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仁義なき異世界転生 ~勇者マサヨシの任侠伝~  作者: 風来坊 章
第四章 頂上作戦 
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第89話 阿修羅 前編

 俺は、閻魔大王親分が用意してくれた一室で、座禅を組む。


 最後にして第3の試練とは、己の魂と向き合うとか言うわけがわからん試練。

  

 座禅か、懐かしいなあ、転生前を思い出すぜ。

 あれは俺が転生前の、極悪組で直参になった時の話だった。


 新参者の俺は、念願のプラチナバッチを付けることを、兄貴たちから許されず、義理事以外は紺の背広のスーツしか着ちゃいけねえとかいう、わけのわからん事を言われた、初年度の時の話。


 俺は、ある兄貴分の命令で、禅寺で修行させられたことがあった。

 極道には、信心深い親分衆って結構いるのよ。

 上に立つほど義理事とかすげえ多いしな。

 

 まあ、その兄貴も最初はシノギのために宗教に近寄ったらしいがよ。

 それで、どっぷりその宗教の世界にはまっちまったって、後から他の兄貴たちから聞いたな。


 宗教ってのは金になるのよ、新興宗教とかさ。

 だって、宗教法人って原則非課税だろ?

 俺達ヤクザが、目を付けて当然だろ、そんなもんよお。


 そんで俺はおっぱい教団とか作ってやろうかって、真剣な顔してヤスに相談したことがあったな。


 帰ってきた答えは、ふざけたこと言ってないで、今月の組のシノギの上り分の報告書に目を通して、本家に持っていく、今月の会費の決済、早くくださいってそっけない回答だった、本気だったのに。


 で、兄貴分から命じられたその寺の修行だったがよお、きつかったぜ。


 頭こそ寺の小坊主のように丸めねえが、朝起きたら広い寺の雑巾がけから、墓の掃除に住職さんの着付けの手伝いやった後、座禅組んだら、煩悩があるとか言われて、木の(しゃく)で肩とかぶっ叩かれるの。


 俺は極道で、欲まみれだからしょうがねえだろって思いながら、根性でそのケジメに耐えたね。


 そんで、それが終わったら意味がいまいちよくわからねえ、お経の写本から始まって、普段なら夜の街に繰り出してる時間に、寺に灯したろうそくの明かりを消してまわるとか、色々やっておやすみよ。


 そのほか、山で修験やら滝とかに打たれてひたすら念仏唱えたりとかさ。

 色々やったっけなあ。


 それを一週間くらい続けたら、ちょっとは気合入った気がしたね。

 懲役いった後のような感じっての?

 その兄貴がはまるのも、わからんでもねえなって思ったよ。


 その後、世話になった住職の息子が寺を継ぐと、俺達極道にも、うさんくせえ霊験あらたかとかいう、数珠とか高額で売りつけようとしたり、檀家に戒名代踏んだくったり、仏壇とか買わせる金集めとかしてさ。


 俺とその兄貴がなんか怪しいぞって探りいれたら、その寺の息子、ホステスや株とかにハマっちまってる、ヤクザ顔負けなワルの生臭坊主だったんだ。


 その後どうしたかって?

 決まってんだろ、俺達極道にシノギかまそうとした野郎がどうなるかなんて。


 とりあえず、貯め込んだ金と株券を整理させて、兄貴と山分けすんだろ?


 後は、若い衆にさらわせて山に穴掘って、念仏唱えさせながら、昔の伝説にある、高僧さんのように即身仏になってもらった。


 命がけの修行が出来て、その生臭坊主も喜んでると思うぜ? あの世で。


 その後の寺は、うちら極悪組が贔屓にしてる坊さんに面倒見てもらったっけ。 


 懐かしい思い出だな。


 そんな事を思ってると、冥界の裁判を終えた親分の声がした。


「マサヨシよ、自分が何者か思い出したか?」


 何者かって親分さあ、俺は俺だっての。

 外道な挙句、惨めに死んだ、清水正義から転生したマサヨシだって。


「ふむ、そうか。それではお主には関係の無いことかもしれぬが、ある男の話をしようかの? どうじゃ、聞いてみる気はないかの?」

 

 はあ?

 いやいやいや、絶対俺に関係してるだろ。

 親分も、水くせえなあ。


「お主には関係のない話と言っておろうが。そう、あれは昔、何千年以上も前の話じゃったな。我には無二の親友がおって、名をアースラという。我と同等以上の力を持つ、魔界で悪名を轟かせた稀代の快男児かつ悪党で、魔界の盗賊組織の王の名じゃ。組織はアスラとも、阿修羅とも呼ばれておったの」


 うわ、すげえ悪そうな名前の人が出てきたよ。

 ていうか阿修羅さんかよ、もうその時点でいかついだろ。


 戦闘に長けた神さんで、極道の中でも、それに魅入られて入れ墨入れてる奴いるものな。


「あやつは、元々正義と太陽を司る神の一族で、名だたる悪しき魔神を討伐しまわっておったが、正義感ゆえに神界と衝突して堕天した男じゃった。魔界に堕ちてからも、数多くの魔王や大魔王達と衝突し、勝利を収めて勢力下においた強者じゃ」


 うわ、いかついにもほどがある。

 喧嘩太郎じゃねえか、阿修羅さん。

 聞きしに勝る、勇猛さだなあ、おっかねえ。


「当時魔界最強と呼ばれた我には、好敵手が二人ほどおった。大魔王ドゥルガー、奴は後に魔神となるが、我が地球で勇者ラーマ、賢者シータと共に、決着をつけた最強の男じゃった。そして、もう一人はそのアースラ。はっきり言って、組織力を加味した力は、我よりも上じゃったな」


 うは、阿修羅さんハンパねえな。

 さすが名前に、修羅の字がついてるだけある。


「アースラは、何度か戦ううちに友情が芽生えての。そして、当時赤子だったヤミーを保護したのあやつじゃ。あやつこんなことを言っておったわ。ヤマよ、この妹が、おめえに似ねえで美人に育ったらよ、俺の女にしてやるから、くれやと。その場でぶん殴ったがの」


 うわ、なんかそのノリ俺そっくりだわ。

 まさかヤッパリ、俺の前世の清水正義の転生体ってやつか?


「あやつは稀代のプレイボーイでの、魔界の娘たちを口説き回って、自分の妻や愛人にしておった、どうしょうもない奴じゃったわ。それにもとはと言えば、あやつが神界との取引を持ち出したのじゃ」


 神界との取引き?

 あれか、親分が言ってた神界に仇なす大魔王を、神界の神として招き入れるって言う。


 そのかわり、それに反対する魔族はぶっ殺さなきゃいけねえって言うアレか?


「あやつは、魔界では契約と審判を司る魔王じゃった。そして我と同様に神となり、神界に復権したが、何を思ったか、人間界で二度神の力を行使し、人間になった伝説の男じゃ。あの話には、創造神様も腹を抱えて笑っておったのう、前代未聞じゃっての」


 はあああああああああ。

 意味わかんねえよ、阿修羅さん。

 もともと神で、その後、魔界の魔王になって、また神に戻って、今度は人間に!?


 破天荒すぎんだろ、頭おかしいんじゃねえか?


「そうじゃろ? あやつはどこかおかしいんじゃ。しかしその生き方に魅了された、元大魔王の神は多い。我の従弟の秦広王アチャラもそうじゃなあ。神々の中にも、あやつの破天荒な生き方に魅了されたものも多い」 


 確かに、そんなぶっ飛んだ生き方、誰でもできるもんじゃあねえって。


 けどまあ、極道もそうだよなあ。

 破天荒な生き方過ぎて、カリスマ性を持った名親分なんかも、極道の歴史には存在する。


 誰にもまねできねえ生き方ってのは、それだけで人を惹きつける。


 人じゃねえ、魔族でも神でも似たようなもんか。

 

「さあ、マサヨシよ。精神を集中させて魂の源流まで遡り、己が何者じゃったかを思い出せ。様々な試練を潜り抜けたお主なら、可能なはず」


 親分に言われて、座禅組んで精神を統一した。


 すると俺の転生前の、魂の映像が浮かぶ。

 これは、何処だ? 海岸線か?


 松の木が生えてて、周りには……あん?

 周りにいたのは、馬に乗った鎧武者だった。

 みんな、目がギラついてて怖いんだけど。


 そして海岸線から強烈な異臭がするな……。

 どんどん、何かが近づいてくる。

 あれは……船団か?


「蒙古じゃああああ、蒙古がまた来おったぞ!」

「ヒャッハー、恩賞共が来やがったあああ」

「者共、首じゃああああ、首を取るのじゃああ」


 はあ? 何じゃこりゃ?

 なんか戦争おっぱじまりそうだぞ。


「上様、ご下知を!」


 何だこの野郎、クソ生意気に眼帯しやがって。

 ていうか、俺が上様?

 それと、この眼帯の侍はヤスの前世か?


「郎党共よ! 蒙古狩りじゃああああ、あやつらの首を取って、鎌倉より恩賞をカスリとり、宋人の女共も我らのものにするのじゃああああ」


「えい、えい、おおおおおおおお」


 これは……まさか元寇、鎌倉時代か?

 うわぁ、間違いねえ。

 これ弘安の役って奴だよ、本で読んだわ。


 ていうか、武士ってよりこいつら(やから)だろ?

 ガラが悪すぎんよ。


 そして酷い戦場の映像が流れ出す。

 うん酷いって言うのは武士側ね。


 もうね、モンゴル軍が来たら弓とか射ちまくって、動けなくなったモンゴル兵の首とかに組み付いて、掻き切ってんの。


 そんで前世でサムライやってた俺は、もうやりたい放題。


 夜襲とか大好きで、敵の船に笑いながら腐った軍馬とかモンゴル兵の死体の一部とか、放り投げ込んで嫌がらせしたり、火をボーボー放火し回って、それ見て指差して笑ってる。


 そうか、だから俺は転生前に剣術の才能あったり、抗争にも全然ビビらねえ武闘派ヤクザとかやってたんだなあ、なるほどねえ。


 あ、相手の船団に乗り込んで……うわぁ、笑いながら刀でモンゴル兵ぶった斬って、海に蹴落としてるよ……。


 うん、武士道とか絶対嘘だわ。

 おっかねえよ、野蛮人じゃねえかっての!


「クックック、我が家を横切る坊主共や、乞食共相手に弓の腕を上げたかいあったわい。人殺しは楽しいのう、ヒャアッハッハッハ」


 うわぁ、やっぱお侍さんのセリフじゃねえわ。

 前世の俺、ヤクザ も真っ青な外道じゃねえか。

 修羅に生きてんよ、マジで。


 そして、史実通り元軍は台風の被害に遭い、船団は半壊状態となった。


 しかし多数の元軍は生き残り、今は長崎の松浦にある鷹島に立て篭もる……俺が知らねえ歴史だな。


 すると前世の俺は、郎党率いて島に攻め込む。

 他にも御家人ってやつなのか、無数の船団で、みんな家紋おっ立てた旗をなびかせながら、鷹島に乗り込んだ。


 ああ、すげえ激戦だわ。

 周りがまるで血の海で、地獄のようだ。

 台風が元軍を壊滅させたってのは嘘だわ。

 サムライ達が、モンゴルを壊滅させたんだ。


 もうすげえ数が捕虜として投降してるよ。

 みんなもう、傷だらけで土下座してる。

 どうすんだ? この元軍の大量の捕虜を……前世の俺は。


「今更助かりたい? 何言うとるんじゃこやつら? ふざけるなこのたわけが! 貴様ら壱岐や対馬で無抵抗な童共を嬲り殺し、女共を凌辱して数珠繋ぎにして連れ去ったくせに何が助命じゃ! 死ね、貴様らのような外道は全員死ねい! 首掻っ切れや郎党共!」


 ああ、結局皆殺しか。

 正義感にかられた俺達の郎党が、元軍を嬲り殺してくのが、他の御家人に伝播して、あちこちで捕虜とかぶち殺しまわってやがる……地獄だなこりゃ。

 

 すると、今度は別の場面に切り替わる。

 これは、和室? 俺の部屋? ヤスっぽいのがいるな。


「上様、幕府に恩賞の件を打診したところ、徳政令とやらで知らぬ存ぜぬのらりくらりと……我ら郎党、生活が困窮し、このままでは皆が……」


「なんじゃと! あの戦で手柄を立てたのは誰と心得るんじゃ鎌倉は! 御恩と奉公などもはや無意味、我ら悪党となり鎌倉を滅ぼさん!」


 うわぁ、俺の前世親殺しとか考えてんよ。

 まあそうか、抗争で手柄たてたのに、褒美がねえとか……。

 そりゃあ、内部抗争になるって。


 そして鎌倉幕府の御家人同士が内乱となり、前世の俺は族滅させられ、虐殺の罪で地獄に行き、清水正義に転生か……。


 もっと前に遡ろう……。

 

 なんだここ?

 平原の戦場を俺が見下ろして……。

 何だあの鎧……魚の麟のような鎧を着て……中国か、大昔の?


「ふっふっふ、やっぱり戦乱の世はいい! もはや栄華を誇った大漢帝国も今は昔! これからは俺の時代、女共をコマし回って、ムカつく野郎の領地を分捕って俺の帝国を築いてやるぜ」


 うわぁ、すげえ野心家だよ。

 漢ってあれか? 確か高祖劉邦さんが建国したアレか?

 その末期って言ったら、あれだわ三国志の時代だ!

 すげえ、俺の前前世は三国志の武将さんかよ、それに剣の達人でイケメンだわ。

 

 劉備さんとか曹操さんとかいる時代だわ、わくわくするぜ。

 どうせなら、劉備さんとかの舎弟とかにならねえかなあ?


 ああ、やっぱすげえわ、さすが俺様、破竹の勢いで中国のどっかを平定していく。

 女とかも口説き回ってやがるし、やりたい放題やってんな。

 ていうか、やり方強引すぎね?

 逆らう奴ら、ボコボコにするどころか、ぶっ殺し回ってんよ……。


「ああ? 何でてめえ勝手に、お飾り皇帝を擁した曹操とかいうクソボケに密書送ってんだよゴラァ! ぶち殺すぞこの糞ボケが!」


 あーあー、自分の部下とか粛清してるしなんだかなあ……。

 これ曹操さんに目を付けられてる……ん? 同盟? 侯爵になる申し出?

 すげえ、もしかして曹操さんの部下として、この後華々しい活躍を……。


「けっけっけ、曹操のクソボケ俺が部下に下るって話を信じ切ってやがるぜアホめ! ちょうどあのボケは袁紹さんと戦争中。俺がその隙に首都を収奪して俺が皇帝になってやるぜ、ヒャッハッハー」 


 ちょ、何考えてんだよ、昔の俺。

 やりたい放題過ぎだろ、修羅に生きてんよやっぱり。

 あ、また場面が切り替わる……子供? 俺の子か? 


「我が弟よ、俺はこの中華で子供たちが笑って暮らせる大帝国を築き上げるんだ。戦乱の世で泣いてる可哀そうな子供が多すぎてよ、こんなもの人の暮らす正義の世の中じゃねえ。だが、どうも俺はその器じゃねえんだ……親父も恨み買ってぶっ殺されたし、俺も人の恨みを買いすぎた。次の跡取りは兄弟の中で一番器が大きいおめえよ、この国を頼むぜ」


 なるほど、なんとなく俺の前前世の察しがついてきた。

 たぶん、俺は……。


 そしてある夜、俺が酒飲んでぶらついてると、三人の男たちに囲まれる。


「我が国と主君を奪った罪、しねやああああ!」 


 まさか俺はここで……あ、ぶった斬ったわ。

 つえええええ、俺つえええええ。

 でも、頬に傷が……これは、毒か?


 こうして俺の、前前世は終わりを告げる。

 そして数々の非道により地獄に堕ちて、今度はお侍さんに転生して……。

 

 もっと前の記憶だ、そこに伝説の男、アースラがいる。

 その時、俺の体がまばゆく光り出す。

 ああ、ようやくお出ましか、俺の修羅の魂の中にいるアースラさんよ。


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