2 僕と親友の話
北の辺境ーー魔族との国境に広がるマキ大森林
通称〈暗やみ森〉周辺の広大な土地を代々治めるウォード侯爵家
それが僕 アルフレッド・ウォードあと1週間で10才の家でもある
王族に次いでこのハートラン国で1、2を争う正真正銘の大貴族ーーらしいけど正直よくわからない
王都からは離れすぎていたし他家との交流すらまれだった
宰相補佐のお父様は基本的に王都住まいでたまのお休みになると帰ってきた
なんでもあちらにはお父様の愛妾がいて会ったことないけど1つ下の妹がいるってお母様に教えてもらったことがある
(12才になったら僕も王都の学校に行かなくてはならないからそのとき会えるかな可愛い子だといいな)
お祖父様もお母様も社交シーズンにはちゃんと王様や他家にご挨拶や交流に出掛ける
お母様はそのままお父様の住む侯爵家のタウンハウスに滞在してシーズン終わりまでは戻ってはこない
毎年その時期が近づくとメイドさん達は誰がお母様と一緒に王都に行けるのかそわそわしながらどこそこを見物したいとかお菓子が美味しいお店やきれいな帽子屋でお買い物!等々をうっとりした目でおしゃべりしては女中頭に睨まれてる
うん 楽しそうでなにより
でもお祖父様はーーー本当にそれだけ済ませるといつもさっさとこの北の屋敷に帰ってくるのだ
「都会はどうもね 私には合わないよ」
僕はまだ此処しか知らないけど此処が格別にいいところだっていうのはわかる
空気はいつだって澄み切っていたし
屋敷の広々とした庭園は腕のいい庭師が季節ごとのきれいな花々を咲かせていつもいい匂いがした
屋敷の裏手に広がっている暗やみ森だって
余程奥にさえ行かなければ迷う事もない
きらきらした日差しを受けながら緑の濃い木々が生い茂って動物達の良い住処になっている
森のきれいな小川で庭師の息子で同じ年の親友の
オスカーと遊ぶのは最高に楽しい
ローレンス先生が初めて屋敷を訪れたとき
僕がオスカーと一緒に遊びまわるのを見て
ただでさえ厳しい顔つきの先生がさらに眉の間をうんと狭くしてお祖父様に彼との付き合いをやめるよう注意して欲しいと言ったそうだ
お祖父様は笑いながら でもキッパリと
子供には同じ年頃の友人が必要だよ
貴族の子供が側に居たらよかったのかもしれない
がまあここには居ないしね
と返した
オスカーにこの話を聞かせると彼はニヤッとして
「先生が言ってることは真っ当だな お前の家は
ーー旦那様は貴族の中でも相当な変わり者の方だと思う
普通の貴族は大事な若君を雇い人の子供なんかと魔物が出るかもしれない森で遊ばせやしないさ」
「森の魔物なんか御伽噺みたいな大昔の話じゃないか
西の砦では国境越えの迷いがたまに出るらしいけど……じゃなくて!だったら普通の貴族の子供は誰と遊ぶんだろう?」
「そりゃ貴族の子同士なんじゃないか」
「それ絶対?決まり事なのかな ??ああよかったー周りに貴族の子供居なくて」
一瞬間があいた
何だ?
「…お前だってと国都の学校に行くようになれば自然にそういった友達が出来るさ」
「オスカーも一緒に行ければいいのになあ 僕なんかより
ずっと勉強出来るのに」
そういうと彼は僕を見て肩をすくめて両手を開いた
ーー冗談じゃないんだけどな
彼は僕が物心ついた頃から一緒の幼馴染で自慢の親友だ
村の子供達が通っているらしい学校の成績はいつも1番で
ローレンス先生に出された僕の宿題もこっそり手伝ってもらったこともある
……速攻でバレました
でもそれからは先生は節度は守りなさいと注意はするけど
オスカーと付き合うなとは言ってこなくなった
同じ年なのに僕より頭ひとつ背が高くて
なんていうかちょっと年上・・・大人っぽい?
金色の髪をいつもひとつ括りにして
目はお母様が持ってる一番大きな宝石みたいな
きれいなグリーン
村の女の子達にもすごくモテる
そうなるとやっかむ輩も居るワケで当然のように
言いがかりをつけられるけど
それすら適当にあしらってしうほど口も腕っ節もたつ
うーん欠点が無い 凄いぞ僕の親友
「特別に優秀なら貴族じゃなくても入学できるって聞いたよだから」
「特別に優秀じゃない 田舎の学校で他よりちょっと出来る程度だ 」
食い気味に遮られ
知らない処に1人で行くのが心細いのか?と
笑われた
でもこの事は僕は本気でお祖父様に話してみようと
密かに考えている
特別枠の試験だけでも受けられるようになるかもしれない
べ、別に僕が心細いとかじゃないから!
うん絶対違うから!!