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仁義なき異世界転生 ~勇者マサヨシの任侠伝~  作者: 風来坊 章
第一章 仁義なき異世界転生
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第22話 村のケジメ 

「貴様があの、伝説の閻魔大王の勇者だとおおおおおお! し、信じられぬ」


 豚野郎は驚嘆の大声を上げる。

 ていうか、今更何をビビりやがってんだ?

 もうおせえよ、俺はテメーにけじめつけるんだからなあ。


 俺は風の魔力を長ドスにこめると、野郎の顔めがけて何度も斬撃を繰り出す。

 レオーネとの喧嘩で生み出した真空居合斬よ。

 すると、豚野郎の顔のあちこちがぶった切れ、血が噴き出した。


「ぶひいいいいいいいいい!」

「へへ、こいつはいいや。チャカなんかすぐ弾切れになりやがるからなあ!」


 すると、豚は顔面を右手で抑えながら、左手を天高く掲げる。

 やべえ、あの厄介な鎖の攻撃が来る。


 地面から次々と黒い鎖が飛び出し、俺に向かってくる。

 俺は長ドスで咄嗟に鎖を打ち払う。

 すると、黒い鎖ははじけ飛ぶようにして消滅した。


「ぶひいいいいいい、な、何だってええええええ!?」


 すげえぜ、この状態になった俺の長ドスは魔法をぶった切っちまうようだ。

 すると、後ろでガキの声がした。


「す、すげえ。あのあんちゃん、悪魔を圧倒してる」


 振り向くと、さっきまで豚に石を投げてた、こげ茶色した髪のガキだった。

 まだ避難していやがらなかったのか。

 ていうか、いつも大事な場面でガキに邪魔されるよな俺。


「おい、ガキ! さっさと逃げろ!」

「小癪な真似をををををを」


 豚野郎は黒い鎖をガキの方向に向けて放つ。

 そして鎖をガキの体に巻き付け手繰り寄せると、左手で掴んだ。


「ぶひひ、これで俺を攻撃できなくなった!」


 しまった、ちくしょう。

 あのガキ、さっさと逃げればよかったのに。

 

 すると、ガキは右手を振りかぶって、石を豚野郎の目にぶち当てた。

 あのガキ、体が小さいくせにやっぱり根性ありやがる。


「ぎゃああああああああああ!」


 豚野郎が、痛みでガキを手から離す。

 俺は、ガキの体が地面に衝突する前に両手で受け止めた。


「あ、ありがとうあんちゃん」


 このガキ、この世界の奴らにしちゃあちゃんと礼が言えるじゃねえか。


「あぶねえから、向こう行ってなボウズ」


 俺が声を掛けると、ガキは俺の顔を心配そうに見ながら、村人たちの方に走ってた。


「おい、豚野郎。ヤミーの件といい、さっきのガキの件といいよお」


 怒りで頭が沸騰しそうになる。

 そしてこの俺の魂が告げている、この外道を許すなと。 

 

 俺は気迫を込めて豚野郎をにらみつけた。

 すると、豚野郎の左目が恐怖の色に変わる。


「どこまでこの俺をむかつかせんだ!」


 俺は渾身の居合の斬撃を放つ。

 すると豚野郎の醜い口が、牙と共にぶった切れた。


「ぶひいいいいいいいいい!」


 豚野郎は、両手で顔面をおさえて悲鳴を上げる。

 俺もかなり斬撃を当ててるがあの野郎、生命力が高すぎる。

 悪魔野郎はあんなにタフな奴らばかりなのか?

 なんか強力な攻撃でもぶち当てねえと、らちがあかねえや。

 

 ちくしょうが。

 俺にも三途の川で追い立てられた竜みてえな雷でもうてたらな。

 あの野郎の分厚いガタイに守られた内臓や、脳みそまで高圧電流ぶち込めるのに。


 いや、ちょっと待てよ。

 確かレオーネにもAEDかませたんだから、今なら。


「おらぁ!」


 俺は隠し持ってたナイフを豚野郎の鼻っ面に投げた。

 もともと酔わした後、こいつでぶっ殺すつもりだったがちょうどいいや。

 そしてナイフは豚野郎の鼻の穴に突き刺さる。


「ぶひいいいいいいいいい!」


 豚野郎が鼻血を出して隙ができた。


 こう見えても俺、刑務所(ムショ)で関東の組織連中と草野球やっててよ。

 関西極悪組代表ピッチャーだったんだ。

 コントロール抜群だったんだぜ?


 特に相手の頭(どたま)に当てる時なんてよ。


 俺は昇った朝日に向けて、両手を掲げる。

 右手に超振動の風、左手にこの大気中の水分の分子を摩擦させて。

 今の残り魔力を全て捧げる!


 すると、真っ黒な暗雲が豚野郎の上空に現れた。

 雷鳴がゴロゴロと鳴りやがる。


「ブヒ? 貴様この空はまさか!」


 そう、そのまさかよ。

 てめーのそのうすらでけえガタイだと、真っすぐ脳天にブチ込める。

 雷さんってのは高い所に落ちやがんだ。

 これも若い時入った刑務所(ムショ)で読んだ本の知識だがな。


 「行くぜ豚野郎! 稲妻(ライトニング)」


 俺が両手を振り下ろし、全魔力を込めて、豚野郎の頭に雷をぶち込んだ。

 辺り一面に閃光が走り、轟音が鳴り響く。


 豚野郎の脳天は黄色に焦げつき、目ん玉から血を流し、口からは白い煙を吐き出す。

 そして体には無数の赤い筋が浮かび上がり、そのまま仰向けにぶっ倒れる。

 すると体が縮み始め、初めて会った時と同じくらいの大きさに戻った。


「ハッハー、俺も地獄の入り口で食らって往生したんだ! ざまあみろや!」


 よし、あとはと。

 俺は豚野郎の傍まで近寄る。

 そして、野郎の体をじーっと観察した。


 さっきの魔法は切り札だな。

 全魔力消費は、さすがにリスクが高すぎる。

 

 それと普通の野郎なら、今の一撃でお陀仏だろうが、こいつ悪魔野郎だからな。

 シャドーデーモンばりの根性者だったら、これくらいじゃあ死なねえだろう。

 俺は長ドスを両手持ちにして、野郎の頭の風上に立つ。

 先ほどの雷雲は消えうせ、朝日が俺の頭上に降り注ぐ。


「ぶひ! 馬鹿め! 俺に近づいて!?」


 豚野郎の目に光が戻り、俺と目が合う。


「だろうと思ったぜバカヤロー」


 俺はすでに刀を大上段に構えていた。

 野郎の首にいつでも振り下ろせるように。


「ま、待て!」

「待たねえよコノヤロー」

 

 俺は言いながら、豚野郎の首をぶった斬る。

 野郎の首が転がりながらすっ飛んだ。


「ああああああ、これでは体が再生できないブヒ!」


 首だけになった豚野郎が叫び出す。

 まだ生きてやがるぜ、この豚野郎しぶてえなあ。

 まあいいや、じゃあけじめは別の奴につけさせよう。


「おらぁ! てめーこっち来ぉゴラァ!」


 俺は豚野郎の首を右腕に抱えて村人の方に戻る。

 左手に持った長ドスは、元の木刀に姿を変えていた。

 村人の男衆たちは、怪我人も出てたが幸いにも死人は出てねえようだった。


「よぉし、豚野郎! これからけじめだぁ」


 俺は豚野郎の首を村の広場にドンと置く。

 そして、俺は回収したナイフを村人たちの前に放り投げた。


「ヤミー、おめーさんは馬車で休んでな」

「なんでじゃ! これから豚めに楽しいことするんじゃろ?」


 ああ、こいつドSだったわ。

 目をキラキラさせてこっち見てやがる。

 あんまりこいつには見せたくねえんだけどな。


「な、何をするブヒか?」

「あ? 黒豚危機一髪って言ってよお、テメーがこの村全員からナイフを一太刀ずつ食らって、何回目で死ぬかって試そうと思ってよ」

「ブヒ!?」


 ニヤつきながら俺が言うと、豚野郎は目をむいて俺を見た。

 すると、俺のケジメ内容を告げると村人から歓声が上がる。


「ヒャッハー、勇者様! 俺に任せてくだせえ!」

「いや、俺が俺が」

「おお? 我もやってみるかのう」

「あたしも、散々コイツに子供がいじめられたんだ! あたしが先だ」


 なんか、さらっとドSのガキも村人の声に交じってやがるな。 

 豚野郎は顔面が真っ青になって冷や汗だらけになる。


「い、いやだあああああ死にたくないブヒ! 命だけはああああ!」

「てめー、散々この村のやつら酷え真似しといて、今更ガタガタ抜かすんじゃねえ! 俺がぶち殺してもよかったんだがよお、てめーにけじめつけるのはこいつらよ!」


 すると、豚野郎に石を投げ込んだガキがこっちを見ていた。

 そうだった、こいつは親父さん食われてたっけな。


 俺はナイフの刃を持つとガキに向かって歩を進める。

 そして、ガキの前にナイフの柄を向ける。


「おら、おめーさんの親父さんの仇だ。おめーにはその権利がある」


 ガキは俺の手からナイフを取ると、両手でナイフ持って豚に向かっていく。


「ニコ! やっちまえ!」

「村長の仇だ!」

「あたしの分もあんたにやるよ!」


 村人から歓声が沸き起こる。

 あのガキ、ニコって言うのか。

 小汚え格好で目付きも悪いが、なかなか顔立ちは整ってやがるな。


「す、すまなかったブヒ! お、お願いだから勘弁してほしいブヒ!」


 ニコは豚野郎の前に立つと、両手で豚の顔めがけてナイフを突き立てようとする。

 だが、その寸前でやめた。


「お前なんか殺しても、お父ちゃんは帰ってこねえ。お父ちゃんは孤児だったオイラを育ててくれた優しい人だった。オイラはお前なんかと違う」


 ニコはナイフを持って崩れ落ちる。


「そうだ、オイラはお前なんかと、う、うあああああん」


 そして、ニコはガキらしく泣き声を上げた。

 

 このガキも転生後の俺と同じ孤児か。

 しかも、ガキのくせになかなかの男気。

 筋も通ってやがるし、やるじゃねえか。

 気に入った!


「じゃあ、俺がこの豚野郎やりますぜ!」

「あたしが!」


 俺は村人の声を手で制する。


「このニコは、なかなかいい根性してやがる! おめーら納得がいかねえかもしれねえが、お前らの手がこんな薄汚い外道の血で汚れる必要はねえ。だからこのケジメは終わりだ」


 そうだ、今ここでこの豚をこいつらがやっちまったらさ。

 こいつらはまた人間じゃなくなる。

 そのうちまた血に飢えて、盗賊稼業に手を染めちまうだろう。


「そんなあ、マサヨシ様!」

「でも、この人が言うならよお」

「あたしの旦那よりカッコイイ」


 俺はヤミーの方を見た。

 ――これでいいよな?

 そうすると、ヤミーも黙って頷いた。


「た、助かるブヒか? 俺、助かる流れブヒねこれ!」


 豚野郎がホッとしてやがるが、俺は豚野郎までズンズンと詰め寄る。

 そして豚野郎の頭を、サッカーボールの様に蹴っ飛ばした。


「ぶひいいいいいいいいいい!」


 豚野郎の生首が村の広場に転がる。


「あ? 何勘違いしてんだテメー? 俺とのケジメはまだだろが。俺のケツ勝手に触った件、胸まさぐった件、酒臭い息吐きかけて不快にした件、俺の連れの女になめた真似した件、俺をボコボコにしやがった件、まとめてケジメつけてやっから」


 これからお前に待ってるのは、ヤクザ(R15)のケジメの続きだ馬鹿野郎。

 俺は豚の頭を抱えると、ヤミーに振り向いた。


「なあ? ヤミーよ。そこでベソ掻いてるニコを見てやってくれ」

「我が? なんでじゃ!」

「だっておめーさん、この世界を救いに来た神様だろが」


 俺が言うと、ヤミーは顔を真っ赤にする。


「え? この姉ちゃんが神様?」

「すんません神様! 馬車襲っちまって申し訳ねえ!」

「あたいも初めて見た時、奇麗なお嬢さんと思ったら神様だったとはね」

「すげー神様だってー」


 村人たちは続々とヤミーに駆け寄る。

 

「おら神様、この村人に救いの言葉でもかけてやんな」


 俺が言うと、ヤミーはまんざらでもねえ顔をしやがった。

 あれでも神なんだから、神らしいことでもしろっての。

 あとは……。


「おい豚野郎ぉ! テメーは今から村の集合便所でヤキ入れだ!」

「ぶひいいいいいいいいいいい!」


 俺は村の薄暗い便所の床に、豚野郎の首を転がす。

 そして、豚ツラを木刀でボコボコにぶちのめす。


「てめーみてえな悪魔野郎がよお! 俺様と喧嘩しようなんざ100年早いんだよああ? 豚みてえなブサイクな面しやがってゴラァ!」

「か、勘弁ブヒ! もう悪さしないブヒ! 何でもするから許してほしいブヒ!」


 俺は木刀のヤキ入れを、ピタリと止める。

 こいつ馬鹿だなあ、俺みたいなヤクザもんにそのセリフは禁句だぜ?


「てめー今、何でもするって言ったよなあ?」

「ぶひぃ、はいぃぃ」


 俺は便所の便器を見る。

 なるほど、ちょうどいい穴の大きさのぼっとん便所だ。

 豚野郎の生首の前で、俺はうんこ座りで木刀持ってしゃがみ込む。


「豚野郎、俺はこの世界に転生する前の世界で、ヤクザって言う組織で色々やってたわけよ」

「ぶひ!」


「でよ、散々悪さしまくって刑務所で囚人生活してっ時、沖縄ってところで極道やってるヤクザと仲良くなって兄弟分になったんだ。向こうじゃアシバーって言うらしいが、そこまでわかるか?」

「ぶひひ!」


 こいつ絶対わかってねえだろ。

 ボンクラが生返事しやがって、目ぇ見りゃわかんだよ。

 せっかくこの豚野郎に、刑務所(ムショ)で仲良くなった兄弟分の話してんのに。

 俺の蹴り技は、その兄弟分が教えてくれた喧嘩空手殺法よ。

 出所後、その兄弟は抗争で死んじまったけど。


「その沖縄の兄弟が言うにはよお、おめーみたいな養豚場の豚は、人様の排泄物食わせて飼育すんだと。そうすっと餌代浮くからお得さー、なんて言ってたんだ。おいおい、おめーさん誰がその豚公食うんだよって、笑いながら俺が言ったら、内地で高く売れるさーって言いやがって、あいつもなかなかひどい奴だったぜ」

「ブヒ!?」


 俺がここまで言うと、さすがのこのボンクラも察したようだった。

 これから自分がどんな羽目に遭うのかを。 


「よかったなあ、これからのおめーさんの人生、飯に困らなくて」


 俺が笑顔で豚野郎に言うと、豚野郎の顔色がどんどん青くなり涙目になった。


「ぶひいいいいいいいいい、悪魔ブヒ! お前は悪魔ぶひよ!」


 悪魔はテメーだろうが馬鹿野郎。

 このやり取り、前にもシャドーデーモンの奴とやったぜ。


「何でもするって言ったじゃねえかこの野郎! てめーもちったあ、あのニコってガキみてえに、筋通しやがれこの野郎!」


 俺は、豚野郎の首を便器にはめ込む。


「じゃあな豚野郎、達者でな」


 靴の踵で思いっきり野郎の頭を踏みつけ、とどめの一撃を加えた。

 豚野郎は、ぼっとん便所の中に落ちていく。


「封印(ダムト)」


 そして俺は、封印魔法で二度と豚野郎が出てこれないようにした。


「ぶひいいいいい、くっさ! 臭いブヒ! 傷に染みて痛いブヒ! ああ、蛆虫がたくさん沸いて、ぶひいいいいいいいいいいいいいいいい」


 さて、豚野郎のケジメがついたし村に戻るか。

 俺が踵を返そうとした時、空で大音響の歌声のような魔力が覆いだす。

 

 なんだこれ?

 やべえぞ、この魔力を感じただけで頭痛と吐き気がしてきやがる。

 一体全体何が起きてるんだ?


「マサヨシ! 今の空からした恐ろしいほどの力はなんじゃ?」


 ヤミーが便所の近くまで小走りで俺のもとに来た。


「わからねえ! わからねえが嫌な予感がする!」


 俺がヤミーに焦りながら答える。

 すると、便所から豚野郎の声がする。


「ぶひいいいいいいいい、今のは地上攻撃隊総司令官元帥、我らがアスモデウス様の大魔力。貴様ら閻魔大王の使徒の力が強大とはいえ、今の貴様の力では絶対に勝てぬお方! そしてこの方はここに来る」

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