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仁義なき異世界転生 ~勇者マサヨシの任侠伝~  作者: 風来坊 章
第四章 頂上作戦 
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第84話 賽の河原

 世界崩壊の危機を防いだ、代理戦争から三日たった。

 魔王軍との手打ちの後、何が起きたかは覚えてねえし、気が付いたらニコが死んでた。


 そして俺は、ニコを失った悲しみから立ち直れねえでいた。

 今は、ガルフから貰った酒をかっくらってる。

 こんな情けねえ姿、子分達には、女たちには見せられねえ……。

 だから、自室のテントに引きこもって外に出ねえようにしてた。


 酒で頭は回らなかったが、ロンの兄弟には俺が描いてる今後の絵図を話す。

 演歌でも聴きてえ気分だが、生憎この世界には演歌なんてもんはねえ……。

 

 いつだろう、あいつの正体にうっすら気が付いたときは。

 最初に会った時の手癖の悪さや、物を投げる時のコントロールの良さ。

 そして機転の利かせ方や、女にモテるところを見ると……。


 多分、ニコの正体は転生前の俺の実子、血がつながった息子だ。

 どこぞの女が孕んだんだろうか?

 あいつが、いつ生まれて、いつ死んだかはわからない。

 でも、印象深い記憶が転生前にあった。

 

 俺が、初めて組を持った時だった。

 事務所の前で、10歳くらいの小汚いガキが、俺をじっと見つめてた時があったんだ。

 一週間くらい。


 栄養が足りてねえのか、痩せてこげ茶色の髪をして、まるでガキの頃の俺のような目をしてた。


 名前も素性もわからねえ。


「よう、ぼうず。おめえ、何で毎日ここにいるんだよ?」


 俺は、ガキを追い払おうとする三下をぶちのめして、尋ねたことがあった。

 すると、ガキは何も言わねえでどっかに行っちまい、以来、あのガキの姿を見かけることはなかった。


 たぶん、あの後どっかで死んじまったんだろう。


 それに、あいつを、ニコを世話してやってるとき、妙な安心感があったんだ。

 まるで、外道だった俺の魂が浄化されていくような。

 なんでもっと早く、気が付いてやれなかったんだろう……。


 あいつの事を、ヤスだと思ってたからか?

 アレクシアに転生してた、ヤスの魂だけを救ってやった。

 おふくろの魂も、おやっさんの魂も。

 そして、残りはあいつ一人……。

 親分はニコの真実を知ると、俺の心が壊れると言っていた。


 転生前のあいつの身に何があったんだ?

 俺は冥界の第二の試練を受けるために、ヤミーと共に冥界を訪れる。

 親分が、俺を見やる目は、どことなく悲しそうだった。


 俺にふざけた真似をした、天空神ゼウスは、創造神様から直接何らかの沙汰が下ったらしい。


 親分から、守秘義務があるので言えねえと言われたが、けじめとらされたんだろう。


 そんで、ゼウスとアテネをそそのかした、愛の神カーマ。

 天界の大天使様の話だと、悪魔が成りすましていたらしい。

 本物はとっくの昔に、魂が修復不能になって消されちまってたとの事。

 

 そいつを捕まえるために、大天使さん達が完全武装でガサかけたら、黒い怨念のようなものを残して、去っていったという。


 俺は、大天使さんにたくさんの写真を見せられた。

 かつて現れた魔神や邪神の影像を写した写真で、ガイウスの心を覗いたイメージを知りたがっていたようだった。


 小一時間後、俺はそいつを見つけた。

 魔神マーラー・カーマー、上半身が女で、下半身がでかい竜のような蛇のような姿をした魔神。

 こいつに間違いねえと言った瞬間、大天使様の表情が曇る。

 多分やべえ相手なんだろう。

 

 そしてもう一体、俺はでっかくて黒い大邪神の姿を見たとも告げる。

 大天使さんは、真っ青な顔をして、創造神様に通信を始めた。

 同席してた閻魔大王親分も、ぼそりと、勝てるかのうと呟いてた。

 

 これは俺に言ったんじゃなくて、思わず口から出た言葉。

 つまり、親分でも勝てねえかもしれねえ、とびっきりのやべえ奴だってことだ。


 そいつに対抗するには、俺に3つの試練を是が非でも受けろと、親分より命令された。

 

「マサヨシよ、第二の試練の時じゃ。我が従弟(いとこ)、秦広王の元へ行くがよい」


 親分が右手をあげると、ヤミーと共に冥界のどこかに飛ばされた。

 ここはどこだろうか?

 川が静かに流れる、橋のたもとの場所。


 ああ、ここは確か俺が最初に冥界に来たあそこ、三途の川だな。


「貴様がマサヨシか? 一緒にいるのはヤミーか? 久しいの、元気じゃったか? 見違えたの」


 俺は後ろから声がしたので振り返る。

 後ろに立っていたのは、これまたいかついお人だった。

 左手に剣を持ってる、炎のオーラを纏ったパンチパーマの眼鏡の人だった。

 顔つきがもうね、眉毛が無くて目付きがやべえ。 


「アチャラの兄さま!」


 ヤミーは、いかついお人の胸の飛びこんで抱き着いた。

 そして、俺をじろりと見る。

 親分と同じくらい、いかついし顔が怖い……。


「我が、冥界の魂の選別を行う、上級神の秦広王じゃ。ヤマとは従弟に当たる」


 ああ、親分の血縁者ねえ……もうね、オーラからしてやべえよ……。

 この人も絶対、元大魔王で神々とかぶん殴ってたクチだよ、きっと。


「マサヨシよ、頭が高いぞ! 兄さまはお主の世界で不動明王の異名を持つお方じゃ!」


 ゲッ、お不動さんかよ、いかついわけだ。

 伝説によれば、仏法に従わない者を恐ろしげな姿で脅し教え諭し、仏法に敵対する事を力ずくで止めさせるとかいう、神様の中でも武闘派中の武闘派のお方じゃねえか。


 俺はその場で正座して、三つ指ついて頭を下げる。


「事情は、ヤマから聞いておる。我が担当した、迷える魂のことじゃ、その前に……」


 お不動さんは、左手の剣を振り上げる。

 刃を向けるんじゃなく、刀身を横にして、俺の頭上に……。

 ああ、やべえよ……このパターンは……。


「貴様か! あの哀れな子供の原因を作った元凶の罪人は! よくものうのうとここに来れたの! この罪人めが! 貴様の一番酷い業じゃ! それでも貴様はあのアースラ殿の転生体か!」


 お不動さんは剣で、俺をボコボコにぶち回す。

 覚悟はしてたが、どうやらお不動さんは俺に大層なお怒りの様子。

 ていうかよ……アースラって誰だよ、意味わかんねえ。

 死ぬ、やべえって、マジで死ぬ……ヤキの入れ方がハンパじゃねえ。


「アチャラの兄様、マサヨシが何をしたんですか!? 兄様がこんなに怒るなんて!」


 ヤミーが庇ってくれるが、ヤキ入れが全然止まらねえ。

 多分俺は、転生前にとんでもねえ事をしでかしたんだ……。

 あの、ニコに対して……。

 

 ていうか、ヤミーよお、おめえ俺を裁判してたくせに、何で知らねえの?

 頭スイーツだったからか?

 適当だったもんなあ、あの最初の裁判よお。


「我が冥界の神でなければ、ヤマが認めた勇者でなければ、殺してたところじゃ! そこにいるヤミーと、ヤマに感謝せい!」


 半殺しにされた俺は、静かに地面に頭をこすりつけて詫びを入れる。

 もう、試練に入る前から俺、死にそうになってるんだけど。


「それとヤミーよ、お主には別室で待機を命じる。お主が好きな菓子を用意しておいたゆえ、あとはこやつが解決すべき問題じゃ、よいな?」


 ヤミーは、俺を心配そうに見つめた後、空間が歪み姿を消した。

 俺と、お不動さんはあらためて互いを見つめ合う。


「貴様には、これより賽の河原にいってもらう。哀れな子供らと石積みじゃ」


 賽の河原……。

 親よりも先に死んだ子供が、賽の河原に行き延々と石積みするって言うあれか。


 そう、親より先に死んだ子供は親不孝者として、河原で石を積み上げて石の塔を完成させねばならないが、完成間近に鬼たちがやってきて、積んだ石を崩して、また子供は石を積み上げるという、繰り返しの作業をするって言う、言い伝え。


 そんなわけで、俺は賽の河原に行くと、子供らが石を延々と積み上げている。

 平均4、5歳くらいだろうか? 最年長で、12、13歳くらいの構成だな。

 

 子供らが夢中になって、積み木遊びみたいに石を積んでる。

 しかも、ご丁寧に絵の見本があって、これを作れ見たいな感じで楽しそうな感じで。

 なんか、聞いてた話と違うな。


「あれが、賽の河原の石積みじゃ。ほれ、悪い鬼が来て石を崩しに来るぞ?」


 お不動さんが剣で指さす報告を見ると、金棒持った鬼たちがやってきて、石を崩そうとする。


「そこまでじゃ! 悪しき鬼共よ! この地蔵マンが相手じゃ!」


 はあ?

 なんか、お地蔵さんの着ぐるみ来た、でっかいのが出てきたんだが?

 あんな地蔵いねえだろ、でかすぎんよ。

 3メートル以上あって、何か出てるオーラがハンパじゃねえし。

 遊園地でやってるヒーローショーか?


「ええい、現れおったな地蔵マンめ! 今度こそ貴様を倒してやる」


 鬼共が、でっかい地蔵の着ぐるみに殴りかかると、逆に吹っ飛ばされて派手に倒れる。

 いやいやいや、何だこのヒーローショー。


「子供らよ! 今のうちに塔を完成させるのじゃ!」


 ていうか、あの声……あの着ぐるみの中身……。

 閻魔大王親分がやってる……。

 何してんだよ、この人……いやこの神様は……。


 すると、塔を完成した子供たちの魂が、天に昇って行った。

 なるほど、ああやって子供たちの魂を成仏させてるのか。


「この三途の川は、我が担当してての。子供の魂は、三途の川のほとり、この河原に着いたとき、親を探して泣き叫ぶのじゃ。その子供達を悟すようにしてやって、親の事を忘れさせるよう、遊戯に没頭させるのが本来の賽の河原の目的じゃ。未練があると、転生も天界行もできんからの」


 お不動さんは、呟くように言った。

 なるほど、子は親を慕うから、その気持ちを忘れさせないと、天界にも行けねえし、転生もできねえって事なのか。

 

「さっきの劇はの、ヤマの仕事の一つじゃ。あやつ、この仕事に力を入れてて、ああして子供たちが成仏できるようにするのはヤマのおかげなんじゃよ。これも魂の循環に必要な事じゃからの」


 なるほど、親分は色んな仕事というか事業を手広くやってんだな。

 そして俺はうっすら気が付いている。

 俺がここに来たってことは、もしかしてニコの魂もここに。


「ほれ、さっさと準備せい。貴様には特別な石積みを用意しておいたわ」


 俺はお不動さんに命じられるがまま、河原にくる。

 周りのガキらの視線がいてえ……。

 お兄ちゃん何でここに来てるの? みたいなさ。

 無邪気な好奇心の視線と、大人のくせに何でっていう視線がいてえ。


 そして、俺には特別な石積の見本というか、設計図が鬼から渡される。

 ていうかよ、これただの石積みとかじゃなくて、でっかい塔作れって書いてる。

 なになに、賽の河原監視塔? 夜は絶景の観光スポット……。

 可愛らしく純粋な子供たちの昇天が見れる、感動の場所。

 高さ1キロメートル、最新レクリエーション施設満載、神界組合価格で激安……。

 現在建設資金寄付を神界より受付中、冥界神一同より……。


 おいいいいいいいいいいいい。

 お不動さん、自分のシノギに、俺をただ働きさせようとしてんだが。

 あれだ、政治家とかが俺達極道に公共事業の手伝いとかさせる、あれだよ。


 転生前は、ゼネコン業者とか政治家連中にカスリ取れる、でかいシノギだったけど、お不動さん俺をただ働きさせて、このレジャー施設作る気だよ。


 ひでえよ、俺達ヤクザよりタチわりいってコレ。

 えーと、これ作るのどれだけ時間かかるんだ?

 完成予定、千年……。

 これあれだろ? 箱物完成させねえで、神界からカスリとってるだろ……。


 まあ、しょうがねえや、やるっきゃねえよ。

 俺は、賽の河原で子供たちに交じって、塔の建設を進める。

 ていうか俺、建築業者や職人でもなんでもねえから、何から進めんだ?


 とりあえず、砂利集めてコンクリから作ろう……。

 俺は日雇い労働者よろしく、作ったコンクリブロックを、石組みてえにして塔のガワを作る。


 すると、お不動さん配下の鬼が金棒持ってやってきた。

 ああ、これ親分がやってるヒーロー劇の茶番の流れか?


 すると、周りの鬼たちが指さして、どんどん集まってくる。

 ん? 俺にすげえメンチ切ってるんだが、この鬼の人ら……。


「おう、ワレコラ? 何でワシらに断りなく箱物とか作っとんねん」

「ここは秦広王様の縄張り(シマ)じゃけえのう」

「よその縄張り(シマ)から来た、チンピラが何をいちびっとんねんゴラァ!」


 へ?

 いやいやいやいや、ちょっと待てよ。

 俺がこの事業頼まれたんだけど、他ならぬお不動さんから。

 これあれだよな、地元の極道に全然話伝わってなくてケジメ取られるパターンだ。


「いやいやいや、そちらの秦広王様より頼まれた事業でして……」


「何をカバチ垂れとるんじゃチンピラァ!」

「おう、たいぎい真似してくれるのうチンピラァ!」

「こがぁなもん、さっさとブチめげぇ!」

「いてまうぞボケコラ!」

「このカスなめとんかゴラァ!」


 お不動さん配下の鬼たちに、せっかく俺が作ろうとしてる塔が壊されそうになる。

 た、たすけてくれえええええ。

 早く来てくれ地蔵マン様あああああああ。


「そこまでじゃ! 鬼共!」 


 すると可愛らしい声をした、ちんちくりんの地蔵マンが現れた。

 ……ていうか、これの中身あいつだろ。


「な!? 地蔵マンめ! 今こそ積年の恨みを晴らす時!」


 ああ、助けてくれんだな。

 そうだよなあ、一応こいつも親分の事業の手伝いしねえと……。

 ん? なんかこの地蔵マン俺を見てにやりと笑った気が……。


「そういえば我も、これができるの楽しみにしておったわい。それをなんじゃ、あんな雑に作りおって、我がこんなもの壊してやるわい」


 ちょ……ちょっと待てええええええ。

 なにこいつ、やっと現れたと思ったら嫌がらせに来やがったあああ。

 すると、ドSの地蔵マンに石が投げつけられる。

 結構離れたところから飛んできたようで、ピンポイントに頭に当たる。


「い、いたっ! 誰じゃ!」


 俺と地蔵に扮したヤミーが方角を見ると、俺が転生前に見たガキがいた。

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