表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仁義なき異世界転生 ~勇者マサヨシの任侠伝~  作者: 風来坊 章
第三章 代理戦争
82/163

第81話 代理戦争 中編

「ち、痴女じゃああああ。ち、痴女がおるぞマサヨシ! なんなんじゃあの破廉恥な」


 ヤミーが、赤いマイクロビキニ水着のようなものを着た、ベリアルを指をさしながら、マサヨシに視線を向ける。


「ちょ、刺激すんな! あのお子様多分やべえって! もう全部ぶっ壊す気満々みてえだから余計なこと言うんじゃねえよ、このチンチクリンが!」


 マサヨシがヤミーに大声で、注意を促すが、それを聞いていたベリアルは、一瞬こめかみに青筋が浮かぶ。


「ねえねえ、アスモデウス? あいつら殺していいのか? ベリアルが殺っちゃっていいか?」


「ま、待て! ベリアル。まずはこの状況を……」


 その時、天空から白いローブを見にまとった、白髪の長髪に、白く長いヒゲを生やした、筋肉隆々の老人が現れ、マサヨシや悪魔達の前に現れる。


「マサヨシとかいうのは、どいつじゃ! このワシをなめおって、ぶち殺してやるぞ人間め!」


 ああ、あれが最強神の一人とかいう、ゼウスに違いないと、マサヨシは若干冷や汗をかきながら思う。


 身の丈2メートルを超える、筋肉隆々の肉体に加えて、全身からまとう雷の強大なオーラに、この場にいる悪魔達は、死を覚悟した。


 ただ一人をのぞいて。


「おお、すごい強そうな神っぽいのが来たのだ。ベリアル、ワクワクしてきたのだ」


 まるで、遊園地ではしゃぐ子供みたいだなと、マサヨシは思い、アスモデウスはベリアルを呼び、馬鹿な事はやめるようにと諭す。


 そして、マサヨシはゼウスへ歩を進める。


 これ以上この世界を、神々に弄ばれてたまるかと思いながら。


「あたくしがマサヨシです。そちら様は、ゼウス様に相違ありませんか?」


 マサヨシがゼウスに声をかけると、ゼウスに従う神々が、マサヨシ達を取り囲み、さらに、これを地獄の鬼達が取り囲むような形で、一触即発の状況となっていた。


「貴様か、冥界の罪人め! 閻魔大王を出せ、貴様の命差し出せば、許してやらんわけでもない」


「失礼ながら、ゼウス様。親分は冥界で忙しい。代理として女神ヤミーがおりやすんで、お話しをしましょうや」


 マサヨシは、ゼウスの目をジッと見ながら交渉事へと移行する。


 常人ならば、自分の命を奪う前提の相手との、交渉はなど出来るはずないが、マサヨシは転生前、命懸けの交渉を、幾度も経験している、武闘派ヤクザ である。

 

 またゼウスの眼差しは、転生前の清水正義の魂なら、目があっただけで、ショック死するほどの眼力だったが、今のマサヨシは、胆力、精神力ともに、人間を超えていた。


 それに、これよりも恐ろしい眼力を持った、閻魔大王と比べれば、はるかにマシだと、マサヨシは思っている。


「こんな三流の下級神などと、話せるか」


 マサヨシはゼウスの回答に、落ち度があったと判断し内心歓喜したが、ワザと怒ったフリをして、こちら側へ有利な状況にしようと、考える。


 そして、不安そうな表情を浮かべるヤミーには、心配するなと念を送り、心を読めるヤミーはマサヨシを見てコクリとだけうなずいた。


「ちょっと待ってくれませんか? ゼウスさん。他ならぬ閻魔大王の代理が“こんな“とは、どういう意味ですか? だいたい、今回の件、創造神様の許可、とっているんですかい?」


「創造神様は忙しい! こんな世界を破壊する許可など、一々とるか、馬鹿馬鹿しい」


 周りの神々は、驚愕の表情でゼウスを見やる。

 それは、さすがにまずいだろうという顔で。

 

 そして、マサヨシは重要な言質をとったと、ほくそ笑んだ。


「ほう、そうですかい。で? あの女神アテネに危害加えたって情報をどこから得たんで? 娘さん意識不明の重体ですから、吹き込んだ神さんが、いるんじゃねえですか?」


 マサヨシは閻魔大王から聞いていた。


 神界の勇者ガイウスが、この世界に来たのは、女神アテネをそそのかした、神々の陰謀があるという事を。


 そしてその神が、実は神界に潜り込んだ魔界のスパイで、ガイウスの背後にいる、邪悪な魔神と、なんらかの関係がある可能性が高いと、マサヨシは推測していた。


 転生前、裏切りや陰謀渦巻く、裏の社会で生きてきたマサヨシの組み立てる推測は、比較的確度が高く、それ故に、今まで生き残って来れたのだ。


「貴様の仕業をワシに教えたのは、愛の神カーマじゃ。そんな事を聞いて何になる!?」


 そいつだ!

 俺たちをハメた、神の正体は。

 マサヨシは、重要な証言を得た。


 そして、マサヨシは兄貴分の駒魔犬に目で合図し、閻魔大王にこの報告が成され、大王は大天使ミカエルに連絡をつけた。


 女神カーマを拘束するために。


「なるほど、あんたは娘と同様、そいつからケツ掻かれた、ボンクラみてえですね」


 マサヨシはゼウスに、吐き捨てるように言い、ゼウスはたかが人間の分際でと、憤怒に満ちた顔になる。


「なんだと貴様! 人間のくせにこのワシに!」


「なんだこのボンクラァ! てめえ最上級神だかなんだか知らねえが、こっちを“こんな”呼ばわりして、なめやがってコラ! てめえらそのカーマってのにハメられたんだよ馬鹿野郎!」


 ゼウスは、憤怒の表情になった、マサヨシの漆黒の瞳を見やると、彼の気迫、胆力、そして修羅のようなオーラを、遠い昔にどこかで見た事がある気がした。


「おう? コラ。てめえの娘が勝手に勇者を送ってくるわ、その勇者が魔神に取り込まれるわ、創造神様の許可取ってねえわ、全然筋が通ってねえ、ふざけんなこのボケ!」


「ま、魔神だと!?」


 ゼウスが驚愕したその瞬間だった。


「どーーーーーん! なのだ」


 ベリアルが、いつのまにかゼウスの背後に立ち、魔界の特殊合金製のブーツで、ゼウスの股間部を、つま先で思いっきり蹴り上げた。


「んんんんんんんんん!」


 不意の攻撃に、ゼウスは衝撃と吐き気を覚え、両手で股間を抑えてうずくまり、白のローブから出血が見られる。


「ヒュルルルルルルルル、ボーーーーーン! なのだ!」


 ベリアルが空中を飛び、三回半捻りをすると、うずくまったゼウスの側頭部を、思いっきり回し蹴りして、吹っ飛ばした。


 そして辺りはシーンと、静まり返る。


「ゼ、ゼウス様がああああああ」


 ゼウスに従う神々が、叫び声を上げた。

 

 そして、オリンポスの男神の一人が駆け寄ると、ゼウスは完全に失神し、口から泡を拭いており、ローブ越しに下腹部の出血を触ると、青い顔をして、周囲の神々に首を振る。


「だあああ、何やってんだこのガキャァ!」


 予想外の出来事に、マサヨシは狼狽してベリアルを見やる。

 

 まさか、最強の神と呼ばれたゼウスが、エグい不意打ちとはいえ、二発でダウンするとは思わなかったからだ。


「口喧嘩とかまどろっこしいのだ! 喧嘩するならさっさとやればいいのだ!」


 すると、神々が一斉にベリアルに襲いかかり、親衛団所属の屈強な悪魔達も、戦闘を開始し、地獄の鬼達は、その様子を唖然としながら見ている。


「アスモデウス、なんなんだあいつは! せっかく話がまとまりかけてたのに、ふざけんな馬鹿野郎!」


 マサヨシは、アスモデウスに詰め寄る。


「べ、ベリアルはああいう奴なんだ! いつもいつも、問題ばかり起こして! こうなれば勇者よ、貴様との因縁も決着をつけてやる!」


 アスモデウスは、身にまとった黒の軍服を脱ぎ捨てると、黒い下着姿となり、マサヨシを切り札の魅了の能力で、誘惑し始めた。


 マサヨシは、自分が想像していた以上の、アスモデウスの豊満で女性らしい体に、思わず見惚れ、そして体が動かなくなった。


「な!? こ、この、ドスケベ女が……か、体が、思うように動かん、てめえ何をした……」


 魅了の能力は、異性であるならば、種族を問わずアスモデウスに抗う事が困難となり、地獄巡りで大幅に精神力が増したとはいえ、今のマサヨシには抗う術がない。


 そしてアスモデウスは、胸の谷間から、魔界の竜の髭でできた、漆黒の(ムチ)を取り出した。


「ふふふ、約束だぞ勇者よ。貴様が敗北をした暁には、部下として、一生私の言う事しか聞けぬようにしてや……むきゃあ!」


 ヤミーが鬼達から借りた金棒を、アスモデウスの頭部へ、思いっきりフルスイングし、吹き飛ばされた彼女を、レオーネが風魔法で加速させ、アレクシアが正面衝突するような形で、飛び膝蹴りを彼女の顔面にヒットさせる。


「マサヨシは」

「お前などには」

「渡しません」


 マサヨシの体が光り輝き、背中に刺青が入った状態に変わり、彼は女同士のバトルを横目に見て、冷や汗をかきながら、ベリアルと神々の戦いを眺める。


 圧倒的な強さで、神々を魔法と蹴り技で蹂躙するベリアルの矛先が、どうか自分に向かないようにと眺めていたら、彼女の黄金の瞳と目が合う。


「今度は勇者と遊ぶのだ」


「遊ばねえよバカヤロー、地獄の苦痛(ペイン)


 マサヨシは、地震が経験した叫喚地獄をイメージし、空間ごとベリアルを封印して、相手を戦闘不能に陥れる、冥界最上級魔法を放つ。


「どうだ、クソガキが! 泣いて小便チビりやがれってんだ」


 すると、叫び声を上げるどころか、ベリアルが幼子がはしゃぐような、無邪気な笑い声を上げ、封印された空間ごと吹き飛ばした。


「たっのしいのだ、勇者! もっとベリアルを楽しませるのだ!」


 マサヨシは舌打ちしながら、俺は全然楽しくねえよと思いながら、木刀を手にすると、木刀は漆黒の長大な長ドスへと姿を変える。


 そして、ベリアルが放つ強烈な4連発の回転蹴りを、ドスで受け止めるが、あまりの蹴りの威力で吹き飛ばされる。


 しかし、マサヨシは地面にドスを突き刺しながら、なんとか態勢を整えた。


「おお、なかなかやるのだ! それではこれならどうだ、勇者! 死の火炎(デスファイアー)


 ベリアルは、勢い良く息を吸い込み、そして全てを燃やし尽くすような火炎のブレスを吹き出すが、マサヨシは咄嗟に左目の眼帯を外して、精霊の瞳を発動した。


 そして精霊の視力で、自身に超高速で迫る炎の渦を、魔法効果を打ち消すドスで断ち切ると、二手に分かれた炎が、マサヨシの遥か後方の平原で、火炎旋風を引き起こし、高さ数100メートル以上の、巨大な炎の竜巻となった。


「てめえ、ガキのくせに、なんて凶悪な魔法を使いやがる! 化物か?」


 マサヨシは、風の力を身にまとい、一気にベリアルに間合いを詰めて、長大な長ドスでなぎ払うように斬撃を繰り出すが、ベリアルは口を開けて、噛み付くように刃を受け止めた。


「ふははえはのら」


 ベリアルはドスの刃を口に咥えながら、今度はマサヨシに向けて、黄金の瞳から、破壊光線が撃ち出され、赤い光線がマサヨシの体を照らすと、炎の光が膨れ上がり、轟音と共に大爆発を起こした。


死の爆発(デスフレアー)なのだ」 


 爆煙が晴れると、土で覆われたシェルターが、マサヨシがいた周囲を囲んでおり、マサヨシは、地中に引きずり込まれ、地下トンネルのような場所へ出る。


「マサヨシさん、大丈夫ですか!?」

「兄貴! ご無事で!」


 地中から、土人形のような埴輪(ハニワ)に精霊化したみメリアと、コルレドが姿を現し、マサヨシに駆け寄った。


「メリアちゃん、それにコルレド! なんでここに!?」


「すんません、兄貴。教王様の演説の後、共和国で軍事クーデターが起きやして、自分は軍に拘束されたんですが、メリアちゃんと、武神隊が助けてくれたんです」


 埴輪のような姿になったメリアが、マサヨシに可愛らしくうなずくと、笑顔になったマサヨシは、優しくメリアの頭を撫でた。


「兄者!」

「親分!」


 ガルフの先導で、極悪組の面々も、トンネル内に姿を現す。


 安全な地下トンネルやダンジョンの、探知と、探索は、ドワーフが最も得意とする分野であり、メリアが掘る土中の微弱な振動を感じ取り、入り口を見つけて、トンネルに侵入したのだ。


「首都から、ここまで遠いはずなのに、すげえなメリアちゃんは。助かったぜ、ありがとうな」


 マサヨシが、メリアに礼を言うと、地上から、無邪気な破壊者のベリアルの声がする。


「勇者はかくれんぼ大会が、したいようなのだ。ベリアルが鬼を、やればいいのか? それとも地上の鬼と鬼ごっこで遊べばいいか? こんな風に」


 すると、地上から地獄の鬼の軍勢から、悲鳴が上がり、マサヨシは舌打ちしながら、この化物娘がと心の中で毒づく。


 そして、勝利のためにマサヨシは思考をフル回転させる。


「メリアちゃん、すまねえが、うんと深い穴とか掘れるかな? 土の精霊魔法でさ」


 小声でマサヨシが言うと、メリアも地上のベリアルに気がつかれないように、うなずくと、マサヨシは、ニヤリと悪い笑みを浮かべた。



 一方、アスモデウスと、女達の戦いは熾烈を極めた。


「チッ、この女神思っていた以上に強い! 参謀本部大将、貴様はなぜ勇者の仲間達の味方をするのか! 上官を攻撃など……軍法会議にかけて処刑するぞ!」


「元帥閣下、もう魔王軍は終わりです。それに私はこの人達の事など、どうでもいいのです。私はマサヨシ様だけの味方です」


 アレクシアは、腰を深く落として、下着姿の女悪魔のみぞおち目掛けて、正拳突きを繰り出す。


 アスモデウスは、まともに打撃を受けて、海老反りのように、衝撃でのけ反ると、上から金棒を振り下ろすヤミーの攻撃の気配を感じ、間一髪で攻撃をかわす。


 ヤミーは、神界法を二度違反して、生まれ持った大魔王としての力を失う代わりに、神としての力を手に入れた。


 また、神界法は“ 神がサポート以外で人間の世界で直接力を二度行使する場合、力が消失する“と、明記されているが、三回以上の力の行使に関する罰則は神界法にない。


 そして、すでに刑を執行されて力を失って処罰されている以上、ヤミーはこの世界で、何度でも神の力を行使できる、超法規的な存在になっていた。


「マサヨシを誘惑する悪魔のブスめが! 兄、閻魔大王の代理として、我が貴様ら魔王軍に引導を渡してやるわ」


「黙れ女神よ! いかにお前が大魔王の力を持とうが、祖国を失い、我が軍の戦争意義を失っても、私のプライドと部下は失ってたまるか! 私のプライドにかけて、亡国と化した魔界の諸国の代理として、勇者は絶対に私のものにしてやる!」


 女同士のプライドをかけた、代理戦争の激しい火花が散り、そして地中では、大魔王の実力を持つとされる、魔界最強クラスの悪魔と、マサヨシ達極悪組との決戦の火花が散っていた。

次回、第三章最終話の予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ