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自由奔放なキメラ達  作者: 日和見兎
75/81

75、いざ森へ(何回目?)

 結局のところ、クロロも手探りだったのだ。変な世界に来たと思えば、生存競争に強制参加させられ、砦の賊に捕まり人を殺した。ようやく解放されたかと思いきや、死体まみれの職場と借金地獄。考えることが多いためクロロはアルルカのことを考えてやれなかった。



「俺は、アルルカのためにってそう言い訳してるんだ」

「…」

「アルルカのせいにしてた。俺がこんなことになってるのは自分に出来もしないことをしてるからだって」

「…」

「だけど、そう、だよな。本人の気持ちも聞かないで何やってるんだろうな」

「…」

「ごめんな。色々勝手に行動して…アルルカは俺の身勝手に振り回されて辛かったよな」



 

 クロロは自分で言っていて涙が出てくる。何をしていたのだろうかと。魔獣を食って、人を殺して、その結果借金を背負い、命が幾つ有っても足りない状況に追い込まれている。アルルカはそんなクロロに振り回されて困らされている。クロロは自分のことが心底嫌になってしまった。




「本当…ごめんな。俺なんかの近くにいてくれてありがとう」




 クロロは諦めたように目を伏せるとアルルカが頭を撫でる。ゆっくりクロロがアルルカを見れば彼女は怒ったままだった。




「どうでもいい」

「…?」

「クロロが私をどう思ってるかとか、クロロ自身が自分のことをどれだけ嫌いかとかは全部どうでもいい」

「アルルカ?」



 それはクロロの話全てに意味は無いと言っており、そもそも話などではなかったことをクロロは知った。



「私はクロロに死んでほしくない。隣に居て欲しい。アンクロと3人でずっと居たい。そこに二人の気持ちとか感情は考慮してない」



 クロロとアンクロの気持ちなど、自分にはどうでもいいと言っているアルルカに対してクロロはただ聞き入っていた。



「主従関係は私達に無いけど、有るなら言う。行くな、全部壊れてもいいから私達と居て」



 アルルカはアンクロを抱きかかえるとクロロに寄りかかる。小さい体に似合わない力強い意志にクロロは黙る。ただの小心者であるクロロにはアルルカは強すぎた。



「…ごめんな」



 クロロはアルルカを離すと荷物を持ち、扉を開ける。外ではシールドが待っていた。



「嫌いなるのも仕方ないし、顔も見たくないのならそれを否定しないけど、行ってくる」

「…うん」

『貴方は色々と失格ですね』



 クロロは部屋の中を見回すと射抜くような視線のアンクロと、諦めたのか悲しい表情をするアルルカ、そして手を振るスフィアが見えた。



「じゃあな」

「…バイバイ」

『消えなさい。自分の意志を持つ奴隷など必要ありません』




 クロロは自身の荷物とミミを持って部屋を出て行った。












 クロロが出ていった後、しばらくして死神はニヤニヤしながらアルルカに近づいた。


「うーん、君はアレの人質のために生かしてたんだけど、用済みだったりする?」

「さあ?」

『あの男は誰かにのめり込む様な性格をしていなかったというだけしょう。熱が入るのも早ければ冷めるのも早い。いい加減な存在です』




 クロロは帰ってくると言わなかった。アルルカの気持ちを受け止めなかった。自分の役割を放棄した。結果どうなるか分かっていてもクロロは無視したのだ。



「まあ借金を作らせたのは僕だけど、その結果関係に亀裂入れちゃったかなー、あはは」



 死神の言葉に二人は返さない。ただの独り言になったので、死神は不満気になる。



「別に元々こんな感じの関係だった。私が我儘で続けてただけ」

『あの蜥蜴は私達と一緒にいることに疑問を持っていましたからね』

「結構ドライな関係なんだねー」



 正直に言えば未だにアルルカは後悔しているが、自己中心的なクロロにはどう行動しても無駄であると理解しているため、こういう結果も仕方ないと思っていた。



「私の体、好きに使っていい。特に役に立つことはないけど」

『アルルカ様…』

「覚悟が決まってるんだね。まあでも、僕も別に君達をどうこうしたいとかはないんだよね。牢屋送りするのも面倒くさいし…放置かな!」



 どの世界でもだが、子供が一人で生きていくことは普通出来ないため、放置は死刑を意味する。



「とりあえず僕はアレの様子を見てこよー。面白くなるといいなー」



 スフィアは声を弾ませながら消えた。アンクロはアルルカを見つめた。しばらく経って、アルルカは泣き出した。



「行かないで、よ。嫌だ、嫌だよ。離れ、ないで、欲しい、よ」




 クロロが居ないということが改めて分かったアルルカはアンクロを抱きしめて蹲った。泣いている中出てくるのは後悔の声。



「なんで、なんで、なんで!」



 次々と自身がどうすれば良かったのか考えが過ぎる。行くのを止めなければよかったのか、泣きつけばよかったのか、力一杯離さないようにしがみ付けばよかったのか。答えは一つではないため分からない。




「そんなに、難しいこと、なの?一緒に居て欲しいだけ、なのに…」

『…アルルカ様はどうしたいのですか?』

「待つ。待つに決まってる。何時間、何日…」

『アルルカ様?』

「待つのは嫌。自分で見つける。もう、こんなの耐えられない」




 アルルカの目には揺らがない覚悟が宿っていた。子供が親に催促や駄々を捏ねるのはよくあることだ。アルルカもそういった子供の一人である。だが、クロロは親ではないし、アンクロは親というほどの関心をアルルカに持っていない。そんな二人を繋ぎ止める方法はこのままでは生まれない。それをアルルカは理解した。




「強くなりたい、お金が欲しい、綺麗になりたい。もっと…二人が一緒にいたいと思えるような…」




 アルルカの頭脳は10代にいかない子供とは思えないほど発達している。だからこそ、この状況を打開する案を必死に考える。



『はあ…なぜ来てくれないのですか…主』



 アンクロはため息を吐くとアルルカの独白を聞きながら外を眺めた。砦の時と同じような薄暗く、気味の悪い夜だった。









「え?」



 クロロがシールドに案内されて連れてこられたのは町長の屋敷だった。直ぐに森へ行くものと思っていたクロロは少し動揺した。頭の中には先程のアルルカとの決別のような会話が残っている。だが、今はそれよりも必要なことがあるのだ。クロロは意志を固く持ち屋敷へと入った。



「花粉をなんとかしないとアルルカにも危険だからな…」



 説明出来なかったのは悔やまれるが、言えばアンクロが町ごと吹き飛ばす可能性があるため、クロロが行くのが一番穏便なのだ。それを二人は知らない。




「それでは行きましょう」




 町長は身支度を整えており、屋敷に入ったクロロを出迎えると護衛のシールドとヒットを伴って森へと向かう。町長にしか出来ないことがあるため、本人が森に向かう必要があるとのことだ。よってそれまで、クロロにはシールドとヒットと共に町長を護衛するという役目が発生する。



「こちらです」



 ヒットが町長達を連れてやって来たのは地下室だった。殺風景で地味な倉庫のように見える地下室、そこの何もない壁の一部分を押すと、鍵が外れて新しい扉が生まれた。



「隠し扉ですか?」

「はい、町の外まで続いています」

「いかにもいかにも」

「キメラ様、今、門の前には自警団や衛兵達がが逃げようとする者がいないか監視の目を光らせて待ち構えています。話せば通してくれるかもしれませんが、絶対に不味いことになります」

「ああ、それでこっそりと」




 もし町長達が森に向かったことが知れ渡れば勘違いをした人々により暴動が起こってしまう可能性がある。それを避けるためにこうして町長達は隠密行動をするしかなかった。



「屋敷のことは大丈夫ですか?」

「問題ない。クロロ様がお越しになる前に指示を出しておいたので、時期に落ち着くはず・・・だが、私が自ら出る必要があるかもしれない。早く終わらせるとしよう」



 シールドの質問に町長は簡潔に答えると、ヒットの案内で隠し通路を走る。時間の余裕などないため歩くわけにはいかない。暗い道には所々に明かりが設置されておりそれを頼りに走り続ける。クロロはこの道が町の外まであると考えた時、距離が長いため、直ぐには出口に着かないだろうと思った。なので、今の内に聞いておきたいことを尋ねておくことにした。



「他にも参加者がいたのでは?その方々はどこに?」

「彼らは先に森に向かわれました。助けは要らない、自分たちでケジメを着けたいと言っておられましたが、心当たりはありますか?」

「あるわけないでしょう」



 クロロよりも先に準備が出来ていたからか、町長達が止めても勝手に向かったようだった。出来れば足並みを揃えたいと思ったが、別行動をとりたいと言ったのはクロロであるため仕方ないことだった。



「ケジメ・・・何の?」



 クロロは事前に、紅鬼と鬼玖乃がこの事件の犯人を追っていたことを知ってはいたが、その理由までは知らなかった。自分たちでどうしても片づけたい理由があるのかクロロは考えたが、思いつかなかった。



「知られたくないことでもあったのでは?」

「町長は聞いていなかったんですか?」

「それだけは喋りたくないそうです。ただ、敵が森にいることだけ聞くと後は自分たちでやるから任せてほしいと・・・」

「それで、私に依頼を?」

「はい」



 段々と町長の息が上がってきたため、クロロは話を中断する。つまり、二人に任せるのは不安だったためクロロという最後の手段を使うことにしたのだろうと推測した。どうしてそこまで他人に知られたくないのかは考えることをやめた。どちらにしろ、直ぐに相対するからだ。




(今の所、花粉は消えていないし、神隠しも起きている。ならあの二人は・・・口だけじゃないと思いたいな)



 酷い言い方だが、見栄を張った結果何も変わらないのなら意味がないため、クロロとしては二人が何故敵のことを秘密にしようとするかは理解出来なかった。効率を考えれば使えるものは何でも使う方が自分たちの被害は少なくなるはずである。砦での大量殺戮を引き起こしたクロロには大切な部分が欠けていた。



「そろそろです」



 ヒットの言葉でクロロは目の前のことに集中するために迷いを消す。怖いだとかの負の感情は後で来ると分かっているため構えておく必要がある。終点に着くと、設置された階段を上り、扉を押す。外気の生暖かい風はクロロの体を震わせた。




 扉の外に出たクロロ達の目の前には森が広がっていた。振り返ると、遠くの方に壁が見えるため壁の上で見張りをしていたとしてもクロロ達に気づくことは出来ないだろうと思われた。




「いよいよか」



 町長は額の汗をハンカチで拭うと堂々と森に入っていく。入る際、シールドとヒットはそれぞれの得物を構えて町長を守るように随行する。クロロも一先ずその後ろを付いていった。



「そろそろでは?」

「そうだな」

「皆さん気を付けていきましょう」



 シールドの言葉で町長は懐から何かの動物の爪で作られたペンダントを取り出し、それを首にかける。



「それはなんですか?」

「私がここに直接行かなければならない理由です」



  オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ



「「「「!?」」」」



 突如森に魔獣の咆哮が響く。クロロは魔獣の咆哮に良いイメージがないため、この叫びの意味を理解してしまった。




「不味い」




 そうクロロが言うと、シールドとヒットも武器を構える。枝を踏みつける音が前方から近づき、それを行う複数の生物が迫っていた。




「これは、仲間を呼ぶ叫びです」



 






 

大衆向けは目指してないのでご注意ください

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