第39話 脅迫
「てめーら、ドワーフ王国のどこの誰で名前なんて言うんだおらぁ!」
俺は、ドワーフ達の鎧を脱がせて、手足縛ってヤキを入れまくる。
しかしこいつら、喧嘩前に酒かっ食らってやがるのか、感覚麻痺してる。
しかも結構痛めつけてるのに、ぜんぜん音を上げねえ。
時間が経過し、俺はさすがに疲れて肩で息する。
「何だ人間めが!」
「ワシらドワーフを舐めてんのおらぁ!」
「調子に乗るな人間のガキコラァァァァ」
俺の恫喝に、全然口を割りやがらねえよ。
こいつら、根性ありすぎだろ。
じゃあ、しょうがねえ。
俺はブロードソードを抜くと、ドワーフのひげっ面に向けた。
あんまり殺しとかやりたくねえし、ポイント下がるけど、しょうがねえ。
一人か二人くらいぶっ殺して、ビビらせて口割らすか。
「マサヨシ、殺しはダメだと、お嬢様に言われておろうが!」
拒魔犬兄貴は言うが、こいつら打たれ強くて埒があかねえんだもの。
しょうがねえだろうが。
「兄貴、そうは言うがよ、こいつら俺らに負けたんだぜ? ここは一つ、わからしてやんねえと」
俺が言うと、ドワーフ達は騒ぎだした。
「そうだった、ワシら喧嘩に負けたんだった」
「この人間のガキが言うことも一理ある」
「煮るなり焼くなり好きにしろ!」
なんだこいつら?
頑固だったのが、いきなり素直になりやがったぞ。
「そうだよ、テメーらは俺達に負けたんだから、俺が言うこと素直に聞けよ。じゃあ、お前らはどこの誰で、この中で一番偉い責任者誰よ?」
「ワシじゃろ?」
「なんだおめえ、最初にのされたくせに馬鹿たれが」
「酒の強さだったらワシが一番強いぞ」
「若造共が、ワシが一番偉くて強いじゃろ? この中では」
「我らドワーフ王国兵団、みんな偉くて強いぞ!」
あああああああああ、めんどくせええええええ。
何なのコイツら?
俺は情報聞き出したいだけなのに、俺が俺がと仲間割れしてるしよお。
ボンクラの集まりかこいつらは。
「もういいや、そのクソ雑魚のドワーフ兵団は何人いて、どいつが頭よ?」
「なんだ人間め! 総勢500のドワーフ兵団でぶちのめすど!」
「ドワーフ王ガルフなめてんのか!」
「いや、王妃のナムール様の方が、怒るとおっかねえど!」
「ワシらドワーフ兵団ゴンゾウ隊、喧嘩上等じゃ!」
ああ、総勢500人のドワーフ兵団のゴンゾウ隊で、国王がガルフって言って、王妃がナムールさんって言うのか、こいつらの身元は。
なんか、こういう奴らどっかで扱ったことあるなあ。
ああ、あれだわ。
こいつらほどボンクラじゃなかったけど、俺と抗争してた九州ヤクザの連中にそっくりだわ。
あいつらすげえ攻撃的で、喧嘩にバズーカやライフルに手榴弾使ってきやがる、喧嘩太郎ばっかりで、揃いもそろって我が強くて頑固な連中だが、男気があって酒飲みばっかで根性者も多くて、こっちが喧嘩や掛け合いで実力見せて筋を通すと、意外と素直で人情味がある奴らが多かった。
縄張り入っただけで、ドスやチャカだけならまだいいが、ダイナマイトがすっ飛んできて、こっちを絶対に殺す気で来やがる、殺し屋しかいねえような、やべえ連中ばかりの、広島ヤクザよりもまだ話せる奴らだったぜ。
ようし、じゃあそういう事なら話が早いわ。
「おい、コルレオーニ。こいつらが今からうたう情報、一言一句間違えず、書き記せ」
「へい、勇者様」
俺はにやりとしながら、ドワーフ共をカタに嵌めるため情報を引き出す。
「なんだ、てめーら? 俺達に負けた雑魚のくせに、いきがってんじゃねえぞボケ」
「なんだこのガキ! ガルフ王は炎精霊魔法の使い手で剣の達人だあ、バカ者が!」
「ワシらの武具は、この世界では天下一品だど! 秘伝の金属の加工とかできんのか!」
「一番喧嘩が強い奴が王じゃ! ワシらドワーフに上も下もねえ!」
「王の三つ子の兄弟のマシュ、オルテ、ガイも強いぞ! ジェットアタックじゃぞ!」
すげえ、ペラペラ情報しゃべってくれるぜ。
まあ極道でも、相手のヤキに泣き入れて情報しゃべった根性無しって、評価より、掛け合いで親分や兄貴分の恐ろしさを、ついぽろっと言っちまった、ならまだ格好がつくもんな。
じゃあこういうのはどうかな?
「そうか、俺もそんな強いんなら喧嘩してえんだけど、そもそもどこにいるのよ?」
「なんじゃお前ら! そんなことも知らんでワシらに喧嘩売っとんのか!」
「舐めてんのかガキ! そんなもん西の山脈の中央洞窟のわしらの王国の王宮じゃろ!」
「王宮前には、ワシらドワーフ兵団の兵舎があって、みんな喧嘩の達人じゃぞ!」
「ワシら、洞窟の中だと窒息するから、炎魔法使えんがなめとんかぁ!」
こうしたやり取りが、一時間ほど続いた。
コルレオーニがまとめたネタ帳も、こいつらドワーフの情報でびっしりだろうぜ。
それにこいつら嫌いじゃねえな、おもしれえもの。
俺が勝ったら、是が非でも俺の子分になってもらうぜ。
そう思いながら、全員の横っ面を張り倒す。
「てめーら、俺に負けた三下がイキがってんじゃねえ! 嫌とは言わせねえぞ? 勝ったら、全員俺の子分だ! 俺が一番強い、テメーらはそれに従う! なんか俺が間違ったこと言ってんかおらぁ!」
俺が言うと、ドワーフ共はおとなしくなった。
こいつらの理論は単純だ、一番力が強い奴が頭になる。
極道と一緒よ。
「よおし、テメーらの頭のガルフってのと喧嘩するから、水晶玉の連絡先教えろよ? 俺が直接話して喧嘩の連絡するからよお、いいよなあ? ああ?」
俺はドワーフ王国の王、ガルフの連絡先を聞き出した。
さあて、これから泣く子も黙るヤクザの脅迫に行くかな。
そして水晶玉を使って、ドワーフ王国ガルフ王への直通連絡をかけた。
「こんな時間に連絡かけてきおって! どこの誰だ馬鹿たれが!」
おーおー、なかなかドスが聞いてて、いい声してやがるな。
この野郎が、ドワーフ王のガルフって野郎か。
俺は人差し指で手招きし、コルレオーニにメモ帳寄こすよう合図する。
「へっへっへ、ドワーフ王ガルフさんだっけ? 王妃のナムールさんはお元気で?」
「なんじゃ貴様! 声からしてドワーフではないな? 何者だ」
「いいじゃねえか、俺が誰だろうと。マシュ、オルテ、ガイ君達は元気にジェットアタックの練習とかしてやがんの? 山脈中央から外れにある、炎精霊の洞くつでさあ、かわいいなあ」
「き、き、貴様どうしてそれを! 息子たちに何をする気じゃ!」
「いやあ、別に何もお? ただかわいいなあって。ああ、お妾さんのボルマーさんに産ませた、ブルドちゃんは、まだ赤ん坊だっけ? 可愛い盛りだよなあ」
「ふざけるな! 貴様何が目的だ! ワシの子供達に手を出してみろ! 四肢を切断し、焼き尽くして殺してやる!」
へっへっへ、相当動揺してやがるなあ。
脅迫ってさ、こいつらドワーフみてえに肝が据わってる野郎らには通用しねえように見えて、実はよお、そうじゃあねえんだ。
こっちが、どこの誰か一切告げず、相手の情報を徹底的に調べ上げて、身内の情報とかあれば、それを優しく告げてやると、後ろ暗い野郎だと色々考え巡らせて、こっちの思うように誘導できる。
だが、直接女子供さらうぞとか、ぶっ殺すとか言ったらだめだ。
そうすると相手が死に物狂いで、身内守ろうとしてきやがるし、サツが介入してくる大義名分与えちまうことになるからよ。
あのサイコ姫野郎みたいに、実際に身内をさらう必要はねえ。
ありゃあ、やりすぎだ。
まあ、手段の一つとしてならアリかもしれねえが、俺はこの世界で任侠道貫くんだから、弱い者いじめしてどうするって話よ。
「だぁかぁらぁ、いいじゃねえか俺がどこの誰だろうと。そういえば、おたくらドワーフさんは、山脈中央洞窟から東に外れた、山の大工房で、武器とか防具作ってるんだろ? 事故とか起きたら大変なことになるよなあ? それと西の工房ではドワーフ特製の火酒作ってるみてーだし、火事でも起きたら酷いことになるなあ、ああ?」
ドワーフ王ガルフは、水晶玉の向こうで絶句してやがるのか、沈黙した。
もう全部、ドワーフの事がバレてて、自分たちの弱点がバレてるって感じだろう。
ヤクザの脅迫、舐めんな馬鹿野郎。
「お前、何者だ。いいかげん目的を言え、場合によっては聞いてやらんでもない」
よおし、いい感じで食いついてきたなあ。
さっきまでの威勢が全然ねえ。
これだけメンタルやられれば、丁度いい頃合いだろう。
「3日後の山脈ふもとの西の平原に、一人で来い。喧嘩道具持ってきてもいいぞ? 俺もそうするから、一対一のタイマンで、俺と喧嘩しようや? じゃあな」
俺は水晶玉の連絡を打ち切った。
これでいい。
多分こいつらの性格上、正面から喧嘩して勝たねえと、絶対に俺の軍門にはくだらねえだろうから、正々堂々と一対一でケリつけてやる。
まあ、さっきの脅迫は正々堂々とは言えねえが。
さあて、このドワーフの野郎らは用済みだが、俺の子分になるんだから、3日間ほどホビット国で人質生活を送って貰おうか?
こいつらホビットについて偏見もあるし、ボンクラ共に教育もしねえと駄目だからな。
「よおし、今日の喧嘩は終わりだ。 3日後にテメーらの王様と一対一で喧嘩してケリをつける。それまでの間、お前らは俺に従え! いいな?」
ドワーフ連中は、さっきの俺の脅迫を聞いてビビッちまって、青い顔しながら頷いた。
さあて、本当はしたくねえんだけど、定時連絡を姫野郎にしねえと。
俺は、アレクシアの水晶に連絡した。
「マサヨシ様! ごきげんよう、お話を聞けるのを楽しみにしていましたわ」
こいつ水晶玉がワンコールしねえで、通信に出やがった。
なんなのこいつ、まるで俺が今から連絡してくるの待ってたみたいじゃねえか。
怖いんだけど、このサイコパス。
「俺も、姫様と話ができてうれしいよ。貰ったピストルのおかげで助かってる」
心にもない返事をして、現在の状況を説明した。
「すごいですわ。一日目で、そこまで話が進むなんて。ただ、お気を付けくださいマサヨシ様。サタン王国精鋭の不死隊に、あなた様へ暗殺指令が出てるようです」
はあ? なんだそりゃ。
停戦協定違反だろうが。
「おい、魔王軍のやつらは、揃いも揃ってボンクラの集まりか? 暗殺指令とかなめやがって」
「いえ、どうやらその不死隊、魔王軍ではないようです」
魔王軍じゃねえ?
どういうことだ一体。
「指揮系統が軍ではなく、大悪魔個人の私設の特殊部隊らしいです。軍ではなく悪魔個人が勝手にやったという方便ができますわ。敵の中に、知能が高い者がいると思われますので、ご注意を」
ああ、俺が転生前によく使った手だわ。
組を偽装破門した鉄砲玉使って、相手の親分の命取りに行くの。
「なるほど、確かな情報かい?」
「ええ、情報源はアスモデウス魔王軍元帥です。私に直接教えてくれました。どうやらサタン王国内で、あなた様を巡り主導権争いや派閥闘争が行われている様子。私は、彼女に対して、勇者様がお亡くなりになった場合、私も後を追って死んで冥界に行き、あの閻魔大王様に掛け合って、あなた方魔界を滅ぼすと言ったら、青い顔してましたわ」
アスモデウスの奴、俺に貸しを作ったのか?
いや、あいつ俺を殺されたくねえからって、情報漏洩したんだろう。
あの女、俺の体目当てのポンコツだもんな。
そして、俺はアレクシアに違和感を覚える。
なぜ、この女は閻魔大王親分の事を知ってやがるのかという事。
この世界に、神として伝わってるのは100年前に俺の先輩に力を貸した神と、新たに降臨した神である、ヤミーのはず。
まさかやはりこの女、俺の業に引き寄せられた地獄からの転生体か?
誰なんだコイツは。
俺のおふくろなのか?
いや、おふくろはこんなに頭が回る女じゃなかった。
何者なんだコイツは。
「そっちに迷惑かけてすまなかったな。ところで姫さん、あんた生まれ変わりって信じるか?」
「生まれ変わり? 何でしょうそれは。人は死んだら、土にかえる。それが世界の常識です」
まあ、そうだよなあ。
教会もそういう教義だし、親分もこの世界の連中が生まれ変わりを拒否して、魂の循環がうまくいかないと言っていたし。
だがこの女、間違いなく俺を知ってる誰かに違いない。
引き出すか? 今ここで。
「いや、俺の神様はヤミーで、閻魔大王様の存在をどうして知ったんだ?」
「アスモデウスさんが、おっしゃってましたわ。けれど、私がなぜこれほどまで勇者様を愛し、お声を聴いただけで安心し、お姿を拝見した時に沸き起こった愛の感情はわかりません。私が他の人間に感じたことがない、感情でした。きっと、私はあなた様と結ばれる強い運命を感じます」
チッ、親分の情報をこいつに与えたのはポンコツか。
しかしこいつも、俺に不思議な情を感じてやがる様子。
やはり、こいつは俺のゆかりの転生体だ。
誰かは知らんが、もし俺のせいで苦しんでいる魂なら救済の義務がある。
このサイコ女、はっきり言って嫌いだが、この亜人世界での旅が終わったら、レオーネのように、俺好みのマブい女にするために、じっくり俺の男で教育してやる。
「そうかい、俺もあんたと運命的なものを感じてたんだ。この亜人世界の旅が終わって、王都に帰還し、王に化けてる悪魔野郎をぶっ潰したら、その辺のところ二人きりで愛を確かめてやるぜ」
俺が言うと、長い沈黙がありアレクシアは最後にこう言い残した。
「ええ、このアレクシア。あなたと結ばれるためなら、どんなことでもしますし、あなたが欲しい物は何だって与えます。早く王都であなた様とお会いしたい。それではごきげんよう、愛しています」
水晶玉の通信が切れた。
愛してるか。
へっ、女からここまで言われたら格好をつけなきゃ男じゃねえな。
王都に帰ったら、待っていやがれアレクシアちゃんよ。
じっくり、たっぷりと可愛がってやるぜ。
俺は人質にした、ドワーフ共を数珠つなぎに縛り上げて、ホビットの集落に帰還する。
期間は三日後、ドワーフ王ガルフとの喧嘩の前に、ホビット連中を鍛え上げ、俺自身のレベルアップもしなきゃならんな。
なんと、ドワーフは九州ヤクザだった(棒)
これはそのうち広島ヤクザも出てきますね(棒)




