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仁義なき異世界転生 ~勇者マサヨシの任侠伝~  作者: 風来坊 章
第三章 代理戦争
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第64話 夜明けのケジメ

 俺が木刀を握ると、木刀は姿を変えていき、やや刃渡りが短い打刀のような日本刀に姿を変える。


 屋内戦闘や、市街戦に最適の長さ。

 

 そうか、ヤミーの力の発動によって戦闘に最適の道具に姿を変えるんだ。


 さすが親分が俺に送ってくれた、対悪魔、対魔界用の決戦兵器だぜ。


 そして、この悪魔野郎には心当たりがある。

 おそらくこいつは、転生前の俺の世界でも有名だったあの化物。


「おい、悪魔野郎。てめー火とか光とか、心臓に何かぶち込まれると、往生するんじゃねえのか?」

 

 にやけながら俺が言うと、悪魔ストリゴイはビクリとする。


 やはりな。

 馬鹿な奴だ、わかりやすい反応をしやがって。

 ヤクザに、弱みを見せるのは禁物だぜ。


「おい、ロン。棒に聖水とか塗り込んどけよ、あと直接攻撃は胸を狙え。ニコは教王さん達を守れ、ブロンドは積極的にミスリルの矢で心臓狙ってけや」


「マサヨシ、お前ストリゴイの弱点部位を見破ったのか?」


「まあな」


 コイツの正体は吸血鬼。

 ヴァンパイアって呼ばれてる野郎で、人間の血を吸って、手下のアンデットを増やしていく、血を吸う鬼がコイツの正体!


 そして吸血鬼は、日の光を浴びると死ぬ。

 夜明けまであと数時間。


「このストリゴイに、勝てると思ってるのかしら?」


 俺は正眼で刀を構えて、最小限の動きで踏み込んで間合いを詰め、心臓目掛けて突きを放つ。


 だが、ストリゴイはコウモリ化して攻撃をかわし、俺の背後に回ると、牙を突き立てようと噛み付いてきた。


 すると、ロンが棒を短く持ってストルゴイの胸を突こうとするが、すぐに体をコウモリ化させて、攻撃をかわす。


 俺達の攻撃をすり抜けちまって、致命傷が与えられない。


「!?」


 ストリゴイが俺の目の前に現れる。


「ウフフ、さっきのお返し」


 嫌な予感がして、俺は咄嗟に半身になって、足捌きで回避行動に移る。


 すると、後ろの教王室の壁が、ストリゴイの放ったストレートパンチの風圧一発で、木っ端微塵に吹っ飛んだ。


 コイツ、外見とは裏腹にやべえパワーだ。

 あんなもん、顔面に食らったら頭が吹っ飛ぶ。

 そうか、あのパンチでエンリケの腹に風穴開けやがったのか、クソ野郎。


 その時、教王さんが金の杖を両手で掲げる。


邪悪退散(ターンイービル)


 教王さんはオーロラのように見える、広範囲に効果のある、悪魔弱体化の天界魔法を唱えた。


 これで教会本部前の不死隊の連中も、往生するはず……ん?


 ちょっと待て、体が重い。

 おいいいいいいいい。

 ちょっと待てよ、俺の体が重いんだが。


 マジかよ、俺にもその弱体化魔法効いてね?

 ふざけんな馬鹿野郎!

 天界から嫌われてんのか? 

 俺が何をしたってんだよ、ちくしょうが。


「チッ、ブロンド! 奴はあの魔法で動きが鈍くなってる筈だ。隙があったら弓をぶち込め」


 俺は懐からピストルを取り出した。

 そして土魔法で、銀の弾丸をイメージして風の力をまとわせて、ブロンドの弓と共に、ストリゴイに撃ち込みまくる。


「ぬううう、私の体が再生できない。勇者、あなた私の種族をもしかして!」


「ロン、野郎の動きが鈍くなった! 今ならダメージが通るぞ!」


 ロンがストリゴイを攻撃しようとしたら、その攻撃をさえぎるかのように、猫顔の悪魔が飛び込んできた。


「にゃは、僕を忘れてもらったら困るんだにゃ」


 あいつは、エルフ王国で戦ったエイムか。

 弱体化しているはずなのに、動きが素早い!

 ピストルを連射するが、攻撃が当たらん。

 

 すると、教王室の床から緑のゲル状の液体が湧き出し、人形になった。


 くそ、コイツも不死隊か!

 おそらくスライムの化物だ。

 コイツら何がなんでも、俺を始末する気だな。


「エイム、ストリゴイ! スランだ。マミーと新入りにも伝達したけど、皇国に、勇者がもう一人いるんだ! この勇者の相手は後、急ぎ情報収集せよと、マーラー様より命令が下った」


 スライムから、もう一人の勇者の情報を得た、エイムとストルゴイは、驚愕した顔付きになった。


 そうか、コイツら知らなかったのか。

 皇国で活動中の、勇者ガイウスの話を。

 

 撤退するつもりか?

 だが、ストリゴイは逃すつもりはねえぞ?


 この野郎には、絶対にケジメをつけてもらう。


 俺はロンの兄弟に目配せして、教王さんを守るように指で合図した。


 そして俺はヤミーの目を見つめる。

 ヤミーはこくりとうなずいた。

 よおし、意図は読み取ってくれたようだな。

 カタにハメてやるぜ。


「おうおう、ストリゴイだか、すっとこどっこいかは知らねえが、テメー逃げんのかコラ?」


 俺が挑発すると、撤退しようとしたストリゴイが、物凄い目つきで俺を睨みつける。


「ぷ、ふふふ、あははははは。見よ、マサヨシ。あの顔、我らにかなわぬと見て、逃走する負け犬の顔じゃぞ? ウヒャヒャヒャヒャ」


 ヤミーが指差し、ストリゴイを小馬鹿にする。


「な、なんですって!?」


 よおし、乗ってきやがった馬鹿が。


「なんですってじゃねえよ、カマ野郎! テメー男のくせに、逃げんのかオラ? あ、悪い悪い、こいつオカマ野郎だから、男としての矜恃なんか持ってねえわ」


「本当に、気持ち悪い悪魔じゃの。ホレ、オカマめ。貴様は特殊精鋭部隊なんぞやめて、飲み屋で男相手に酒を出してた方がお似合いじゃぞ? プー、クスクス」


 ヘッヘッヘ、ヤミーの野郎、人を怒らせて、屈辱を与える事にかけては、天下一品のドSだからな。


 きっと、頭に来るだろうなあ。

 俺も冥界の裁判で、往生したし。


「みんな先に行っててちょうだい。私、この勇者と女神は絶対に許さない!」


 許さねえのは、俺の方だオカマ野郎。

 テメーは俺の絵図にハマっちまったんだよ。


「ま、待つにゃ、ストリゴイちゃん。命令違反はダメなんだにゃ。それにもう夜明けにゃ!」


「そうだよ、僕ら不死隊はマーラー様の命令は、絶対なんだから」


「お? 許さないならどうするんじゃ。腹を立ててオカマ踊りでもするのかのう? あはははは」


 俺はヤミーが、オカマ野郎を罵倒してる間に、通信用水晶玉を懐から取り出す。


「レオーネ、聞こえるか? お前らは教会本部裏の集団墓地に行って、ガルフ達と空の棺桶とか見つけたら、燃やしてくれ! 悪魔野郎の弱点だ」


「了解」


 とりあえず、邪魔な棺桶は今のうちに、間引いとかねえとな。


 レオーネに指示したから、次はニコとメリアちゃんの元へ行く。


「よう、メリアちゃん。ニコと孤児達連れて裏の集団墓地に行って、目立つ場所に土の精霊魔法で棺桶作ってくれ。棺桶に小さく、俺達の代紋、菱に悪一文字も入れといてくれよな」


 メリアちゃんはこくりと無言でうなずいた。


「ニコ、おめえはこいつらを、何がなんでも守れ。頼むぜ、若頭よ」


 そしてマーラー不死隊は、ストリゴイの説得を諦め、教王室の窓から脱出した。


 俺は、ニコ達を見送ったあとブロンドに、弓をある部位に撃ち込むよう指で合図する。


 一瞬ブロンドは躊躇するも、弦を引き絞って矢を放った。


「きゃあああああああ」


 ストルゴイは絶叫する。

 そう、ぶち込むよう指示した箇所はケツの穴。

 カマがカマ掘られて悶絶してら。


「はっはっはー、ようオカマ野郎! 白銀のミスリルの矢をぶち込まれた感想はどうよ? 次は俺の刀をぶち込んでやるぜ!」


 怒りに燃えたストルゴイが、俺に飛びかかかるが、俺はニヤリと笑って、土魔法で作った粒をぶつける。


「クソ野郎の勇者! こんなもの……!?」


 気がつきやがったかアホめ。


「きゃあああああああ、ニンニク! ニンニクだわ! やめて、そんなもの私にぶつけないで!」


 ニンニクなんか、この世界にねえよバーカ。

 俺が土魔法で、そっくりに作った偽物だボケ!


 そして、俺はピストルを構えて、土魔法で作ったニンニク弾を、マシンガンのように、連続で撃ち込みまくる。


「ハッハー、ほーれ、俺様の特性ニンニク弾だ。さんざん、俺たち極悪組にナメた真似しやがってオカマ野郎! 往生しろや!」


 ストリゴイは悶絶しながら、コウモリに化けて教王室から出て行った。


「逃すかよボケ!」


 俺は、コウモリに向けてピストルの金属の散弾を、小粒のニンニクイミテーションに変えて、撃ち込みまくる。


 その様子を、レオーネの親父さんや聖騎士隊が、茫然としながら見つめていた。


「オラオラ、悪魔野郎! テメーさっきまでの威勢はどうしたコラ! あとそっちの出口はまずいぞー」


 俺の警告を無視して、ストリゴイは正面玄関をコウモリ姿で通過した瞬間、イフリート化したガルフの炎魔法が、コウモリ達やミイラ男を焼き尽くす。


「ぎゃああああああああ、火、火は嫌!」


 実体化したストリゴイは、教会本部から逃げようとしたが、エルフ達が遠距離射撃で次々とミスリルの矢を放つ。


「いやあああああ、私こんなに体力を消耗して……それにもう夜明けが来るわ! なんとか、棺桶を見つけて一晩眠って……」


「野郎! 逃すか!」


 イフリート化したガルフが、あの爆発するような炎魔法を、ストリゴイに放とうとしたのを、俺が手を制して止める。


「兄者、どうして?」


「いいんだよ、ガルフ。あいつはもう俺の絵図にハマっちまった」


 そう、後はメリアちゃんとニコの仕掛けがうまくいけば……。


「親分さん」

「やったぜ、親分」


 ニコ達が、こっちに向かって走ってきた。


「うまくいったかい?」


 ニコとメリアちゃんは俺にうなずく。

 さあて、これで全ての仕掛けが整った。

 

 後は、あの野郎にこれから楽しい、楽しいR15(ヤクザ)のケジメの時間だ。


 集団墓地の中央に、ちょうどメリアちゃんが魔法で作った棺桶が置かれており、俺はそうっと中を見ると、オカマ野郎は中で爆睡してやがる。


沈黙(ジップ)それと封印(ダムド)


 俺は冥界魔法を唱え、この野郎が途中で起きても大丈夫なように、出れねえようにしてやった。


 後は、武神隊の部隊長連中を呼び寄せ、ロンと共に、木槌と(くい)を持って、集団墓地から極悪組の代紋を入れた棺桶を運び出し、馬車に乗せる。


「そーっとだぞ、野郎の目が覚めねえようにな」


 俺は小声で、全員に注意して、フリーダムシティのシンボル、高さ50メートルの女神像展望台まで棺桶を運んだ。


 この世界の奴ら、こんなもんを神として崇めやがるけど、この世界はとっくの昔に、その神に見捨てられちまっているってのに、可哀想な話だ。


 俺が世界を救済した暁には、このお高く止まった石像をぶっ壊して、手を腰に当てながら、ふん反り返ってる、ドヤ顔のヤミー像をおったててやる。


 そして、うっすら空が明るくなってきた。

 そろそろケジメの時間だ。


 俺はよお、古今東西あらゆる本を読んでいてな、何だっけかあの作者……。


 ああ、そうそうブラム・ストーカーさんの本も、当然読破してんだよ。


 俺は指で武神隊に合図して、木槌と聖水で浸しといた、(くい)を持ってこさせる。


 ……いくぜこの野郎!


 俺は杭を、棺桶で寝てる野郎の、ちょうど心臓の位置へ左手で当てて、右手で木槌を振りかぶった。


「いつまで寝てんだ! このオカマ野郎が!」


 杭を打ち込む、甲高い音が展望台に響き渡る。


「ぎゃあああああああ」


 棺桶の中から、ストリゴイの悲鳴が轟く。


 俺は、棺桶にぶっ刺さった杭を指差して、武神隊の各部隊長に木槌を手渡す。


 さあてケジメの時間だぜ悪魔野郎!


「よくもエンリケ隊長を!」

「厳しいけど優しい隊長だった!」

「絶対に許さないぞ悪魔め!」

「神の名の下に死ね!」

「くたばれ悪魔め!」


 次々と武神隊の奴らが、木槌を振りかぶり、代わる代わる杭へ一撃をぶち込んでいく。


 こいつらはエンリケの部下だった。

 俺のケジメに参加させる資格がある。

 大事な舎弟をやりやがった、報いを受けろ!


「なんでえええええ、棺桶から出れないいい」


 当たり前だろオカマ野郎。

 冥界魔法で封印してんだからよお。


 そしてロンに、木槌を手渡すがロンは首を横に振り、自身の得物の棒を振りかぶる。


「余の臣下と民の報いを受けるが良い!」


 兄弟の渾身の一撃が、杭に叩き込まれる。


「ぎゃあああああああ、た、助けてちょうだい! 私が悪かったわ、な、なんでもするから許してえええええ」


 ん?

 馬鹿だなあこいつ。

 そのセリフは、ヤクザの俺に禁句だぜ。


「何でもすんのか?」


「ええ、何でもするわ! だから殺さないで!」


「おう、考えてやんよ。じゃあおめえは、不死隊の連中の情報と弱点、それとテメーの親玉のマーラーについての情報、全部教えろや」


 棺桶のストリゴイは沈黙した。

 この野郎、まだ自分の立場がわかってねえな。


 俺は杭に聖水をぶっかけて、連続で踏みつけるようにして、足蹴にする。


「テメーこの野郎、何でもするんじゃねえのかゴラァ! なぶり殺しにするぞオラァ!」


「や、やめて! やめてちょうだい! わかったわ、言う、言うから、これ以上心臓にダメージを与えるのはやめてえええええ」


 そしてストリゴイは、俺に情報を喋りだす。

 マーラーから、勇者暗殺指令を受けた、不死隊メンバーは、こいつを入れて5名。


 猫娘で隊長格の悪魔エイム。

 スライムで構成された悪魔スラン。

 ミイラ男の巨漢、悪魔マミー。

 そしてオークデーモンの豚野郎。


 こいつらの親玉、サタン王国秘書長の悪魔マーラーは、女の大悪魔で、こいつの推測らしいが、魔王レベルの実力があると言う。


「私、知ってることを話したわ! だから殺さないでちょうだい!」


 なるほど、いい情報をくれたなあ。

 ありがとよ。

 じゃあもう、テメーは用済みだ。


「そうだな、殺さないでおいてやる」

「ゆ、勇者様! なんて素敵なお方」


 そうだ、俺は殺さない。

 テメーの最後のケジメは、俺達じゃねえ。

 そろそろ時間だな。


 展望台に、美しい朝日の光が差し込む。

 ああ、やっぱり美しいぜ。

 何度見てもよう。


「ところでオカマ野郎。俺はよお、この世界に来た時は、昼夜が闇に包まれちまってて、往生したんだ。わかるか?」


「そうね、魔界も昼も夜もない世界だから、人間のあなたには、大変だったでしょ?」


 そう、テメー達魔界のせいで往生したぜ。

 俺だけじゃなく、この世界の連中達もな。


「そんでよ、上空にあった青い月な、俺が吹っ飛ばした翌朝に、俺は神様連れて、御来光を拝みに行ったんだ。綺麗だったぜ、テメーにも是非みてもらいたくてよ」


 俺が言うと、棺桶がカタカタと震えだす。

 どうやらこいつも、理解したようだ。

 テメーの待つケジメをよお。


「あ、悪魔よ! アンタ悪魔だわ!」


「うるせんだよバカヤロー。てめーが悪魔だろうがコノヤロー。もうそのセリフ聞くのも飽き飽きだ。じゃあな、オカマ野郎」


 俺はロンと朝日が棺桶に当たるよう、壁に立てかけると、二人で同時に棺桶の蓋を取っ払った。


「ぎゃあああああああああああ」


 悪魔ストリゴイは、朝日の光で消滅した。


「なあ、兄弟! お天道様って綺麗だよなぁ」


 俺が声をかけると、ロンのブサイクな顔が朝日で照らされ、ニコリと笑う。


「マサヨシ、我が兄弟よ。誰が何と言おうと、やはりお前は、太陽に祝福された勇者だよ」


 こうして、市街地でのマーラー不死隊との激闘を終えて、俺と敵対勢力との代理戦争は、次なる局面を迎え始めたのだった。

ブラム・ストーカー以外にも、夜明けのヴァンパイアでお馴染みの、ヴァンパイア・クロニクルズのシリーズも名作ですね。

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