第79話 地獄
と言うわけで、地獄巡りのスタートよ。
しかし、転生してからも、刑務所に入るとは、つくづく因果な話だぜ。
そして、この地獄じゃ俺はいくら娑婆でイキがってても、新人扱いだから、転生前極道やってた時のように、組織的に庇ってくれる仲間らもいねえだろうなあ。
なんかやったら、すぐ懲罰とかだろうし。
いやいや、ビビるなマサヨシ、地獄の懲役共にナメられんぞ。
シャリ上げとか、丁稚扱いとか新人イビリしてきたら、相手ぶっ殺す気概を見せねえと、多分この千年、魂が持たねえ。
「ちょっと! なんでアタシもアンタの刑に付き合わなきゃならないの!」
精霊フューリーも、同化して刑を受けさせる。
こいつには、俺の人助けって事で、一緒に刑を受けてもらうし、それだけの事を、おめえもこの世界でやってきたんだから、俺の地獄めぐりの旅の道連れよ。
まず最初は等活地獄。
もうね、地獄を千年分経験して、あっちの時間で一か月で、懲役終えるって言うから大忙しよ。
俺が最初アカ落ちしところは、刀輪処って言って、みんな刀とかの道具持って、互いにぶっ殺しあってんのね。
やべえだろ?
そんで鬼の兄弟分達から、過酷なヤキとか想像したが、俺に刀とか渡して来て、あいつら好きにやっちまえとか言うわけさ。
いやあ、助かったわ。
俺、閻魔大王親分から盃頂戴してるから、官が味方って言うか、地獄の鬼達はみんな兄弟分だから、全然懲罰とかされねえのよ。
そんで、俺が人斬りマサって言われてたって事で、亡者共が恨み辛みで、俺の命狙ってすげえ湧いてきた。
ムカつくだろ?
「てめえら、不良のくせして、泣き言とか言いやがってこの野郎! 全員かかって来いコラ! ぶった斬ってやっからよお!」
もうね、全員ぶった斬ってやったわ。
そしたら、体再生してまたかかって来たから、よっしゃあ、死なねえなら無茶苦茶やってやんぜって、ヤクザのヤキ入れ大会よ。
「ガッハッハ、マジで地獄の亡者とか死なねえぜ! オラオラどうした根性なしが!」
「すんません! 勘弁してくだせえ!」
「もう、逆らいません!」
「許してください!」
「なんだとこの野郎! 全員指出せオラァ!」
罰として小指落としてやった。
そしたら次から次へと亡者とか、湧いてきやがるから、その繰り返し。
もうね、テレビゲームの経験値稼ぎみたいなもんで、そんな作業が延々と続くわけだ。
鬼の兄弟分ら、ひでえ奴らで、その様子見てゲラゲラ笑ってやがるし、仕事サボってんじゃねえよって思ったわ。
そんで、次に行ったのは多苦処。
地獄の亡者共が、鬼の兄弟分達から崖からどんどん突き落とされたり、爪剥がされたり、石乗せられて正座とかさせられてんの。
それを俺は、ぬるいって指摘して、釜茹でさせてからコンクリ詰して血の池に沈めたり、縄で縛って逆さでバンジージャンプさせた後、途中で紐切って落としてやったり、指全部落とした後、塩塗り込んだりとか、ヤクザなケジメのやり方教えてやった。
そしたら、鬼の兄弟分達ありがとうって喜んでた。
え? 俺のヤキ入れはどうなのって?
やられるわけねえだろ、身内なんだから。
雑談しながらヤキの入れ方教えてやったわ。
次行ったのは極苦処。
なんかここに来るの、粗暴な凶悪犯ばっからしくて、もう亡者の野郎ら、めちゃくちゃに喧嘩しまくってんのな。
で、当然俺に喧嘩売ってくんだろ?
そしたらもう、殴る蹴るよ。
そんでも、クソ生意気な物言いしてっから、鬼の兄弟分らから、金棒借りてボコボコにブチ回してやった。
そのあと、燃える鉄板の上で、詫び入れとしてごめんなさい1万回言わせたあと、焼き土下座よ、焼き土下座。
ちっとは、この亡者共も、誠意って言葉を覚えんだろうよ。
それが終わったら、瓮熟処な。
鬼の兄弟分らが、いい湯加減にしてくれてよ。
長風呂して来た。
あちいって泣き入れてる、亡者尻目にさ。
最後は、闇冥処行って、布団とテレビなんかも用意してくれてそのまま就寝よ。
鬼の兄弟らは、ここが一番ヌルいとこだから、本番の地獄の苦しみが始るまで、ゆっくりしてってくれって言われたな。
次に行った刑務所は黒縄地獄と衆合地獄。
ここまで来ると、強盗殺人とかしやがった、凶悪犯ばかりのムショみてえで、空気が違った。
で、鬼の兄弟分らも、黄金の肌した気合入ってるの多くて、次はどんなヤキ入れてやろうかって、考えてる奴らばっかなのね。
だから俺は言った。
「とりあえず、亡者の奴らあそこの剣山昇らせて、天辺でブレイクダンスさせてから、タップダンスやらせればいいんじゃね? うまく出来るまで」
そしたら、亡者共は剣山の上でダンスパーティーよ、血だるまで泣きながらさ。
あと血の池の上で、亡者を燃えた縄で綱渡りとかさせてやがったから、真っ赤に熱した、でっかい斧の上で綱渡りやらせてやった。
文句言う奴は、燃える鉄板の上で、詫び入れとしてごめんなさい10万回言わせたあと、焼き土下座させながら、斧や金棒でヤキ入れよ。
あと、亡者どもを血の池に潜らせて、鬼の兄弟らと一緒に、息継ぎして顔出した奴らへ、射的ゲーム開催なんかもしたっけか。
最後の仕上げで、ここには拒魔犬の兄貴の子供らが沢山いるんで、子供らに兄貴の偉大さを話してやりながら、子供らの得意技の実験って事で、縄で縛った亡者相手に、超絶火炎魔法を俺と一緒に練習よ。
この次以降の地獄は、もう鬼の兄弟らも立ち入らねえ、囚人達の自主性とやらに任せるって言うやべえ場所で、一切の便宜はねえとの事。
ここからは俺の男が試される場所だった。
叫喚地獄に立ち入る。
元々俺が刑を執行されるはずの、筋金入りのワルばかり集められた地獄。
どんな所だって? 個室で独居房だったよ。
ていうか、懲罰房みたいな所。
立ち入った瞬間、ありとあらゆる、苦痛が飛んでくる。
ある時は火責め、ある時は虫責め、またある時は床と天井が狭まって、何度も潰されたり、またある時は、苦痛だけを与える目的のガスか何かが充満する。
その他、毒の水が部屋いっぱいになって、何度も体を溶かされるは、飢えた地獄のネズミ集団に体を食われ続けるわ、そうかと思えば、丸一日身動きが取れなくなり、額に水滴を1秒毎に垂らされる。
そしたら隣の房の野郎、泣き入れて叫びやがってやがったから、うるせえボケって房蹴飛ばしたら、その瞬間、身を焦がすような、高圧電流が丸一日流れ続け、俺も大絶叫よ。
そうかと思えば、俺が不幸にした連中らしき奴らの、呪詛みたいな恨み辛みが耳下でささやかれ、さすがに泣き入れながら、叫び声を上げた。
そして厄介なのは、叫べば叫ぶほど、この懲罰房のヤキの入れ方が、激しくなって来やがる点。
こんな所に予定通り、4千年とか入れられたら、魂の消滅を願い出るよ。
叫喚地獄とはよく言ったものだ。
話し相手だったフューリーは、もはや一言も口を聞かなくなった。
次は、焦熱地獄でヤスがいる場所。
ここまで行くと、稀代のワルしか入れない。
どんな地獄かって?
体を細胞レベルまで分解されて、燃える恒星のような浄化の炎で、痛覚と感覚保ったまま、焼き尽くされる。
極炎で焼かれた後は、痛覚と感覚が残ったまま、極低温の絶対零度の世界で、凍りつくされる。
これをおおよそ、一分毎に繰り返す。
何が来るかわかる分、シンプルにキツイ。
頭おかしくなりそうだった。
「もう、慣れちまいました。兄貴がいねえ方が辛えです」
ヤスの魂が、語りかけて来なきゃ確実に俺は狂っていた。
そして、ヤミーの馬鹿が最初に下そうとした、無限地獄の懲役で、俺は最悪の地獄を経験する。
そこは地獄の最下層で奈落の穴。
ブラックホールみたいなところで、魂が歪みそうな高重力の嵐を抜けた先は、光も何もない空間。
聴覚、嗅覚、視覚、感覚、味覚が、一切存在せず、平衡感覚も時間感覚もクソも無いような、無の空間で、自我と苦痛の思いを保ったまま、ひたすら漂うような最悪の懲役だった。
そして俺は最初の等活地獄で目を覚ます。
キツイ経験だった。
まさに地獄巡りとはよく言ったもの。
さすがのフューリーもキツかったらしく、すすり泣いていやがった。
「ふむ、マサヨシよ。キツそうだな」
魔獣の姿になった、拒魔犬の兄貴が現れた。
口から青白い炎を、今にも俺にぶっ放しそうな、本来の姿になってる。
「ああ……兄貴、どうしてこちらに?」
「うむ、私の子供達が世話になったようだな。閻魔大王様の担当する、全ての地獄を体験した懲役1か月間の1日目、さぞ疲れたろう」
……え!?
いやいやいや、ちょっと待てよ。
あれが俺が送る懲役の1日?
千年分を一ヶ月でやるってそういう……。
「ハハ……兄貴、冗談でしょ?」
「……がんばれ」
俺は絶望で膝から崩れ落ちた。
この他、色々な地獄を経験したよ。
親分と交友ある、ハーデスさんって神様の所の地獄に行って、神曲のダンテさんよろしく、九つの地獄とかも経験したり、他に原初の地獄とか、それはもう俺が泣き入れて、魂の消滅を願い出るような、やべえ地獄ばっかりだった。
やっぱさ、悪い事はしちゃあいけねえな。
ヤクザな俺が言うのもなんだけど。
そして千年の懲役が終わり、俺の魔力と精神力が飛躍的に増している気がする。
懲役を終えた俺に、ヤミーが抱きついた。
「マサヨシ、あの世界が!」
どうやら再会を喜び合う暇はなさそうだ。
ヤミーの話によると、ゼウスとその配下の神々達が、次々とあの世界に、侵攻準備をしているという話だった。
そして、俺は第二の冥界の試練を受ける前に、地獄の鬼の兄弟達と一緒に、親分の元に呼び出される。
「者共、戦争じゃ! 創造神様の仲裁が入る前に、我らの力を思い知らせるのじゃ!」
親分の喧嘩開始の宣言がなされる。
創造神様のやめが入るまで、徹底的にやる気だ。
神界と冥界の代理戦争が、神同士の戦争に変わり、あの世界の存亡をかけた戦いへと変貌してしまった。
そして俺とヤミー、拒魔犬の兄貴は先んじて、仁義なき世界に帰還する。
空は暗雲が立ち込めて、闇に包まれていた。
せっかく俺とヤミーが、太陽を取り戻して、明るくなった世界なのに。
「ごきげんよう、マサヨシ様。ご帰還お待ちしておりました」
東部戦線の前線基地には、なぜかアレクシアがおり、傍には、俺に申し訳なさそうな顔をした、レオーネの姿も……。
ああ、これはアレだ。
絶対やばい事起きてる。
「マサヨシ殿、王国で革命が起きました。首魁は、ラウール・ド・コルネリーア、私の父です」
「はあああああああ?」
革命って……おい。
なんじゃああああ、そりゃああああ。
レオーネの親父さん何してくれてんのよ!
「申し訳ありません! 精霊領域のエルフ領も、革命軍と旧聖騎士隊に占拠されました。あの地域は私が大公ですので、領地の正当性を、父が主張して」
ていうか、あの人枢機卿だろ教会の。
それに、旧聖騎士隊って。
「マサヨシ様、私から説明しましょう。ああ、これでマサヨシ様のおそばに、ずっといられます。なんて素晴らしい」
いやいや、全然素晴らしくねえよ。
俺の胃に穴が空きそうなんだけど。
アレクシアの話によると、教会がアレクシアを悪魔勢力と認定。枢機卿制度と、聖騎士制度を撤廃し、王国へ強制送還した。
そして一週間前にラウールの親父さんや、旧聖騎士隊を中心とする、貴族勢力による革命が王国で起き、王位に未練など微塵もなかったアレクシアは、魔王軍にペテンかけながら、あっさりと共和国連邦に亡命する。
そして、共和国西方の王国と共和国連邦の戦争はエスカレートして、泥沼の仁義なき戦いになっているという。
難民問題を抱えた東部戦線は、俺の禁を破ったマフィア連中が、難民の殺害をした結果、自国民保護の名目で、ガイウス率いる皇国軍が侵攻し、極悪組と共和国軍による、泥沼の戦争状態に陥っているようだった。
ロンと極悪組の面々が集まり、俺に頭を下げ、詫びを入れに来た。
ガイウスの野郎、あの馬鹿女神がいなくなって、やる気満々だな。
あいつとゼウスが手を組まれたら、まずい状況になる……というかすでに組んでるかも知れんな。
そして魔王軍の状況は、アレクシアによると、魔界から増援がやって来るものの、魔界各国の多国籍軍と化し、指揮系統が全然とれねえらしく、アスモデウスが往生しているようだ。
そして、この世界を舞台にした、天空神ゼウスと、閻魔大王親分との喧嘩。
間違いない、この世界滅びの道に向かってる。
ふざけやがって……。
親分はともかく、俺が救うべき世界、俺の縄張りで、好き放題やりやがって、全員ぶち殺すぞボンクラ共が。
ん、待てよ。
俺は極悪組の面々を集合させる。
共和国大統領になったコルレドも出席し、ロンとアレクシアも全員この場に集める。
教王さんは、公務で来れねえらしいがしょうがねえ、ここにいる全員に、俺の描いた絵図を打ち出そう。
「おう、俺がちょっと留守にしてる間に、なんだこのザマはよお。神界から来た勇者やボンクラ共にいいようにされやがってコラ!」
全員がうなだれる。
まったく、しょうがねえ兄弟達、子分達、女達だぜホントよお。
「俺が帰った以上、好きにはさせねえ。おい、アレクシア、おめえの権限で魔王軍を東部戦線に、集合させろ! あと、共和国東部で亡命政権作ったとか表明して、裏切り者の王国の革命騎士団も呼び寄せとけ」
「なるほど、マサヨシ様。そういう事ですね」
理解が早いな。
さすがはヤスが転生してただけはある。
「おう、ブロンド! おめえ本名のグルゴン名で、この前形だけ作った、エルフ王国亡命政府の声明出して、アレクシアとエルフ領域の正当性主張しろ。自分は共和国連邦東部にいるって告げてな。ニコ、サポートしてやれ!」
「はい、わかりました。親分」
よおし、子分達頼むぜ。
「レオーネ、おめえは親父さんに連絡取り付けて、俺との婚姻を狙うアレクシアの亡命政府に、誘拐されたとでも伝えろ!」
「わかりました、マサヨシ殿」
親父さんは、俺とレオーネが結婚する事を強く願っているから、騎士団率いて、何がなんでもレオーネを奪還しに来るだろう。
「ガルフ、おめえさんは自分の王国のカミさんに、エルフ王国にいる残りの騎士団連中を、ドワーフ使ってさらわせて、戦闘不能にしとくよう、言っておいてくれ」
「わかったぜ兄者」
よおし、王国のクソ馬鹿連中はこっち来る。
そんで俺の縄張りから追い出してやる。
魔王軍の奴らもな。
「コルレド、おめえは王国騎士団の守りが手薄になったところで、共和国連邦軍を使って、王都デヴレヴィを占拠しろ、いいな!」
「へい、わかりやした」
王都を抑えて、勝利宣言を出す。
これで王国との喧嘩は終わりだ!
「ヤミー、親分に伝えてくれ。決戦の場所は、共和国連邦東部、頼むぜ」
「わかった、マサヨシ!」
そしてボンクラ共を、全員一か所に集めて、俺がまとめてぶっ飛ばしてやる。
皇国のガイウスもろともな、あとは……。
「おう、ロンの兄弟よお、戦場にはガイウス含めて、皇国軍が多数集結しやがるだろうから、おめえさんは母国の首都に戻って、皇帝に返り咲け」
「わかった」
よおし、舞台は整った。
俺が転生前の極悪組で、日本全国で起こした数々の侵攻作戦で手柄立てて来た、武闘派ヤクザの恐ろしさを、神界のガイウスと、魔界の悪魔野郎らに教えてやる。
「いいか、俺達極悪組がこの世界を救うんだ! 俺達がこの世界の代理よ! 神だろうが悪魔だろうが全部ぶちのめす! 気合入れろ!」
「おう!」
こうして、この世界を救うための、真の代理戦争の幕が開けた。




