第十二話 つつがない会議
遅れてしまいすいません。スマホでコピペしたものは、そのスマホの電源を落とすと消えてしまいます。皆様も気をつけて下さい。
「遅れてしまい、申し訳ありません。」
ライラス様の声と共に、私の気が引き締まるのを感じた。今日の私の任務は自然に反対派に移るように見せること。
「日の光の下、若葉のめぐりに感謝を。本日はお招きいただきありがとう御座います。」
ガルハンデ伯爵当主様が立ち上がって礼をする。
「日の光の下、水の出会いに感謝を。本日はお招きいただきありがとう御座います。」
私も両親と共に立ち上がり、一緒に礼をする。
今日は、ウェルリンテ様の傘下の貴族を全て反対派にするための重要な会議。ウェルリンテ様によると、いつ裏切るか分からない賛成派より、最初から敵対させて反対派にしている方が扱いやすいらしい。
現在、反対派はドレイン家やガルハンデ家を含む大部分の貴族によって占められている。一方賛成派は名のある貴族は私の家くらいで、他はほとんど力として無いに等しい。つまり、私の家が反対派に入ればなし崩し的に全ての貴族が反対派に入ることになる。そして、私の両親は既に反対派にまわっている(我が両親ながら、情けないと思う)ので、実質賛成派は私のみである。
では何故最初から反対派だけにしないのか。ウェルリンテ様の傘下の貴族のドレイン家、そして私の家のエルサイデ家が2トップである。つまりドレイン家とエルサイデ家を最初から反対派にしておけば、こんなに面倒にも不安定にもならなかったはずだ。このことをウェルリンテ様に聞いたのだが、あの方によると、一応賛成派にするための可能性も残しておきたいらしい。賛成派にする際には連絡をするとのことだったが、今日という今日まで連絡は来ていなかったので、このまま計画を続行しておいて構わないはずだ。
そもそも、ウェルリンテ様が牢獄に入れられるという事件を聞いて、賛成派にいようとする家なんていない。今から賛成派を増やすなど神の御業でも無い限り無理だ。
「こちらこそ、お招きに応じて下さりありがとう御座います。」
今日は私が折れればいいのだが、すぐに折れてしまっても訝しがられるので、それ相応の対応を施してますよ感を出せればいい。だから美男子「白の騎士」との縁談を結ぶということになっている。実際に結婚する訳ではないし、まず私はあの人の性格が好きでは無い。当の本人の親であるライラス様がいる前で言ってしまったことがあるのだが、ライラス様は「私もウェルリンテ様も同じ考えです。」と言ってくれたので大丈夫だろう。
「それでは、ウェルリンテ様につくかどうかの決定をしたいと思います。私、ドレイン家は反対で御座います。」
「私達も反対で御座います。まず第一に......」
ガルハンデ家も反対の意を示す。ここで裏切られたらどうすれば良いか分からなかったが、ちゃんと反対派だったようである。反対する理由を述べているらしいが、興味ないのでスルーである。
ふと見るとライラス様がしきりに指を動かしているのが見えた。
(あれは......ハンドサイン‼何かあったのでしょうか?)
私とライラス様は事前にハンドサインをいくつか決めてある。どうしても伝えることが出来ない場合は「おや、ワンリル様。大丈夫ですか?」、「少しトイレに......」、「では、私がお連れします」という強行手段もあるが基本的に使わない。分かると思うがワンリルとは私の名前である。
(あれは初期の方で使っていた覚えがあるのですが......『計画変更』!?)
私は頭が真っ白になってしまった。昔、決めて今になってもう使うことが無いだろうと思っていた『計画変更』。今になってもう変更することなんて不可能だ。
(どうすればいいのですか......)
放心状態でいると、次の指示が出されているのが気付いた。
(『そのままで大丈夫』と『助っ人を呼んだ』?)
確かにそういう意味のハンドサインである。つまり、助っ人がなんとかしてくれるから私はそのままでいいと。
(しかし、それは不可能では?)
昨日の一件が無かったらまだ希望はあったが、今となっては絶対に無理である。
そうこうしている内にガルハンデ家の理由が終わり、私の家の意見を聞く番になった。そのままでいいというので、一応計画通りに進めるしかない。
「エルサイデ家も反対でござ......「私は反対です‼」」
ちらっとライラス様を見るが。特に止める気配の無いのでそのまま続行する、
「皆様、忘れたんですか?主人とするのはスクルビアと誓ったじゃ無いですか‼」
「ワンリル令嬢。確かに貴方の言う通りです。しかし、昨日の出来事をききましたか?元々ほとんど没落しかけていた公爵家であったのに、今や罪人。今まで仕えていただけで義理は果たすことは出来ています。」
ガルハンデ当主が私に問いかけてくる。全くもって予想通り。
「ですが......」
私が言い淀んでいるところで、ライラス様が手を挙げる。これも台本通りだ。
「では、こうしましょう。私の息子とワンリル様が婚約を結ぶ。」
「それは良いわね。ね、貴方?」
「そろそろ娘にも婚約者を見つけなければならないと思っていた所ですし、それにあの名高いドレイン家のご子息なんて、私の娘にはいささか勿体ないと思いますが、私からは何の反対もありません。」
本当は全身全霊で否定したいところだが、ここで折れるふりをする。言い忘れていたが、昨日の証言台に私が立ったという事実は秘密裏に消されている。
「ですが......分かりました。反対派に入れば縁談は受られるのですよね?」
「ええ、約束しましょう。」
所詮、面食いの馬鹿娘というふりをする為に、言葉の後ろの方の声のトーンを上げるのも忘れない。全然関係ないが、昨日のウェルリンテ様の演技は圧巻過ぎて、途中から本当のことかどうか分からなくなってしまった。私の演技も失敗してないといいのだが。
「ということは、これで決まりということで宜しいのですね?」
ガルハンデ当主が嬉しそうな声で言う。常に3、4番手だったガルハンデ家は、当初から反対派にまわっていたので、今回のことで貴族の地位が序列的に上がって嬉しいのだろう。
「では、ここに署名をお願いします。」
ライラス様が取り出した紙にガルハンデ家とエルサイデ家の名前が署名される。最初の方のハンドサインは何だったのかというぐらいあっさりと終わってしまった。ライラス様の顔を確認するが、特に困った様子も無い。
(もしかして、私の勘違いだった?いや、でもあれは確かに『計画変更』のハンドサインだったけれども......)
考えている間に契約の読み上げが終わったらしい。私以外の人が立っている。
「私達の成功を祈りましょう。」
ライラス様の声に拍手が送られて、いざ帰ろうとした時だった
「面白そうなことをしているのね。」
底冷えするような声が、部屋全体に広がった。
本当は7話目くらいで会議が終わっている予定だったのですが......文章力無くて申し訳ありません。
新規登場人物
・ガルハンデ伯爵家当主
・エルサイデ伯爵家夫妻
エルサイデ伯爵令嬢の名前はワンリル=エルサイデです。ガルハンデ家当主は次で名前が出てきます。エルサイデ伯爵家夫妻は多分出てきません。