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仁義なき異世界転生 ~勇者マサヨシの任侠伝~  作者: 風来坊 章
第四章 頂上作戦 
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第95話 継承盃

 ヤミーは激怒しながら、オークデーモンの吹っ飛んだ方向へ歩みだす。

 必殺の金棒を、豚の悪魔に頭上に振り下ろすために。


「おい、ちんちくりん! 忘れてねえか? あの豚野郎を始末するめえに、やる事あるだろう!」


 マサヨシがヤミーに声を掛けると、闇に包まれた上空に巨大な魔法陣が浮かび上がり、マサヨシの体と、魔神パズズの体が、無間地獄の空間に引きずり込まれた。


「ブヒ! いかにあの最強のベリアル総監とはいえ、魔神様達より頂いたこの力で! 全世界が破壊される前に、この世界全部の女共をくっころさせてやるブヒ!」


 オークデーモンの体が上空100メートルまで浮遊し、地面の砂を砂鉄に変えて取り込み始め、大邪神の姿を模した、全長100メートルの巨大な機械の体になり、足からホバーのように風と炎の魔力で宙に浮く。


「ぶひひひひひひ、くろがねの魔神、メカオークデーモンブヒ! あの生意気な小僧、今度こそぶっ殺してやるブヒよおおおお」


 オークデーモンの背中から、炎の効果を持つ追尾型の鉄の棒が何百と、ミサイルのように発射された。


 しかしエルフのブロンドが、ミサイルを魔法の矢で撃ち落とす。

 彼が持つ弓は、エルフが持つと凶悪な威力を持つコンパウンドボウ。

 そしてその矢は、風の精霊で強化されたカーボン、グラスファイバーの矢。

 一度に5本束にするように、魔法で手のひらに具現化し、目にもとまらぬ速さで撃ち出す。


「おお! 巨大ロボっぽいのが現れたのだ! こいつと遊ぶのだ!」 


 ベリアルは空高く跳躍し、巨大な機械の体に、目にも止まらに速さで飛び回る。

 すると、オークデーモンは全身から、周囲を焼き尽くすような炎の熱線を繰り出した。


「わお、拡散ビーム砲なのだ! スーパーロボットなのだ! とう!」


 ベリアルは笑いながら、巨大化したオークデーモンの機械の頭部に飛び蹴りをくらわす。

 そして、空中でオークデーモンの頭部を両足で踏みつけるように蹴りまくる。


「あああああたたたたたたたたた、ベリアル百裂脚!」


 オークデーモンの巨大な体が空中から地面につき、めり込み始める。


「ぶひいいいいいいい、体が動かぬ! こうなればメガオーク砲であのニコとか言う小僧を、吹き飛ばして……」


 オークデーモンの腹部から、巨大な大砲が出てきた瞬間、ブロンドが弓矢を射る。

 背中に背負った弓袋から放たれた矢は、アダマンタイトで形成されていた。

 分厚い金属も貫通する、鎧通しの鏃に、風の精霊魔法を加えた必殺の一撃。

 巨大化したオークデーモンの腹部が大爆発を起こす。


 そしてニコが天高く刀を掲げた。

 風と水の分子を魔力で激しく摩擦し、上空で雷雲が形成されていく。


「ハッ!? その魔法は! い、いやだ、高圧電流はもうこりごりブヒいいい!」


 マサヨシが切り札としていた、雷の魔法。

 天空神ゼウスの電撃を受けたことで使用できるようになった、神の一撃。

 ニコは天界より得た魔力を極限まで高める。


神雷(デイン)


 オークデーモンの機械化した頭部めがけて、巨大な稲妻が放たれた。


 その一撃は、オークデーモンの機械の体を打ち抜き、大爆発を起こす。


 そして、オークデーモンの首だけが吹き飛ばされ、地面に転がった。


「死ぬかと思ったブヒ。あやうく俺が、くっ、殺せとか無様なセリフをあの小僧に……」


 ホッと息をついたオークデーモンに、砂ぼこりをあげる女性用の足袋が視界に入る。

 見上げるとそこには、にやりと口角を歪めたヤミーの姿。


「豚め、約束通り、我の得物をぶち込んでクッころさせてやるわい」


 ヤミーは天高く、手に持った金棒を掲げる。

 そして金棒をオークデーモンの頭に振り下ろした。


「ぎゃあああああああああ、くっころぶひいいいいいい」


 金属音が幾度も鳴り響き、オークデーモンの悲鳴が周囲に響きわたった。



 そして、無間地獄の闇の中で、魔神パズズがマサヨシを見据える。

 この空間の中、平然としている人間の彼を訝しんで。


「なるほど、貴様はこの魔神のワシを、貴様もろとも暗黒空間で封じることで勝利する気……」


「何勘違いしてんだクズ野郎」


 マサヨシが着ている着物を、脱いで上半身裸になる。

 すると、まばゆい光と共に背中に阿修羅の入れ墨が入り、姿が変容する。

 背中に腕が四本生え、瞳は燃える漆黒の炎のように、肌は褐色に、そして髪の毛が逆立った。

 纏うオーラは青白く噴出し、背中には太陽の7色の光がきらめく。

 そして名だたる神々や大魔王達を超える、膨大な魔力が噴出する。


「なあ!? き、貴様は! 人間じゃない……まさか貴様!」


「ああ、これか? 俺はよお、太古の昔からおめえら魔神野郎をぶちのめし回った、正義の味方、阿修羅マン様よ! アルティメット・阿修羅バスターとかくらわすぞこの野郎」


 マサヨシは、昔自分の組事務所に全巻揃えていた漫画のキャラクターを思い出し、笑う。


 そして右手に刀、左手にピストルを持ち、背中に生えた4本の手の指をポキポキ鳴らす。


「さあ、魔神野郎。俺の背中の阿修羅の名にかけて、今までのテメーの罪を裁いてやる!」


 マサヨシは、神と悪魔と人の心を持つ、最強のアースラの力で、魔神パズズに瞬時に間合いを詰め、切り込むと、パズズは体を砂に変容し、熱風と共に、マサヨシを高温の光で包み込んだ。


「かゆいんだよ! 砂風呂みてえに、すさんだ俺の体と心を癒せってんだボケ!」


 マサヨシは、アバドンに放った太陽の光の矢を数億ほど具現化して、砂と化したパズズに打ち込むも、その砂粒は、10の48乗、極と呼ばれる膨大な砂粒。


 そして体が具現化すると、様々な姿に体を変え、一粒一粒が発熱して、マサヨシの斬撃や銃撃の攻撃を一方的に回避し、逆にマサヨシの体にダメージを蓄積する。


「いかに貴様が、闘神の力を持とうとも、ワシの実態は意思を持つ砂粒と悪意! アバドンのような虫と一緒にされては困るわ!」


 パズズは変幻自在に姿を変え、毒性を極限まで高めたサソリの尾で、マサヨシの体を貫く。

 そして、魂すらも苦痛で溶け出し、発狂して消滅するような毒が流れ込んだ。


「どうだ! この毒は幾多の神々と、文明を葬った、苦痛によって魂を消滅させる毒、屠毒消滅(パニッシュベノム)! いかに貴様が強大な強さをもってしても……」


 マサヨシは、4本の腕でパズズのサソリの尾を引きちぎる。

 そして、嘲笑の笑みをパズズに向けた。


「なんなんだ? 今のは。てめー俺の根性をなめてんのかコラ?」


 冥界の試練により、幾多の地獄を潜り抜けたマサヨシの魂には、効果が無い毒。


 そしてマサヨシの怒りのオーラが一気に噴出する。

 魔神が恐怖するような、灼熱の太陽のオーラ。


「ま、待て! き、貴様はもしや、あの伝説の闘神、アースラ……」


「うるせえ! 俺はてめえらを、消滅させるために生まれ変わったマサヨシ様よ! 封印なんてぬるい事しねえで、てめえを消滅させてやるぜ!」


 マサヨシは、ピストルと剣を帯に挿し、6本の腕の手首を組み合わせて、神界と魔界の魔力を極限まで上昇させ、砂の体のパズズに、まばゆい光と共に修復不能な魔法を繰り出そうとした。


「この魔力!? 貴様、やめろ! やめてくれ! ワシが悪かった許して……」


氣炎萬丈(ザバルダストアグーニ)


 恒星の炎の力を超えた、極高温の真っ青な炎がパズズの砂粒の体を焼き尽くす。

 その温度、1兆度を遥かに超える全てを焼き尽くす極高温。


「ぬああああああああああああああああああ」


 あまりの高温で、パズズは砂粒まるごと、ガラス状に硬化する。

 そして、マサヨシは帯から刀を抜き、刀は漆黒の木刀へと姿を変えた。


「あばよ、砂野郎。一撃必殺の太刀筋とは二の太刀いらずの必殺の一撃、絶技、蜻蜓(ヤンマ)斬り」


 マサヨシは、木刀を両手持ちして、天に向かって突き上げ、腰を低く落として木刀を振り下ろす、必殺の一撃を加えた。


 すると、ガラス状になったパズズは、粉々になって砕け散る。


 魔神パズズは、完全に絶命した。


「よう、ヤミー、終わったぜ」


 無間地獄からマサヨシの体が、仁義なき世界へと戻る。


 大魔王軍の前哨戦は、相談役となったマサヨシ含む二代目極悪組の勝利に終わった。

 オークデーモンは、アスモデウスがヤミーに頭を下げ、助命へと相成った。


「頼む女神よ、勇者たちよ、こんな馬鹿でも私の部下、どうか怒りを沈めたまえ」


 魔王軍の元帥だったプライドを捨て去り、頭を下げる元上司の姿に、オークデーモンは機械の体ながら涙を流して、アスモデウスに再び忠誠を誓う。


 大魔王軍が敗走したため、英雄ロン・ブラフン・チャイ・チャイーノが、皇帝へと返り咲き、人間牧場と化した皇国民が解放され、アスモデウス配下の悪魔と、ドワーフ達により、首都の復興が進み始めていた。



 そして、多くの悪魔達や人間達が見守る中、極悪組の継承盃が行われようとしている。

 場所は、東の大陸の都市区画の、極悪組仮事務所で、神前には閻魔大王の名を冠した2尺×6尺の大きさの半紙が掲げられ、捧げものが飾り付けられていた。


 司会兼見届け人は、マサヨシの舎弟であるコルレド。

 承認及び、盃の口上読みは、総裁女神ヤミー。


「おい、神様よお、今回の口上は短いからよ、またかみかみだったら、さすがの俺も怒るからな」 


「わかっとるわい!」


 マサヨシとヤミーが、最後の打ち合わせをしていた。


 そして、極悪組の面々が席に着く。

 マサヨシは神前の左側、ニコが右側へと正座し、後ろには名前が書かれた半紙が掲げられている。


 継承盃とは、代替わりに行う、極道組織にとって重要な盃事。

 司会のコルレドが、極悪組の面々に頭を下げる。 


「あたくし、本日のおめでたい式典の、式事進行役をさせていただきやす、勇者マサヨシの舎弟、コルレドと申しやす、よろしくお願い申し上げやす。なにぶん未熟者でございやして、口上間違えることありやしたら、ご勘弁願いやす。それでは、媒酌人チャイ皇国皇帝、ロン・ブラフン・チャイ・チャイーノ陛下のご挨拶により、式典に入らさせていただきやす、どうぞ陛下」


 金の竜の刺繍を入れ、真っ赤な着物を着た、ロンが姿を現す。

 マサヨシと目が合うと、うなずいて笑みを浮かべた。


「この度は、極悪組初代、勇者マサヨシ殿のご尽力により、我が皇国は救済され、民たちの笑顔が戻り、誠に感謝御礼申し上げる。式典に先立ち、二代目を継承する、ニコ・マサト・ササキ殿には、これからも任侠道を邁進し、世界救済の救世主としてのお活躍を期待し、祝いの言葉とさせていただく」


 挨拶が終わり、ロンはマサヨシとニコに頭を深々と下げた。

 エルフの乙女たちが、雅楽のような笛の音色を奏でる。


「それでは、我々の世界救済のため、ご尽力をくださる、神前の閻魔大王様に、二礼一拍を持って、参拝のご挨拶を、お願いします」


 媒酌人のロンの言葉に、全員が神前に向き直り、二回頭を下げて一拍手拍子を打つ。

 その後、白無垢の装束に着替えたアレクシアが、介添人として前世の記憶をもと、ロンと共に、盃の儀式を進行する。


 そして、ヤミーがマサヨシが直筆で書いた承認証を読み上げた。


「承認及び譲渡! ニコ・マサト・ササキ、今般を持って二代目極悪組の組長なる事を承認仕り候也! 初代極悪組、組長マサヨシ」


 ヤミーが、承認証を掲げた後、ニコのもとに譲渡書も添えて、手渡した。

 ニコは頭を下げて、継承書類を懐にしまう。

 そしてロンが、マサヨシとニコを見やり、媒酌人としての最後の口上を述べた。


「それでは、盃事が滞りなく終了した。席の交換が行われれば当代也。席次、交代!」


 マサヨシとニコが互いの席を交換した。

 

「席が替われば当代也!」 


 ロンが腹の底から気合を入れると、ドワーフ達によって名前の半紙が降ろされた。

 カレンダーの日めくりのように、引退マサヨシ、二代目ニコの名前が書かれた半紙になる。


 この瞬間、極悪組の二代目組長が正式にニコとなり、マサヨシとニコは、極悪組の面々や客分たちから皆から拍手を持って迎えられる。


「これを持ちやして、継承盃の儀は滞りなく終了いたしやした。お集りの皆様方、先代親分と二代目親分に、温かい拍手をお願いします」


 司会進行役のコルレドが口上を述べて頭を下げると、その場にいる全員からマサヨシとニコに対して、拍手が贈られた。


 マサヨシは、転生前果たせなかった、極悪組引退を、最高の形で達成できたことに感無量となり、宴会場に赴く前に人知れず膝をつき、自分の息子が救世主として二代目についたことに歓喜の涙を流し、それを見たヤミーが、そっとマサヨシの頭をなでて、継承盃は終了する。


 仁義なき世界で、任侠道を貫くために転生した、勇者マサヨシの世界救済の冒険の旅は、全ての世界を救済するための旅となり、間もなくその旅も終盤へと向かおうとしていた。

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