ドキっ!男だらけの終末世界っ! ~魔法チート武器とTSビームで終末世界をSDGs~
「おうおう。雑魚丸出しでこんな所を一人で歩いていると、こわ〜い思いをしちまうぞ?」
突然の声に目を向ければ、革鎧越しにも分かる程に筋骨隆々な男が立っている。その男の笑顔は、強面という言葉をそのまま体現している。
「そうそう。お優しい俺らが有難~いアドバイスをくれてやる。」
強面の男の脇から、これまた違う種類の強面を全面に押し出しましたと言わんばかりの男が姿を現し言葉を続ける。そしてその男の横からも別の男達がぞろぞろと姿を現す。
全員が全員おっかない顔をしていて、パっと見、まるで山賊か強盗団のよう。
「ありがた~いアドバイスだろ? 有難過ぎて礼をしたくなるよなぁ? 礼儀ってのは大事だぜ? もちろん見えるカタチにしてな。」
「おいおいそんなこと遠回しに言ってもコイツはきっと分かんねぇぞ? なんせ刀の代わりに『すりこぎ』みてぇな棒きれ腰に差してやがる変わりモンだ。」
「モヤシ野郎がすりこぎ一つで渡っていける世の中だと思ってるんなら、そうとう世間を知らねぇな。」
「あぁ、世間知らずにも程がある。いいか? モヤシ野郎。ここら辺はなぁ武装商隊ですら強盗に襲われる事が多い道だ。モヤシはモヤシなりに、ちゃんとした武器くらい持ってないとカモとすら思われねぇぞ?」
「モヤシ以外の人間が見当たらねぇし一人旅だろ? もっと気を付けろよ。」
「なぁに礼は有り金全部で許してやるぞ?」
「優しいなぁ!」
「「「アーハッハッハっ!!」」」
かわるがわる言葉を放っては大声で笑っている5人の男たち。
その全員が刃渡り60~80cmはあろうかという血錆の付いた山刀を見せびらかしている。
「いやはや。随分としっかりした防具に武器だ。ただ見ているだけで怖くて震えるよ。」
そんな山賊たちを前に素直に両手を上げて見せると、山賊達は鼻を鳴らした。
「へっ、口答えのひとつも出来ねぇとか、まるで意気地のねぇモヤシだな。」
「まぁ腰抜けで面白くはねぇが楽でいいじゃねぇか? キチンと言うこと聞いてりゃ長生きできるぜオマエ。」
少しは抵抗してくれた方が楽しめたと言わんばかりの態度の男たち。その内の一人がハっと気付く。
「なぁ……もしかしてコイツ、もう毟られるだけ毟られた後で金ねぇんじゃねぇか?」
「おいおい、それは笑えねぇな。」
男達の雰囲気が不機嫌に傾き始める。おおよそ、その機嫌は金が無ければ暴力を振るいでもしないと戻る事は無いだろう。
そんな不穏な空気を纏った男達に笑顔を向けて口を開く。
「そこは安心してくれていいとも。金なら君たちが驚くくらいは持っている……これでも救世主だからね。」
「は?」
「救世主? だと?」
朗報の後に続いた聞きなれない言葉に理解が遅れる男達。
そんな男達の様子を無視して言葉を続ける。
「あとゴメンね。さっきから両手を上げてるけど別にこれは降参のポーズじゃないんだ。」
一層怪訝な顔に変わってゆく男たち。中には機転の利く男もいたのか素早く山刀を振るおうとしている。
でももう遅い。
「くらえっ! 『腹筋とかスクワットとか1回もできない美少女』TSビーム!」
「「「「「ぐわわわわわわっ!!」」」」」
バリバリバリと手から放たれた雷光が一瞬で男達に到達する。
雷光を食らった男達は、まるで雷に撃たれたように激しく痙攣を起こし電圧が凄まじいのか身体が発光までし始め、激しい雷光と衝撃で土煙が舞い上がる。
やがて砂煙が落ち着くと、その場に男達の姿はすっかり消え去っていた。だが代わりに見目麗しく弱々しい美少女たちの姿が。
「な、なんだっ!? なにが起こった!」
「くっ! 身体が重い!」
「ぐぁっ! 刀が重くて持てねぇっ!」
「な、何をしやがった!」
山賊の装備に『着られている』という言葉がぴったりな美少女たちが重い山刀を落としたり、鎧の重さに負けて腰を落としながら次々に声を上げる。場はまさに混乱の極み。ただ美少女たちの美しい声に山賊達は仲間に目を向けた。
「「「「「うわぁ! 女になってるーっ!!」」」」」
まるで時が止まったように固まる山賊たち。
だが呆けたのは一瞬。
「可憐だ……」
「きゃわいい……」
「じゅるり……」
「へっへっへ。」
「女だぁ……」
其々が劣情に満ち満ちた声を漏らし、欲望を溢れださせる。
だがしかし、また時が止まったかのような、一瞬の間。
「「「「「俺も女になってるーーっ!!??」」」」」
性欲を爆発させたい気持ちから、自身の身体の変化に気が付いての絶望への落下。
更なる混乱の極みの中。この場にたった一人、HEIZENとした男は言葉を紡ぎ始める。
「……男女比999:1。男だらけの歪んだ世界。この世界を救う為に俺はやって来た。」
両手を天に向け、高らかに謳うように宣言する男。
異様な雰囲気に美少女となった山賊たちは押し黙って視線を向けた。
「この世界を救うにはどうしたら良い? それは簡単なこと…………女を増やせば良いのだよ。そして俺は……それがデキる唯一の男っ!」
ニッコリと美少女となった山賊たちに微笑みを向ける男。その微笑みの気味悪さに山賊たちはゾワリと肌を粟立たせた。震えが勝手に起きる程に身の危険を感じ、各自、自衛の為に落とした武器を拾い男に向ける。
だが武器のあまりの重さにプルプルと剣先は定まらず弱々しい。
そのまま一分も待っていれば勝手に刀が地面に下りてしまいそう。そんな弱々しい武器を向けられた男は気味の悪い微笑みのまま小さく笑い始める。
「クックック……俺の武器が『すりこぎ棒』……か。知らないって怖いよなぁ……くっくっく。」
男は静かに自身の腰に差してある棒を手に取る。
すると、すりこぎ棒はビキビキビキっと音が聞こえる程に怒張し始めた。
「「「「「ひっ、ひぃっ!?」」」」」
まるで生きているかの様に見える不可思議なすりこぎ棒に恐怖を覚える山賊美少女たち。男はニヤニヤとした笑みを浮かべながらギンギンに怒張した棒を山賊美少女たちに見せつける。
「これはなぁ、俺だけの武器。魔法チート武器。唯一の神器さっ! 一突きすれば『破壊』、二突きで『解放』。三突きすれば『支配』できる聖なる棒っ! 聖棒っ! マジカルなチートウェポンっ! マジチーポン! マジチンっ!」
恍惚とした表情でマジチンサイコーと叫ぶ男。
そして、すぐにその血走った目を美少女たちに向けた。
「「「「「ヒっ、ヒィっ!?」」」」」
「ここ何日か、まったく襲われなかったからなぁ……もう溜まりまくってんだよぉ(注:ストレスが)。久しぶりに俺のチーポンが火を噴くぜぇ……へっへっへ。覚悟しろよぉ?」
舌なめずりをする男。山賊たちが男だった時と完全に形勢は逆転している。
「さぁ! まずは全員の男としての尊厳を『破壊』してやるっ! そして女の性質を『解放』だぁ! イクぞぉっ!! マジチンっ!」
「「「「「いやぁーっ!」」」」」
男はギンギンに怒張した聖棒を片手に、美少女となった山賊へと飛び掛かる。
「破ァっ! フンフンフンッ!! セイッ! セイッ! セイッ!」
「「「「「 ギャァアアぁーっ! 」」」」」
弱々しい筋力となった美少女が男に抗う事は難しい。
「「「「「 アッー! アッー! 」」」」」
美少女たちの声が木霊するのだった。
--*--*--
「私は超常なる存在から、この世界を正す為に「女人を増やす」という使命を託され、それを成す為の力を賜り救世の旅を続けております。この美少女たちも私の力で生まれた者たちです。」
渋々といった表情で後ろを付いてきている美少女たちを門番に紹介する。
「この者たちは道中で私を襲った山賊めにございます。私の持っている力とは犯罪者を美少女に変えることができるという力です。」
「なんと……そなような力があるとは……にわかには信じ難い。だが実際に、このような美少女を連れてきているのだから一概に嘘とも言い切れぬ。」
しっかりとした受け答えをしている門番。
だが、その表情は滅多に見ることができない美少女の集団を前にして、ふやけきっている。
この男だらけの世界において女性は希少な存在。まして美少女ともなれば、その希少性に『超』がつくのだから奇跡のような桃源郷を前に表情が緩んだだけで収まっている門番は十分に優秀といっても良いだろう。
「差し当たりまして、この街にも女人を増やしたいと思っており、女人に変えても良い犯罪者を紹介いただけるような統治者様と面談ができたらと思っております。お取次ぎ願えませんでしょうか?」
「え? えっ!? お、女が、ふ、増えるの!? こ、この、街に?」
にっこりと微笑みを返す。
「ええ。これまでも訪れた町々で女人を増やしてきています。そこでの経験から領主様などの協力をいただくのが最も効率よく短期間で女人を増やすことができますので。一応、前に立ち寄った領主様の印の入った紹介文も持参しております。」
「な……なっ、な!?」
あわあわと、どう反応して良いかすら分からなくなったような門番。
そんな門番に、そっと耳打ちする。
「ちなみに……これまでの街、全てで娼館ができました。」
門番は時が止まったように固まる。
構わずに耳打ちを続ける。
「最短記録は3日で完成。」
「すぐに対応しよう!」
門番の姿は即座に消え去り、同僚に発破をかける怒声が遠くで響いた。
経験から得た『魔法の呪文』の効果は偉大。
予想通り1時間後には領主を前に話がトントン拍子で進むのだった。
--*--*--
「この者の罪状は?」
急遽、設けられた罪人を裁くお白州のような場。
一口にTSさせるといっても簡単な事ではない。
この世界は、管理している超常の存在が『血沸き肉躍る戦いって熱いホモォっ!』とハイテンションになった結果、急速に女が足りない世界に歪んでしまった。
世界全体で急速に女が足りなくなってしまった為、超常の存在は焦って日本で死んだ俺をチート転生させて事態の解決を図ったのだ。そんな意図で与えられた俺のTSビームなので別に犯罪者のみに効くという物ではなく、この世界の人間全てに有効なビームなのである。
誰にでも有効と知られてしまうと、権力者は皆、何が何でも女人を増やせと、なんの罪もない領民たちを強制的にTSさせようとする。
国や領土、権力を守る為にも女人を増やさなくてはならないというのは重々理解できる。だがそこに不公平があるというのは使命を預かる救世主としては許しがたい。故に犯罪者にのみ効くビームと宣言しているのだ。
だから俺は、きちんと罪の度合を聞き、罪の重い者には重いTSを。罪の軽い者には軽いTSをきちんと与えなくてはならないと考えている。
誰かを不幸にしたのであれば不幸なTSを。誰も不幸にしていないのであればTSに幸あれ。
これは超常の存在に言われたとかではなく、俺の勝手な矜持だ。
だが、大切なこと。因果おっほぉ。
「この者は商人を殺害した重罪人にございます。」
領主に秘書として与えられた男が、目録に目を通しながら読み上げる。
「殺された商人は若く精力的に活動しておりましたが、この男は遊ぶ金欲しさに商人を脅しました。が、商人が思いの外に反抗したため勢い余って殺害。捕獲の際、衛兵も負傷しております。」
「ほう。それはヒドイ。罪人よ、何か思うことはあるか?」
猿ぐつわを外された男が悪態をつきながら口を開く。
「ふんっ!アイツも大人しく金を渡してれば死なずに済んだのにバカな奴だ!」
「なるほど救いようがないな。」
俺は少し考え、両手を上げる。
「くらえっ! 『どこから見ても不思議と目つきが悪い美少女』TSビーム!」
「ぐわわわわわわっ!!」
バリバリバリと手から放たれた雷光をくらい、痙攣、発光する男。
場が落ち着くと、男はどこか目つきの悪い美少女へと姿を変えていた。
俺は口を開く。
「ニラマレックス美少女として、娼館で男の嗜虐心を刺激し続け、分からされ続けるが良い。」
「は? はぁぁっ!?」
猿ぐつわをされる目つきの悪い美少女。
おいおい、そんなに睨むなよ。興奮するだろ。
「次っ!」
--*--*--
「この者の罪状は?」
「こやつは、窃盗の罪人です。」
「ふむ。詳細は?」
「食うに困り、やむにやまれずの窃盗を重ねての捕獲のようで、確保の際にも逃走を試みたものの抵抗は少なく情状酌量の余地はあるかと。」
「罪人よ。何か思うことはあるか?」
「……捕まってる方が、食うに困らなくて良い。殺すなら一思いに殺してくれ。」
俺は悲しみの余り一瞬、口を押さえる。
そして暫く考え、両手を上げた。
「くらえっ! 『微妙にポンコツ美少女』TSビーム!」
「ぐわわわわわわっ!!」
バリバリバリと手から放たれた雷光をくらい、痙攣、発光する男。
場が落ち着くと、なんか不思議と少し抜けた感じのする美少女へと姿を変えていた。
「その姿なら、笑えないレベルの失敗をしたとしても男だったら苦笑いしつつも許してくれるし、逆になんか守ってあげなきゃ感も出てくるから、とりあえず普通に生活しながら美少女になった事に慣れつつ幸せを探して生きてゆくが良い。きっと幸せになれる。」
「ふぇっ?」
「きゃわいいっ! んもうっ! 次っ!」
--*--*--
「この者の罪状は?」
「こやつは、なんと役人という権力を使い、貴重な女を手籠めにしていた悪人です。」
「んっ! 詳細は?」
「はっ!! こやつは徴税の役職を持っており、その担当区域の女に対しては身体を提供させることで便宜を図ってやると言いくるめ、良い思いをしておったとのこと! 誠に! 誠にけしからぬ輩にございますっ!」
「被害にあった女性たちは、さぞ辛い思いをされたことだろう……どのような女性たちであったのか。」
「被害者は『近所の憧れのお姉さん』と子供から絶大な人気を誇るアンヌさんと、『ちょっと小じわが目立ち始めたけど、大きなお尻がたまらない』と商店街の人たちに人気のカルラさんの二名に集中していたとのこと!」
「けしからん! 罪人よ。何か思うことはあるかっ!?」
猿ぐつわを外された男は、静かに、だがしっかりと答えた。
「我が生涯に一片の悔いなし。」
「でしょうねっ!」
即座に両手を掲げビームを放つ。
「くらえっ! 『強気の癖にチョロザコ美女』TSビーム!」
「ぐわわわわわわっ!!」
バリバリバリと手から放たれた雷光をくらい、痙攣、発光し、メリハリボディの八頭身美女へと姿が変わる。
「フフフっ、こんな美人になったらやりたい放題できるじゃないの。ありがと。」
「どうやってもアへ顔晒す未来しか見えないけど娼館で頑張れ!」
こうして様々なTSビームを活用し世界を少しづつを救済してゆくのだった。
救世主の戦いはこれからだっ!
特に続かない。