第74話 陰謀
どうしてこうなった……。
俺達極悪組は今、共和国連邦東の国境で、各勢力入り乱れた泥沼の喧嘩に陥っている。
戦場には神界も介入してきて、世界が再び闇に覆いつくされて、神の雷が所かまわず落ちまくり、この雷からこの世界を守るようにして、精霊たちの介入で天を覆いつくす、七色のバリアーが張られ、地べたからは親分の命令を受けた、完全武装の地獄の鬼たちが姿を現し、雄たけびを上げている。
何が、どう間違った?
俺達は、いつどこでハメられた?
魔王軍総司令部も壊滅させられ、指揮系統が滅茶苦茶になり、悪魔野郎達の悲鳴が辺りに響きわたる。
俺達とアスモデウスはお互いに対峙した。
「勇者マサヨシよ、我々に何が起きてるのだ? いったいこの世界はどうなる?」
「知らねえよ馬鹿野郎! 最初に仕掛けてきたのはテメーらだろうが! もうそこからして、俺達はあいつの手の内で踊らされて、こんな羽目になってんだ!」
そう、俺達は、いや魔王軍もこの仁義なき世界を、あの野郎を甘く見すぎていたのかもしれん。
まさか、たった1か月でここまで酷い有様になるとは……。
あれは、今から一か月前。
共和国連邦と、王国の和平が実現し、アレクシアとコルレドが俺達極悪組と、教会本部の仲介で、和平調印式を行い、残すは皇国、ロンの兄弟を追い出した神界の勇者、ガイウスと女神アテネを何とかした後、魔王軍に勝利するだけとなった、この世界救済の形が見えてきた時だった。
その日は、平穏な一日だった。
調印式が終わり、夜の宴会前に俺達は身を清めに、改築し終わった武神隊基地の大浴場でひとっ風呂浴びに、それぞれ男湯、女湯に分かれて入る。
風呂場の着替え場では、ニコとブロンドが何かを話しながら、お互い赤くなって、俺好みの、何かよからぬことを企ててやがった。
うん、うん、そうだよなあ。
こいつらも、男の子だよ。
俺の企てに最近気が付いたみてえで、色気づきやがって馬鹿野郎。
たまに俺が楽しんでたのを見てやがったな、こいつら。
少しはガイ、マシュ、オルテの野郎らを見習えってんだよ。
あの野郎らは、ガルフと一緒にさっさと風呂場に入って、体を洗って風呂に入り終わって、宴会に備えてやがるぜ?
このチャンスを逃さねえで、俺と一緒のタイミングを狙うとか、しょうがねえ野郎らだ。
せっかく、俺一人で楽しもうとしたのになあ。
まあいいや、たまには子分達と同じ興に講じるのも悪くねえ。
俺は風呂場の入り口に、さりげなくマサヨシ使用中の札を立てかけておく。
これで、武神隊の野郎らも入ってこれねえだろう。
「ようし、おめえらひとっ風呂浴びに行くぜ」
俺達は、期待と夢と男を膨らませて風呂に入る。
さあてと、この風呂には俺達3人しかいねえ。
けっけっけ、じゃあ俺しか知らないスイッチを、ポチッとなっと。
すると、魔力が流れ出して風呂の鏡は女湯を写すマジックミラーのようになり、魔法の水晶玉も仕掛けてあって、中の音声も拾えるようになっている。
中からしてきたのは、エルフの乙女たちの麗しい入浴の音声。
いいねえ、元気が有り余ってそうで最高だぜ。
へっへっへ、転生前に夜の街で俺なんかが編み出した、マジックミラー越しに遊べるお姉ちゃんを選べるって言う、夜の紳士たちが楽しめるシノギを改良して、この世界で俺が編み出した仕掛けよ。
さあて、俺は一番中が見える特等席に座るかな。
風呂場で、体洗うふりして、俺は中の様子を覗いた。
うほほ、こいつはいいぜ。
胸はちょいと貧弱だが、モデルみてえなエルフの乙女たちの、ムフフな様子が丸見えよ。
これぞ大人の楽しみ方。
ニコとブロンドも、お互い見合って顔真っ赤になって、女風呂をチラ見しやがって。
まだまだガキっぽいウブな所があって、可愛い野郎らだぜ。
堂々と見やがれってんだよ、俺みてえに男らしくよう。
「あ、お風呂が改築して奇麗になってる! レオーネさん、見て見て」
「ええ、とても奇麗ですねメリア殿。おい、貴様ら! 何を長風呂をしているか! さっさと、マサヨシ殿たちをお出迎えする準備をするのだ!」
お、レオーネとメリアちゃんが入ってきたな。
すると、ニコの野郎が俺にもじもじしながらやって来やがった。
「お、親分! お背中流します」
なるほど、そういう事か。
しょうがねえ野郎だなあ、じゃあ見えやすい位置に移動してやるよ。
「おう、ニコ。こっち移動するからよ、背中流せ」
すると、体を洗うメリアちゃんと向き合ったニコが、目を伏せながら時折チラ見する。
へっへっへ、甘酸っぱい青春だねえ。
まあこの子は、ホビットと人間のハーフだから発育はちょっと遅いかもだが、きっと将来はかわいらしく、色々とおめえの男を立ててくれるイイ女に育つだろうよ、俺の勘だがな。
そして、ブロンドは両目で覆いながら、レオーネやエルフの女共の胸の辺りをチラ見しやがって、見境ねえ野郎だ。
この野郎は俺の勘だが、将来間違いなくスケコマシになりやがる。
もう十年かかるか知らねえが、ルックスは俺を超えやがる逸材だろう。
最近は、細かい気配りができるようになったし、ニコと同様女受けもいいしな。
モテる男の条件は、女にマメな事だから、こいつはかなりの男になるだろうぜ。
だが、まだガキだなあ。
あの野郎、胸ばっかチラ見しやがって、レオーネの良さをまだわかってねえ。
「ようコラ、ブロンド。今からあいつが風呂入りに行くから、後姿をよく目に焼き付けろや」
「そ、そんな、親分、僕は別に……」
何が別にだ馬鹿野郎、しっかり鏡の奥見やがって。
そしてレオーネが体を洗い終わって、風呂に漬かりに後姿を見せる。
そう、レオーネの形がよくて、グンと上向いたあの奇麗なケツだよ、ケツ。
いやあ、たまんねえなあ。
将来いいガキが産めそうだ、俺のガキをよお。
そして、二人は風呂に浸かっているようだ。
「レオーネさん、好きな男の子と二人きりになれるうまい方法って、ありませんか?」
「ああ、それはですね。殿方には、誰しもが一人になりたいという瞬間があるのです。そこをうまくつけば、チャンスが生まれるでしょう、うまくいけばですが」
おら、メリアちゃんはやる気満々でおめえを狙ってやがるぜニコよ。
しかしレオーネの奴も、最近言うようになりやがったな。
まあ、こいつにとってこの俺はライバルも多いだろうが、本来だったらとっくに俺とこいつは、楽しい、楽しいR18な事を色々とやってんだが……あのチンチクリンさえいなければ。
「うふふ、それでですね、ソフィア教王様。マサヨシ様の今日のご様子は、とても優雅で」
「まあ、アレクシア様。色々とお話を今度お聞かせいただけますでしょうか?」
うおおおおおおおおおお。
来た来た来た来た、俺の本命二人がよお。
これだよ、これ。
これを待ってたんだよ、俺はよお。
「全員礼だ! そしてエルフ太陽騎士団に告ぐ、このお二方に場所を明け渡し、我々は宴会場に準備に向かうぞ!」
「了解!」
「あ、レオーネさん、私ものぼせそうなのでご一緒に」
レオーネやメリアちゃんが風呂から出るようだな。
女たちの後ろ姿を、ニコとブロンドも風呂に浸かって凝視してやがる。
あれじゃあ、風呂の温度よりも女にのぼせ上っちまうだろうぜ。
「親分、オイラも風呂に浸かってきたからお先に。おいブロンド、さっさと出るぞ」
「僕たちお先に失礼します」
うん、俺が一人で楽しみたい気分を感じたようで、気が利く野郎らだ。
まったく、いい子分を持ったもんだぜ。
じゃあお楽しみ第二弾と行こうか。
すると、まず現れたのはでっかいメロン二つよ。
いやあすげえな、デカメロンなんちゃらってやつかよおい。
まるで歌詞が頭の中に思い浮かぶようだ。
おふくろの魂が無くなったから、後ろめたいことは何もねえ。
そして、傍らにいるのは白金に輝く雪の妖精だ。
発育はもう少しだが、可愛らしいからこれはこれでありだ、うん。
いいねえ、たまんねえ。
ヤスの野郎が残したこの子には、ゆっくりたっぷり、俺好みの女になるように、一年くらい時間かけて、いろんなところを育ててやるのも、悪くねえなあ。
「よう、兄弟! 背中でも流してやろうか」
「は?」
振り返ると、ロンがいた。
そして、俺の仕掛けに気が付いたようで目をぎょっとしてる。
何でロンの兄弟が入ってくんだよおおおおおお。
札立てといただろうがよ、この野郎がよおおおおおお。
「マサヨシ、お前」
やべえ、これは俺が殴られる流れか?
ちくしょう、この仕掛けを考えるのにどれだけの金と時間が……。
「お前、すごい奴だな。余……いや俺もこんなこと思いつきもしなかったぞ」
は?
何コイツ、楽しむ気満々じゃねえか。
まったく、こいつもしょうがねえ野郎だぜ。
「馬鹿野郎、声がでかいんだよ。静かにしやがれってんだ」
俺とロンは鏡を二人でのぞき込む。
そして、流れてくる音声に聞き耳を立てた。
「アレクシア様、実は私悩みがありまして」
「はい、教王様。この私でよければ何なりと」
ん? 女同士で悩み相談か?
あんまり、聞き耳立てるのも悪い気がするが、しょうがねえ。
俺もその相談事を聞くことにしよう。
「実は、マサヨシ様の他に気になる人がいて……その人は大人の人でとても優しくて、そのうまく言えないのですが、どうしようか……いけない、何を言ってるのでしょう、忘れてください」
チッ、俺以外にも気になる男がいるってことは。
俺とロンは顔を見合わす。
そして、男と男の意地の張り合いの炎が燃え上がる。
「なあ、体洗ったらよ、ちょっとあそこに入りに行こうぜ? 俺特製の釜茹で風呂よ」
「いいだろう、その申し出受けよう」
懐かしいなあ、よくヤスと意地張り合ってサウナで我慢比べしたっけか。
何かこの世界でも、似たようなことやってる気がするがまあいい。
そして、二人で女風呂を覗きながら釜茹で風呂に入る。
あっちいいいいいいいいい。
やべえ、調子に乗って温度設定間違えた。
皮膚がいてえ、ヒリヒリして痛えええええ。
「よう、先に上がっていいんだぜ? 兄弟」
「いやいや、ちょうどよい湯加減だ、お前が先に上がれ」
くそ、こんなもんに水魔法なんか使うのもアホらしいし、温度が下がったら、バレて格好悪いし、耐えろ、気合で耐えるんだマサヨシよ。
そして30分以上経過する。
ダメだ、のぼせ上がる。
もう限界だ、しんどいって。
ロンの野郎、時折白目剥いてるし早く上がれっての、アホくせえ。
「色々お話ありがとうございました。それでは私はお先に失礼します」
「はい、教王様。こちらこそありがとうございました」
お、最後に後ろ姿を拝もうか。
ああ、ダメだ。
目眩がしてクラクラしやがる。
だが、気合で目に焼き付けて。
おお、こいつはすげえ。
ありがてえ、ありがてえ。
「いいもん見れたし……上がろうや……兄弟」
「あ……ああ……」
今度は二人で水風呂に入る。
ロンは水風呂の中で半分気絶してる。
ああ、死ぬかと思った。
何やってんだ俺達。
皇国との喧嘩の前に死んじまうっての。
はあ、目的のもんも見れたし上がろうか。
「爺や、入り口で待っておれ!」
「ワン!」
あ……。
やっべえ奴きた。
くそ、心が読めるこいつはまずい。
一刻も早くスイッチをオフにしねえと。
すると、誰が置いたか石鹸を踏んで、そのまますっ転んで頭をしこたまぶつける。
そして、ヤミーの裸体をガン見してしまう。
うん?
なんか最近変だなと思ったら胸少し育った?
ガキのちんちくりんの神のくせに、成長期?
心なしかケツのほうも……。
やべえ、考えるなマサヨシ。
心を無にしろ。
ドSのこいつにバレたら、ブチのめされた後、笑いながら言いふらされて、俺の男の立つ瀬がなくなる!
「おや? 白い毒蛾がおるの? 邪魔じゃ、失せるが良い」
「あら? 黒いゴキブリのようなものが入ってきたと思ったら、ヤミー様ではないですか? ごきげんよう」
うわぁ、こいつら険悪すぎだろ。
なんなのこれ?
ここで戦闘でもおっ始めるのか?
銭湯だけに戦闘って笑えねえよ。
するとヤミーは体を洗いながら、こちらを何やら凝視しだす。
やべえ、無の境地、無の境地。
心を空にして明後日の方向見よう。
しばらくすると、ヤミーが風呂に入る音がする。
「貴様、マサヨシをどう思っとるのか?」
「愛していますわ、あなた様も同じでなくて?」
はあ?
何言ってんだアレクシアの奴。
こいつは神だぞ?
俺みてえな人間の外道なんか。
「……」
おい、なんか言えよ。
「仮にもヤミー様は神様です。マサヨシ様は、神と違い、先に死ぬのはマサヨシ様です。その想い、いずれお辛い事になるでしょうから、ご忠告させていただきます。それでは失礼」
アレクシアが風呂から上がる音がして、女風呂がシーンとなった。
「わかっとるわい。毒蛾めが……」
おい、ちょっと待ってくれよ。
おめえは、大事な俺の神様だし、相棒みたいなもんだって気持ちもあるし、義理があるから絶対に守ってやるって、気持ちを持ち合わせてるよ。
それに、黙ってれば申し分もねえ器量良しだし、ちと幼く見えるが絶世の美少女って奴だよ。
だが、俺にその思い抱いているならば。
やめた方がいい。
俺は、親分に盃貰っている以上、手を出すなんて御法度中の御法度だし、所詮俺は汚れたクズのヤクザ者で、神のおめえには、もっといい男がいる筈。
だから、お前は俺を愛しちゃあダメだ。
偶然拾って、使い終わったら捨てるくれえの、道具だと思ってくれればいいのさ。
すると、風呂場ですすり泣く声がした。
あいつ、気がついてたのか……。
いたたまれなくなった俺は、ロンを引きずって、風呂のお楽しみスイッチをオフにし、その場を後にする。
そしてこの後、皆で宴会が始まる。
そう思ってた。
風呂から上がった俺を待っていたのは、突然の警報ブザーで、武神隊の隊員達が廊下を走り回る。
「どうした!」
俺は駆けずり回る隊員を、呼び止めた。
「大変です、魔王軍が突如として、共和国連邦に宣戦布告! 24時間以内に人類へ総攻撃を開始すると、魔王軍総司令官が大統領府に突然現れて、宣言しました」
「何だって!」




