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仁義なき異世界転生 ~勇者マサヨシの任侠伝~  作者: 風来坊 章
第四章 頂上作戦 
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第90話 阿修羅 後編

 俺は座禅しながらその場で気を失う。


 気が付くとそこは、沢山の武器と、美しい女のでっかい写真と、金目の物が地べたに置かれた、光り輝く太陽さんの光が照らす、欲まみれのような世界だった。


 ここは、どこだ?


「ここはおめえの魂の世界だよ、人間のクソガキ」


 俺が声のした方を振り返ると、男が立っていた。

 6つの腕を持ち、黒髪をオールバックにした燃えるような炎の瞳を持つ男。

 上半身裸で肌が褐色で、赤い袴をはいた、背丈が俺そっくりの伊達男。

 

 なるほどな、こいつがアースラさんか。


「なんだコラ? 人様をクソガキ呼ばわりしやがってこの野郎」


 俺がメンチ切ると、逆に魂が震撼するような形相で俺をにらみつける。

 やべえ、こいつの眼力は……親分よりも凄みがある。


「俺を呼び起こしたのは、ヤマの野郎か? あいつ元気でやってんのかい?」


「閻魔大王様だろうがコラ? テメー何様だボケ」


 するとアースラは笑い出す。

 はは、笑い方まで俺にそっくりだ。

 間違いねえ、こいつは俺と魂がつながった、俺の魂の源そのものか……。


「まあいいや、俺は何回、人として転生してきたんだ? あ、いいわ、おめえの頭の中を盗み取ればわかるから」


 アースラは静かに目を閉じて、俺の魂全てを覗き見る。


「チッ、なんだよ、どいつもこいつも小物ばっかりで全然面白くねえわ。テメー本当に俺か?」


 何だとこの野郎。


 たしかに、俺の前世も前前世も、その前も、社会や人様に褒められたもんじゃなかったかもしれねえが、俺の魂全部を否定することは俺の、俺に関わった奴ら、前世やその前の奴らを、すべて侮辱する発言。


「おい、てめえ今なんつったコラ? ふざけんなよこの野郎ぉ! 取り消せよ、今の言葉を、俺を馬鹿にするのは別にいい、だがよお、魂の生き方全てまで否定される覚えはねえぞ!?」


 俺は腹に力を込めて、アースラの燃えるような瞳を見つめて、目に力を入れる。


 神だか魔王だか知らねえが、そんなわけがわからんものに、なめられてたまるか。


「まあ、そりゃあそうだな。俺の転生体達を馬鹿にするのは、俺自身を馬鹿にするのも一緒か、それよりな……」


 アースラは、ゆっくりと歩を進め俺の前に立つ。

 すると、右の拳を思いっきり振りかぶって俺をぶん殴ってきた。


 俺の魂が、ものすごい勢いで精神世界をかっとぶ。

 そしてこいつの記憶の源流が流れ込んできた。


 正義を信じ、悪を憎んでた高潔な魂が、堕天して悪に染まった瞬間。

 そして、太陽の光も当たらない魔界で感じた、神々への憎しみ。

 それでも己を信じて、魔界のワル共と喧嘩して子分にした記憶。

 魔族のべっぴん口説いて、次々と自分の女にしていく楽しい日々。


「テメー、誰に向かって糞生意気な口叩きやがるんだコラ! このアースラ様に対して! てめえ、どこの誰で名前なんだこの野郎!」


 ああ、間違いねえわ。

 こいつは俺の魂の源だ、間違いねえ。

 俺そのものと向き合ってるって感じがする。


 だが、なめられてたまるか、こんな訳が分からねえ野郎に下に見られる俺じゃねえんだ。


 そして俺はゆっくり立ち上がり、アースラの目を見据えて啖呵を切る。


「俺の名前はマサヨシ! 人呼んで勇者マサヨシだ! 乱世の梟雄でもあり、サムライでもあり、極道とも言われた魂が行き着いた先が、この俺だ! なめてんじゃねえぞこの野郎がああああああ」


 俺は全速力で走って行って、野郎の頬ゲタを思いっきりぶん殴る。

 だが、全然手ごたえがねえ。

 あれだ、ファミコンゲームのRPGとかで、攻撃してもダメージ0とかで表示されるアレだ。


「はっはっは、転生を繰り返して、ようやく俺とそっくりな奴が出てきやがったか! おめえの記憶のすべて、今ので盗み取ったぜ。へっへっへ、いい女が揃ってやがるなあ? ヤマの妹もちっとまだ育ち切ってねえが、いい女になってやがる。おめえの意識乗っ取って、俺があの世界で面白おかしくやるのも悪かねえ」 


 何だとこの野郎。

 俺を乗っ取るだ? 俺の女を取り上げるだとこのクソ野郎!


「ふざけんなこの野郎! あいつらは俺の女だ! そしてあの世界は俺の縄張り(シマ)で、この俺が救うべき、大事な世界だこの野郎! スカしてんじゃねえ!」


 俺は俺だ、てめえじゃねえ。

 どこまでも人様をなめくさりやがって、この野郎。


「はあ? 何言ってんだこのクソ雑魚が! てめえが、魔神や大邪神に勝てんのか!? 俺なら多分勝てんぜ? 喧嘩するとよお、わくわくすんだ、てめえの体を盗ませろや!」


 俺の魂が、今度は蹴り飛ばされる。

 この野郎、俺の魂を消して成り代わる腹積もりか?

 そして、アースラの記憶が流れ出す。


 魔界で魔王として君臨し、大魔王達との喧嘩の日々。

 敵の財宝を盗み出し、戦利品として子分達に分け与えてる歓喜の記憶。

 神々に6本の手で中指をおったてて、全てを敵に回しても心が躍る戦争の記憶。


 間違いねえ、こいつ無茶苦茶すげえワルだ。

 俺が今まで出会った中でも、最高にして極上の悪党だぜ。

 相手にとって不足はねえ!


「いいねえ、最高に上等だぜ! この勇者マサヨシ様がぶっ潰すには最高のワルだ! 俺もよお、喧嘩するとわくわくするんだ、喧嘩しようぜえええええ、アースラさんよお!!」 


 俺はまたアースラにダッシュで走っていて、野郎の頭を両手でつかみ飛び膝蹴りをくらわす。

 そして腹に何発も、膝蹴りを繰り出すが、全然効いている様子がねえ。

 ダメージ0連発だわコレ。


「何だ小物野郎? その程度かオラァ!」


 今度は、腕4本でぶっ飛ばされる。

 すると、どんどんアースラの記憶が流れ込む。

 

 盗むべき財宝が戦争で無くなっていく虚無感。

 手下や女共が殺されていく戦争の悲しさ。

 もともと仲間だった神々を殴りつけるむなしさ。

 こいつの弱みになるような記憶が次々と流れ込んでいく。


 なるほど、あの野郎の倒し方がわかったぜ。

 この喧嘩、勝機が見えた!


「何だこの野郎? 神も悪魔も務まんなかったハンパ野郎がイキがりやがって!」


 奴の攻撃と動きがピタリとやんだ。

 俺が転生前に染み込んだ、極道としての掛け合いが勝利のカギ。

 そして俺は、アースラの顔面に頭突きする。

 ダメージ0だけど。


「……な! なんだとてめえ……」


「ああ? そうじゃねえか? 俺の前世の清水正義も、その前の前世も、その前の前世だって、テメーの生き方を貫いて人間として生涯を終えた! テメーが馬鹿にしていい生き方じゃねえんだよ!」 


 俺は魂に怖気が走るようなアースラの瞳を見つめる。

 だが気合と気迫だけは誰にも負けねえ!

 俺はそうやってあの世界で数々の喧嘩に勝ってきたんだ。

 攻撃が効かねえんだったら、あいつの精神に揺さぶりかけてやる。

 マサヨシとして転生した意地を見せてやる。


「何だこの野郎? 言い返せねえのかコラ! テメーが何で神も悪魔も務まんなかったか当ててやろうか? ええ、コラ?」 


 俺は左ストレートで、アースラの顔面をぶん殴る。

 すると記憶が流れ込んできた。


 元神として、神界と交渉し、神々と大魔王の戦争を終わらせたこと。

 魔界の大戦で赤子だったヤミーを拾い、子供の命の大切さを感じた記憶。

 だが結局、自分の子分や女共、そして自分の子供達を置いて、魔界から逃げるように神界に戻った記憶。


「テメーが信じる正義の心が暴走しちまって、見境なく敵を作りまくって喧嘩して、魔界行になり、神界を逆恨みして悪ぶったが、結局魔界の悪魔や神々との喧嘩で、中途半端な性根で喧嘩したから、悪魔でいるのも嫌になっちまったハンパ野郎がてめえだよ!」


「黙れクソ野郎!」


 アースラが俺の魂を6本の腕で掴み、引き裂こうとする。

 青白いオーラが噴き出し、体が太陽の輝きに包まれ始めた。

 だが、それがなんだ?

 そして再び神になったアースラは神界法違反を犯し、人間として一生を終える。

 こいつが人間になったのは……。


「てめえが人間になったのも当ててやるぜ! てめえはなあ、神でいるのも悪魔でいるのも嫌になって、わざと神界法違反を犯して、人間として孤独に死んで、何もかも捨て去った哀れな半端者だ! そんな理由で人間になりやがって、人間をなめるんじゃねえ!」


 俺が渾身の右ストレートをぶち当てた!

 アースラに勝利する方法、それはこいつのプライドをへし折り、精神的に屈服させる事。


「いいか! どんな生き方をしようが、どんなに外道になろうが、無様に死のうが、テメーと向き合えねえで逃げうってきた野郎に、人間が、この俺が負ける道理はねえんだ! そしてこの喧嘩、俺の勝ちだ馬鹿野郎!!」


 その後こいつは、冥界に行ってダチだった親分の所に行き、転生した。

 人間としての生き方がわからなかったコイツが、人間を理解するために。

 こうして生まれたのが、俺だ。


 魂が何度も転生して、親分ですらアースラがどこに行ったのかわからなかった。

 そして、それがわかったのが、転生した俺の姿を見たからか。


 それに神だろうが悪魔だろうが、どんな強い力を持っていても、転生を繰り返し、人間としてバージョンアップし続けた、この俺に勝てる道理はなかったのさ、最初からな。


「てめーに何がわかるってんだよ……神も悪魔も嫌になって人間として生きようとしたけど……どう生きていいのかわかんなかったんだ……」


「わかるさ、俺はおめえから生まれたマサヨシだからな」


 俺はアースラに右手を差し出す。

 そしてアースラは6本の腕で俺の右手を掴んだ。


「おめえさんが貫けなかった正義の心と、捨てざるをえなかった魔界の家族の思い、そして最後まで分からなかった人間としての生き方への思い、全てこの俺が呑み込んでやる! 確かに俺は小物かもしれねえが、それを抱えるくれえの器はある!」


 俺がアースラに告げた瞬間、体が光に包まれた。

 そして、冥界の部屋に俺の意識が戻る。

 あれで、良かったんだろうか?


「大変じゃ! マサヨシよ、すぐに我の元へと戻るのじゃ!」


 俺の体が、玉座に座った親分の元へと飛ばされた。

 そこで、俺は衝撃を受けた。


 大邪神による全ての世界の浸食と、あの世界が最悪な世界に変貌し、俺の舎弟のガルフが、大魔王と化したガイウスに殺された事実。


 ヤミーと兄貴が俺に抱き着いて泣きを入れる。

 俺は涙を流す前に、最初に怒りがわいてきた。


 あいつは、ガルフは男の中の男で、組の要の舎弟頭。

 俺と気が合い、良く酒を飲んだ気持ちのいい舎弟分だった。

 とても、いい奴だったよ。

 ガイ、マシュ、オルテ、俺がおめえの生みの親の仇を取ってやる。


 それに開戦の合図だとこの野郎、ぶっ殺してやるぜガイウスの野郎が。 

 すべての世界、全ての次元をぶち壊すだとコラ?

 なめやがって!


 俺はな、転生前もその前も、その前も、アースラだった時も、身内殺してコケにしやがった野郎らには、報いを与えねえと気がすまねえ性分よ。


 全部ぶっ潰してやるぜ、ゴミクズ共が!

 何が大邪神で大魔王軍だクズヤロー共!

 俺が神で、大魔王で、勇者だ馬鹿野郎!


「親分、事情はわかりやした。そして、親分のご友人だったアースラは俺と……」


「うむ、言わずともよい。マサヨシよ、よくぞすべての試練を乗り越えた。大魔王と魔神、そして邪神の存在は、神界法の規定により、全ての神々が抹殺に動かねばならぬ事態じゃが、今は神界も天界も、大邪神の呪いによって動けぬ状況」 


 ああ、その疫病みてえな呪いで、全ての世界が無茶苦茶になってるようだな。

 陰湿な事しやがって、喧嘩してえなら真正面から来いってんだ。


「へい、わかっとりやす。つきましてはこのマサヨシ、そのクソ野郎共をぶっ潰してごらんにいれやしょう」


「いや、今のお主の力ならそのままでも、魔神相手に戦えるかもしれぬが、大邪神相手となると準備不足じゃ。ヤミーよ、アレを持て!」


 ヤミーは親分のもとに駆け寄ると、俺があいつに預けた対魔界決戦兵器、竹刀袋のようなものに入れた、(しゃく)を持ってきた。


 閻魔大王親分の力が発揮された俺が持つと、様々な刀に姿を変える、退魔の兵器。


「これは、今のお主では満足な効果を発揮できぬ。そこで我が調査した結果、あの世界に大邪神と戦える素材があるはずじゃ! それを見つけ出し、全ての世界を救済するのじゃ!」


 閻魔大王親分は、あの世界の地図を具現化して俺に放り投げた。

 両手でそれを受けると、地図には親分の手でマーキングされている。

 

 ていうか、やっと世界地図が手に入ったぜ。

 ファミコンのRPGとかだったら、結構最初に手に入るよな?

 まあいいや、なになに。


 一つはもう東の大陸に移動した、俺の組の奴らが持ってるようだな。

 二つ目は……俺の生まれたアルフランドの……デーバ村か……。

 三つめは、氷の大陸の……旧魔王軍基地の跡地。

 四つ目は、西にある謎の大陸の中央からやや東のどこか。


「わかりやした、そして素材を集めたらどのようにすれば?」


 親分が葉巻を口に咥える。


「失礼しやす!」


 親分のもとに行き、火をつけようとしたら親分が手で制する。

 俺が、アースラの魂との融和を果たしたからなのだろうか?

 だがしかし、俺は親子盃を頂戴した身よ。

 

 俺は、指パッチンの要領で極小の炎魔法を飛ばす。

 すると親分の葉巻に火がつくはず……あ……。


 魔力が増大しすぎて葉巻どころか、親分のヒゲと髪の毛を焼く。

 だああああああああああ、ヘタ打ったああああああああ。

 俺が土下座して詫び入れようとすると、親分がまた手で制して葉巻に火を着けた。


「お主、本当にマサヨシか? よくこんな事をアースラの馬鹿にやられたわい」


 親分が、懐かしそうに笑いながら言ってやがるけど……。

 アースラの奴、やっぱとんでもねえワルだな。


「まあよいわ、地図を持って素材の近くによると、地図が光って反応しだす。あとは素材を手に入れたら合成するのじゃ。それとその杓は、お主がアースラの姿になっても、ならんでも、打撃武器に姿を変えるじゃろう。それに素材を近づけて念じれば、合成される」


 なるほど、そういうことね。

 原理はよくわからんけど。


「ヤミー、そいつを俺に渡してくれ。親分から借り受けた喧嘩道具だ」


 ヤミーが竹刀袋を手渡し、中身を抜くと木刀の形になった。

 ただ色が、白樫っぽかったのが、黒い漆塗ったような木刀へと変える。

 いいねえ、俺が転生前に愛用してたやつそっくりだ。

 ワルをぶん殴るには、もってこいよ。

 

 そして、ヤミーが俺に涙をまた流す。

 俺は優しく、こいつを抱き寄せてやった。


「マサヨシィ……あの世界が……せっかく我とお主が変えてきた世界が……悔しい……」


「俺もだ、俺達の世界を共産主義に変えて、疫病が蔓延する世界にしやがって! 絶対にケジメを取ってやる! そしてあの世界を、いや全ての世界を救ってやるぜ!」 


 すると親分が咳払いし、呟いた。


「マサヨシよ、どうやらあの世界の穀倉地帯にイナゴや毒虫が沸いたようじゃ、過去に封印された存在で、おそらくは大魔王軍とやらに所属する、虫を司る魔神の仕業じゃな。早速お主の力が必要とされる事態になったの」


 ほう? それはそれは。

 早速俺がケジメ取る野郎が出てきたってわけか。

 俺の愛する舎弟、ガルフを殺りやがったんだ、まずは敵の幹部クラスの(タマ)取ってやるぜ。


「わかりやした、親分早速ですが、その虫野郎の所に俺を飛ばしてやってくだせえ。まずはあいさつ代わりに、俺が消してきます」


 ヤミーと共に俺の体が、皇国の西側の強制労働農場と化した、広大な穀倉地帯に飛ばされる。


 ニコがあの世界に戻って、あいつに組を継がせる前に、俺の親分としての最後の仕事、極悪組初代として、大魔王軍との喧嘩開始の派手な挨拶をしねえとな。

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