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仁義なき異世界転生 ~勇者マサヨシの任侠伝~  作者: 風来坊 章
第一章 仁義なき異世界転生
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プロローグ 冥界道中紺栗下

 ここは……どこなんだ?

 気が付くと俺は、あおむけで水の中を漂っていた。


 水の中は、不思議と冷たくも暖かくもない.

  耳の穴ん中にも、鼻の穴の中にも水は入ってこねえ。


 俺はゆっくり目を開けると、白ずくめの薄っぺらい安物の着物を着ていやがる。

 おかしいな、こんな着物を買った記憶がねえぞ?

 俺が持っている着物はよ、俺のダンディさが際立つようなやつなんだ。


 そう、神戸の老舗で買った、濃紺の格子柄の羽織に長着。

 帯の色は山吹色にイキな柄が入ったやつよ。

 洒落者の多い、関東の親分衆が見ても、思わず唸るくれえの、男の色気が漂う感じなんだが……。


 ふと上を見上げると、遠くにうっすら光る水面が見える。

 おいおいおい、水の中って溺れちまうじゃねえか!

 何をぼうっとしてやがんだ俺は。


 手足をばたつかせて水中を泳ぎ、必死に水面まで泳いで上がろうとする。

 だが水深が思っている以上に深くて、なかなか水面までたどり着かねえ。


 ていうかよ、俺のお気に入りの超高級腕時計(パテックフィリップ)を腕に付けてねえじゃあねえかよ⁉

 10年前に大事な子分の滝沢から、誕生日プレゼントでもらってやったやつだ!


 一般人(カタギ)の集まりにも着けていけるから重宝してたのに、川の中で落としちまったのかよう、くそが。

 けどこの俺に落ち込んでいる暇はねえ!


 俺は天下の6代目極悪組、日本全国のヤクザの頂点に立つ清水正義(しみずまさよし)様だ。

 溺れ死にするとか、情けねえ理由で死ねるかってんだ‼


 世間様は俺達のことを、暴力団とかレッテルを貼りやがり、警察(サツ)も躍起になって潰しにかかる。

 だが冗談じゃあねえ。


 我々は古くは侠客、今は渡世人、極道、ヤクザと色々と呼び方はある。

 しかし我々は義侠心に厚い親分を中心とした、いわば任侠道をまい進する任侠集団である。


 なーんて、何度も口酸っぱくして世間様に説明するけどよ、今時は小学生でも納得してくれねえ。

 ていうかよ、するわけねえよな?


 そりゃあそうさ。

 俺の生き方自体がよ、世間一般で褒められたもんじゃねえヤクザな生き方。

 それが自分でも十分わかってるから、そりゃ世間様や社会が納得するわけねえ。

 俺は自嘲気味に思いながら手足をばたつかせて、上昇する。

 そして長年の渡世人生活で身に着けた根性で、やっとの思いで水面までたどり着く。


 もうすぐ俺も70になる。

 だが体力的にもまだまだ若いもんに負けねえ。

 俺の自覚年齢はこの世界に足を踏み入れた、10代のガキの頃といっしょ。

 だってよ、毎晩の様に女を相手にしても、足腰もあっちの方もシャキッとしてやがるんだ。


「ブハッ‼」


 水面から頭を出して鼻息を荒くした俺は、辺りを見回すが、辺り一面は霧がかっている。海の上か川の上かは知らんが、水の上にいるのは間違いねえようだ。


 水をなめてみると、しょっぱくはねえからここは川だろうか?

 だが、岸は見えない。


 すると、俺の前方の霧がだんだんと晴れてきやがって、5メートルほど先に、何100年前からあるような、古い年季の入った木製の大きな橋が架かっているのが見える。


 橋の上には、俺と同い年か、もう少し上の年代位の背中が曲がった老人達が、無表情に右から左へと橋を渡っていやがった。


 もしかして、俺はどっかの義理ごとに子分引き連れて、有名な観光地で朝まで飲んだ後、酔っぱらって深い川にでも落ちちまったんだろうか?

 どうも記憶がこんがらがっちまって、シャキッとしねえ。


 いや、でもそんな筈はねえよな。

 俺に何かあったら、若い衆がすっ飛んできて、今頃俺は岸か橋の上に辿り着いているはずだ。


 くそが、ボディガードと運転手の野郎は、けじめとして小指(エンコ)詰めさせるか?

 いや、あいつらの親に金を払わせた方がいいな。


 俺が若い時は、不始末起こしたらすぐ小指が飛んだ。

 だが、今のご時世はもうそんな時代じゃねえし、指なんて貰っても金にもならねえ。


「おーい、どなたでもいい、助けてくださらんか‼」


 橋の上にいるジジイ共とババア共に声を掛けたのだが、全然こっちを見向きもしねえ。

 耳が遠いのか?

 もう少し、橋に近寄ろうと泳ごうとした時だった。


 首筋に何者かの息がかかる。

 俺の他にも、水の中にいたやつがいやがったのか?


 だがしかし、首筋から吹きつけられる息は、何となくだが生臭え。

 それに、大気全体が震えるような落雷にも似た、不気味な唸り声がしてきたので、俺は恐る恐る後ろを振り返った。


「⁉」


 後ろにいたのは、一昔前の若い衆たちが好んで入れてた、背中の入れ墨から出てきたかのような、竜だった。


 ああ、竜かあ……。


 俺も駆け出しの時は渡世人らしく、兄貴分や親分たちの様に、立派な登り竜の彫り物をいれてえと思ってた。

抗争(けんか)に明け暮れ刑務所(ムショ)にも入り、今に至るまで寝る間を惜しんで休まずシノギかけていたら、とうとう入れられずじまいだったなあ……。


 とか、そんな事思い出してる場合じゃねえ‼

 やべえ状況だぞ? どうすんだよこの状況、この俺様がヘタ打っちまうぞ‼


 そして、口に幾重にも牙が生えて長髯をたくわえ、角を生やし、青緑のウロコを持つ巨大な竜が、金色の瞳でこの俺をぎろりと睨みつけやがる。


「うおおおおおおおおおお! なんじゃああああ、こりゃあああああ!」


 俺は思わずビビっちまって叫び声をあげ泳いだ。

 鼻水を垂れ流し、ひたすら竜に追い立てられながら、気の遠くなるような時間をかけて。


 すると、ようやく俺の上がるべき岸が見えてきた。

 岸の先は霧がかかってよく見えなかったが、浅瀬までたどり着く。

 俺は四つん這いになりながら、浅瀬の底の砂利を素早く掴む。

 そして振り返りざまに、俺を追いかけてきやがった竜の顔めがけて砂利を投げつけた。


 ヤクザをやっている以上、こちとら命を狙われたことは両の指で数えきれねーほどある。

 もっとも、俺の左手の小指は若い頃の「間違い」で無くなっちまっているが。


 こんなどこのもんか知らねえ、畜生ごときに命をくれてやるほど、この清水正義様の命は安くはねえ!


「この清水正義の(たま)狙うなんざ、100年早いわ! このド三下のヘボ竜が!」

 俺が啖呵を切ると、竜は雷鳴のような唸り声をあげて、天を上るように宙を舞った。


 よし、あの野郎怯みやがったから、今のうちにガラかわすしかねえ。

 俺は立ち上がろうとしたが、背後から腹の底に響くような竜の咆哮がした。


 振り返ると、宙に舞った竜の体が妖しく光り出し、薄紫色に見える空に、真っ黒な暗雲が立ち込め、俺目がけて今にも雷が落ちそうに見えた。


「こんなところで死ねるかああああ‼」

 俺は立ち上がると、落雷が落ちる中、カールルイスみてーに全速力で霧の中を走り出す。


 なぜ俺がこんな目に合うんだ?

 わけがわからない、悪夢を見ていやがるのか?。

 どうでもいいから、変な夢なら早く覚めてくれよ、後生だから。


 俺のすぐ真横に竜が放った雷が落ちると、雷の威力と衝撃で吹き飛ばされ、漫画の様に体が放物線を描きながら宙を舞う。


 その時、宙に飛ばされた俺の体をガシッとキャッチするものがいた。

 なんだかよくわからねーし、誰だか知らねえが恩に着るぜ。


 礼を言おうとしたところ、助けてくれたであろうはずの相手が、俺の顔を覗き込むように、ぬっと顔を出しやがった。

 顔はまるで牛の頭そのものであり、俺の顔を見るなり、鼻息をかけてくる。


「おい、罪人。お前はこっちだ」


 牛頭は俺を見るなり罪人呼ばわりし、大きな手で俺の着物の後ろ襟を掴むと、俺の体を引きずるようにして歩き出した。


 そもそも何なんだこの野郎は、牛の頭みてーな被り物しやがって。

 なめてんのか俺を。


「助けてくれた事はありがてーんだがな、おめーさんどこに行くつもりだい」

「しかるべきところへ、しかるべき裁きをうけるためだ」


 俺が牛頭に今の状況を聞いても、この牛頭が何を言ってやがるのか、さっぱりわからねえ。


 周りを見渡すと、どうやら傾斜がやや急な登り坂のようで、霧がかかっていてよくは見えないが、一面まるでアメリカ映画の西部劇のような、からっからに乾燥した荒涼で血の色のような大地に、草木が一本も生えていない。


 空はまるで燃えるような赤色をしており、無数の竜が火を噴きながら空を飛んでいる。

 まるで地獄の入り口のような光景だった。


「ついたぞ、罪人」


 牛頭は、俺を片手で前方に放り投げる。

 俺はカエルの様に四つん這いになり着地した。


 ふざけやがってこの野郎。

 俺にこんな無様な姿をさせやがって、ぶち殺してやろうか。

 俺は思いながら、すぐに立ち上がり投げ飛ばされた方向を見た。


 すると、高さ20メートル以上はあるだろう、石でできた巨大な門がそびえ立っていた。


 門の先には、木造で赤い漆のような塗料が塗られた巨大な寺か神社のような屋敷がある。

 門には漢字でこう書かれていた。


「第五審判殿 担当裁判官 閻魔王」


 俺は膝から崩れ落ち、なぜここに来たのかを思い出した。


 ――そう、俺はもう死んでいるんだ。

 この物語はフィクションです。

実際の登場する人物・団体・名称等は全て架空であり、実在のものとは一切関係ありません。


というわけで皆様、お初にお目にかかります。

私、小説家になろうに今回初投稿の、性は風来坊、名は章と申します。

この作品をお読みになり、気に入っていただいた方々は、感謝御礼を申し上げるとともに温かい目で見ていただくと幸いでございます。


ちなみに、こんな話を書いてしまった私ですが、今までヤクザの方々にお世話になったことや、警察にも御厄介になったことがなく、ただの一般人でございます。


どうでしょう? この主人公は。

いわゆる、反社会勢力と言われるヤクザのしかも大親分という設定にいたしました。

かなり、ぶっ飛んでますし口が悪いです。


しかしながら、実際の親分衆の方々は、私の勝手ながらの想像ですが、もっとスマートで紳士的で、心の広い方々が多いと思います。


あくまでも小説ですが、気に障れた方が、読者様の中にもしもいらっしゃたようであるならば、この場を借りてお詫び申し上げる所存でございます。


それに私、今まで小説もろくに書いたことがない半端な人間ではございますが、面白い作品にしていきたいので、応援のほどよろしくお願いいたします。

それではまた。

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