第31話 挨拶
他の奴らには、公爵野郎がいるイムールという、城塞都市に向かってもらった。
俺は街道沿いを高速で飛び、王国第二の規模の、商人都市コルネロに向かう。
燃料補給用に、魔力回復の聖水も持ってな。
そう、俺をコケにしたお貴族様の取引相手で、ケジメ先のコルレオーニ商会にご挨拶よ。
この町は、王家に多額の税金や、教会への高額な寄付金を払うことで、商人達の自治が認められてる、王国の天下の台所にして、金が一番集まる町。
そして王国の商人ギルドの拠点の一つ。
ゆくゆくは、じっくり俺のものにしようと思ってたが、しょうがねえ。
何人か見せしめにぶっ殺して、使える奴らは舎弟にでもしてやろうか?
いや、舎弟とか上等なものなんかにしねえ。
三下未満の、ヤンキーみたいな丁稚にしよう。
まあ言うなれば、下僕だ下僕。
この俺を久々にブチ切れさせやがって、クズ野郎共がよお。
もうね、ここまで舐めた真似されたら、俺も多少血を見ねえと収まらねえわ。
このマサヨシ様をここまでキレさせたのは、悪魔野郎以外ではこいつらが初だ。
するとこの世界には珍しい、石で組んだビルみてえなのが建っている。
生意気にも、昭和の経済ヤクザの、鉄筋ビルみてえなのをお建てやがって。
コルレオーニ商会とか、看板掲げてやがるからもろバレだ馬鹿野郎。
それにロウソクっぽい明かりを灯してやがって、中に野郎らいやがるなあ?
それじゃあ、ご挨拶と行こうか。
俺は宙に浮きながら、ビルに向けて右手に炎と左手に風をイメージする。
そして俺はこれから起きるであろう惨事に、心が躍る。
やっぱ俺って、性根がどうしょうもねえヤクザ者のままだわ。
「熱風」
「熱風」
「熱風」
俺は魔力消費がお得で、燃焼効果が高く、範囲広い火炎魔法をぶち込みまくる。
どうせ、こんな世界に防火戸だとか、スプリンクラーだとかねえだろう。
「燃えちまえクソ野郎共が!」
「ぎゃああああああああああああ!」
ビルは火災を起こして、中からコルレオーニ商会の奴らの悲鳴がする。
「ヒャーハッハッハッハア、いいねえ! よく燃えるわコレ! 俺と昔敵対してた、九州ヤクザや広島ヤクザとかも、喧嘩相手をダイナマイトや手榴弾で吹っ飛ばす時、さぞや胸がすくような気持だったんだろうぜえ」
魔力消費がお得だが、燃やし尽くして市街地では使えねえ魔法と制限してたが、その枷が無くなれば使いやすい魔法だぜ、まったくよ。
すると、ふと盗賊共をぶっ殺そうとした時の、ヤミーの悲しそうな顔が浮かんだ。
まったく、しょうがねえなあ。
俺は魔力回復の聖水を飲み干して、右手に水を、左手に風をイメージして泡立てる。
そう、消火器の消火剤をイメージした魔法。
「水泡」
ビルに向けて魔法を放つと、泡がビルを包み、しばらくして鎮火した。
コルレオーネ商会の周りには、俺の放火を目撃した、商人ギルドの連中が沢山野次馬で集まっており、ギルドの責任者らしき、いい服着た連中もいやがった。
俺は、コルレオーニ商会の前に降り立つ。
「い、異端審問官様! どうしてこんな非道を」
「商会の建物に火をつけるなんて!」
「あまりにも横暴すぎる」
事情を知らねえ野次馬連中が、俺を非難して、コルレオーニ商会の連中を救助し始める。
「おう、コルレオーニとかいう野郎と、商人ギルドの責任者がいたら、今すぐ俺の前来い。この勇者マサヨシ様が、テメーらにぶち切れてんだから、3分以内に来ねえと、この町滅ぼすぞ馬鹿野郎」
俺の名声は、この街にも知れ渡っているようで、俺の怒りの形相を見た商人連中が、血相を変える。
商人ギルドの責任者連中がこぞって駆けつけ、大火傷負ったコルレオーニも、ビルから運び出された。
「ゆ、勇者様。この度の件は、いかがしたのでしょう?」
スキンヘッドで強面の、商人ギルドの責任者の一人が、焦った顔して俺に事情を尋ねる。
「ああ、それな。そこに転がってる商人ギルドの、コルレオーニとか言う野郎が、俺が救った村を貴族と組んで滅ぼし、俺の子分を半殺しにして、神をさらった」
俺の一言に、ギルドの責任者連中や、野次馬連中の顔が、一気に蒼白になった。
この世界の商人連中は、信心深い連中が多い。
商売には、神への信仰心と加護が絡むと信じてるから、教会に莫大な寄付して、見返りになんらかの称号を得た大商人もいる。
この世界は、 とっくに神に見捨てられてるのに、哀れな話さ。
「えぇ……か、神様を……それは何かの間違いでは……」
「ふざけんなこの野郎! 誰が間違えんだ馬鹿野郎! モンワール公爵とか言う、アホ貴族とテメーらのやらかしの落とし前、どうつけんだこの野郎!」
俺はギルド責任者の胸倉を掴んで、揺さぶりながら、思いっきり恫喝する。
大火傷負ったコルレオーニが、俺を見て恐怖しており、ガタガタと震えている。
その様子を見た、商人連中がコルレオーニからサッと距離をとった。
こいつがやらかしたのは、間違いないと他の商人連中も感じたようだ。
「おい、とりあえずギルドの責任者連中とコルレオーニ、俺の目の前来て、全員着てる服脱いで座れ。グズグズしてると皆殺しにするぞ? あと穴掘るスコップ持ってこい」
俺は商人ギルドの責任者連中5人を、素っ裸にして正座させる。
コルレオーニは、体力を多少回復してやり、スコップで穴掘って顔だけ出して仰向けに寝かした。
そして顔だけ出したコルレオーニの口に、土魔法で作ったピンを咥えさせ、その上に石ころを乗っける。
「落とすなよー、クソ野郎」
俺はスコップの柄を両手に持って、ゴルフのスイングの素振りをした。
昔、組の幹部会や親分衆に付き合って、ゴルフコンペよくやったもんだ。
まあカタギさんと違って、俺たち博徒のゴルフは、札束とシノギの話が飛び交う、大人の賭けゴルフだけどね。
色々と賭けれる遊びがあるし、芸能人連中やスポーツ選手とか、声掛けて遊べるから重宝する、紳士的で健康なスポーツさ。
腕前?
ヤスの野郎はシングルプレイヤーだったが、俺は、ハンデ15から18を行ったり来たりよ。
まあ上手い方なんじゃね?
じゃあ、腕前をこいつらで試すとしようか。
「ゆ、勇者様! お許しを!」
「金、お金ならありませんで!」
「勘弁してください!」
「うるせえ馬鹿野郎、ぶっ殺さねえだけありがたいと思え! 話はケジメが終わったら、ゆっくり聞いてやる」
まあ、うちの神様のヤミーに傷一つでもついてたら、お前ら皆殺しだがな。
コルレオーニが咥えたピンの、ボールに見立てた石に向けて、アドレスを取る。
「落とすなよー、落としたら、てめーの顔面にスコップ飛ぶからよお」
コツは、背中に一本の芯が入ってる感じで、頭を動かさずに、ケツを傾け、体がブレねえようにして、スイングよ。
「チャー、シュー、メンっと!」
俺が奇麗なフォームでティショットし、石をスコップでかっ飛ばす。
すると、3メートル先で正座させた、スキンヘッドの顔面に直撃して一発で昏倒させた。
「ハッハー、ナイスショー! おいテメーら拍手がねえぞ! 拍手がよお!」
周りの野次馬連中は、俺に完全に怯え切って拍手する。
そして、コルレオーニの咥えたピンに、もう一度石を乗っけるが、コルレオーニの野郎ビビって震え上がり、石を口から落とした。
しょうがねえ野郎だぜ。
俺はそのまま、アドレスとってスコップをスイングする。
「チャー、シュー、メン!」
俺はこぼれた石ごと、コルレオーニの顔面にスコップをぶち込んだ。
「あ、ダフっちまったわあ」
笑いながら俺が言うと、周りの野次馬から悲鳴が上がる。
若い頃はゴルフ下手くそで、ダフ屋のマサって渾名を、兄貴分からつけられたのを思い出すな。
実際、チケットを会場で高値で売りさばく、ダフ屋のシノギもしてたし。
「ぎゃあああああああああ」
コルレオーニが悲鳴を上げやがるから、俺はスコップで、野郎の頭へ連続でどつき回す。
「テメー、地べた役が喋んな馬鹿野郎! 回復魔法かけてもう一回だ!」
こうして、この王国の商人ギルド連中は、俺の支配下に入った。
ケジメを一通り終わらしたら、俺はギルドの顔役連中や、コルレオーニに、銀行制度を作らせる。
この国は、王家や領主のお貴族様に、富が集中する世界になっており、金を貯めてもこういう商業都市でしか、貯めておくところがねえ。
しかも、このくそったれの仁義なき世界は、災害やモンスターの襲来に、戦争や魔王軍の攻撃で、一般の奴らはその日暮らしで、商人の上がりも貴族とつるんでねえと多くない。
だったら、富を一括にまとめて、行商通じて貯金や引き落とし、金貸しを、こいつらにさせた方がいいと考えた。
俺が稼いだ銭だって、馬車で運べる量ならいいが、これからガッツリ増えていく予定だし、貯めた金の場所に、泥棒入ったら大変だからよ。
え?
王国の許可?
そんなもんねえよ。
面倒くせえから地下銀行だよ。
俺がいた日本でも、ヤクザは暴対法で銀行の口座とか作れなかったし、海外に資産逃そうにも、俺や俺の組はアメリカさんから、金融制裁されてたから往生したぜ。
だが国に黙って銭を貯めるやり方は、俺たちヤクザの得意技だし、いくらでも方法はあるんだ。
それに、銀行制度なんて表立ってやったら、王国と真正面で喧嘩する事になるし、あの化け物王女が、嬉々として税金と称して、かっさらいに来るだろう。
「それで? そのお貴族様の弱みとかなんかねえのかよ?」
コルレオーニを正座させて、情報を引き出す。
「へい、あの公爵と騎士団はアホだが強いです。公爵は離れの屋敷に、確か双子の孫が住んでやして」
「ほう、他には?」
「ええ、奴隷商人にさらわせた村娘に、あんな事やこんな事して、夜な夜な楽しんで、娘に飽きたら証拠隠滅で殺して、庭に埋めてる変態野郎です」
俺は瞬間的にぶち切れて、コルレオーニの顔面をぶん殴った。
転生前もそうだが、こういう野郎は絶対に生かしておけねえ。
ましてや、身内がそんな野郎のところにさらわれたら、ただぶっ殺すだけじゃ足りねえ。
「テメー、うちの神様になんかあったら、さっきのケジメよりも、酷い様になって、死んで貰うからな」
「す、すんません。あと屋敷の配置や内部の状況とかわかります。それとうちの連中も、金で手なずけた騎士連中に、屋敷を見張らせますんで。あの公爵は生娘に目がなくて、多分色々と準備してますし、明日以降の夜が危ないかと」
「下手打ったら、テメー殺すぞ」
俺はコルレオーニに念を押すように恫喝した。
そして俺は商人ギルドの馬車に乗り、丸1日かけて交通の要所にして、城塞都市イムールに到着した。
幸いにも、俺が不安に思ってた一日目の夜は、ヤミーが何かをされたという情報は入ってこなかった。
俺の仲間はすでに町に到着しており、今回の絵図を説明する。
公爵屋敷の襲撃計画よ。
決行は準備が終了次第で、理想は今日の夜。
屋敷内の情報収集は、商人連中にやらせて、ヤミーの身に危険が迫ってると俺が判断した段階で、異端審問官達で屋敷を取り囲む。
もちろん教会本部に、今回の件を報告して、周辺の異端審問官連中をここに呼び寄せてな。
しかしこれは陽動で、審問官達が騎士団を屋敷の外に誘き寄せた段階で、俺とニコが屋敷に侵入し、ニコは公爵野郎の武器とか、賄賂の証拠品を押収する。
そして大義名分が立った段階で、俺がヤミーを救出して公爵野郎の命をとる。
しかし、そう簡単にうまく行く保証は全然ねえから、切り札を用意する。
これはレオーネにやってもらうとするか。
俺は午前中、異端審問官やコルレオーニに今回の絵図をきっちりと説明した後、ヤミーの誘拐や、村の非道に関わった、赤十字騎士団の野郎らを兄貴の鼻で探し出す。
やつら3交代制らしく、今日は休みで、プラプラ街をほっつき歩いてやがった。
あとは街の路地裏とか、商人関連の空き家とかに、一人ずつさらう。
そして冥界魔法の沈黙かけて、ボコボコにしてから手足潰して、半殺しにした。
鎧着てなくて、集団行動取れねえ騎士なんざ、この俺様の敵じゃねえからな。
「マサヨシよ、殺人はダメだぞ」
「わかってるよ兄貴。こいつらに、今後五体満足で騎士なんかを出来なくするのと、ちょっとしたストレス解消と、相手の戦力ダウンだって」
戦力を少しでも減らして、あとは今夜。
一張羅も完成したし、公爵野郎をぶっ殺す。
ポイント減ろうが、知った事か。
そして俺は、転生前に着ていた格好柄で濃紺の着物に、袖を通す。
帯は山吹色に染め上げて、塗料の影響で魔力に反応するラメが入って、キラキラ輝く。
そこにブレードソードと、木刀の二本差しする。
胸には、グレートドラゴンを討伐した時に剥いだ鱗で作った、身体能力向上効果の極太の金ネックレスを着け、腕にはドラゴンの瞳で作られた、魔力と魔法防御強化の黄金のブレスレット。
そして、鋼の具足にクロコダイルの黒皮張って、ピカピカに磨き上げたブーツを履く。
仕上げは、異端審問官の服を改造した、ひし形に悪一文字の代紋入れてる、真っ黒の羽織を羽織る。
対悪魔戦闘があっても、腕力と魔力と魔法防御力バッチリだ。
あ?
物理防御?
当たらなきゃ、どうとでもなるだろ?
当たっても、気合と根性でどうにかするさ。
そして余った絹の反物は、首にかけるストールにしようか。
よおし、これで勇者マサヨシ様の男っぷりも上がるってものよ。
それに黒と紺の組み合わせは、朝も夜も映えるしな。
「親分、すげー。そのカッコは何?」
ニコが目をキラキラさせて聞いてきた。
「おう、俺が悪党と悪魔野郎を、ぶっ潰す時に着る服よ」
俺はニコに照れながら応える。
「これが、マサヨシ殿がいた世界の国の、男性服……」
レオーネが頬を染めて俺を見る。
普段はビシッとした、外国の高級スーツ着るんだけどな。
だが、和服の方が任侠道らしくていいだろう。
まずは形から入るのが極道ってもんよ。
それに、異端審問官共の服をイジって羽織ってやってるから、審問官達のウケもかなりよかった。
しかしいいなあ、着物は。
落ち着いたら、何着か作って商人ギルド連中に、高値で売り付けるシノギしようかな。
時刻は夜になり、コルレオーニの情報通り、今のところヤミーの体には傷一つなく、食事の用意もなされてるようだ。
俺とニコと異端審問官達は、商人が買い取った、屋敷近くの空き家に身を隠す。
そして騎士団連中の警備は、屋敷の近くに営舎もあって1000人規模で常駐してる。
10人ほど俺が町でぶちのめして、どうこうできる数じゃねえ。
審問官共も、犠牲者が多数出るだろう。
あんまり気ノリはしねえが、切り札を使う必要があるだろうな。
俺は、水晶玉使ってレオーネに頼み込んだ。
その時、俺の体が光に包まれて、親分の入れ墨が背中に入った状態となった。
木刀も白鞘付きの、長ドスに姿を変えている。
この状態になるってことは、ヤミーの身がやべえ!
「突入だ!」
俺は異端審問官に命令し、屋敷の外を取り囲ませた。
その隙に、俺はニコと一緒に裏口に回る。
ボケっと突っ立てる騎士の頭を、峰打ちでカチ割ると、二手に分かれた。
そして白い鎧着た、でっかいカエルみてーな外道が、ヤミーの手を引いてるのを見つけ出す。
さあて、ケジメの時間だぜ外道めが。
ついでに時代劇で見た、気の利いた口上でもするとしよう。
ヒロインがいないと、全然歯止めが効かない主人公
元は極悪非道なヤクザで、小物だからしょうがないですね。
でも、そのヤクザ根性どうにかしないと、そのうち苦しいことになりそうだなあ




