第18話 クンロク
俺はヤミーから渡された木刀を右手に持つ。
馬鹿どもが、松明さっさと手放して逃げちまえばいいものを。
さて、松明持って片手ふさがった馬鹿3人からぶちのめしてやるぜ!
俺はレオーネがやってたように、神霊魔法と風魔法で素早さを上げた。
そして盗賊に飛び掛かり、間合いを詰める。
「え? なんだこのガキ……」
盗賊が言い終わる前に、俺は木刀を上段に構えた。
まず前にいた盗賊の頭をカチ割る。
野郎は頭から血を吹き出しながら、白目をむいて倒れ込んだ。
返す刀で俺から右の奴の左側頭部を木刀で打ち込む。
「ウゲッ!」
呻き声をあげた馬鹿の反対側の右側頭部に、もう一撃加え戦闘不能にする。
「このガキ!」
そして左の奴が何か凶器出す前に喉に突きを放つ。
喉を抑えて苦しがる野郎のアゴ目がけて、俺はサッカーボールを蹴飛ばす時みてえに、蹴りを打ち込んで昏倒させた。
「この野郎!」
「ちくしょう、やっぱり手練れだ」
「囲んじまってぶっ殺せ!」
俺は木刀を両手に持ち、右わき腹に抱え込む。
そして囲むよう指示してた盗賊の腹を、体当たりみてーに突き上げにいく。
俺に突きを食らった野郎は、腹の痛みでうずくまった。
おせーんだよ、盗賊野郎共。
クッチャべる暇あったら両手でドス持ってぶっ刺しに行くんだよ。
こういう風に。
腹抑えてうずくまる野郎目がけ、俺はアゴに膝蹴りを打ち込んだ。
「オラァ! チンピラ共! 誰が誰をぶっ殺すんだこの野郎!」
周りの奴らがかかってくる前に、怒鳴り声あげて機先を制する。
喧嘩は気合と気迫が全てよ。
場の空気掴んで指示役のアホ潰せば、後は楽なもんだ。
「やべぇ、ずらかるぞ!」
「やられた奴はどうする?」
「殺されちまうだろうから置いとけ!」
「荒事慣れしてやがるし勝てねえ」
当たり前だ馬鹿野郎、ヤクザなめんなボケ。
あ、違うわ。
今は一応カタギの神父見習いだった。
「ヤミー、ありがとな! おかげで転生前と同じ間違いするところだった」
「ち、違うわい! 冥界の裁判官として殺人を許せなかっただけじゃ!」
ホント、素直じゃねえガキだ。
顔を真っ赤にしてまで否定することねえじゃんか。
さて、のびてる野郎らは4人か。
俺は思わずニヤリと笑った。
「ヤミーすまねえ、これからうるさくなるから、耳塞いで寝ててくれ!」
「なんじゃ貴様! ハッ!? 殺人はダメじゃぞ!」
「殺しゃしねえよ! こいつらの口割らして親分見つけてぶっ叩く!」
俺が言うと、ヤミーは何も言わなくなった。
さて。
ガキは寝かしたし、これからヤクザなけじめと行こうか。
俺は木刀を地面にぶっ刺し、両手の指をぽきぽき鳴らす。
こういうヨゴレ仕事は、できればあんまりやりたくねえんだよなあ。
若い衆でもいたらやらせんだけど、そんなのいねーからしょうがねえか。
とりあえず、俺がのした指示役と、そこで頭抱えてうずくまってる馬鹿にしよう。
「オラァ! こっち来ぉコラァ!」
頭から血を流して、うずくまる馬鹿の髪を両手でひっつかむ。
野郎は呻き声あげながら抵抗しようとするが、問答無用で引きずり回す。
そして、のびてる指示役の前まで引きずると放り投げた。
「てめーもいつまで寝てんじゃねえ! ぶち殺すぞコラァ!」
俺はのびてる指示役の、脇腹を思いっきりつま先で蹴り上げる。
すると咳込みながら、指示役はのそりと体を起こした。
「てめーら、そこ座れ馬鹿野郎」
俺は木刀を手に持って右肩に担ぎながら言うと、野郎ら地面に座りあぐらかきだした。
なめやがって、自分らの立場わかってねえな。
「正座だこの野郎ぉ!」
俺は頭から血を流してる奴の顔を、思いっきり蹴り上げた。
指示役の奴は、完全にその場の空気にのまれてビビりあがってた。
「地べたさんに跪いて、足折りたたんで膝に手をついて座んだよ!」
指示役はすぐに正座の姿勢をとるが、全然膝を揃えねえでやがる。
これだから物を知らねえ馬鹿は困るぜ。
そして俺の後ろから殺気がする。
俺は顔だけ振り返ってニラミを利かせ言った。
「てめーらも、そこ来て座れコラ。グズグズしてっと殺すぞ?」
「ウッ」
「ゲッ」
俺の後ろには、残りの二人がクソ生意気に手にナイフ持っていやがった。
レオーネもそうだったが、この世界の奴ら体が頑丈にできてやがる。
本当に油断も隙もねえクソみたいな世界だ。
「オラァ‼ ウラァ‼ ドラァ‼ ダラァ‼」
俺は馬鹿4人の横っ面を順番に、左の鉄拳で制裁する。
プロボクサーほどじゃねえが、俺の拳は当たれば痛えんだ。
「か、勘弁してくだせえ! 金なら出すんで命だけは!」
「いらねえよ馬鹿野郎! それよりテメーらの親分どこにいるんだゴラァ!」
俺が恫喝すると、4人はお互い顔を見回してだんまりする。
なるほど、まだテメーらの立場がよくわかってねえようだ。
ん? 一番右の野郎はヤミーを犯っちまうとか言ってた野郎か?
ちょうどいいや、こいつから体でわからせてやろう。
俺は街道にあった石や砂利を何個か鼻歌交じりで拾い集める。
そしてそれを、ハンカチで包み、端っこを結んでお手玉見てえにする。
ハンカチで包んどかねえと、後が困るからな。
それに俺は、ハンカチ何枚も服に入れてる。
極道の最低限の身だしなみだしよ。
ああ、いけねえ俺は神父見習いだったわ。
おお神よ、今から私めが行う行為をお許しをってか。
さてと、俺の恫喝で今まで音を上げなかった奴はいねえ。
こいつらはいつ頃で音をあげるかな?
「おい、一番端っこにいる女に声かけた野郎。口開けろコラ」
「?」
「開けろっつってんだよオラァ‼」
無理やり俺は野郎の口を開く。
そして石と砂利を包んだハンカチを歯で咥えさせる。
「おい、他の奴らどいてろ!」
俺が手に持った木刀で指示すると、他の3人は正座したままその場を離れる。
んじゃあ行くぜ。
俺は、木刀を両手持ちにし、王貞治みてえに一本足立ち打法の構えを取る。
「んん!? んんんんんんん!」
口に石入りハンカチを咥えた野郎は唸り声をあげ涙目になって首を振る。
ようやっと、テメーがされるケジメに気がついたようだ。
他の奴らも、何が起きるか理解したみてえで、顔面蒼白になってる。
「バッター振りかぶってぇ、オラァ!」
俺は木刀をフルスイングして、野郎の頬を思いっきりぶちのめした。
木刀食らった馬鹿は口中血まみれになって、歯がバキバキに砕けたようだ。
「ハッハー、ホームラン!」
「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!」
野郎はうつむいて唸り声をあげる。
これやられると、口ん中ズタズタで、歯が全部ブチ折れちまうんだよな。
アゴも割れちまうから、血も止まらねえ。
だからハンカチが必要なんだよ、血で窒息するから。
それによ、もうこいつは用済みだ。
どうせこいつは、二度と口開かせる気はねえからどうでもいい。
すると、俺にフルスイングされた奴は口からお手玉を吐き出す。
「あ、この野郎! 俺の特性お手玉落としやがった」
じゃあそのケジメでもう一発だなあ?
俺は木刀持ったままうつむいてるこいつの口にまた突っ込む。
「オラァ! ツラ上げろゴラァ!」
俺は左手で髪の毛ひっつかむと、木刀の柄で何発も野郎の頬ゲタをぶち回す。
そろそろやめねえと、死んじまうか?
じゃあ回復魔法で少し直してもう一回だな。
そして10分ほど経過した。
「がっはっは! すげえぞ! この世界の奴らマジで頑丈で死なねえぜ‼」
「おねげえします、もう勘弁してくだせえ!」
「僧侶様! ご勘弁を!」
まわりの盗賊共は完全に恐慌状態になっていた。
そして俺は一通り、ヤミーを侮辱したクズにけじめをつけた。
どつき回された奴は白目をむいて失神してる。
「もう盗賊はやめます! 足洗います! 神のお慈悲を!」
ようやっと泣きが入りやがったかクズ共が。
さてと、次はっと。
俺は多少息を上げて他の奴らをじろりと見る。
「あ? 次はテメーの番だよ」
俺は指示役の野郎に木刀を向ける。
すると、指示役はビビりにビビッて小便を漏らしたようだ。
不快な悪臭が俺の鼻につく。
そろそろ頃合いだな。
「勘弁してほしかったら、親分の居場所吐けよ」
「へい、わかりやした」
盗賊の指示役は、自分達の親分の話をし始めた。
夜が明けてきてうっすらと空の色が変わってくる。
「なに? 親分は人間じゃねえだと!?」
「へい、多分あれは物の怪の類、いや悪魔ですぜ」
盗賊たちは自分たちの身の上話をし始めた。
こいつらは数年前は普通の村人で、女房や子供もいるらしい。
村の名前はロンド村。
細々と野菜と麦作って、モンスターを狩ってる田舎の村。
まあ、この世界でごまんとあるような農村よ。
けどとれる野菜って言っても、つい最近までマンドラゴラだが。
だがこいつらの村に突如やってきた野郎がいた。
黒のフードを被って、モンスターを引き連れてきた太った男。
その野郎は、こいつらの女房子供をさらって、食い物と金を要求した。
こいつらは雑多な農具をもって抵抗したが、ぶちのめされたようだ。
そして、見せしめにこいつらの村長が生きたまま食われた。
その際フードを取った男は、豚のようなモンスターの顔をしていたという。
そして村に派遣された、王国の代官ぶっ殺し、成りすましているらしい。
それ以来、こいつらは女房子供を守るため、自分たちの保身のため、そして豚野郎に差し出しても惜しくねえような旅人を標的にして、金と食い物得るため盗賊稼業に手を出したという事だ。
「なるほど、じゃあその豚野郎をぶっ倒せばいいわけか?」
「無理ですぜ! いくら僧侶様の腕が立ったとしても、相手は人間じゃねえ!」
「そうかい? 俺も実はよ、ただの人間じゃあねえんだ」
盗賊連中は俺を訝しげに見つめる。
まあそうだわな、今の俺って見た目クソ弱そうだもの。
黒い長髪を後ろで結んで、黒い瞳の目鼻立ち整った僧侶服着た色男。
そんで貫禄も足りねえし、ヒゲも生えてねえ17のガキだから無理もねえ。
だが。
「聞いて驚け馬鹿野郎、この俺様は冥界の閻魔大王様より、この世界を魔界から救うためにやってきた、人呼んで勇者マサヨシ様よ!」
俺の口上に付近一帯がシーンと静まり返る。
盗賊達は頭に?マークが浮かんでるような感じで俺を見る。
「………はい? なんですかそれ?」
盗賊の指示役が、俺に小首をかしげて呟いた。
よし、やっぱこいつらぶっ殺そう。
俺は無言で木刀を指示役の野郎に向ける。
「ははー! 勇者マサヨシ様、万歳!」
「勇者様万歳!」
最初からそういやいいんだよ馬鹿野郎。
ホント、この世界の野郎はムカつく奴らばかりだ。
「で? テメーらの村何処よ?」
「はい、街道から少し外れた村で、すぐ近くですぜ」
「案内しろや、ダッシュで。騙して嘘ついたらぶっ殺す」
「ははー!」
よし、後はこいつらの村に行って奇襲かけるか。
いや、ちょっと待てよ、正面からぶち当たるのはまずいな。
こいつら以外にも盗賊もいるしモンスターもいるんだろ?
しかもその豚野郎が悪魔だったら、かなりきつい戦いになるはずだ。
どうするか……。
「おい、待てや。そこの棒っ切れ持って村の大まかな見取り教えろ」
「へい!」
俺は盗賊共に、地面に村の見取り図を書かせて、頭に叩き込む。
抗争先の間取りや地理がわかんねえと、話にならねえ。
ちくしょう、早くしねえと夜が明けちまう。
奇襲はとにかく速さと時間が命よ。
特に相手が油断して集中力がねえ時間ってえのがある。
それは薄暗い夜明け前から、朝日が昇るまでの時間。
俺も転生前、事務所に立てこもる敵の親分の命狙うのは、常にこの時間だった。
ちくしょうが、そこの馬車がダンプだったら正面に突っ込ませるのに。
ダンプ突っ込ませたら、馬鹿騒ぎになるから隙ができる。
あとは裏手辺りから奇襲して、豚野郎の命取れる可能性あるが。
情報不足過ぎんぞ。
「おい、その豚野郎の好物とかなんかねえのか?」
「へい、特に好んでるのは酒と若い女です」
なんだとこの野郎!
豚野郎のくせにクソ生意気な野郎だ。
転生後の俺だって、そんなおいしい思いしてねえのに。
俺は馬車の方を見る。
ああ、あのちんちくりんはギリギリ若い女の範疇に入りやがるがダメだ。
あのガキに何かあったら俺が閻魔大王様に殺されちまう。
どうすっかなあ、ん? 待てよ。
「おいテメーら。なんか保存食みてーなのは持ってねえのか? あと瓶か何か」
「へい、村でこしらえた、ひとかけらの乾燥させたパンと水入れた瓶なら」
「寄こせ!」
上出来だ! 盗賊野郎共。
よし、後は馬車に行って。
「ヤミー、起きろ!」
「うーん、兄様ぁ。スイーツゥ……」
このクソガキ頭の中スイーツ過ぎて夢の中にも出てやがる。
だが、早くしねえと夜が明けちまう。
「おい、ちんちくりん! 起きやがれこの!」
「なんじゃあ、マサヨシかあ。親玉はわかったのかのう?」
「おう、相手は悪魔野郎だ! ぶっ潰しに行く! だからよお……」
ちくしょう、こいつにこの頼み事はしたくねえが時間が全てだ。
くそ、腹立たしいがこの手しかねえ。
「なんじゃと! してお主はどうする気じゃ?」
「俺を女装してくれ!」
「え?」




