第37話 チャカ
俺は異端審問官との、別れの仕事の意味で赤十字団へ回復魔法をかけてやる。
さすがに、俺もその、サイコパス王女のあの仕打ちにはドン引きしたからな。
救出作業が終わった後、俺は得々ポイントカードを見やる。
マイナス7250ポイントを指していた。
「7250ねえ、俺が言いてえよ、馬鹿野郎が!」
俺は衝動的にポイントカードを地面に叩きつけた。
ちくしょう、公爵ぶっ殺しに行ったのと、ケジメの仕方がまずかったが、とりあえずは赤十字騎士団を助けてやったことで、多少はマイナスポイントが回復したがいまいち伸びねえ。
俺はへとへとになって、宿屋に向かう。
すると、宿屋の店主から王族用のロイヤルスイートの部屋に案内された。
あの姫からの選別だろうか。
あんまり、あの化物に借りとか作りたくねえんだけどなあ。
部屋は俺しかおらず、他の奴らは1ランク下のスイートルームで休息についてるらしい。
このクソのような世界にしては、まずまずな部屋だな。
雑だが魔法で光るシャンデリアと、清潔なでかいベットまで用意してやがる。
あっちは、風呂場か。
この世界、風呂があるところなんてあんまりなかったから、でかい壺用意して、即席のドラム缶風呂に入るしかなかったものなあ。
銭に余裕出来れば、世界中にスーパー銭湯作って、集金するシノギでもするか。
そして、俺は着物を脱ぎ風呂で体を温める。
そして風呂から上がると、念のため魔力回復の聖水を飲んで床に就こうとした。
ベットの上に横になろうとして、シーツをめくると下着姿のレオーネが待っていた。
「マサヨシ殿、おじさまが亡くなったのと、王女様の恐ろしい姿を見て眠れなくなってしまい、その、ご一緒に寝ていただくと、レオーネは心休まります」
うん、そうかそうか、色々悲しい思いをしたもんな、おめーさんも。
へっへっへ、じゃあ俺がたっぷり慰めてやるぜ。
R15からR18になろうが、もう知った事じゃねえや!
俺はレオーネのもとに飛び込もうとした。
「なんじゃ、マサヨシ! この部屋そこそこいいのう、爺や?」
「はい、この世界にしては上等かと。マサヨシ、疲れてるから早く寝るがよい」
寝間着姿のヤミーと、しっぽを振った兄貴がノックもせずに俺の部屋に現れた。
そしてヤミーは、レオーネをキッと睨みつける。
レオーネは、慌てて枕元に置いていた洗濯したての黒のタイツを着用しだす。
ちくしょう、このガキが。
どこまで邪魔しやがるんだ。
「マサヨシは155歳のお子様じゃからの。しかし広いベットじゃな、どれ我が子守唄を傍で歌ってやるから、遠慮せず寝るがよい!」
うぜえ、こいつらシカトしてもう寝よう。
俺はベットに潜り込むと、ヤミーやレオーネと兄貴もベットに潜り込んでくる。
せっかくの広いベットが狭いんだけど……。
そしてヤミーは歯ぎしりをし始め、兄貴は犬のくせに豪快にいびきをかき、レオーネもそのまま眠りにつく。
俺は特大のため息を吐いた。
こうして大貴族のヤミー誘拐事件を解決し、深い眠りに落ちたのだった。
翌朝、俺がヤミーとレオーネと兄貴を連れて部屋から出ると、俺達の朝食を用意してた宿屋の野郎が、こういったんだ。
「おはようございます。ゆうべはお楽しみでしたね」
うん、さすがの俺も舌打ちしながらカチンと来たね。
「うるせえ馬鹿野郎!」
全然楽しめなかったから、俺はその野郎の頭を、履いてたスリッパで思いっきりひっぱたいてやった。
ホントこの世界の奴らは、ムカつく野郎ばかりだ。
そして、ぐっすり寝たであろうニコと合流すると、朝食を平らげる。
宿屋を後にした俺達は、亜人たちがいるという王国から南の、トワの大森林に向けて出発した。
すると、気球の前にはコルレオーニが頭を丸坊主にして、汚えナマズヒゲを切って待っていた。
「おはようございます、勇者様方! このコルレオーニ、準備してお待ちしておりました」
多少はマシな緑の商人服に着替えているようだ。
身長162センチくらいの小太りだが、身なりを整えれば多少は見れたツラになったな。
そして、気球を動かす準備を始める。
亜人たちや精霊たちの支配領域の、未知への冒険ねえ。
ファミコンのRPGとかだったらワクワクする展開だろうけどさあ。
よその縄張りに行くときって、あれな。
極道連中みんな思うだろうけど、すげー内心おっかねえからな。
まあ組から重要な仕事任されたって、気合も入るんだけど。
そして、ホームグランドじゃねえから、そう簡単に助けにくる仲間もいねえし、常に嵌められたり、ぶっ殺される危険が待ち受けてる。
アホの鉄砲玉ならともかく、そこで仕切るのって、ある程度腕が立って、度胸のある根性者じゃねえと務まんねえんだよ。
まあ、俺は喧嘩好きで若かったから務まったけど。
嫌な思い出だけじゃなく、そこで仲良くなった奴やコマした女だっていたし。
けどそんくらい、極道にとっては仕事とはいえ冒険なのよね。
よその縄張りって。
まあ、亜人連中で使える野郎らは、全員俺の舎弟か子分にするって決めたからよお。
気合入れてノシていこうか。
ここが、俺様の腕の見せ所ってな。
そして荷物チェックを済ませ、不要なものは銀行業務の行商人に預けていざ出発だ。
「よおし、野郎共! 全員気球に乗り込め! 出発だ!」
そんで、この気球どうやって動かすんだ?
確か、熱気球だからまず炎魔法を使ってバーナーに火をつけてっと。
よし、後はどうすんだ。
「勇者様、これは共和国制の気球だから動かし方は、自分にお任せを」
コルレオーニは、気球の操作を開始する。
すると、気球は空に浮かびだす。
「なんだてめー? 使えるじゃねえか」
「へい、自分共和国出身なんですが、商売上流れて流れて王国に来たんです」
なるほど、世界の地理なんかにも詳しそうだ。
思った以上に使えそうな丁稚だな。
そして、コルレオーニは気球の操作盤に世界地図を置くと、マーキング用の赤い磁石を置いた。
そして、気球は南西の方角に進路を向けて進みだした。
これで行き先まで飛べるってことか。
場所は、ホビット国。
なるほど、最初に行くとしたら、話が分かる奴らのところに行くのが一番だな。
そして出発から一時間ほど経過する。
すると、ヤミーは頭陀袋から何かをごそごそと取り出そうとしている。
何やってんだこのガキ?
なんか白いもの出して、串を取り出してぶっ刺してやがるが。
「ちょうど良い火じゃのう、焼きマシュマロじゃ。うーん、スイーツ」
マシュマロ取り出して、気球のバーナーで焼き始めやがったこの馬鹿。
「うーん、うまいのう!」
俺はマシュマロ食ってる、ヤミーの頭を軽くひっぱたいた。
「何考えてやがんだこの野郎! 臭いにつられてモンスターが来ちまうだろうが、このボケ!」
見ると、レオーネも分けてもらってるようで、慌てて口の中に放り込んで隠す。
頬っぺた膨らんでるから、バレバレだよ。
なんなのこいつら、まるで緊張感がねえ。
すると、前方から赤と黄色の極彩色の鳥の集団がやってきやがった。
あれは、まずい!
俺は、懐から姫さんから拝借したピストルを取り出す。
「お前ら、あの鳥の目を見るな! 石化するぞ、コカトリスだ!」
ちくしょう、数は10羽。
剣じゃ届かねえから、銃で撃ち落とすしかねえ。
居合斬だと、万が一気球に当たったら墜落だ。
だが、単発だとかわされて魔力も無駄に消費する。
数が限られるから、なるべく魔力回復の聖水は使いたくねえ!
待てよ、そういやこれは魔法の弾丸。
俺は細かいボール球の土魔法で作った金属と。風魔法をイメージする。
そして鳥の集団に向けて、右ひじを伸ばして引き金を引いた。
「鳥撃ち」
細かいボール球が、広範囲に飛び散る即席の散弾。
昔抗争で、相手の野郎から散弾銃ぶっ放された時は死ぬかと思った。
あれは動物狩るようなもんで、人間相手に使う武器じゃねえっての。
危うく上半身が吹っ飛ばされそうになったからな。
ヤスが、機関銃で援護射撃してくれたから、助かったけど。
しかしちくしょう、3羽仕損じたか!
ならば、土魔法と尖った金属と炎をイメージし、突風を連続で打ち出すイメージで。
「機関銃」
連続で打ち出す、低魔力消費の炎の弾丸で二羽仕留めた。
だが、一匹が猛スピードで気球に急接近する。
奴が向かうのは、コルレオーニ。
「おい、奴の目を見るな! 頭下げろボケ!」
コルレオーネは瞬間的に姿勢を低くする。
ちくしょう、一匹だけ色違いの奴がいやがる。
青と黄色、変異種か?
すると、今度はヤミーの前に出て、くちばしで攻撃しようとした。
クソ、間に合わねえ。
すると、ニコが石投げの要領で、ナイフを投げつけて鳥にぶっ刺す。
だが変異種ならば、アレくらいじゃくたばらねえ。
ならば!
俺は、銃に火魔法と土魔法と風魔法を込める!
突風に、十字刻みで窪みがある、灼熱の柔らかい金属の弾丸をぶち込むイメージで。
「往生しろや、強装弾!」
玉を撃ち込んだ鳥公は、木っ端みじんに粉砕された。
当たれば弾丸が内部で破裂する、灼熱の弾丸よ!
アメリカ映画で、お前のドタマなんて吹っ飛ぶぜなんて言ってたセリフを思い出すね。
それに、昔ガンマニアな極道いて、実際の44マグナム見せてくれた。
黒光りして、銃身長いレンコン(回転式)の拳銃で格好良かったよな。
ちなみに、弾丸はホローポイントって言って、柔らかい弾頭がすり鉢のように窪んでて、命中すると、先端がキノコ状に変形するどころか、十字に刻みいれといたから内部で大分裂よ。
そんでガンマニアの野郎、マヌケだから抗争で何度も撃ち込みすぎて、線条痕って言う弾丸の指紋みたいな奴が残りまくって、サツから銃を特定されてパクられたっけなあ。
この魔法の銃があれば、あの野郎泣いて喜ぶだろうな。
線条痕も残らねえだろうし。
そんなわけで、俺達はコカトリス襲来から風魔法をレオーネと一緒に唱えて、上昇気流を作り出し、夕方に最初の目的地、ホビットの集落に到着した。
次回亜人種国家へ




