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第二章・第二節 疾師(しつし)と洟垂れ

【前回のあらすじ】

 ハナが士人の拠点に辿り着いてから三日。

 士人の姉の治療はすでに終わり、ハナは彼らのもとに居候しながら、やるせない日々を過ごしていた。

 秘薬・アムリタを手に勢い込んで馳せ参じたにもかかわらず、古代の病因による患者の凄惨な容体を前に、普通の薬師でしかないハナはなすすべもなく、居合わせた専門家にただ言われるがままの処置を施しただけだったためだ。


 おまけに、ハナを連れてきた士人は到着以来、姿を見せなくなってしまう。

 回復した彼の身内のそばになぜか彼でなく部外者の自分が置き去りにされているという不自然さも、ハナをやきもきさせてやまなかった。


 そんなハナを「薬師サン」と慕いながら、すっかり元気な様子で話しかけてくる少女・アーシャ。士人と全く似ていない彼の姉であり、そしてハナにとっての初めての自分の患者。彼女の人懐こさにハナはまだ若干気後れがしつつも、良好な関係を築けていた。

 その日、ハナはアーシャからおつかいを依頼される――



(字数:14029字)


☆ 挿絵協力:伊呂波 和 さま (@NAGOMI_IROHA on Twitter)

挿絵(By みてみん)


 

 聞けば、アーシャの歳は十六だそう。体格はともかく、中身は十五のハナとそう変わらない――と、少なくともハナは思っていない。

 ちなみに正真正銘――血縁はさておきだが――アーシャは士人の姉に位置する人物で間違いないらしい。つまり翻って、士人はアーシャの弟であり、つまり彼女より年下であり、聞けば三つも下であり、そうなるとハナよりもさらに下ということになり、要するにまったくもって少年だった。当然ながらハナは、小柄で色白で愛らしい顔立ちのアーシャが彼の姉という事実よりもはるかに度肝を抜かれた。


 と言っても、冷静に彼の行動だけを思い返せば、それらしき節がなかったわけでもない。

 《大棘》を巡って彼が起こしたことの微妙な場当たりっぽさ、乱暴さ、無鉄砲加減。寡黙さも人見知りからの口下手や、不器用の裏返しだとすれば相応に思えてくる。信じがたいのは巨躯と容貌のせいだが、発育の良さから大人と勘違いされたり、流し目が色っぽいなどと不本意なことを言われた経験のあるハナからすれば、誤解される側の気持ちがいくらかわかる部分もあった。そういうこともあってか、彼のことについての衝撃は、思いのほか早々に薄らいでいった。


 反対にアーシャの方は、病から立ち直って互いに知り合ってから、むしろどんどん遠い存在になっていく。ハナはこの三日、内心ひっきりなしに彼女に脱帽し続けていた。今この瞬間もまた――


「……植え替えが終わっている」


 屋敷の正面のひん曲がった鉄扉を開ける前に、柵越しに敷地の中を見やって、ハナは衝撃を思わず口に出していた。

 広い前庭は、屋敷へ続く一本道を挟んで、両側が花壇や畑になっている。ハナがこの屋敷を初めて訪れた時点では、そこはまるで手入れがされておらず、野原とほとんど変わらないぐらいに()()()()だった。森の中でもそこが屋敷の敷地だと柵のおかげでかろうじて認識できるというくらいだった。

 その惨状だった庭が、昨日あたりから草刈りが始まったかと思えば、今朝方にはもう土起こしが始まっていた。そして今や畝が出来上がっており、ハナが洗濯物を抱えて出る際に苗や種芋が盛られているのを見たはずのカゴが、空になって軒先に重ねられている。


 そのカゴの山を口を開けたまま見下ろしながら玄関を開けて、中を見てさらに呆然とした。そちらは一度見ているはずだったが、やはり何度見ても呆気に取られてしまう。

 ハナたちが身を寄せているこの山の中の妙に大きな屋敷は、お世辞にもまともとは言いがたい。むしろほとんど廃屋のように傷んで古びている。土壁は崩れ、柱は傾き、梁もところどころずれていて、外から見ると凹んだように湾曲した屋根のせいで、家全体が地べたに這いつくばっている何かにも見える。壁が足りないので板でふさいだり帆を張ったりして、雨風の侵入を防いでいた。

 そんなボロ屋敷にある意味ふさわしく、ハナが来た当初はどこもかしこも煤と埃にまみれ、アーシャの寝ていた部屋以外はゴミなのか洗っていないだけなのか、わけのわからなくなった大量のものでごったがえしていた。ハナがまだ《洞》にいた頃に風邪を引いてしばらく寝ていたあとも、家の中が惨たらしいことになってはいたが、年季の入り方という点で数段格が違った。


 そんな荒廃ぶりを見せていた屋敷内が、今は埃一つなく清涼な空気が漂っている。余計なものが一切見当たらず、見渡す限りすっきりと片付いていた。土台がむき出しの床やシミだらけの板壁でさえ、心なしかぴかぴかと輝いているように見える。

 この変革を、たった一人で、ほとんど一日で、それも病み上がりのその日にやり切ってしまったというのだから、ハナがその成果を目の当たりにするたび放心してしまうのも無理はなかった。


 ハナとて家事全般、物心ついた頃から一手に押しつけられもとい引き受けてきた身である。それだけにひとかどの自信はあったのだが、ほとんど歳の変わらないアーシャの手腕に自分が到底及ばないことを悟って、脆くも打ち砕かれてしまった。加えて、実力を驕ることなく常に落ち着き払う彼女の物腰にも、圧倒されて打ちのめされていた。

 聞けば、アーシャはどこかの孤児院のような大所帯で暮らした経験があるらしい。

 自分より幼い子たちの面倒を見ながら、彼らの分の家事を肩代わりしていれば、壮絶な手際の良さも年長者らしい立ち振る舞いも身につくということなのだろうか。家事をこなしてきたと言っても所詮二人分に過ぎず、師匠とは姉妹のような間柄だったと言ってみても結局年下の立場で守られてきたハナでは、どうあっても太刀打ちできないことを痛感し、砕け散るよりほかになかったのだった。


(……いやいや、敵う敵わないの話にどうしてなるんだ。卑屈だぞ、じぶん)


 玄関口で固まっていたことにはっと気づいて我に返り、いじけた考えを振り払おうと少し頭を振る。少なくともアーシャの側は鼻にかけたり嫌味を言ってきたりする気配は一切ないのだ。がむしゃらでもなく淡々とやるべきことを彼女はこなしているだけ――ある意味そこの差なのかもしれないな、と思いかけて、ハナは再度身震いした。自覚できる自分の重篤ぶりが、このところ本気で気にかかっている。


(考えすぎはよくない。師匠にも言われただろう。前向きだ。前向きに捉えるんだ……)


 アーシャに頼まれた使いは、足りないものを街まで買いに行くのが主だった。ただしアーシャ個人としては、ここ数日家の片付けに追われて食事はいつも簡単なものしか用意できていなかったため、今日こそは食材を揃えてハナの歓迎会がしたい、とのことだった。

 自身の待遇になどまるで頓着していなかったハナは、慌てて気持ちだけで充分だからと丁重に辞退しようとしたのだが、ハナのためというよりも自分の我侭なので、どうか付き合ってほしいと正面切って言われてしまい、そう来られると逆に断りづらく、結局のところ押し切られるかたちで了承してしまった。いっそ『治療の礼』などと言ってくれた方が、ハナとしてはむしろ清々しい気持ちで押し返せたのだが、そうさせてはくれないのもまた、アーシャの腕前、もとい、人柄らしい。


(歓迎してもらえるのだから、少なくともじぶんはここにいていいのだろう。大した役には立てなくとも)


 考えすぎないためには、気にしすぎないことだ。これも師匠が言っていた。当の師匠にはもう少し何かと気にしてほしいと思っていたが、今は彼女のふてぶてしさが羨ましい。


(大丈夫。じぶんはまだ薬師だ。あれだけ元気そうなら心配いらないだろうが、万が一アーシャさんが張り切りすぎて倒れたときには、じぶんが適切に介抱できる。何か怪我をしたときもだ。難病に関わるだけが薬師の仕事じゃない……)


 頭の中で自分に言い聞かせながら、屋敷の奥へ向かって廊下を歩いていく。この辺りにはまだ板が渡されているが、もはや床板と呼べる代物ではなく、剥き出しの土台の上へ無造作に乗せられているに過ぎない。靴で踏むたびにみきみきと割れる音もする。

 目的の部屋は突き当たりにあった。扉は物々しい両開きで比較的目立っていたが、腐蝕のためかノブが両方もげている。その代わり、のつもりだろうか、かつてノブが刺さっていたと思しき穴の片方に、金属製のお玉杓子(レードル)が捻じ込んである。


 お玉杓子(レードル)だ。確かにお玉杓子(レードル)だった。それに目を落としたとき、ハナはノックのために上げていた手を止めてふと思った。


(……じぶんは、いつまでここにいるつもりなんだ?)


 今日この瞬間まで、それを一度も自問しなかったわけではない。

 ただ、そのうちでいいとか、今決めることではないなどと曖昧に濁して、そのこと自体には自覚がないまま、何事もないうちに三日を過ごしていた。

 今ここに留まっている理由なら、薬師としての責任感だとはっきり答えられる。つい先日死に瀕していた患者が、今や健常者顔負けの辣腕を振るい、溌剌としていて、病が尾を引いている様子もまるでなかったとしても、数日程度で判断を下して去れるほどハナも能天気ではない。実質薬師としては何もできなさそうだと思い知ったあととはいえ、「あなたの患者」と師匠に言われたこともまだ効いている。アーシャの容体について絶対的に安心できるまでは、ここに残るつもりだった。


 しかし、そのあとは?

 ――わかっている。元々ハナは流れの薬師だ。師匠と決別して一人になったとはいえ、やるべきことは何も変わらない。再び流浪の身に戻り、行き会った傷病者に手を差し伸べて歩くだけ。それ以上のことはない。それでいいはずだったし、ハナ自身もそう望んでいた。

 だが、何かが違うと感じる。

 自分に嘘はついていない。

 だがどこかに見過ごしがあるような気がする。何かが欠けている。

 同じことを繰り返すとは? たったそれだけのことというが、本当にできることなのか。

 今のハナには――自分がどこへ行けるのかもわからないというのに。


「部屋の前で止まり()()。入る()やったら(はよ)うし。気色悪い()()


 気怠げに毒づく声。

 扉の向こうから聞こえたその『訛り言葉』に、ハナの思考は打ち消される。

 虚を突かれるかたちにはなったが、用事があってここへ来たことをはずみで思い起こし、かろうじて気を落ち着けながら「失礼します」と扉を押し開けた。


 途端、カビと糊と顔料の混ざり合った濃厚な臭気が鼻を突く。

 そこは屋敷の角にある四角い大部屋だった。扉を開けると、まず正面奥の大きな窓が目に飛び込んでくる。はめ殺しで目の小さい格子窓だ。このボロ屋敷の中では珍しく、格子の合間には漏れなくガラスがはめ込まれ、一つとして割れていない。光を屈折させて輝く厚いガラスと部屋全体の明るさが、屋敷の中でも特別日当たりのいい場所がここであることを裏付けている。

 その燦々と降り注ぐ外からの明かりに照らし出されているのが、部屋の中央にある大机と、左右の壁いっぱいに天井の高さまで作りつけられた巨大な本棚だった。朽ちた家具しかないこの屋敷において、年季は入っていてもここの机と本棚だけはまだしっかりとしている。棚の中には濃い色の背表紙の大判の書物がぎっしりと詰め込まれ、本のない場所にはよくわからない標本の詰まった薬瓶が無数に並んでいた。


 そして机の上には、揃えられることもなく乱雑に積み広げられた四角い紙、紙、紙。棚に収まっている書物と同じような一律の大きさの、薄い上質な()き紙だ。机上に収まり切らなかった分は床の上にまで散乱し、部屋中に堆積し、その上にさらに崩落し、さながら河川の氾濫か雪崩のあとの様相を呈している。白紙はほとんどなく、どの表面にも暗い色のインクで細かい文字がびっしりと書き込まれ、紙と言いながらほとんど黒一色に見えるほどだった。中には異様に精緻な挿絵がついているものもあり、その絵の周りも余白を惜しむかのように小さな文字で埋め尽くされている。ハナも読み書きはひと通り習得しているはずだったが、少し目を落としただけでも知らない文字が散見され、また文法も概ね古めかしくてわかりづらい。どうやら旧文(きゅうぶん)で書かれているらしい。

 そのもうほとんど黒い紙、もとい“(ページ)”の山の谷間で、肘掛けのついた椅子に腰かけて片手で頬杖をつく人の姿があった。その正面にあたる机上にだけ紙が積み重なっておらず、まるで芸人一座の花形のようにただの一枚が据え置かれ、その上をすさまじい速度で瑠璃色の羽根ペンが行ったり来たりしている。


 ペンを握っている人間は、ハナよりもいくらか幼い少女に見える。だが、手放しでただの少女と捉えるにはあまりに飛び抜けて奇妙で不可思議な風体をしていた。

 背だけでいえば、小柄なアーシャよりもさらに小さいだろう。肩の丸さや腰回りの小ささからも、およそ二次性徴以前に見える。にもかかわらず、夕闇色の簡素なドレスの大きく開いた胸元には、目を見張るほどに膨らんだ双丘が覗いていた。ハナは自分の師匠が上背のわりに主張の強い煽情的な体つきをしていたことを知っている。が、少女のその部分はその比ではない。ともすれば少女自身の頭部より巨大かもしれない。体格と比して不釣り合いどころか、たとえ成人に備わっていても他人の度肝を抜く二房は、もはや何らかの意図に従って空想の中から取って付けたようにすら思えた。

 加えて顔立ちもまた、異様。

 どちらかと言わずとも、明らかな美貌であるのは間違いない。軽くとがった小さな顎に、引き締まった頬。厚みのある左右対称の唇に、通った鼻筋と小さな小鼻。ぱっちりと大きな目は二重の瞼と長い睫毛に縁どられ、細く短い眉は額の下で絶妙な弧を描いている。その秀麗ぶりは非の打ち所がないと言ってしまってよいものだったが、それゆえにこの上もなく不自然でもあった。


 あまりにも整いすぎている。非生物的とさえ感じる。

 極めつけに、床を舐め回るほど長く伸びた髪も、神秘的な赤紫の色をしていた。光の当たり具合によっては青みがかっても見えるという、浮世離れしてどことなく金属的な色彩。

 彼女はその頭の上から、巨大な水牛の頭骨をあしらった、見るからに重そうな黒革のヴェールなどという、これまた珍妙な装束をかぶってはいたが、彼女そのものの異質ぶりに比べれば、衣装など所詮後付けの構成要素でしかなかった。


「ぼっと立っ()おらんで、用件を言()


 今日会うのは初めてなのでとりあえず挨拶をするべきかと、ハナが少しまごついた隙に早くもお叱りが飛んでくる。当の少女は顔をあげようともせず、手元の紙に目を落としたまま、せかせかとペンを走らせ続けている。

 仕方なくハナは一旦つくだけ息をつくと、前置きを抜いて本題から切り出すことにした。


「アーシャさんに頼まれて来ました。街へ買い出しに行くので、足りないものがあればと」

「紙じゃ。紙が足りん」


 少女は予見していたように即答した。

(紙……紙だな)

 頭の中で反芻しながら、これはまあ普通だともハナは思う。足りないものは使うものだ。聞き返すまでもなく、彼女が紙と言えばこの部屋に散乱しているのと同じものだろう。


「どのくらい必要ですか?」

「荷馬車いっぱいに積んで()()。四頭立てでねぁ」

(……持てるだけ、と)

「また羽根ペン。今に最後のが折れる()に。必ずフタコブオウルの羽根を。他のは使わん。それから、新しい表紙に使う板紙もないねぁ。糊も少ない。文鎮も錆び()おる。()()()、なぜ覚え書きを取らんねぁ?」

「はい?」


 次々増える買い物を指折りながら記憶していたハナは、それが少女の詰問であると気づくのに数秒を要した。ふと顔を向け直せば、少女の筆を持つ手が止まり、半月眼鏡の奥から竜胆色(あおむらさき)の目が睨んでいる。鮮やかで複雑な色彩を湛えながら、どことなく磨いた鉱石のように無機的な瞳。

「ああ、いえ」ハナはしかし相手に心配されているものと思い込み、少しはにかむように口元を緩めた。


「お気遣いなく。薬師の弟子をしていた頃は、用意しなくてはいけない薬の材料をいっぺんに言われても、覚えられるのが取り柄だったので」

「覚えられる? 覚えられる()やと?」


 やにわに紙より白かった少女の頬に赤みが差す。語気の上がりように何か気に障ったのかと思いきや、眼鏡と逆向きの弧を目で描き、黒めな(べに)を引いた唇の隙間に小さな歯を覗かせた。上下の歯の合間を通り、まるきり愉快げな笑声がまろび出る。


「ケッヒヒヒ! なるほどなるほど。覚えられりゃあ()いわねぁ?」

「……あの、『疾師(しつし)』様? 何か、変でしたか?」

「変ではない。ケフフ。ただおんしは覚えりゃあそれで仕舞いじゃと思うちおるわけじゃ。そりゃあ変ではない。()()()。ねどものぅ、それで()()()()。ケッフッフ」

「……?」


 どうやら嘲笑(わら)われていることだけは明らからしい。しかし要領を得ない。

 素直に気分を害すこともできず途方に暮れるハナに、少女はフタコブオウルのものらしき濃厚な青の羽根の先を悠然と指し向けた。


「気に入った」


 気に入られたらしい。

 青い羽根が埃を払うようにひらひら揺れる。


()いね。もうお下がり。ウルがいるもんはすっかり()うた()に。()()()()()()()()?」


 やんわりとした口調で、最後のは訛りが強かったが、おそらく「くれぐれも記憶違いのないように」のような意味だろう。「えと……では、失礼します」とハナが鼻白みながらきびすを返すまでの間にも、少女は早々とペンを持ち直し、再び机に向かい始めていた。


 疾師(しつし)・ウルウァ――それが少女の姿をした彼女の肩書と名だ。この屋敷の主人であり、そして疾師。――その肩書と比べてしまえば、どこか作り物じみていて怖気さえ感じる彼女の外見ですら、たいした問題にならなくなってしまう。


 疾師。それは病勢(やませ)害医(そこない)罹屋(かかりや)患師(わずらいし)とも呼ばれる。

 この世の病を知り尽くし、あらゆる病に精通する者。されど、治療を為すことを大義とせず、むしろ、意のままに人を病ませることを得手とする、不善で妖しげなる者。

 実在するとは言われていたが、薬師の里でも誰も遭ったことがなく、半ばお伽噺のように語られていた。薬師の勉強をちゃんとしない子供は、疾師が連れに来て弟子にされてしまうぞ、と。

 その疾師であると少女・ウルウァは自称した。三日前、士人に担がれてきたハナと顔を合わすや否やのことだ。そして絶句しているハナの尻を蹴り上げるようにして容赦なく指示を与え、ハナの手足をまさに我がもののように働かせ、風前の灯火だったアーシャの命を見事救ってみせたのだった。


 あれから三日。ハナは成り行きでこの屋敷に寄宿してしまっていたが、主人であるウルウァはハナを気にかけることもなくこの書斎に閉じこもり、どうやらアーシャの診療録(カルテ)を書いているらしかった。その長大さもまた、桁外れの眼識を持つ疾師がゆえということなのか。

 ハナは未だに信じられない気持ちでいたが、年端もいかない少女の顔をしたウルウァが、尋常の妙薬ではないアムリタの扱いを熟知していたこともまた事実。疾師の本懐に従ってか、彼女は実際の治療に一切の直接の手出しをしてこなかったが、代わりに与える指示の的確さと不足の無さは、ハナが付き合い慣れた師匠による手ほどきにも勝るとも劣らないものだった。

 ウルウァが正真正銘、噂の疾師であるのなら、知識の面において世界中のどの薬師をも上回ることになる。言うまでもなく駆け出しのハナなど端から比ぶべくもない。実際手足のように使われたことを悔しいとも思えず、ある種自然な出来事として受け入れる気持ちがハナの中にはあった。


 ただ、受け入れられるからと言って、何も感じないわけではない。

 ただ、ハナはその気持ちの正体を知らなかった。

 ウルウァに自分で申告したように、一度にたくさんのことを正確に記憶し、それらを忘れないのがハナの取り柄であり、また信条でもある。

 多くのことを知っていれば、それだけ多くの人を助けられるかもしれない。より多くの場面で役に立てるかもしれない。その一心で昔から何でも覚えることを意識してきた。

 そのハナの知識がアーシャに対してまるで役に立たなかったのは、アムリタやアーシャの病について知る機会がなかったからでもある。病床のアーシャと邂逅し、初めて見て、触れて、アムリタも扱い、治療を施した。

 にもかかわらず、今のハナはアーシャと出会う前のハナと何も変わっていない。確かにアーシャを治療したはずの自分の手足の感触さえ、さして覚えていないも同然だった。


 その空虚な感覚に、まだ抗おうという気持ちはある。

 雲の上の存在だった疾師になぜか気に入られたことも背中を押してはいた。

 書斎の扉の内側にはまだノブが残っている。そこへすでに触れていた手を離し、ハナは振り返る。


「疾師様。少し、お時間よろしいですか?」


 ウルウァは手を止めない。聞こえていないかのように机上に視線を落とし、インクを吸ったペン先を滑らせている。

 ハナは今一度深く息を吸い込むと、少なくとも耳にふたでもしていなければ聞こえないはずのないほど声を張り上げた。


「どうか、お教えいただけないでしょうか? アムリタと、アーシャさんの罹っていた病気について」

「聞いてどうするねぁ?」


 間を置かず、ウルウァは聞き返してきた。羽根ペンが持ち上がるが、インク壺までの空間を往復しただけで、再び紙の上を走り出す。


「アムリタはもうないと思われ()おったもんが見つかった。言うまでもなく最後の一つよ。あの家政婦と同じ病もまた、この世に二度と現れん。万一現れよっても治すことはできん。知るだけ無駄ぞに、(はな)()らし」

(はなたらし!?)


 突然妙なあだ名をつけられる。明後日の方から面食らう羽目になったが、それよりもアーシャと同じ病気が絶滅したという話の方が気になった。疾師たるウルウァが真面目にそう語るのなら、疑いようはないのかもしれない。だがなぜそうなのかを、ハナは彼女の口から聞きたいと思った。気持ちの説明が自分でもつかなかったため、飾らず率直に希望を述べた。


「だとしても、お願いします。上手く言えませんが、せめて知って、覚えておきたいのです」


 ウルウァがペンを置く。手元の紙を持ち上げ、背後の窓から差す光にかざしてみながら、「……ふむ、悪うない」と呟いて、脇の小机の上に置いた。そちらは常に日の当たる場所で、書き上がった(ページ)が端を揃えて重ねられている。


「アムリタは元来薬()呼べるような代物ではない。あれの正体は《呪詛》じゃけに」


 ハナは目を見張る。ウルウァはハナと視線も交わさぬうちに、何の前触れもなく答え始めていた。そしてその開口一番から耳を疑うようなことを明かしていた。


「《呪詛》……なのですか?」

(おう)よ。《穢れた水》に侵されし者らに捧げた祈りの成れの果て。()()()()()()()()()()()『生きた水』ぞ。《穢れた水》()いうのは、一千年ほど前にあった旧文明期の遺物、もとい、遺物の副産物として生まれた置き土産よ。人体にも有害ではあったねども、特定の家畜に対する影響が殊更(ひど)うてねぁ。同種は結局絶滅じゃ」


 家畜――と聞いたときはハナにも腑に落ちるものがあった。どうりで師匠がアムリタの需要を信じなかったわけである。


「当然、その家畜が食い扶持だった連中の中には、絶望し気の触れる者もおったけに、そのうちから《呪詛》を発現する者が現れよったち寸法よのぅ。《呪詛》の大元は、汚染された患畜を浄化したい()いう願望。ゆえにその形も単純かつ最短的。《呪詛》を受けた患畜からは《穢れた水》だけが追い出され、前頭部から体外へ排出された《穢れた水》は石筍(せきじゅん)のように結晶化した。“水”ゆえに通用した生体への汚染経路を、固体化によって半永久的に失わせたわけじゃ。その状態が()()ぞに」


 そう言って彼女は、机の端に乗っていた紙の山の下に手を差し込んだ。地崩れのように紙が流れ落ちるのも気に留めず、その中から半球状のガラスケースを引きずり出す。ハナが机のそばまで歩み寄って見ると、ケースの中央にはグラスが置いてあり、その中に楊枝のような長さの白い物体が三本立てられていた。目を凝らせば、その姿がはっきりと刀剣じみたかたちをしていることがわかる。


「《大棘》……!?」

「もはや()ではないがねぁ。加療を終えたあと家政婦の頭から生え()きおった。おんしは寝崩れちおったけに、見ちおらなんだ」

「……」


 予後の経過も見守り切れず眠ってしまったことについては、ハナもさすがに苦い気持ちがあった。休む間を惜しんで進んできた旅路の直後だったとはいえ、眠らずにいれば目で知れることもまだあったのだ。

 しかし今は悔いたり慄いたりしている時ではない。士人に託されてから肌身離さず所持していた《大棘》が実は毒性物質の結晶だったという話もぞっとしないが、そもそも現に機能する麻薬性物質(いんせい)の触媒でもあった時点からとっくに災難としては飽和し切っていた。大事なことは《大棘》の存在が治療を終えた証拠でもあるということだ。


「これは、この大きさでも《陰清》の触媒として作用するのですか?」


 念のためハナは先に確認はしておくことにした。


「インセイ? ああ。《洞》が好きにつけよったあだ名か」


 ウルウァが独りごちるように頷く。やはり彼女の側は薬師の里を知っているらしい。ただし「うろ」と発したときの彼女の口ぶりは、呆れたような小馬鹿にしたような印象だった。


「水を精神作用のある揮発性物質に変える性質は、《穢れた水》が持っちおった本来の作用の一つよ。《穢れた水》は極めて疎水性の高い液体で、水によって希釈はされんけに、触媒作用による水の変質は厳密な汚染とは異なる。とは言う()()()、かの悪名高き《穢れた水》の影響下にあるものを小瓶に詰めて売ろうなど、無知にもほどがあろうに」

「……そうですね」


 師匠もその件には反対派のようだったので、弟子の自分もウルウァの意見に賛同する筋合いはあるだろう。本当に無知ゆえの過ちだったのかどうかは知る由もないが、むしろ薬師にとってとなればその方が重い。

 そう知りつつもハナは、ええまったく、などと言って激しく詰るような気持ちにもなれなかった。不可抗力がなくもなかったとはいえ、結果的にハナと師匠が手ずから薬師の里の屋台骨を揺るがすことにもなってしまったのだ。今すぐというわけにはいかないが、《洞》のことも今後何かしら考えていく必要があるとハナは決意していた。《大棘》の断片とでも呼ぶべきものがここに残っていることも踏まえて。


 ただ今は心の凪を装い、話を元へ戻すことにした。


「《大棘》は、アムリタによって除去された病因そのものだった……ということは、刺獣は絶滅したはずの患畜そのものだったということですか?」

「応よ。アムリタ、もとい、当時はまだ『生きた水』と呼称されちおったそれを投与された個体だけが生き残り、《呪詛》の影響で変容した姿を見て『刺獣』と呼んだ。アムリタというのは刺獣の動物としての本来の種名『アムルダード』にちなんだものよ。あるいはアムルダードのとある地方訛りとも聞いたねぁ」

「アムルダード……それは、元々不死性を持つ生き物だったのですか?」

(いん)や。似た種と比べて長命ではあったねども。死なぬのもまた《呪詛》によるものぞに。《呪詛》()いうもんは、概念にまで影響を及ぼしよる。特に生き死にを直接左右する力の場合、ものによっては死の因果を前提として固定することも起こりうる。そう――紙が燃えることを阻むには、そもそもその紙が燃える宿命(はず)でなくてはならん。おおまかにはそういう話じゃ。すな()ち、『《穢れた水》をいなす限りアムルダードの死を免れる呪詛』は、逆説的にアムルダードを『《穢れた水》によって死ぬるもの』として再定義しよるわけじゃ。それは『《穢れた水》以外によっては死なぬ』こととも同義となる。奇っ怪な話じゃろうねども、《呪詛》にまつわる話の中ではそう珍しいたぐいでもない」

「……」


 ウルウァは淀みなく語ったが、ハナには何とも答えようがなかった。《呪詛》について聞きかじり程度の知識はあっても、関わりを持ったのは初めてのことだったためだ。この世の大半の者たちとおそらく同じに、《呪詛》も呪詛憑きもただの噂か与太噺程度にしか気にかけることなく暮らしてきた。

 魂を失い、二度と取り戻せないほどの狂気に人が駆られることなど、本来並大抵に起こりうることではない。しかもそれを対価にすれば、どんな超常の力も理不尽な望みも手に入るというのだから、馬鹿馬鹿しいほどに不条理で、不条理であることが取るに足らなくなるほど残酷だ。ウルウァの話も、《呪詛》というものはそもそも不条理なものなのだからと、物わかりのよさそうな納得の仕方で手を打っておくよりほかになかった。


(《呪詛》が絡むとやはり突飛な話になってしまうな……。そういえば、呪詛憑き……母も《陰清》の依存で心を病んで、呪詛憑きに墜ちたと……《陰清》と《呪詛》? ……何だ?)


 不意に別の戸惑いが脳裏を過ぎる。何か思い出しかけている――そんな感覚。

 ただ今は、ウルウァから貴重な話が聞ける機会であることを思い出し、ハナは意識的に気持ちを切り替えて会話を進めた。


「では、《穢れた水》によってしか死ななくなった刺獣は、《穢れた水》の結晶である《大棘》で刺されたことで死んだ、と解釈すればよろしいのでしょうか?」

「ふむ。そりゃあ少し正鵠でないねぁ。アムルダードは『すでに死んでいるはずだった』の間違いじゃ。その点を補完できる観病録(カルテ)()うて苛立たしかったねどもねぁ。あの()()の話では、《洞》を出た薬師の一人が知っちおったとか」

「あぁ、じぶんの師匠のことです」


 ハナはここにきて思わず早口で口をはさんだ。ウルウァが「ほう」と喜色交じりの相槌を打つ。


「《洞》の者にしては殊勝な研鑽を積みよったようじゃの。もっとも、それを外へ追い出しちおるけに、やはり《洞》は()()よねぁ」

(へご?)


 ハナは知らない単語だ。訛り言葉か造語か。悪態には違いなさそうだったので聞き流しておく。


「単に口内の目玉が弱点だった、ということではないのですよね?」

「抵抗が小さいという意味では弱点とも呼べるねどのぅ。少なくともある種の〝穴〟であったには違いない。おそらくアムリタの《呪詛》は、アムルダードを『《穢れた水》を体内に有して死ぬ』ものと前提した上で、《穢れた水》を『体外に在るもの』とする偽摂理を創り出し、アムルダードの死の運命そのものを改竄しちおったのよ。そこへ〝穴〟を通じ物理的に《穢れた水》を体内へ収めたことで、自己矛盾に陥った《呪詛》が、『《穢れた水》を()()()()()()アムルダード』ちいう存在をそのものから消滅させるに至った。すでに死んでいたもの、すな()ち、最初からその場にいなかったものとしてのぅ。と、ウルは推察しちおるねぁ。アムルダードの死の運命は回避されず、そうなりゃ『生きた水』も取り込まれんかったちいうことになり、おんしらの手に残ったちいうことじゃ」

「……だから師匠は、あんなことを」


 ハナは呟きながら、師匠がなぜか刺獣に向けてささやいていたことを思い出していた。


 ――寂しさに耐えられないのだとしても、夢からは醒めなくては。


 あれは、刺獣だけにではなく、彼らの主人だった呪詛憑きにも向けたものだったのだろうか。

 生き永らえたアムルダードとは、彼らの主人の見続けている夢に過ぎなかった。醒めればすべて消えてしまうものだった。

 だとしても、醒めない夢などどこにもありはしない。あってはならない。酩酊と恍惚の中に居続けるだけならなおのこと――そう師匠は言いたかったのだろうか。夢の中で会えるわけでもないのだから、と。


「なんだか、むなしいですね」

「《呪詛》とはそもそもそういうものぞに。望みは叶うも望んだ者はもはや()()()。散り際と入れ違い独り歩きを始めた夢の余韻よ。刺獣もまたもはや(うつつ)の獣として生かしておくべくもなく、かつての者らはより重篤に侵された者や、そうでなくとも欲する者のために『生きた水』を取り出すことにした。それをほぼ使い潰すまで《穢れた水》による汚染騒ぎも終息せなんだ」

「……」


 《呪詛》は厄災であると言う人もいる。人によるものではあっても、決して人の手には負えない。火山や洪水や大地震と同じく、人為の埒外にある脅威だと。

 しかし自然のもたらすものだとすれば、それを採集し利用してきたのがヒトだ。壊れた誰かの夢の残滓だとしても、もたらすものが呪いではなく福音だったならば、むなしくはないのかもしれない。アーシャの穏やかな顔を思い浮かべ、ハナはそう思うことにした。やがてその顔と別れ際に見た師匠が重なる。


「……先ほどから気になっていたのですが、《呪詛》は発現した呪詛憑きが絶命しても残り続けるのですか? 刺獣の一体が千年生き続けていたことは超常的な《呪詛》のせいにできるとしても、アムリタの呪詛憑きの方はとうに亡くなられているはずでは」

「ふむ。その仕掛けを説明するにはまず、《呪詛》の根幹的なところから話を――」

「ウルー? いるー?」


 間延びした声が二人の会話を遮り、扉が開いて枯野色の髪と卵型の可愛らしい顔がひょこりと覗いた。明るい苔色の目がウルウァにとまると、「あ、いたいた」と言って部屋に入ってくる。


「あ、すみません、アーシャさん。話し込んでしまって」


 ハナはアーシャが自分を探しに来たわけでもなさそうなのに思わず謝った。アーシャはハナのそばに来て軽く手を振る。


「ううん、いいよ? お買い物も聞けた?」

「はい。ひと通り」

「家政婦」


 ウルウァが口を挟む。露骨に不機嫌そうな声で。


「ウルをウルち呼び()()。そこの洟垂らしを見習い『疾師サマ』ち呼び」

「ウル、りっくん知らない?」

「☠〰〰!! ☠〰〰っ!!」

「いないんですか?」


 目を吊り上げて音にならない唸り声をあげるウルウァに代わり、ハナは少し驚きながら尋ね返した。アーシャが『りっくん』と呼ぶのは弟の()だけだ。りから始まるとすれば本名はリックか、リオンか、リチャードか……さすがにまだわからない。頭とも限らないし――というのは今いいとして、この短時間にアーシャは「川上」とやらまで行ってきたのだろうかと、ハナは少しぎくりとしながら訝しむ。自分で代わると言った洗濯も、まさかあの量をやり終えたなんてことは……。


「うん。お使いについてってほしかったんだけどね。どうせウルは紙がいっぱい欲しいだろうし、道案内も……はなたらし?」


 今さらになってアーシャが首を傾げる。ハナは苦笑し「あ、じぶんです」と挙手。


「風邪()()されたの?」

「いや、いえ、そういうわけでは……」

「風邪っ()きはおんしの脳だけじゃ家政婦め」ウルウァが黒々と毒づく。

「小僧の居場所なら川上の離れじゃ。心得(わかっ)たら早う()ね」

「離れで何してるの?」

「片付けじゃ。いらぬものを片端から放り込んぢおるけにのぅ」

「どうしてあの子がそんなこと?」

「知るかゃ。不意に言い出しよったんじゃ」

「あれ? 疾師様が頼んだのではないんですか?」

「はぇ? 薬師サンは知ってたの?」

「へ?」


 誰に何を訊き返されたのか一瞬わからなくなり、ハナはアーシャを見て固まった。何か酷い思い違いをしていたという予感だけが意識の奥からぼんやりと浮かび上がってくる。


 アーシャも似たような心境だという顔をしていたが、ハナと違って早々に我に返ると、「あー……なるほど」とややきまり悪そうに独り何か納得していた。そのまま腕組みをすると、例の上唇を吸い込む顔をして「んー」と考え込み始めてしまう。

 少なくともアーシャは弟の彼が川上に向かったこと自体どうやら聞かされていなかったらしい。じぶんに告げて行くくらいなら、当然姉のアーシャにも告げているものとハナは思い込んでいた。早とちりしていたことを謝るべきか。しかし黙考するアーシャの邪魔もしづらい。オロオロしているうちに、アーシャの口がまたパッと開く。


「よし。薬師サン……いや、()()

「は、はい!」

「遊びに行こう。わたしと二人で。あの子には内緒で」

「しょ、承知いたしま……し?」


 ポカンとするハナ。

 その顔を覗き込むアーシャは、白い歯を見せてニカッと笑う。

 視界の外でも「ケッヒッヒッ」と、いやらしげで楽しげな声が踊っていた。

明日昼頃次話投稿予定【済】。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まちがえて順番前後してしまいました…… 15!?  更に3つ下って12!? へぇっ⁉ 見た目やイメージに騙されてはいけないですね…… すごいなぁ呪詛の設定…… これはもう一度ヴオル…
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