表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仁義なき異世界転生 ~勇者マサヨシの任侠伝~  作者: 風来坊 章
第四章 頂上作戦 
87/163

第86話 父と子 後編

 ニコの正体はマサト。

 佐々木正人、転生前の俺の実子で、生まれながらの殺し屋だ。

 

 佐々木組は、俺が潰した組。

 京子は俺が殺した組長の一人娘。

 あいつの恋人になったフリして、人生を壊した女。

 

 佐々木組は地下に潜り、俺を殺す機会を伺ってた。

 自分達の縄張りを奪い、組長を殺し、そして娘の人生を弄んだ俺を。


 しかし、奴らは俺の知らない間に壊滅した。

 ヤスがこいつらの動きを察して、人知れず消してたんだ。

 優秀すぎるよ、ヤスの野郎。


 だが京子は諦めなかった。

 自分の最高傑作のマサトを、刺客として、俺に送り込んだ。


 オギャーと生まれたマサトは、母親の京子から子守歌の代わりに、俺への憎しみをささやかれ、絵本の代わりに格闘技を図解した本を読み聞かされ、学校に行くような年代になると、京子の命令で、佐々木組の残党の野郎から、ドスやチャカの手ほどきを受けて、殺人マシーンのようになってた。


 強いわけだよ。

 あっちの世界で、ガキだが悪魔野郎や大人の騎士とも戦えるわけだぜ。


 そしてマサトは、ずっと俺の行動を見ていた。

 俺を殺す機会をずっと伺っていた。


 女の所から朝一で、若い衆に車で送ってもらって、俺が組事務所の入り口につける瞬間、あいつはただのガキを装って、急所にドスをねじ込むつもりだった。


 そこに俺がふいに声をかけた。

 なあ、ボウズおめえ、何で毎日ここにいるんだよ? ってさ。


 マサトは俺に気づかれたと思ったようで、母親、京子の所に行く。


 肝心の俺は全然、こいつが刺客だと気が付かなかったが、気づいた奴がいた。


 ヤスだった。


 あいつは兄貴分の俺と組織を守ろうとして、マサトを追いかけ、チャカ持って、京子をぶっ殺し、そしてガキながら、刃物持って向かってきたこいつを……。


 俺の心の中に、マサトの今わの際の映像がフラッシュバックする。

 母親の京子を撃ち殺された、悲しみ。

 そして、お母ちゃんと叫びながらチャカ持ったヤスに、立ち向かった絶望。

 ヤスがすまねえって言いながら、マサトに鉛玉を撃ち込んだ最後の瞬間。


 マサトの未練は、父親の俺を殺せなかった未練、母親を守れなかった未練。


 そしてマサトが、ニコがこんな事になったのは、ヤスのせいじゃない。


 道具を持っていたとはいえ、ヤスはガキを殺した事に心に傷を負っていたようだった。


 あいつは、俺と組のために思ってやった事だから、悪いのは、てめえの出世欲の為に、京子をハメてあいつの親を殺して、人生を狂わして、俺達のガキが、人殺ししか考えられなくなっちまって、俺の組に消されて……。


 全部俺のせいだ。


 死んじまった方がいいよ、俺なんか。

 いや、死ぬべきだ。

 あの可哀そうな世界を救う資格なんて、俺にねえ。


 自分がガキの時に酷い境遇に遭って、ガキへの非道は許さねえなんて、異世界で任侠掲げてイキがってて、蓋を開けてみたら、てめーが生んだ実のガキを不幸に追い込んでたなんて、ちくしょう……。

 

 何だったんだ俺の前の人生は?

 なにが、親分だ、日本一の極道だ、世界の救済だ、勇者マサヨシだ!


 渡世の子供も、自分の子供も前世で不幸してたんだからさあ、死んじまいてえよ……。

 

 けど、俺は閻魔大王の親分から、生きて向き合えと命令され、俺が守るべき世界には、必要としてくれる野郎らがいる。


 だから、あの世界にいる愛する兄弟たちを、子分達を、女たちを、そして俺の中に少しだけ芽生えつつある、任侠道の心を信じる!


 こいつは、マサトは、ニコは絶対に俺が救って見せる!


 マサトは、ニコはオークデーモンとの戦いで最初に会ったが、あの豚野郎のケジメとして、あいつにナイフを差し出した。


 こいつは、それを拒否した。

 俺は、あいつの言葉を思い出す。


「お前なんか殺しても、お父ちゃんは帰ってこねえ。お父ちゃんは孤児だったオイラを育ててくれた優しい人だった。オイラはお前なんかと違う」


 そう言って泣き崩れた。

 マサトの魂は殺しなんか望んでねえ。

 こいつの性根は、男気溢れる正義の心。


 俺なんかよりも、ずっと正しい心を持ち合わせている。


「マサト、いやニコよ、まずはこの石積みを完成させようや? 親分命令だ」


 そして、石を積みながら二人で、話をした。

 あの世界の事。

 どうやってあの世界を救うか。

 人々を幸せにするには、どうするか。


 いまさらこいつとは、父と子の関係にはなれねえけど、血よりも深い親子の絆なら、こいつとは築いてきたつもりだ。


 そして、俺のしでかした過ちの、ケジメをつけなきゃならねえ……その為には。


「親分、この俺を佐々木京子の魂へ、お送り願いやす」


 俺が言うと、体が光に包まれる。

 そして、俺が一番気になっていたことを念じると、親分から心配ないとの回答があった。


 そういうことなら、これから俺のケジメとスジが通せるってもんよ。

 そして俺の体が、どこかに転送された。

 ここではない、どこかの原っぱのような、公園のような場所だった。


 あの世界ではなく、地球でもない、どっかの赤い空の星で、京子はすでに転生していたらしく、肌が青くて髪が赤い、小さな女の子になっていた。


「お嬢ちゃん、ちょっと頭に手を触れるが、いいかな?」


 俺は、京子が転生した女の子に触れて、京子の魂の残骸のような思念体を発見した。


「よう、俺だ。清水正義だが、俺を覚えているか?」


 京子の魂には、すでに情念が無くなり、俺の事は覚えていねえようだった。


「ぶしつけで申し訳ねえが、おめえと俺の子のマサトだけどよう、俺に預けてくれねえか? 今度こそ幸せにしてみせるから。それと転生前、おめえさんの心を傷つけちまって、ごめんな……」


 京子の魂は、マサトの事には反応したようで、一筋の涙を流して、俺にマサトを託す。


 そして京子の転生体の、小さな女の子に頭を下げた後、俺の体は再びマサトと向き合う。


「おめえの母ちゃんに会ってきた。そんで俺は正式におめえの親父だ。今まで通り俺を親として、組を支えてくれ若頭。まずはそこの、石っころを積み上げてくれ、な?」


 マサトが、最後の石を積み上げると、魂はまだ天界へ昇天しねえ……。


 やはり、父親の事に引っかかってんだな。


 普通は、鬼が諭してやって昇天するようだが、どうやらこいつは俺に似て、頑固で根性者のようだからなあ。


 こいつの魂が、まだ納得してねえって事だ。

 じゃあ、やっぱりケジメつけなきゃなんねえな。

 俺は近くにいた、鬼を呼び止める。


「すいませんが、そちらの兄さん、ドスとか持ってねえですか? 包丁でもいいんで」


 さあて、これから勇者マサヨシとして、あの世界を救う為にも、外道の清水正義の最後のケジメ、男としてのケジメをつけよう。


 そして、俺は鬼達が囲む中、包丁を手にする。

 他の子供らに見えねえように、河原の離れた所で、マサトに包丁の柄を向ける。


「ホレ、コレやるよ。実はよお、俺の正体はなあ、おめえがぶっ殺したがっていた、実の親父よ。ケジメ、つけていいぞ」


 するとマサトは涙を流しながら、首を横に振る。


 そうだよなあ、おめえの事は俺が一番よく知ってるよ、そういう事はできねえ奴だって。

 おめえの魂は、ニコとしてあの世界を生きてるものな。

 

 それに、おめえが俺みてえな外道に手を下す必要はねえ。

 最初から俺の男を、おめえに見せてやるつもりだったからな。


「それじゃあ、マサト、いやニコよ、俺がケジメつけるぜ。おめえも俺も、転生前は日本って国で生まれて、大和魂ってのを、持ち合わせてんだ。おめえのおばあちゃん、俺の母ちゃんは、世が世ならお侍の家系よ」


 俺は、その場で正座して、着ていた着物を脱いで半裸になり、包丁を両手で思いっきり腹にブッ刺した。


「親分!」

「腹を切った!? 何しとんねんワレ!」

「おどりゃあアホか!?」

「死ぬ気かキサン!?」


 マサトが叫び声を上げ、周りの鬼どもがビビったみてえで、素っ頓狂な声を上げやがる。

 そしていってえええええええええええええ。

 ちくしょう、くっそいってえええええ。

 昔のお侍さんは、よくできたよこんな事があああ。


「これが……侍にしか……できねえ究極のけじめの取り方……切腹よ……」


 俺は呟くように言い、痛みをこらえて、傷口を真一文字に裂く。

 そしてもう一度、腹をぶっ刺して今度は縦一文字に腹を裂いた。

 そして崩れ落ちそうな体を気合で耐え、泣いているマサトの目を見据える。


「なあ……マサト……いやニコよ……これが父親として……親分としておめえにできる詫びと……けじめだ……。だがよお……おめえは、これからのおめえさんは……こんなことまでして……けじめをつけるような、情けねえ男になるな!」


 マサトは、俺の姿をしっかり見据える。

 涙を流しながら、あいつが持っている正義の魂と男気の(まなこ)で。


「これをもって、俺、マサヨシは極悪組引退を表明する! おめえは極悪組二代目として、弱き人々の盾となり! 悪を挫く(やいば)になれっ! そして、あの仁義なき世界を、大親分として導けええええええええええええ!」


 俺がマサト、ニコに、命がけの極悪組引退を表明するとあいつの体が光に包まれた。

 マサトの魂はニコに変わり、俺を見つめながら天界へと昇っていく。

 そうだ、これでいい。


 これからは、あいつら若衆の時代。

 今後の俺は、あいつらの為に一侠客として、勇者として極悪組を支えてやる。


 そして……痛えんだけど……。

 そろそろ助けてくれねえかな……。


 俺の意識が、遠のく瞬間どこかに体が飛ばされる。

 親分と、ヤミーが見つめていて、そして、お不動さんも姿を見せていた。

 その場に俺は正座したまま。


「見事じゃ! お主の意地、しかと見届けた! 大儀であった!」


 親分は、直立不動になり俺にねぎらいの言葉をかける。

 ヤミーは、駆け寄り神界魔法らしき魔力で、俺の体力を回復してきた。


「マサヨシ、お主、あのまま死んでたら、どうするつもりじゃったのじゃ! 本当に……お主ときたら、いつもいつも、自分を責めてばかりで……」


 うるせえよ馬鹿野郎。

 他に、最上級のケジメの仕方が思い浮かばなかったんだよ。

 そして、ヤミーが腹の傷の痕跡を消そうとしやがるから、俺はあいつの手を握る。


「な、な、な、何じゃお主!」


 これくれえで赤くなりやがって、馬鹿じゃねえのか?


 今のはそういう意味じゃねえし、親分とお不動さんの視線がいかつすぎて怖いから、さっさと訳を言わねえといけねえだろうが。


「俺の腹の傷跡は、直すんじゃねえ。これは俺のケジメだ、このままでいい」


 俺が言うと、ヤミーはこれ以上の傷の治癒をやめた。 


 それにさっきのケジメは、今更、左の薬指や中指、いや、腕とか落としても、全然あいつへの誠意にならねえし、これから魔神とかぶちのめしに行くんだから、戦力ダウンになるだろうがよ。


 だから、命がけで腹切って詫びるしかなかったんだ。


「すまなんだ、貴様をただの外道と侮ってたわ。さすがヤマが認めた勇者、そしてアースラ殿の転生体だけはある」


 お不動さんは俺に頭を下げるが、だからアースラって誰だよっての。

 全然意味が解らねえんだが、まさか第三の試練とやらに関わってきてるのか?

 その前に、親分に確認がある。


「親分、これにて、冥界の第二試練を終了いたしやした。しかしながら、ニコの魂についてよくわからねえことがありますので、ご説明ねがいやす」


 俺が言うと、親分は葉巻を咥え出す。


「失礼しやす!」


 すっと俺はその場を立ち上がり、閻魔大王様の玉座のすぐ前まで赴く。

 閻魔大王様が葉巻を咥えたその瞬間、俺は頭を下げる。

 そして、左手を添えながらそっと右の人差し指から燃焼魔法を使う。


 閻魔大王様は、少しだけ首を傾けて、俺の即席ライター魔法で葉巻に火を着けた。


「うむ、すまぬの」


 閻魔大王様は葉巻の煙を吐き出した。

 そして俺は、元の位置に戻ると再び正座する。


「まず、お主の転生前の息子についての話じゃったな。あやつは、我が従弟のアチャラの領域の一つ、賽の河原において、天界行と転生を拒否し続けた魂じゃった。ここまではお主も理解したじゃろ?」


「へい」


「そしてお主の魂と体を転生させる際、あやつの母親を先に転生させた。それが、あのニコの転生先の育ての父親じゃ。あの子の魂は、父を欲しておったからのう。そして、我があの子を地蔵マンとして説得し、肉体を再構築し、創造神様の許可を得て、あの世界に転生させたのじゃ」


 なるほど、育ての父親とやらは京子の魂の転生体だったのか。

 おそらく京子は、俺のかわりとして今度はまっとうな教育を、ニコに施したに違いない。


「あの子は地獄の罪人の魂ではない。しかし、お主のせいで本来の天界行ができぬ、悲しい魂じゃった。そして、お主があの子への救いへの道を示したことで、あの子の魂は天界行となった」


 ああ、それでマサトの、ニコの魂は天界へと昇って行ったのか。

 待てよ、そしたらあいつの魂は今後どうなるんだ?

 親分からは心配するなと前もって聞いていたが……。


「うむ、案ずるな。すでに天界へ話が通っておるから、近いうちにあの子は天界より力が授けられ、あの世界救済のためにお主達の元へと帰ってくる。手続きがあるゆえ、時間は少しかかるかもしれんがの」


 なるほど、それを聞いて安心したぜ。

 極悪組二代目はあいつだ。

 あいつに、あの世界を導いてもらう。

 俺は、そのために刀を振るう、ただの一侠客でいい。


「そしてマサヨシよ、お主にはこれより、第三の試練、最後の試練を受けてもらう!」 


「へい、わかりやした!」


 ついに来た。

 清水正義としての業を清算し、俺が迎える第三の試練。

 これを受けねえと、あの世界は救えねえと、親分は前に言ってた。


「お主には、本来の魂のあり方について向き合ってもらう! もっとも、お主の元の魂を知ったのは、お主が転生した後じゃがの。お主はこれより、心の奥底におる我が友アースラの魂と向き合うのじゃ!」


 アースラ……。

 お不動さんも口にした、俺の前世のその前の何者かの事か。

 そして俺は、親分から最大の試練、神にして大魔王にして人でもあった、三つの顔を持つと言われる、伝説のアースラとの対話を迎えることになる。

すいません、ほぼ毎日の更新でしたが、諸事情により行進速度遅れます……。

え? 謝罪はいいから、おめえも、マサヨシのように腹切って詫び入れろって?

いやいやいやいや、無理です無理ですって!

勘弁してください、すいませんでしたー _○/|_ 土下座

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ