第41話 男の意地
俺が怒鳴り声がした方向に辿り着くと、俺が相手したドワーフよりも背が高い、160センチの大きさの、立派なヒゲしてやがるドワーフ王ガルフが、自分の身長をはるかに超えた、3メートル以上ありそうな真っ赤な青龍刀のような剣を二刀流にして、仁王立ちしてた。
ああ、こいつは多分すげえ強いわ。
持ってるドーグの大きさが、昨夜のドワーフをはるかに超えてやがる。
しかも持ってる剣と鎧、派手すぎだろ!
真っ赤に光り輝きやがって、絶対炎属性とか付与されてるやべえ奴だ。
そして、腰にでっかい酒瓶つけてて、ウエストポーチみたいなアイテム袋装備してる。
やる気満々だな。
それに加えて、こっちは木刀とピストルとブレードソード。
魔力回復の聖水も持ってきてねえ。
喧嘩はこっちが圧倒的に不利。
だがなあ、子分が見てる前で負けは許されねえ。
俺は新生極悪組を、この世界で作ることを決めたんだ。
おめーは、俺の大事な舎弟として、俺の軍門に下らせるからな。
「よう、ガルフさんよお! やる気満々じゃねえか。自己紹介がまだだったな? 俺の名はマサヨシ! 人呼んで、勇者マサヨシよ。さあ、喧嘩しようぜ!」
「貴様か人間のガキめ! ワシを誰だと思ってる。ワシは……」
知ってるよ馬鹿野郎。
俺は早速踏み込んで、ブレードソードを野郎の鎧の隙間の腹にぶっ刺しに行く。
だが、ガルフは必要最低限の動きで、わざと鎧で受けた。
すると、ブレードソードが木っ端みじんに砕け散る。
「な!? マジか」
そしてカウンターの様に、野郎の剣が俺の右腕をぶった切った。
ぬおおおおおおおお、やべえ出血が止まらねえ。
俺は、二撃目が来る前に、野郎の鎧に蹴りを入れた。
そして、自分の右腕を拾うと距離をとる。
こいつ公爵の野郎並みの達人だ。
「なんだ小僧。よもやその程度の腕前で、ワシに喧嘩売ったのか?」
くそ、この野郎やべえぞ。
着てる鎧やら、でかい剣やらハンパじゃねえ。
俺は落とされた右手を、切断面にくっつけ神霊魔法をかけるが、何とかくっついただけで、神経とかがまだダメになってやがる。
銃の引き金くらいは引けるが、剣はもう振れねえ。
レオーネの腕前なら治るかもしれねえが、そもそも神霊魔法は俺の得意分野じゃねえ。
腕を治すには時間がかかるし、魔力消費も激しい。
なら、右腕はあきらめる。
俺は、左手で木刀を構え、片手上段の構えをとった。
右手は懐から出した、ピストルのグリップを握る。
本当は、小太刀とか短いドスで使うんだがしょうがねえ。
チャカの腕前も、正直上手いとも言えねえし。
ここに来て、格好つけて物理防御をなめてたから、こんな羽目になったぜ。
「マサヨシィ」
「マサヨシ殿!」
「ワンワン!」
仲間が駆けつけてくる。
おそらくビビット王さんが、俺の仲間にニコを追ったってことを伝えたんだろう。
「親分、さっき腕ぶった切られて、多分右手が……」
ニコが言うと、全員の顔が青ざめた。
「助太刀いたします。レオーネは貴方様を守る太陽の聖騎士」
「我も戦うぞ!」
「親分、命令してくれ。オイラだって少しは強くなったんだ」
こいつらが加勢しようとしたが、俺はピストルを奴らに向ける。
「うるせえ! こいつとは一対一で喧嘩するって約束だ。助太刀して俺に恥かかせやがったら、おめーらでも俺は許さねえ!」
俺が言うと、ドワーフ王ガルフは大笑いした。
「がはははは、マサヨシと言ったか? 気に入ったぞ! お前、負けたらこのガルフ様の家来になれ」
「へっへっへ、何だとこの野郎? てめーこそ負けたら俺の舎弟だぞ」
俺とガルフはお互いに笑う。
こいつとは根性者同士、気が合うようだ。
気に入った、是が非でもてめーは俺の舎弟にしてやる。
「行くぜ!」
俺は左上段から、一気に踏み込み、野郎の顔を思いっきり突いた。
まずは目ん玉もらうぜ?
あとで神霊魔法で直せば、何とかなるだろう。
すると、ガルフは俺の突きを額で頭突きするように受けた。
そして間髪入れずに、逆に大剣を俺の頭に振り下ろしてくる。
俺は咄嗟に、ピストルを野郎の腹に連続でぶっ放した。
コカトリス変異種を粉々に吹っ飛ばした、マグナムよ!
だが、野郎が数メートル吹っ飛んだだけで、鎧に全然傷一つ、つきやしねえ。
何で出来てやがんだ、あの野郎の鎧は。
「ほう? ワシが見たこともない魔法の武具。エルフ共が使う飛び道具とも違う」
「おめえさんこそ、その鎧やべえな。何で出来てやがんだよ?」
「我がドワーフに製法が伝わる、秘伝のヒヒイロカネじゃ。魔法防御はミスリルよりも下だが、物理防御はオリハルコンよりも上、アダマンタイトよりもやや下。この剣もそれで出来ておる。長年の仇敵のエルフ共との喧嘩にも、ワシは後れを取ったことなど一度もないわ!」
マジか、欲しい!
こいつら使えるなんてもんじゃねえ。
大当たりだぜ。
こいつらの金属加工技術で、武器と防具作らせて、シノギで売り飛ばせば、大儲けだ。
「おうおう、すげえな。で? ミスリルもアダマンタイトとかでも作れんのか?」
「当然だ! 金属加工にかけて、我らドワーフ以上の者など存在せん!」
「そいつはすげえなっと!」
俺は木刀をガルフに投げつける。
ガルフは避けるが、風魔法で軌道を変えてガルフの顔面に木刀を直撃させた。
公爵が使ってた技の応用よ、名付けて変幻自在撃。
俺は木刀の遠隔操作でガルフの顔面をボコボコにしながら、右手で銃を構え、具足の関節の隙間目がけて、連続でマグナムをぶち込む。
すると、出血と共にガルフが膝をついた。
よし、足を止めてやったぜ。
「沈黙!」
俺は、冥界魔法を唱えて、奴が魔法を唱えられねえように予防線を張っておく。
前のドワーフ共との喧嘩では、それが仇になって仲間を危険にさらしたからな。
だが、ガルフは酒瓶を口に含み、足の傷に吹きかける。
すると、出血がピタリとやんだ。
アレも精霊魔法?
いや、アドレナリンが出まくってて出血が止まりやがったんだ。
滅茶苦茶根性がありやがる。
すると、ガルフは酒瓶を一気飲みしはじめる。
何をする気だコイツ?
そしてガルフは、地面に酒瓶を放り投げた。
「炎精霊召喚」
ガルフの体が変化し、体長3メートル以上の炎の怪物と化した。
これが精霊魔法の達人の技か?
野郎の着ている鎧と、二つの大剣が真っ赤に光り輝く。
まさに、灼熱の炎の精霊だった。
やべえ、ただでさえ強いのにパワーアップかよ。
こいつ今まで戦った悪魔野郎よりも、はるかに厄介だ!
俺は風魔法で、左手に木刀を呼び寄せて握る。
「お前ら、逃げろ! こいつは今までの敵よりもやべえ! 巻き込まれるぞ!」
俺が振り返って叫ぶと、仲間がみんな絶望的な顔をした。
ヤミーも泣きそうな顔で俺を見る。
「ま、負けるな! マサヨシィ!」
ヤミーが叫ぶと、俺の体も光り輝き、親分の入れ墨が入った状態になった。
どうやら、俺の力の発動条件は、無意識にヤミーがやっているようだ。
俺は背中に熱さを感じて、着物をはだける。
そして木刀を握ると、俺の魔力やヤミーの力がアップしてるのか、木刀はいつもの長ドスではなく、真っ黒に光り輝く鍔を持った、野太刀のようなやや大型の日本刀になった。
そして右手も動くし、俺の力が倍以上に膨れ上がった気がする。
「ほう? マサヨシ、貴様はただの人間じゃないようだな?」
炎の怪物になったがガルフは、俺を見下ろすように呟いた。
「あたりめえだ馬鹿野郎。俺はよお、この世界救済のため送り込まれた勇者様よ。さあ? てめーがイジメてきたホビット連中への罪、俺の背中の閻魔様にわび入れろお!」
「ほざけ! 人間のガキ!」
ガルフが灼熱の火炎を口から吹き出す。
俺は、日本刀で炎を斬り飛ばす。
「なにぃ? 何だその剣は!」
「俺に勝ったら、作り方教えてやるよ。俺に負けて舎弟になってもなあ!」
そしてお互いに剣と刀を交えた。
俺の刀は、冥界の対魔界用決戦兵器なんだ。
ヒヒイロカネだか、ヒヒの金玉だろうが何だろうが、絶対に砕けねえ!
そして、ガルフの剣をかわすたびに、炎が巻き上がる。
だがそれがなんだ?
この状態になった俺は、どんな野郎にも勝ってきたんだ。
俺は、金筋者の極道で、勇者だ馬鹿野郎!
なめられてたまるかってんだ‼
俺は野郎の腕と、足にアルファベットでZを描くように斬撃を繰り出した。
「何だこの野郎? てめーの攻撃なんざ全然効かねえぞ馬鹿野郎!」
「ワシも貴様の斬撃などへでもないわい!」
だが奴は、さっきの斬撃で足が崩れ、隙ができた。
俺は一気に野郎のもとまで左足を踏み込み、刀を野郎の喉に突き刺す。
野郎も両手の大剣を振り下ろすが、俺の素早さの方が上だった。
「ぬおおおおおおおお、ワシの力があああああ」
手ごたえありだ。
この刀は、あらゆる魔法効果を打ち消すことが出来る。
精霊魔法であっても、同様のようだ。
すると、ガルフの体が真っ白に光り始める。
やばい! 何か来る。
沈黙魔法かけてるが、野郎の体力も精神力もそれほど衰えてねえ。
俺はガルフから刀を引き抜き、距離をとろうとするが、野郎が両手で刀を掴む。
「てめえ、離せこの野郎!」
俺は鉄板入りのブーツで蹴りを入れるが、全然ビクともしねえ。
「くらえ、炎精霊の獄炎」
辺り一面が、まばゆい炎の爆発に包まれる。
そして、一瞬で酸素もなくなり、呼吸もできねえ。
高温すぎて、目の前の炎の光がまっ白く輝いてやがる!
そして、俺は両目を焼かれて視力も低下し、全身に大やけどを負った。
だがなあ、熱いとか苦しいとか子分や女共の前では絶対に言わねえ!
てめーが炎なら俺は!
俺は、右手に水蒸気の水、左手に風をイメージする。
「てめーも吹っ飛べ! 水蒸気の 爆発」
野郎の高温に水分が反応し、辺り一面、大爆発を起こした。
俺は自分の体を、両手に持った刀で咄嗟にガードする。
だが、数百メートルは吹き飛ばされた。
平原の草むらを俺の体が転がり、全身のあちこちの骨が砕けやがる。
右手と左手が、爆発でおしゃかだ。
何とか生きてるが、立つのが精一杯だ。
刑務所の中で読んだ本によ、高温の製鉄作業で一番怖いのが水分らしい。
水蒸気爆発しやがるからなあ。
それと大きな炎を消すのは、爆風消火がいいらしい。
実際、大きな森林火災じゃ火災消火爆弾なんかも使われるからなあ。
さあて、ガルフの野郎はどうなった?
俺は右足引きずりながら、刀の柄を口で咥えて野郎のところまで歩く。
くそう、一歩、一歩が重すぎて、歩くたびに全身に激痛が。
すると、ガルフの野郎はまだ立っていた。
精霊化は解けたが、さっきの爆発でも鎧にひび一つ入ってはいないが、顔面は血まみれだった。
そしてガルフは俺を見ると、気迫を込めて睨みつけてくる。
くそが、根性ありすぎだろう。
俺はガルフの元まで歩いて行って、ガルフを思いっきり睨み返した。
するとガルフは俺に頭突きしてきやがった。
俺も頭突きで返し、お互いの男としての、意地と意地がぶつかり合う。
やべえ、これ絶対頭蓋骨にヒビとか入ってるよ。
もう頭に火花が散ってクラクラだ。
だが、絶対に負けねえ!
こんな根性のある野郎は、意地でも俺の舎弟にしてやる!
「うおおおおおお、諦めてワシの家来になれぇい!」
「なんだおらぁああああああ、テメーが舎弟になるんだよ!」
そして、お互い渾身の力を込めて、何度も頭突きをくらわしあった。
辺りに、俺とガルフの血しぶきがあがる。
そしてとうとう俺は、足にきて思わず膝をつく。
ちくしょう、負けたか!
あと一発食らったら、もう立てねえ。
すると、ガルフは白目をむいて、その場で倒れた。
ようやく、決着がついた瞬間だった。
「勝ったぜ、テメーは今から俺の舎弟だ、馬鹿野郎」
レオーネが駆け付け、俺に回復魔法をかけ始めた。
ヤミーは俺に涙目で抱き着いてくる。
「おい、ヤミー。親分の盃寄こせ!」
「コルレオーニ、魔力回復の聖水あっただろ? 盃満たせ」
俺は、ヤミーに預けた親分の盃を貰うと、コルレオーニに指示して盃に聖水を入れる。
「ニコ、ガルフをひっぱたいて起こせ! どうよ? 格好良かっただろ俺は?」
俺が言うと、ニコが笑いやがった。
そして、ニコはガルフをゆすぶって目を覚まさせる。
「よう、目が覚めたか? てめーは負けたから俺の舎弟になれ」
俺は盃の聖水を半分まで飲まねえようにして、ガルフに杯を手渡す。
そして、ガルフは盃を手に取ると、一気に飲み干した。
「なんじゃこれは? 水じゃこれ。酒よこさんかい!」
「てめー兄貴分の俺に何だその口の利き方は! 酒ならてめーが全部飲んじまっただろうが」
「ああ、そうじゃった。忘れてたわ」
お互いに笑いだすと、ドワーフ王ガルフは俺の舎弟になった。
本当は一席設けてやりたいが、このくそったれの仁義なき世界なら、しょうがねえ。
「あとな、おめーの兵団、ゴンゾウ隊だっけ? 10人ほどあずかってるから」
「なんだと! あいつら喧嘩に負けおって!」
いや、おめーもだよ馬鹿野郎。
まあいいや、俺も疲れたし少し寝よう、おやすみ。
そして、俺は深い眠りについた。




