第56話 機動隊
俺とヤミーは、首都の高級ホテルに戻る。
俺達はいつものように個室に入り、厳重警戒でお互い部屋へ行き来もできない。
ガルフの野郎と廊下で会ったら、酒が足りねえとか文句言いやがるがよお。
俺達は招待や接待受けてるんじゃねえよ、首長3人から軟禁されてんだよ!
ホテルの周り見てみろよ、魔法のライフル持った軍で取り囲まれてるからよお。
しかも俺がビビらせたから、警戒人数が倍に増えて、飛行船まで飛んでやがるし。
議会連中や首長連中もビビっちまったのか、このホテルから出さねえ気だよ。
マジで小物ばかりで嫌になるぜ。
こいつら全員ぶっ殺してもいいんだが、そしたら得々ポイント増えて刑期増えるし。
ちくしょう、転生前の若中の時に下手打ってさらわれて、監禁されたのを思い出す。
過酷なヤキや拷問を覚悟したが、そいつらの正体は警察連中だった。
抗争悪化を危惧して、俺を任意同行って形で、ホテルに軟禁したようだ。
ふざけんなって話だよ。
令和の時代だったら、絶対人権なんちゃらで問題になってるよ。
昭和の時代はサツやヤクザもお互いやりたい放題だったなあ。
こうして、軟禁状態が20日間続いた。
「マサヨシよ、私はいつまで日課の散歩を我慢すればよいのだ?」
拒魔犬兄貴は、もうかなり頭に来ちまってるみてえで、ホテルのロビーとかに、お構いなしに用足してるし、鼻歌交じりで、男の従業員噛みついたりだとか、女従業員とかいると、飛び乗って腰振りやがったり、厨房から肉かっぱらってきて、勝手に食ったりしだした。
さすがに、そこまでの根性は俺にはねえわ。
兄貴はやっぱすげえよ、さすがだわ。
で、俺の部屋に毎日毎日性懲りもなく、共和国軍将校とかきやがって毎日同じ話の繰り返しだから、もうめんどくせえから、おめえなんか面白い一発芸やれって言ってやった。
そしてら、芸のねえやつに限って服とか脱ぎだすから、俺はホテルのスリッパで頭ひっぱたく。
なんで俺がヤローの裸見なきゃなんねえんだよ、殺すぞって。
そしたら、ババアのお偉いさん寄こしてきた。
ほんっと、マジでムカつくぜ。
あいつとの約束の3か月の期限が来ちまうっての。
魔王軍じゃねえけど、俺がこの国滅ぼしてやるぞ馬鹿野郎。
いや違うな、絶対にこの国を、俺好みの縄張りにしてやろう。
こうして、馬車の移動も入れて1カ月時間が経過したところで、俺達は唐突に警戒を解かれた。
何でかって?
コルレドの根気強い説得も、功を奏したところもある。
だが、決め手になったのは、俺が世話してた異端審問官の武装神父隊連中が、ホテルとか、議事堂とか、共和国議員の家とか取り囲んで、圧力かけ始めた件がきっかけだった。
ほら、あいつらは俺と一緒に王国で、毎日貴族相手に喧嘩してたから。
あいつらの義侠心に、火がついたんだろう。
それに俺があいつらのためにと思って、旅の途中に色々やったのさ。
教会にマメに報告いれてね。
参考にしたのは、世界一優秀な日本の警察だ。
俺は散々あいつらにやられたから、やり方はよく覚えてる。
俺の経験以外にも、極道社会に元刑事だとか、協力者の弁護士とかもいたから、そこから記憶を引っ張り出したのと、知識が足りねえところは、転生前読んだ本で補ってる。
これを司教の時に案出して、審問官制度の組織改革を実行に移させた。
どんな改革案だって?
まずな、異端審問官は神父見習いから希望者募る、志願制なわけだよ。
やる気のある奴らを集めるのだから、これはいい。
だが、こいつらを専門的に教育する学校制度がねえから、作ったんだ。
俺があいつらのために、教会幹部の立場を利用して。
参考にしたのは刑務所での経験だ。
全員頭を丸めさせて、班ごとに分かれて行進しながら団体行動よ。
これに耐えられねえ奴は、辞めてもらって結構だ。
一日のスケジュールはこんな感じ。
朝6時30分に賛美歌歌わせた後、掃除させて、全員審問官服に着替えて点呼。
点呼場では全員、日常の五心を朗読な。
「はい」という素直な心
「すみません」という反省の心
「おかげさま」という謙虚な心
「私がします」という奉仕の心
「ありがとう」という感謝の心
これを毎朝やらせて、性根を叩き直す。
朝7時に朝食。
朝7時30分から夕方17時までは、全員仕事で必要な授業を受ける。
教官には、一線退いた審問官や、やる気がある司教補連中らをあてた。
内容は、捜査手法や、尋問方法、集団戦闘、情報戦闘、魔法学や体育など。
ヘタ打ったり、習った事できなきゃ、班員全員腕立てだ。
木刀背負ったり、指飛ばすよりは全然いいだろ。
そして夕食まで、全員対悪魔装備の重武装でランニング。
モンスターが出たら、外に行って実戦形式の奉仕活動ね。
夜19時の夕食後、風呂浴びて、余暇時間使って班ごとに自習と復習。
刑務所なんて、風呂が3日に1回だからな。
それに比べれば、こいつら恵まれてるよ。
夜21時、就寝。
もちろん寝静まった後も、非常呼集とかガンガンやる。
自衛隊とかの教育も取り入れてるしね。
それを1カ月やったあと、異端審問官は現場に出れるわけだ。
まあ現場って言っても、若い奴らに待ってるのは俺が作ったエリート部隊だが。
それが武装神父隊、通称〝武神隊″よ。
全身真っ黒の鎧と黒のヘルメット装備したな。
部隊章は、ヘルメットにヤミーの姿を漫画にしたデザインを入れてる。
聖騎士みてえな、貴族のボンボンじゃねえ叩き上げのエリート部隊さ。
15歳から25歳までの新人は、そこでみっちり経験を積んでもらう。
25歳から35歳までは、体力的にきついだろうから志願制だ。
もちろん拒否して、一般の審問官になるというのも、そいつの選択だし構わない。
これは俺と一緒に戦った奴ら中心に、異端審問官のエリート隊として創設させた。
警察連中の機動隊や刑事連中を参考にしてる。
それに、モチベーション上げねえとやってられねえから、神父に階級上げる。
見習いだと給料出ねえしよ。
期間は最長3年で、本人の希望と適性を考え、延長は認める事とする。
満期で勤めあげれば、正神父に昇進となる。
もちろん、正神父に階級上がったら、部隊に残留することも可能よ。
他の部署に移りたければ、移ればいいし。
隊長は司教補、9つある部隊長は正神父、後は神父の隊員で構成する。
1番隊が特務私服隊。
2番隊が記録部隊。
3番隊が通信連絡部隊。
4番隊が特務特殊部隊
5番から9番隊が一般武装部隊
そして、一般審問官の指揮権は聖騎士だけだが、こいつらにも移譲させた。
そして部隊の意識は高いはずだぜ?
何しろ創設者は、見習いから大司教に成りあがった、勇者である俺だ。
まず、刑事のように、私服部隊として働かせる1番隊。
いまはまだ総数30人だが、ほとんど俺が推薦した正神父の審問官達だ。
こいつらとは、ずっと旅をしてきたやつらだし、上着も頂戴したしな。
それに、優秀な異端審問官は、すぐにこの部署に回すよう手配してる。
でな、俺が苦しんだ刑事連中の、捜査手法を叩き込んでるわけ。
あと、調書とったり情報を記録させる手法や、鑑識みてえな2番隊も作った。
証拠品収集したり、悪魔や悪徳な外道連中研究の記録専門のな。
悪魔の手口とか、元々異端審問官で研究対象だったが、それを公式にしたわけさ。
こいつらには、本で読んだ法医学だとか、指紋足跡収集とかさせたりしてる。
指紋は、モンスターの毛で作った刷毛に、金属粉つけて採取。
足跡は、土魔法で作った石こうを、水で流し込む。
魔法の痕跡もあれば、それも収取の対象よ。
ついでに、モンスターの研究や検体もさせてる。
こうしてできたのが、〝モンスター及び悪魔図監”で、これは冒険者ギルドに特A級冒険者認定受けた俺が提唱し、冒険者ギルドの協力の下、教会の許可とって作った俺の手柄よ。
あと3番隊の通信隊は、連絡調整な。
まあ極道で言う所の、組事務所常駐の電話番だとかそんな感じ。
あと馬車とか、魔法の水晶もこいつらに管理してもらってる。
いつでもどこでも、報告連絡相談を徹底的にしてもらう、重要部署よ。
あとは、部隊で使う暗号研究なんかもさせてる。
ポケベルとかの符号とか、俺の経験が活きたわけだな。
あと手練ればかり集めた、4番隊の特殊部隊な。
そう、対悪魔、対悪徳貴族、対犯罪者用の殺しの軍団よ。
ここはまだ、人選がうまくいってねえようで、編成はまだのようだ。
まあ、俺が教会本部がある国に来た以上、早急に実現する。
5から9番隊は、一般部隊で構成されてる。
朝から夕方まで、戦闘訓練やらせて鍛え上げる中核部隊な。
あと基地警備とか、要請があったら出動よ。
新入り連中は、全員まずそこから修行させる。
落伍者は、一般の審問官見習いに戻す。
適性がねえ使えねえ奴を、ずっと置いとくのもかわいそうだろ?
それプラス、こいつら武神隊には、俺がやったヤクザな手法も取り入れた。
嫌がらせや拉致のやり方だとか、脅迫の仕方だとか、ヤキの入れ方さ。
もっとも、やり過ぎるとこいつらの評判が落ちる。
だから、証拠集めて記録化して大義名分を作ってからだ。
そしたら、冤罪が多少減るだろ?
何が言いてえかって言うと、この世界の審問官連中のエリート部隊は、俺が支配してる。
勇者でもあり極道でもある俺様がな。
あいつら多分、今の俺らの状況を教会の情報網で把握して、共和国軍の将校連中の身辺嗅ぎまわって、弱み握って強制捜査とかして家の中の物全部、証拠品としてかっぱらったり、嫌がらせの様に付きまとって職質したり、生意気な野郎は馬車でさらっちまって、ボコボコにした後恫喝したりだとか、事故に見せかけた嫌がらせとか、俺仕込みのケジメとか、やりまくったんじゃね?
じゃなかったら、俺達が一斉に釈放されねえだろ。
ヤミーか誰かが保険と人質の為、身柄取られる条件付きなら話は分かるが。
それに共和国連中、明らかに態度が変わって、俺の所持品とか返しに来たし。
そして俺達極悪組が解放され、ホテルから出てきたら、武神隊が全員整列する。
「お疲れ様です勇者様!」
「ござあああああす!」
「ああああああっす!」
「お勤めご苦労さんです!」
「おざあああああっす!」
「あざあああああっす!」
かわいいやつらだぜ、まるで転生前の放免祝いや義理事だ。
もっともやってるのは、子分じゃなく審問官連中だがな。
「おう、出迎えご苦労。隊長いるか?」
「は! お久しぶりです。公爵邸事件以来です勇者様、そしてレオーネ様」
こいつの名はエンリケ。
異端審問官の38歳のベテランで、俺の王国での旅に付き合ったリーダー格よ。
みんな黒のフード被ってるが、こいつだけちょび髭生やしてたから印象深い。
レオーネと旧知だったやつで、仕事ができる。
俺が推薦して、正神父から司教補に出世させてやった。
そして、今じゃ武神隊の隊長をしている。
「おう。俺の組の連中を紹介した後、俺の盃やっておめえ舎弟にするからよ、飯と酒の用意しとけ。それと今後はおめえは俺の事を兄貴と呼び、当分の間は教会本部前の、異端審問官武装神父隊基地を俺の住居とする。おめえら案内しろい!」
「了解! 異端審問官全員に告ぐ、兄貴達を基地まで丁重にお迎えし、今夜は酒盛りだ!」
異端審問官達から歓声が上がった。
こいつらは、これから王国貴族や共和国有力政治家との癒着は許さねえ。
この世界の為、そして勇者である俺と極悪組のために癒着してもらうぜ。
ゆくゆくは、俺が教会組織を支配するために役立ってもらうからな。
極悪組の面々が、異端審問官達連れて街を練り歩き、教会本部に到着する。
俺を当初むかえに来るはずだった、司教連中が揉み手しながら雁首揃えてた。
まったく調子のいい野郎らだぜ、ぶち殺すぞ!
「おらぁ! こらぁ! うらぁ! だらぁ! どらぁ! くるぁ!」
俺は集まった司教全員にビンタかます。
「てめえら、揃いも揃って使えねえボンクラ共が! 失せろコラ!」
俺は使えねえ、クズ共を蹴散らした後、異端審問官達の基地に到着する。
こいつらの基地建設や装備調達に、俺の地下銀行使って充実させたから、ホテルほどじゃあねえが、全員が休める個室がある。
そして、一席設けてエンリケに盃を降ろす。
その後は宴会場で、極悪組や、ドワーフ兵団、エルフ太陽騎士団全員集まって酒盛りよ。
武神隊も合同でな。
ああ、ちんちくりんのヤミーとニコとか未成年組は別室で甘い物用意した食事会な。
特にあのちんちくりんには、絶対酒は飲まさねえ。
そして、飲みの席でこの国の問題点を聞き回った。
異端審問官として、現場ではいずり回って、世の不条理を理解してるこいつらにな。
最大の問題点が汚職議員と、議員につるんでるギルドの皮かぶった、マフィアとかの犯罪組織連中。
特に共和国の議会選挙と、首長選挙を2カ月後に控えてて、その資金集めと票集めで、共和国の弱者連中は、金を巻き上げられて酷い目に遭うらしく、貧富の差もこうして生まれ、この国の社会全体が悪循環に陥っているらしい。
ようし選挙か、アレクシアとの約束の期限までに、ギリギリ間に合うな。
いい機会だ、それまでにこの国を俺の縄張りにして占拠してやる。
だってそうだろ?
この世界を救済しに来たんだから、この世界全て俺の縄張りだ。
俺は転生前はよ、縄張り荒らしなんて絶対に許したことねんだわ。
武神隊の連中と共同で、この国の汚職政治家とマフィアを俺が、選挙前に潰してやる。
そしてマフィア共のシノギは、全部俺が頂いて、俺の任侠道で染め上げてやる。
それに選挙ってことは、俺の息がかかった奴らを当選させまくればいいんだよなあ?
ようし、方針は決まったぜ。
それにこの国の犯罪組織連中、政治ゴロとか、糞生意気なシノギなんかかけやがって。
へっへっへ、上等だ馬鹿野郎。
俺が転生前の極悪組でやってきた、本当の政治ゴロと社会ゴロとは何かを、そして俺の極悪組の恐ろしさと、転生前に世界最大最悪最強と言われたヤクザの怖さを、この国のクサレ議員共とヨゴレのマフィア連中に教えてやるぜ。
マフィア組織と悪徳議員相手ですね。
本当のヤクザの恐ろしさを、主人公が教えてくれるそうです。




