、きちんと聞いていなさいね?」

 

 私は貰ったお茶を一口飲んだ後、口を開いた。


各話において、新規登場人物を後書きに記しましたのでよければ参考にして下さい

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