開示すべき情報(第二章まで)
第二章終了時点での情報整理として書きました。
第二章は重要な情報が多いので、必要に応じてこちらと照合してください。
特に新しい情報はないため、飛ばしていただいて問題ありません。
ガオケレナの世界や人物たちに魅力を感じる手助けになれば幸いです。
なお、こちらは第二章の筋書きにも触れています。
万一先にこちらを読まれる方は、ネタバレにご注意ください。
(字数:5,014)
【概要】
師匠から託された秘薬・アムリタを持って、士人の姉・アーシャのもとを訪れたハナ。
万病の叡智を持つ疾師・ウルウァと出会い、彼女の指示のもと、アーシャを治療に成功する。
その後の数日、さし当たってウルウァの屋敷に滞在し始めた、その三日目の出来事。
ハナはアムリタを含めたすべてのことの始まりを知り、彼女自身の次の行き先を決めるまでに至った。運命の分かれ道――。
用語・人物解説
【疾師(しつ・し)】
・この世すべての病を知るとされる、生ける伝説。
・狙った相手を望みどおりの病に罹らせることもできると言われる。
・すべての病について病のすべてを知るがゆえに、治療法もまた知り尽くしている。
・ただしその肩書きは、知識を集めるばかりで、治療的な行為を一切行わないという、歪んだ特色をも表している。
【疾師・ウルウァ】
・ハナが出会った、疾師を名乗る者。年齢不詳。
・山奥に屋敷を構え、頭の中の膨大な“観病録”をひたすら文字に起こし、製本しながら暮らしている(※看病録ではない)。
・病原体・毒物集めが趣味。
・独特の訛り言葉で話す。
・幼い少女(10歳前後)のようでありながら、特に女性的なパーツ(胸、臀部)だけ大きく発達した不自然な体形をしている。
・顔立ちもあどけなさと淫靡さを同居したもので、また整いすぎている。ハナのような医療者の目には、美しい以前に、無生物的で人工的なもののように映るらしい。
・髪も赤紫、瞳も青紫(竜胆色)と金属的な色彩で、しかも照明次第で色味が変わる特性を持つ。これも作り物じみているとされる。
・いつも簡素な夕闇色(濃い紫)の古ぼけたドレスの上から、黒革でできた分厚いヴェールをかぶっている。
・ヴェールの頭頂部には、大きな水牛の頭骨が飾られており、その重さのせいか、常に猫背で椅子に座っている(単に本人がだらしないせいもあるが)。疾師のための由緒ある装身具らしく、自分からは滅多に脱ごうとしない。
・足ははだし。
<性格>
・自分のことを「ウル」と愛称で呼ぶ。一方、人から同じように呼ばれるのを嫌がる。
・怠惰で快楽主義的。傲岸不遜で厚顔無恥。自讃を厭わないナルシスト。
・他人に対しては毒舌と軽口ばかりで、甚大な損害を与えるようなうそも平気で遊び半分につく。気に入った相手ほど顕著。
・おのれの叡智には絶大な自信と顕示欲を持っている。人前ではもったいつけながらも、常にひけらかしたくてウズウズしている。
・知識を披露するときだけは絶対にうそをつかない。また、知らないことは知らないとも明言する。
・一度話したことを聞き返されると怒りだすらしい。
・常に自分の利が最優先。アーシャの治療に協力しているのも、彼女が発症する奇病の数々を観察したいがため。
・アーシャが失われることを望まないという点においてのみ、士人と利害が一致している。彼に治療法を教える代わりに、標本としてアーシャの身柄を確保している。
・病だけでなく《呪詛》にも詳しい。
・虫歯持ち。当人いわく、生体標本(虫歯菌)を飼育しているだけとのこと。
【アーシャ/《病により死に至る呪詛》の呪詛憑き】
・ウルウァの屋敷にいる少女。16歳(ハナの一個上)。
・士人の姉にあたる。非血縁。彼と同じ孤児院の出身。
・士人と二人で放浪していたところ、未知の奇病に罹患し、疾師のもとへ身を寄せる。
・第一章の時点では、古代文明期の公害病とされる《穢れた水》による汚染によって、床に臥せっていた。汚染はどのような薬でも治療不可とされていたが、実質の薬ではなく《呪詛》を宿した『生きた水』、アムリタによって根治される。
・疾師の屋敷の家事担当。家事の鬼と呼べるほどに手際がよく、家事慣れしたハナでさえ舌を巻くほど。
・ウルウァからは堂々「家政婦」呼ばわりだが、屋敷の汚れぶり壊れぶりが我慢ならず、自発的に請け負った節がある。決して雇われたわけではないため、生計も士人と二人だけで立てている。
・料理は大味。また作りすぎることが多い。
<性格>
・常に泰然としていて、おおらかな性格。前向き思考で清濁併せ呑むタイプ。
・のんびりしているようで抜け目がなく、人を食ったようなところもある。思い切りもいいが、勢いに任せすぎて何かうっかりしていることも多い。
・繊細な気配りができ、思いやりもあるようだが、心根の奥底が見えない節もある。意図的かどうかは不明。
・ハナのことは非常に気に入っている。
・夢は、現在身を寄せている地に学校を作ること。
<真実>
・彼女が上記の健常状態でいられるのは3日間(72時間)だけ。
・病の完治から3日(72時間)が経過すると、必ず新たな病を発症する《病により死に至る呪詛》を受け続けている。
・この《呪詛》で発症する病は、古代に絶滅したような奇病が多く、また必ず致死性の高い「死病」である。
・呪詛憑きはアーシャ自身である。
・ただし《呪詛》の発現者ではなく、発動を任意で制御することもできない。
・《呪詛》が宿っているのは、過去に彼女に輸血された血液である。厳密には血液ではなく、血液として代用可能な血液製剤。《始まりにして終わりの冥砂》という名だが、ウルウァもその正体をはっきりとは知らない。
・放浪中に大けがをしたアーシャに輸血を施すために、居合わせた薬師を名乗る者から士人がその《冥砂》を受け取ったらしい。
・血液ゆえに、体内から取り除くことが不可能。つまり生きている限りアーシャは死病に罹り続ける運命にある。
・自分のために何度も薬を探しにいく士人のことを誰よりも心配しており、彼が手段を選んでいないことも察している。
・一方、強すぎる弟を直接いさめて引き止めることはすでに諦めており、せめて彼の行いをそばで見届けられたらと願っている。
【士人(ミスター)/ドリュー】
・巨体の亜人オルクと人間のハーフ。アーシャの義弟。13歳の少年。
・年齢の件ではハナを驚かせたものの、本名の方はいまだに明かせていない。
・義姉のアーシャには「りっくん」、ウルウァからは「小僧」、村人からは「でっかいあんちゃん」などと呼ばれており、実質本名で呼ぶ者がいない。
・アーシャが回復したにもかかわらず、行方をくらませ、なぜかより山奥にある屋敷の離れに滞在していた。しかもアーシャには行き先を告げていなかった(そもそも顔も合わせていない)。
・ガラクタ置き場と化していた離れを片づけていた理由は、正確には不明。
・そのガラクタの山から持ち出した薬師用の背負い箪笥を、修理してハナに与えた。
<宿命>
・アーシャが負う《呪詛》を充分に理解し、その《呪詛》によってもたらされる死病をことごとく治療するため、アムリタ以前にもすでに何度も薬探しに奔走している。
・かつてアーシャと二人で放浪していた頃に出会った謎の薬師から、不審な血液製剤《始まりにして終わりの冥砂》を渡され、それを出血多量のため瀕死の状態にあったアーシャに使った。《冥砂》について充分な説明があったかどうかは不明だが、少なくとも多大な代償があることを士人は理解していたらしい。
・ゆえに、アーシャが《呪詛》を受けたのは彼が選んだ道でもあり、現在のアーシャのために自身のあらゆるものを犠牲にする覚悟がある。それはつまり、自分たち以外の者にまで代償を払わせる罪業をも背負うということ。比較的協力的なハナですら、その例外ではなかった。
<その他>
・自分とアーシャの分の生計として、木器を製作し、ふもとの村で売っている。村全体がガラス工芸に特化しているため、安くて扱いやすい木器はありあわせで質の悪いものばかりが出回っていたらしく、上質な彼の木器はとても人気らしい。
・亜人のオルク族なのは両親のうち母親の方。父親は普通の人間。
・この両親が孤児院を運営者だったため、息子の彼も孤児院で育ったとは言えるものの、孤児ではない。アーシャいわく、非常に繊細な子だったらしい。
・母親は、おそらく最後の純血のオルク種個体と目される。伝説にあるような凶暴な怪物ではなく、非常に温厚で思慮深い性格だったとのこと。オルク種の特徴として、発話は苦手だったようだが、言語理解にハンデがあったわけではない。
・ただ、パワフルな面もあったこの実母に士人はあまり懐かず、代わりにアーシャのうしろばかりついて歩いていたらしい。アーシャはアーシャで彼を家事の手伝いとしてこき使っていたため、今でも彼は彼女に頭が上がらない。
【落果病/カリシチ菌】
・《落果病》は病名だが俗名。正式名は『美しき人の病』。
・『カリシチ』という名の古代の細菌が原因となる、感染性の病。カリシチ菌の異常すぎる増殖力と貪食性(攻撃性)によって、感染者は全身の細胞がほぼ一斉に壊死する。このため、カリシチは『丸吞み細菌』とも呼ばれる。
・発症後の余命はほぼ1日(現実世界時間で24時間)以内とされており、さらに2日以内には遺体が溶解し尽くしてつぶれた果実のようになる。《落果病》の俗名はこのため。
・単純接触、飛沫による感染率は低い。が、発症すれば全身を潰瘍がおおい、体液が流れ出るため、感染者に触れることは厳禁。
・遺体も同様であるため、片づけることができず、そのまま放置した結果、虫によって媒介されて流行した記録がある。
・弱点は、細菌自身の寿命が極端に短いこと。繁殖できない環境に置かれればたちまち自滅する(本来そのようにして死滅するはずだった突然変異菌)。実際流行発生時も、局所的に宿主を殲滅したことで、それ以上伝染するための時間を得られずに自然終息した。
・また、細菌一個体ごとのライフサイクルが極限まで合理化・最適化・最短化されてしまっているせいで、何か一つの機構にわずかな狂いが生じるだけで増殖できなくなる可能性が高い(「秒単位でギチギチに作られた完璧すぎる予定表」を想像すればいい。生物としてのクリアランスが皆無)。
【十一視蝶(てゅくろぷす・ちょう/テュクロプシア)】
・古代の蝶。《落果病》の治療薬になるとされる。
・白地の翅に5対の青い眼状紋(目玉模様が10個)が特徴。さらに胴もまた濃い青色のため、翅を広げると目玉模様が11個あるように見えるのが名前の由来。
・別名「青き瞳の乙女」
・名前の読み方は二通りあるが、どちらも正式名。「テュクロプスチョウ」はやや古風な呼び方にあたる(このためウルウァは主にそちらを使う)。単に「じゅういちしちょう」と呼ぶ者もいる。
・薬の材料として必要なのは胴体のみらしい。
【イシヅエ】
・広義には「呪詛憑きの遺体」を指す言葉。『《呪詛》は魂でなく肉に宿る』の法則にのっとり、遺体が「完全な死」を迎えるまでは、その体には《呪詛》が残り続ける。
・「完全な死」とは、生物の器官・機関として完全停止し、再起不能になるということ。大まかにいえば壊死や腐敗。ほとんどの場合、それらは生命が個体として終了した時点からすぐに起こるが、多少のタイムラグがある(そうでなければすべての移植手術は不可能になる)。もちろん、損傷が激しい部位は「完全な死」を迎えていると言える。
・よって、死んだ呪詛憑きの肉体の一部を、他の生きた人間に移植することで、《呪詛》を継承させて保存することができる。狭義には、そのとき実際に移植した呪詛憑き由来の部位を指して『イシヅエ』と呼ぶ。
・呪詛憑きの遺体をバラバラにした場合、《呪詛》は体積の一番大きい部分にのみ宿る。そしてその部位が破壊されたとき、《呪詛》は次に大きい部位へ移動する。
・一番大きい部位がおよそ同体積で複数あった場合、そのすべてに同様の《呪詛》が宿る。
・血液などの液体成分をイシヅエ化することは非常に困難であり、特殊な方法が必要とされる(普通は継承者の体液と混ざって境界がなくなってしまうため)。
・イシヅエを継承した者も『呪詛憑き』と呼ばれるが、呪詛憑きとしての性質は持たない。つまり精神崩壊などはしない。その代わり、その人間本来の体の一部を第三者に移植しても、《呪詛》は継承されない(あくまで発現者からの移植部位のみで継承)。
・継承したイシヅエの《呪詛》を制御するには、才能と訓練が必要。また、そもそも不随意に発動するタイプの《呪詛》は制御できない(発現者自身も制御していない)。
・《病により死に至る呪詛》も、その名のとおり、アーシャが死亡するまで常時発動し続けることになる……。
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※この部分は完結後に割り込み投稿されました。