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自由奔放なキメラ達  作者: 日和見兎
33/81

33.シスとラザー

 森の外から子供という商品を商人が選定するために作られた、開放的で大型な檻の中で子供ではない者が周りに目を光らせていた。最近商品として捕まったシスとラザーだ。彼らがあえて捕まっている理由は主に二つ。一つは盗賊達の拠点の位置を討伐隊に知らせる役割。もう一つは砦の責任者、つまりテイムの捕縛だった。流石に伝書鳩などを飛ばすわけにもいかないため、運ばれる途中に木々や地面に少しばかり細工をするぐらいしか出来なかったが、魔獣達に察知されずに砦の場所を報告出来ていると二人は考えていた。


(頼むぞ・・・あの人に鍛えられた斥候なら私の撒いた粉に気づくはずだ)


 シスが祈りにも似た状態で考えこんでいると、隣にいる弟のラザーがツンツンと肩をつつく。


「姉さん、部隊の皆を信じよう。それより今はここの責任者の確保をどうするかだよ」


「相変わらず話してもいないのに考えを読むのかラザー」


「当たり前だよ。何年姉弟していると思うの?」


 そんな姉弟の会話を細々としていると檻の真ん中に位置する場所で子供が数人集まって話し合っていた。


「だからやろう!」


「いや、でも・・・」


「そうだな、早くしないといつ出荷されるか分からない、急ごう」


 そのグループの会話を聞きながらシスは自分たちを監視しているだろう盗賊の方を見る。だが、盗賊は欠伸をして腹を掻いていた。檻の中では基本的に何をしようと子供の勝手であり、常に目を光らせることなど無かった。テイムも、子供に何が出来るのかと思っており、魔獣による監視も手薄だった。シスは思うところがあるのか話しこんでいるグループに近づいた。


「何を話しているんだ?」


「姉さん・・・」


 シスの方をグループの子供たちは見ると、お互いに顔を見合う。どうするか悩んでいるようだった。


「何って・・・脱出のことだよ」


 グループのリーダー格のような子供が代表で話す。脱出と聞いてシスは真剣な顔をするとずいっと近づいた。


「脱出できるのか?」


「あ、ああ。大丈夫だ上手くいく!」


「根拠は?」


「今まで、檻から出されてあいつらからひどい目にあいながらもしっかりと情報収集した。だから大丈夫だ」


 全く安心感が沸かない話だった。酷い目にあった子供から集めたのだから情報の信憑性はあるのだろうが子供だけでは限界がある。あまり先のことまで考えていないのかもしれないとシスは思った。


「どうやってする?言ってみろ」


「あん?」


「ちょ、ちょっと姉さん」


 ラザーは慌ててシスを止めようとする。現地の人との関係は最低限にしろという指示であり、シスのやっていることは命令違反に等しかった。


「どうって・・・看守を檻に入れて俺たちでタコ殴りにして、隠れながら砦を出る・・・だが?」


 シスは眼を見開くと大きくため息を吐く。楽観的な考え、作戦といえない作戦、外の世界を知らない世間知らず。全てにおいて間違っていた。


「はあ・・・無理だ。諦めろ」


「な、なんだと!?」


 大きな声で叫んだため、代表格はハッとして看守の方を見る。看守が寝ているのを見てホッと息を吐くと座り直した。


「いきなりなんだよ。諦めろとか」


「まんまだ。はっきり言おうか。加担した者が獣の餌にされて終わりだ」


 獣の餌と聞いてグループの全員が青い顔をする。悲鳴を上げて食べられる人々を見てきたからだ。大人ですら刺激が強すぎるのに、子供が見ればトラウマだった。それが自分たちに降りかかると言われれば怖気づかないわけない。



「俺、抜けようかな・・・」

「おい!」

「第一、信用できるのか?」

「・・・?」

「情報を貰った子供から騙されている、もしくは罠だとは思わないのか?」

「なんで騙す必要がある?」

「ただの推測だが、私達が捕らわれた時、親子で捕まった者も多い。人質に取られて君のように脱出を企む者を報告しろと言われているかもしれないぞ?」


 代表格だけでなく、グループのメンバーや周りで聞き耳を立てていた子供たちもハッとして近くの子供を見る。その可能性にようやく気付いたのだ。裏切者がいても可笑しくないのだと。


「今のところ君たちに何も起きていないのは行動を起こすのを待っているからかもしれないぞ?迂闊な行動は自ら獣の口に入りにいっているようなものだ。気を付けたほうがいい」

「・・・」

「・・・」

「・・・はい」


 散々に言われて沈んだグループからシスは離れようとする。そんな彼女を怒った表情をしたラザーが出迎えた。


「姉さん!」

「・・・すまない。癖で」



 少し顔を綻ばせるとシスは頬をかく。ラザーは溜息を吐くとジト目で注意した。



「次は注意して・・・・いや、もう慣れたよ」

「世話になるなぁ」

「ふふ、姉さんがしっかりしないからでしょ?」







 シスとラザーがテイム捕獲作戦の立案をしていると、グループの代表格だった子供が近づく。子供はシスとラザーの前まで来て座ると、話始めた。


「この前はありがとうな。注意してくれたおかげで頭が冷えた」


「あのくらいなんてことない」


「それで・・・実は言って置きたいことがあって」


 代表格は顔を近づけると、周りを見回す。内緒話がしたいのだと分かり、シスとラザーも顔を近づけた。


「この前の話で言ってたよな。裏切者がいるかもって」


「ああ、そうだな」


「実は一人、心当たりがあるんだよ」


 代表格はある方向に小さく指さす。その方向を見ると、檻の角の方でちょこんと小さく座っている子供がいた。


「あの子が?」


「ああ、アルルカっているんだけど。結構長いことここにいるんだよ。時々、黒い蜥蜴人が檻の外に連れていくんだけどもしかしたらその時に・・・」


「根拠は?」


「以前、盗賊の一人があいつを外に連れて行こうとした時、怪我をさせてさ。その時、その蜥蜴人が怪我させた盗賊を半殺しにしたんだよ。それで、その後蜥蜴人が他の盗賊と話している時さ、なんだかその・・・あいつに対して愛情みたいなのがあるように感じてさ」


 黒い蜥蜴人と聞いて、シスは自分たちの馬車を襲った者のことだと思った。普通の蜥蜴人と少し体や顔の形が違っていたため印象に残っていた。


「いや、でもそれだけだと根拠には・・・」


 ラザーの言葉も最もであり、いくら愛情のようなものを感じるとはいってもそれはお気に入りだからという線もあるため、どういった感情があるのか実際には分からない。代表格は頭を掻くと悩む。


「そうだけど・・・あいつ、その蜥蜴人に連れていかれても特に怪我してないから少し怪しくてさ。盗賊に連れていかれた奴らは泣いた顔だったり死んだ目をして帰ってくるのにあいつだけそういうのが見えないから気になったんだよ」


 アルルカは頭にニット帽のようなものを被っており、腕や足には血が付いた包帯が巻かれていた。だが、傷の多さにしては痛みをあまり感じていないようにも見えた。


「なるほど・・・分かった、注意してみよう」


 檻の中は以前シスが言ったことによって疑心暗鬼になっており、孤立した者ばかりになっていた。実は、アルルカに目をつけているのはシスやラザー達だけでなく、他にも数人はアルルカを怪しんでいた。アルルカは何か隠し事がある、そうシスが思っているとそれは突然起きた。







『ギャアアアアアアアアアアアアアオオオォォォ!!!』






 子供、シスとラザー、寝ていた盗賊、全員がその地面を揺らすほどの轟き声に体を跳ねる。寝ていた盗賊などは椅子から転がり落ちていた。


「な、なんだ!?」


 盗賊が急いで外の様子を見に出た。檻の中では怯えてしまい、疑心暗鬼になっていたのも忘れて互いを支えあっている子供がほとんどだった。そんな中、シスとラザーはお互いに顔を見合わすと思っていたことを伝え合う。


「「異常事態」」


 任務中何度も起こった急展開だった。




 外の様子を見に行った盗賊は、そのまま仲間に呼び出されどこかに行った。檻の中はパニックになりかけており、頭を抱えて地面にうつ伏せになり何度も何かに謝罪している子供も現れていた。


「どうする姉さん」


「一先ず外に出なければ状況を確認できないな」


 檻の中では何も出来ないが、出てもよいのか判断が難しい。そうして悩んでいると、その存在は現れた。


「おい、生きてるか商品ども」


 檻の前に黒い鱗の蜥蜴人が現れた。


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