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仁義なき異世界転生 ~勇者マサヨシの任侠伝~  作者: 風来坊 章
第四章 頂上作戦 
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第94話 襲名

「おらおら、大魔王軍とかイキがりやがってそんなもんか、てめえらよう!」


 マサヨシは刀に風の魔力を付与して、ガスマスクと防護服で動きが鈍くなった悪魔達を、次々と空間を断裂するような魔法の斬撃で斬り倒していき、離れた悪魔達には、魔法のピストルの射撃で牽制する。


「すべての世界を滅ぼすだと? ヤクザなめやがって! 俺がてめえら滅ぼしてやるぜ!」


 マサヨシは、両手に魔力を高めた。

 前方を焼き尽くす焦熱地獄の恒星の炎の光。


「マーーーサーーーヨーーーシーーー波ぁぁぁぁぁ」


 両手の手首を合わせて手を開くと、青白いビームが発射された。

 悪魔達が、マサヨシの地獄の火炎(ヘルファイア)で消滅する。


「ま、まずいぞ部隊陣形を整えろ!」

「想定、魔将以上魔王級、こちら側も将官で対応しよう!」


 陣形を整えようとしている、大魔王軍に、天から隕石攻撃が降り注ぐ。

 密集体形になった悪魔の軍団が、隕石の一撃で吹き飛ばされた。


「ごきげんよう、大魔王軍の皆さま。私、マサヨシ様の妻である、賢者アレクシアと申します。早速ですが、あなた方には消えてもらいましょうか?」


 純白のドレスを着たアレクシアが、戦場に姿を現し、マサヨシの妻を名乗りながら、凶悪な魔法攻撃を大魔王軍に加えていった。


「よう、お姫様。踊ってくれるのかい? 俺と」


 マサヨシが、アレクシアと背中合わせに立つ。

 アレクシアが頬を染めながら、二丁拳銃になった。


「いいぜ、これが終わったら丸一日デートしてやる!」


「ああ、それは素晴らしい。それでは可及的速やかにクズ共を消滅させましょう」


 陣形を組み、魔法攻撃を繰り出そうとしている悪魔達と銃撃戦となった。

 戦場は、魔法と弾丸の雨が交差する、鉄火場へと姿を変える。


「くそ、あの人間の女、まるで躊躇が無い!」

「まるで悪魔だ、冷酷すぎる!」


 敏捷性に長けた悪魔達が、マサヨシとアレクシアの側面から攻撃しようとした。

 すると、竜巻のような大旋風が、悪魔達を吹き飛ばす。


「余のチャイ皇国と臣民をよくもやってくれたな! 余の力で消滅せよ!!」


 ドワーフの作り出した、ルーン文字を刻んでいるアダマンタイト・チタン合金製の、大型ハルバードを装備し、マサヨシがドワーフとエルフに製法を伝えた、特殊繊維とヒヒイロカネ製の真紅の甲冑「当世具足」に身を包んで、英雄ロン・ブラフン・チャイ・チャイーノが怒りの表情で戦場に現れた。


「兄弟! おめえさんどうしてここに!?」


「兄弟よ、ここは我が国、我が領土ぞ! お前だけに全てを背負わせるわけにはいかない!」


 ロンの槍術は、小細工無しの一対一の決闘なら、マサヨシの剣術を上回る力量。

 大魔王軍との戦場に、勇者、賢者、英雄の三人が揃いたつ。


 その様子を、大古の魔神パズズは、人類側の最高戦力を静かに観察する。

 パズズは、勇者の力を完全に侮って下に見ていた。

 剣技も、魔力も、身体能力も人間の限界を遥かに超えているが、魔神を倒す域には達してない。


 ここにいる、魔王未満の悪魔達を相手にするのが精一杯。


「勝てる、この戦いワシらの勝利! どけ、雑魚共! ワシが出る!!」


 マサヨシ達の前に、魔神パズズが現れた。

 ライオンの頭と腕、ワシの脚、背中に4枚の漆黒の翼とサソリの尾を持つ。

 その力は、風と炎と砂の力を自在に操る、強大な魔神の一柱。

 二メートルほどの体長を、一気に大型化して体長80メートルほどになった。


「我こそは、大古の昔より幾多の世界で悪霊、悪魔たちを束ねし文明の破壊者たる魔神パズズ! 勇者などワシの力で塵芥と化してやるわ!」


 周囲に響きわたる、禍々しい魔神の名乗りに、その場にいた者は恐怖する。

 神々ですら、打ち倒すのが困難な超次元的な存在。

 しかし、その姿と名乗りを見て、ただ一人笑みを浮かべる男がいた。


「お、世界ぶっ壊し軍の三下様がお出ましだぜ。おら、これから死ぬクソ雑魚が、せっかく恥ずかしい名乗りを上げてるんだから、周りの奴ら拍手してやれよ、おら、拍手!」


 大爆笑しながら、マサヨシは魔神に嘲笑の拍手を贈る。

 すると、獅子の顔をした魔神パズズが憤怒の表情を浮かべた。


「ぷっ、だせえ。なんだこいつ? はーはっはっはー」


 さらに、マサヨシは魔神を嘲笑し、思いっきり子馬鹿にしはじめた。

 その様子を見た、アレクシアやロンもにやりと笑い、自然に闘志と勇気が湧いてくる。


 勇者とは、ただ己に勇気を持ち合わせるものに非ず。

 誰もが恐れる困難に立ち向かい、自分のみならず周囲に勇気を与える希望の存在。

 皮肉にも前世で、暴力団、反社会勢力と呼ばれた彼がそれを体現していた。


「おら、こっちだ魔神野郎! 鬼さんこちら、手のなる方へ、ヒャーハッハッハッハア」


 マサヨシが、手を叩きながら魔神を挑発して、その場から離脱する。

 ヤミーが待つ決戦の場へ誘導するために。


「このゴミにも等しい人間があああああ、四肢を刻んだ後ありとあらゆる責め苦で、絶命させてやるわあああああああ」


 超高速で離脱するマサヨシを、4枚の漆黒の羽の力でパズズは追いかける。

 そして、その場に残されたのは賢者と英雄、そして大魔王の軍勢。


「さて、あのお馬鹿さんは、マサヨシ様に任せて、このクズ共を消しましょうか?」


「残虐王女よ、余は今までお前がしたことを忘れはせんが、今この場だけマサヨシの顔に免じて忘れてやろう、いくぞ!」


 アレクシアの凶悪な攻撃と、ロンの達人技が、大魔王の軍勢に炸裂する。


 マサヨシは、ヤミーの待つ決戦の地へと赴く。

 そこは、太陽が大邪神の闇に覆われても、かろうじて残された生命力で咲き乱れる、美しい花畑。


「ヤミー、出番だ! 魔神野郎を連れてきたぜ!」


 すると、一体の悪魔が姿を現す。

 ヤミーは、その悪魔から頭部に不意打ちを受け、意識を失っていた。

 気を失った、ヤミーを脇に抱える極限まで機械化された、豚顔の悪魔が立ちはだかる。


「ぶひひひ、ここで会ったが100年目! 魔王クラスまで極限にチューンナップされた、大魔王軍不死隊所属、オークデーモン様が、今こそ貴様に引導を渡してやるブヒ!」


「てめえええええ、豚野郎! どこまで俺の邪魔してくれんだゴラァ!」


 すると、花畑に魔神パズズの巨体が降り立つ。

 獅子の顔は憤怒に染まり、そのたてがみは真紅に染まっている。


「大儀であった、魔神マーラーの部下の悪魔よ。褒美として、あとで人間や魔族の美女達をお前にあてがってやろう」


「ブヒ! ありがたき幸せ。ついでにこの小さき女神のかわい子ちゃんを、くっ殺せとか言わせる、あんな事やこんな事も、してやるブヒ!」


 マサヨシは、ヤミーを人質に取られる絶体絶命のピンチに陥った。

 そして、花畑は荒れ果てた砂地に瞬時に変わり、魔神の容赦のない熱風と砂塵の嵐のような暴力が、マサヨシを襲う。



 一方、メリアはニコのカプセルの前で、両手両指を組み、祈る。

 後ろには、新しく若頭に就任したブロンドと、エルフの乙女の騎士団。

 そして、舎弟頭に就任したガイ率いる、ドワーフ兵団と、子分のマシュ、オルテの姿。

 さらにはベリアルと、付き従う屈強な魔族達に、東の大陸の獣人たちの姿。 

 

 今まさに、目覚めの時を迎えるであろう、世界の救世主の前で、全員が祈りをささげる。

 すると、カプセルが光り輝き、ニコの目がカッと見開く。


 治療カプセルが開き、救世主ニコが姿を見せた。

 天界から全てを悟り、この世界を担う器量を備えた、凛々しい表情をしている。


 メリアは、マサヨシが用意した救世主に相応しい、装備品をニコに手渡す。


「ありがとう、メリアちゃん」


 そして、装備品を身に着けると、ニコは全員に告げる。


「みんな、オイラが寝てる間、迷惑かけてすまねえ! オイラが目覚めた以上、悪党たちの好きにはさせねえ! これより、先代マサヨシ親分から二代目極悪組を襲名した、ニコ・マサト・ササキが、おめえら子分と舎弟に、命令する!」


 ベリアル以外の全員がその場に跪いて、ワンテンポ遅れて、キョロキョロしながらベリアルも皆の真似をして跪く。


「ブロンド、ベリアル、おめえ達はオイラと共に、空飛んで先代が戦う戦場に向かう、いいな!」

「はい!」

「任せたなのだ!」


「ガイ、おめえはドワーフ連れて、アスモデウスさんと共に戦艦で、戦場に向かえ!」

「わかった、兄貴!」


「ガイ、マシュ、メリアちゃんは、レオーネさん達と、ここを守ってくれ。必ず戻ってくるから」

「はい」

「わかった」

「了解した親分」


「いいか、極悪組の名跡を冠した、オイラ達二代目に負けは許されねえ! いくぞおめえら!」


「おう!」


 二代目極悪組が、絶体絶命に陥ったマサヨシの元へと向かう。

 マサヨシが創設した、初代極悪組を凌ぐ最強の軍団誕生の瞬間だった。



 一方、マサヨシはヤミーを人質に取られ、魔神パズズになぶり者にされていた。

 その様子を、オークデーモンがゲスな笑い声をあげる。


「どうした、人間め。さっきまでの勢いは?」


「へっへっへ、魔神野郎。まだまだ……元気いっぱいだぜ……」


 無数の砂粒を凝縮した漆黒の棒で、マサヨシは、頭部を一定のリズムで殴打される拷問を受けていた。


 この魔神が持つ武器、マサヨシの世界ではブラックジャックと呼ばれる。

 柔軟性を保ちながら衝撃が体内に浸透する棍棒の一種。

 そして、今受けてる拷問は、常人が受け続けると、脳に異常をきたし、発狂する悪魔の拷問。


 しかし、地獄巡りをしたマサヨシは、あらゆる拷問や苦痛を耐えるだけの、精神力を持っていた。


 だが、それは自分に対する苦痛である。


「ふむ、それではこういう趣向はどうだ?」


 オークデーモンが抱えるヤミーを砂が呑み込み、、砂の力で地面に拘束する。

 そして、魔神パズズはオークデーモンにアゴで指図した。


「ま……まさか、てめえら!」


 オークデーモンは、下卑た笑いを上げながら、股間から金属の棍棒を伸ばす。


 マサヨシは、オークデーモンに殴りかかろうとするも、パズズに砂の力で拘束されたうえに、オークデーモンの漆黒の鎖で拘束された。


「ぶひひ、かわい子ちゃんに、くっころさせてやるブヒ」 


 オークデーモンが、ヤミーの着物を脱がそうとしたところで、ヤミーは目を覚ます。


「な、貴様はいつぞやの豚! や、やめろ! 我に何をする気じゃ!」


「ぶひひ、くっころタイムブヒよお」


 ヤミーは、恐怖にかられ、周囲を見渡すと、頭部から出血し、ボロボロになったマサヨシの姿を見た。

 

 魔神パズズは、その光景に満足そうに表情をゆがめる。

 神と人間の苦痛こそが、魔神の喜び。


「や、やめろ! てめえら、ちくしょう! ぶっ殺してやる!」


「い、いやじゃ、助け……マ、マサヨシィィィ!」


 オークデーモンがヤミーの着物に手をかけ、神の衣を、自身の強化された力で破こうとした瞬間、天界の魔法で周囲の時間が停止する。


 魔神パズズは、突然生じた時空の変化に狼狽した。


 停止した時間の中で、オークデーモンの股間からそそり立った鉄の棒が、刀の一撃で切断され、鞘でオークデーモンの顔面が強打される。


 魔神ですら目で追うのがやっとの、何者かの一撃。


 そして停止した時間が解除され、オークデーモンの体が吹き飛ばされた。


「ぶひいいいいいいい、なんでええええええ」


 オークデーモンは、砂地になった地面に頭から突っ込んだ。

 ダメ押しに、強力な矢の一撃が、オークデーモンの尻に突き刺さる。


「な!? 何者だ貴様ら!」


「ひゅるるるる、ドーンなのだ!」


 空中から超スピードで落下した、童女の姿をした悪魔の踵落としが、魔神パズズの脳天を直撃すると、巨大な魔神は、蹴りの衝撃で脳震盪寸前のダメージを受け、その場に膝をつく。


 そして、マサヨシにかけられていた魔法の効果が消失し、一人の少年がマサヨシの前に立つ。

 

 マサヨシの前に立つと少年は、マサヨシの前で頭を下げ、中腰のまま右手の掌を突き出した。


 すると、今度はマサヨシと少年以外の時間が停止する。


「極悪組初代マサヨシ親分とお見受けしますが、戦場での軒先の仁義、失礼ですがお控えなすって……」 


 マサヨシは、少年が切り出した仁義に頭を下げ、少年と同じように左手は膝の上、右手は手の平を上にした状態で、中腰の姿勢となった。


「いかにも手前、極悪組初代マサヨシと発しやす。お言葉に甘えさせていただき、控えさせていただきやす……」


 マサヨシは、少年の晴れ姿を見て、一筋の涙がこぼれ落ちた。


「早速のお控えありがとうさんでござんす。それでは、戦場の軒下を借り、遅ればせの仁義、失礼さんでござんすが、これよりあげます言葉のあとさき、間違えましたら御免なすって! 手前、生国はデヴレヴィ・アリイエ王国西はずれのロンド村」


 マサヨシは少年と会った、初めての冒険の地を思い出す。


 マサヨシの旅で、最初に救済した村の名前。


「この度、極悪組二代目を襲名しやした、姓はササキ、中間名はマサト、名はニコ、人呼んで男気のニコと発しやす! 齢13の若輩者ではありやすが、これからも先代からのお引き立てのほど、よろしくお頼み申し上げやす!」


「こちらこそ、お頼み申しやす」


 仁義なき異世界で、仁義を切った二人の親子はお互いに頭を下げた。


 事実上、初代から二代目に、極悪組が引き継がれた瞬間であった。


 そして、時間が動き出し、膝をついた魔神パズズが立ち上がる。


「小癪な奴らめ、魔神が人間共に……」 


 マサヨシは、魔神の方を振り向くと、アースラの力を一瞬だけ解放し、魔神のすねを蹴り上げた。

 蹴りの威力で、パズズの膝に衝撃と苦痛のダメージが走り、再び膝から崩れ落ちる。


「うるせぇんだよ! この三下ぁ! 人が二代目と継承の仁義を交わして、感無量の気持ちになってやがるのに、仁義もわからねえようなクズ野郎が! 今から始末してやるから待ってろコラ!」


 相変わらずのマサヨシの姿に、ニコが笑みを浮かべた。


「ブ、ブヒ! せっかくのお楽しみが……ハウアッ!? ま、まさか、そ、そこにいらっしゃるのは、べ、べ、ベリアル総監!」


 オークデーモンが、ベリアルの姿を見て恐怖で小刻みに震え出す。


 魔王軍最強戦力と言われ、大魔王の実力を持つと噂される、魔界最強の悪魔の一人が、マサヨシ達に寝返っている事実に絶望する。


 すると、彼の機械化された頭部に、金棒の一撃がフルスイングされて、野球ボールのように100メートルほどオークデーモンはかっ飛ぶ。


「何がクッころじゃ下郎めが! 我が貴様をクッころさせてやるわ!!」


 ヤミーは顔を真っ赤にして激怒する。


 そして、アレクシアとロンが激戦を繰り広げる戦場に、アスモデウスの軍艦が上空に現れ、ガイを筆頭とした、最新装備を所持したドワーフ兵団が落下傘で降下を始めた。


 武闘派に相応しい、殴り込みの仕方で、早速イフリート化したガイの炎の閃光が瞬きだす。


 その様子を見て、マサヨシはにやりと笑う。

 今度の極悪組二代目は、自分より喧嘩のやり方が派手だなと思いながら。


「さあて外道共、第二ラウンドと行こうぜ?」


 マサヨシは、刀を魔神パズズの頭部に差し向けた。

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