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王子、何も考えていないのは貴方だけです。  作者: 亜鉛
ウェルリンテとスクルビア家
12/18

第十一話 事前準備

短めです

「ウェルリンテ様、こちらでよろしかったでしょうか?」


 セルビアが薔薇の形をしている赤色の髪飾りを持ってきた。どう見ても高級だとわかるそれは、安っぽい服を選んだ私に対する不満だろう。


「ええ、ありがとう。」


 ライラスがあのゴミ達を誘導している間に、この白いドレスに着替えて髪飾りも付ける。


「元がいいから、何着ても似合うんですけど……」


 ドレスの着替えを手伝ってくれたセルビアは小さな声でそんなことを言っていたが、気にする暇はない。着替え終わったタイミングで、丁度ライラスが戻ってきた。


「お金を持たして宝石店へ誘導しておいたので、しばらくは戻ってこないでしょう。」


 あのゴミ達を動かすなら、確かにそれが一番手っ取り早くて確実な方法である。


「これが終わったら商社の引き渡しについて最終確認をするから、少しは聞く体力も残しておいておきなさいよ。」


「かしこまりました。」


 本当はこの話をするために来たというのに、こんなことがあったのだから仕方がない。


 そもそもこの後何があるのかというと、私を完全に没落させる為の計画の一部といったところだろうか。ずっと言っているように元々収益表を渡すのと、久しぶりにあのゴミ達と顔を合わせるのと、細々としたことをライラスと話すだけの予定だった。しかし、あの2つの家紋を見て分かった。これは向こうも完全に潰してきたということが。


 エルサイデ家とガルハンデ家、それとドレイン家。賛成派と反対派の両トップが全員出ている。


 今私の派閥は大きく2つに分かれている。私の派閥なのに何故反対派が出ているのかというと、前にも言ったように私が没落リスト一位を維持し続けているから。主は裏切ってはいけないという賛成派と、このまま没落したら被害がこっちまで及ぶから、それならば自分達で潰して乗っ取ってしまおうという反対派。


 反対派代表はドレイン家で、2番手がこのガルハンデ家。勿論だがドレイン家は私が指図して反対派に入ってもらっている。


 賛成派代表はエルサイデ家。覚えているかは分からないが、この前証言台に立ってくれたあの令嬢の家だ。一応スクルビア家はこのことを知らないということになっているが、勿論わざと没落しているように見せている時点で、こんなことになるのは想定できていた。


 本当はこのことをライラスとレイラだけで対処してもらおうとしていたが、ランヒルトという不確定要素が入った以上味方が多い方が良くなったので、丁度この機会に終わらせておきたい。


 ライラスが私に何の報告もしてなかったのは、ここ最近忙しかった私を気にしてくれたのだろう。


「賛成派にしたいから、いいタイミングで忠誠を誓ってくれるかしら。」


「……つまり、今までとは逆の方針でということですか?」


「そういうことになるわね。」


 私が今までライラスに、全家を反対派にするようにと指示を送っていた。賛成派だと裏切りの対処が難しいので、それならば最初から全員敵にしておこうと思ったからだ。


 ただ、先程も言った通りなるべく味方が多い方が良くなったので、今から一芝居打つ。


「そういえば、今日はどんな条件でエルサイデ家を取り込むつもりだったの?」


「当主とその奥方は既に懐柔済みで、あとはあの令嬢だけということだったので、愚息との結婚を提示しました。」


「『白の騎士』ね……」


 お茶の用意等々含めて、会議までは少し時間があったので最後に尋ねておく。『白の騎士』はドレイン家の長男を指す代名詞。


 その見た目はさながら雪のように白く、肌も透き通るようで、美しい銀髪は淡いながらも存在感はなっている。これが貴族の令嬢の間で囁かれている、『白の騎士』に対する噂。つまり凄く美男子だということだ。というか、ドレイン家はセルビアやライラスを含めて、親子全員美男美女揃いだ。


 そんなことは置いておいて、私の彼に対する意見は親の目から見たライラスと同じで、「使えない」というものだった。


 確かに見目麗しいのはそうなのだが、小さい頃から女性にチヤホヤされてきたせいか、全然自分で何かをしようとはしない。そのくせプライドだけはあって、命令されるのは嫌い。そこまで必要としない人物であったので、全然関わり合いを持っていない。


「それで、実際どうするつもりだったの?」


「言いにくいんですが、あの馬鹿はウィルハンス様と結婚したいと申していまして。」


「……ふふ、お似合いね。あら、ごめんなさい。」


「いえ、別にいいです。」


 ウィルハンスとは私の元妹の名前。何かと私を目の敵にしてくるあの女のことだ。ライラスには悪いが、無知同士少しお似合いと思ってしまった。


「で、貴方はどうするつもりなの?」


「今日のところはそれを理由に延期として、一度ウェルリンテ様にご相談しようと思っていたんですよ。」


「それは分かってるわ。私が聞きたいのは、本当に結婚を許すのかということについてよ。」


「次期当主についてということですね。ウェルリンテ様には悪いですが、その……あんなのに引っかかるぐらいでは当主など務まりませんので、結婚するならさせといて次期当主はセルビアに譲ります。」


 主の元妹をあんなの呼ばわりしたが、しょうがないと思うので聞かなかったことにしておく。


「当主様。会議の準備ができました。」


 終わったタイミングで執事が入って来た。


「分かった。すぐ行く。」


「私は貴方が挨拶終わったぐらいで入るから、先に行ってて頂戴。」


「かしこまりました。」


 ライラスが扉の向こうに行くのを見届けてから、お茶を口に一口だけ含み立ち上がる。


「では、行きましょうか」


 気合を入れて、執事の後に続いた。

今回は短めで、次から会議に移ります。


新規登場人物

・ドレイン家の長男『白の騎士』


ウェルリンテの元妹の名前はウィルハンス=ドレインです。スクルビアの家名はウェルリンテが引き継いでいるので、縁を切った父母妹の家名はドレインです。

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