開示されている情報
第一章終了時点での情報整理として書きました。
第二章以降を読むにあたって格別把握しておくべきことがあるわけではありません。飛ばしていただいて結構ですが、このような端書きでもガオケレナの世界や人物たちの魅力を感じる手助けになれば幸いです。
(第一章のネタバレも一部含みます)
(あらすじが把握できるほどのネタバレはありません)
【世界観】
・原野に満ちた異世界。人類は農耕と手工業を中心とした古典的な営みの中にある。
・現実世界で言うところの中世程度の文明レベル。あるいはそれ未満。※文化レベルはこの限りでなく、独特のもの。
・医療に関してのみ近代水準の知見が見られることもある。
・国と呼べるものの大半が都市国家などの小規模。そもそも国の体裁を為していない独立した共同体(街や集落)が主流として点在し、陸地のほとんどは無国籍地帯となっている。
・数百年前に滅亡した古代文明の名残が遺跡として散見される。ただし、かつての高度な発達ぶりを感じさせるものはまず残っていない。
・この世界での現在を指して、多くの者が『神無の時世』と呼ぶ。ここでいう「神」とは古代文明期に存在した「人ならざる支配者」のことであり、その滅びを示している。具体的な経緯はもはや神話化されてしまい、あまり語られないが、不思議と信仰の生まれない時代が続いている。(本作の物語とは関連性のない設定)
【《呪詛》について】
・この世界の人間が、おのれの自我や知性といった精神の人間性と引き換えに発現させられる超常の力、またはその現象。なにかを願い焦がれた末に、不可逆的な精神の壊滅に追いやられたときのみ、その「願い」を現実に変換する。
・その発現原理のため、発現者は発現と同時に廃人化する。発現すれば願いは叶うが、願った当人は叶ったことさえ認識できないとされる。
・発現者は一般に『呪詛憑き』と呼ばれ、忌み嫌われる。
・気がふれるほどの願いなど、たいていは常軌を逸しているものである。しかも制御する者がいない(廃人化する)となれば、無分別な願いの成就は往々にして災厄をもたらす。
・《呪詛》は死人同然となった呪詛憑きの置き土産であり、その人の〝願い〟という情念そのものが形を得て残るために、《呪詛》と呼ばれる。
・一人の人間が発現できる《呪詛》は、原則一つきりである(発言に必要な〝壊れる精神〟も通常は一人一つ)。
・《呪詛》の発現にも適性や才能といったものは存在する。誰もが正気を失いさえすれば発現するわけではない。
・『正気を失うことなく《呪詛》を発現できる才能』を持つ者も極めてわずかだが存在する。特別に《鏡界例》と呼ばれる。ただし彼らがそもそも失うほどの人間性を有しているかについて疑問視する意見もある。
・『正気を失わずに《呪詛》を行使できるようになる方法』も存在するらしい……。
【亜人について】
・高度な知能を持つヒト型の生物のうち、ヒト以外のもの。ヒトとの生殖が可能とされる。
・古代には各地に生息していたが、現在はそのほとんどが絶滅している。かろうじて生き延びている種族も、そのほとんどは隠遁している。
【登場人物紹介】
「ハナ・ヴァレンテ」
<概要>
・本作の主人公。生真面目な薬師の少女。のっぽな15歳。流浪の身。
・とにかく生真面目。ゆえに考えすぎる癖があるものの、根は前向き。嫌な経験を長く引きずらない面もある。他人の人柄を悪く見積もらないため、お人好しや能天気と取られることもしばしば。
・薬師の里と呼ばれる山里、《洞》の出身。幼い頃から薬師の修業を積んでおり、現在は旅先での診療を生業としている。弟子の身だが、すでに一人で診療を任されている。
<趣味・特技>
・薬師の仕事以外では家事全般が特技。ただしこれは同居人のナーシャの生活能力(に限らず、薬師としての技能以外の全般)が壊滅的だったため、特技にせざるを得なかった部分が大きい。
・炊事は趣味も兼ねている。特に道具にこだわりがある。料理自体は凝ったものよりも、限られた食材からそれなりのものを用意する方が得意。旅のみそらが長いせいであり、いわゆるやりくり上手の部類。
<特徴>
・人目を引くほどの高身長。たいていの成人男性をも上回る(現実世界より平均身長が低い)。「背が高いことはいいことだ」と自分に言い聞かせているが、からかわれることは気にしている。現在もすくすく成長中。※物語開始時点で175cm前後を想定。
・生来の人見知り。身長のおかげで抑えられている(人より目線が高ければ緊張しない)。つまり根本的に克服したわけではないため、自分より高身長の人間を相手にすると途端に及び腰になる。特に異性。
・やや多汗症気味。相手が「自分より背の高い男性」だった場合、身長差次第では脱水しかかることも。
・地の口調は中性的(やや男性寄り)。外見でなめられやすいナーシャを反面教師にしたため。ただし職業柄、相手が誰であれ最初は敬語を用いるよう教育されている。
・一人称は「じぶん」。幼少期は「ハナ」と自分のことを名前で呼んでいた。
・容姿は美人の部類に入る。ややキツネ目気味。本人は下がり眉のくせに目つきが悪く、陰気な印象を与えやすいと思っている。そのため人前では笑顔を意識しているが、相手からは浮かない顔も色っぽくていいなどと度々言われる(それはそれでどう反応してよいかわからないため苦手である)。
・髪は短く肩口で切っている。漆黒で、少しくせがある。いわゆる猫っ毛。
・瞳は瑠璃色系の濃い青。母親と同じらしい。
・暖色のボレロは《洞》の薬師である証。ただし総柄の刺繍が入った師匠のものとは異なり、半人前であることを示す無地。
<その他>
・クロスボウの扱いと、護身術として杖術、旗杖術を習得。いずれも薬師の里では一般的な技能だが、手足の長さを活かせるため、相性がいい。
<師匠・ナーシャとの関係>
・ナーシャとは建前上、師弟関係である以前に義理の親子にあたる。ただし歳の差が広すぎないこともあり、実態は姉妹のような関係。家族として彼女を慕うとともに、薬師の先輩として尊敬し、彼女から教わる薬師の誇りを自身の信条にまでしている。
・自分を引き取った経緯や動機についてナーシャに問いただしたことはない。実の母親についてもナーシャがなにか知っていることは確信していたが、あえて確かめてみようと思ってこなかった。
「???⇒士人(ミスター)」
<概要>
・本作のもう一人の主人公。無口な大男。年齢〝不詳〟。
・死病に侵された姉がおり、彼女のために特別な薬を探している。姉を救うためには手段を選ばない節がある。
<特徴>
・人間離れした巨漢。肩の時点で長身のハナの頭よりも高く、ハナが手をいっぱいに伸ばしてようやく鼻に触れる(およそ八尺様サイズ)。横にも広く、胸囲及び腹囲は大人二人が手を繋いだ輪よりも大きい。ハナの見立てでは太っているわけではなく、骨格上そういうシルエットになる体質らしい。
・前閉じの黒いローブを着込み、前後に長いつばのついた黒帽子をかぶる。顔には鳥のくちばしを模した漆黒の面鎧(ハーフメイル)を着用しており、目元から顎にかけてを常に隠している。巨漢で目立つことともあいまって、より異様な風体に見える。
・なにかにつけそっけなく、自分から口を開こうとしない。陰気で冷淡な性格にしか見えないが、変なところで律儀で几帳面であったり、かと思えば楽観的で幼稚な側面も垣間見せる。
・見かけによらず手先が器用。細かい作業が得意で、自作の木工品で路銀を稼いだりしている。木器にはうるさいハナ曰く、今すぐ高級商店お抱えの職人になれる腕前。
<正体>
・正体はハーフオルク。母親が純血のオルク族の生き残り。父は通常のヒト。
※『オルク』とは:
亜人の一種。現実世界で言うところの「オーク」に相当。すなわち架空の存在とされているが、この世界では遠い過去に実在していた(寒冷な高地に分布)。人外の巨躯、緑がかった皮膚、発達した下顎などが特徴。言語能力が発達しておらず、言い伝えの中でも人喰いの怪物などと呼ばれているが、実際は高い知性と穏やかな気性を持つ。
・体格と容貌にはオルクの血が色濃く反映されており、純血のオルクほどではないが身体能力も常人をはるかにしのぐ。毒や熱などにも耐性が高い。
・皮膚に緑の色素はなく、常人の域を出ない浅黒い肌色。ただし固く弾力があり、耐寒性、耐衝撃性に優れる。
・言語能力は純血のオルクと異なり、常人と同等。無口なのは純粋に性格のため。
・面鎧をしているのは容貌を苦にしているだけでなく、それが古代の医療者の正装であるかららしい(衣服や帽子も同様)。誰に教えられたのか……。
<その他>
・挨拶をせず、自分から名乗ろうとしない悪癖がある。名前を尋ねる機を逸したハナからは、一時的な措置として「士人」と呼ばれている。
※「士人」は本来「武人」あるいは「身分の高い人」の意。ただハナは「目上の人(男性)」の意味で「士人」と、敬称のつもりで呼んでいる。実質的には彼女の造語である。
「師匠/ナーシャ」
<概要>
・ハナの師匠。おっとりとした大人の女性。ハナが生まれたときから師匠だったらしい。28歳。
・なにごとにも鷹揚。だれに対しても愛想がいい。うその下手な楽天家。少々のんびりしすぎなところがあるとして、ハナには時おり警戒される。
・ハナと同様、薬師の里出身の薬師。ゆえに若いながら薬師としての職歴は長く、実力も折り紙付き。本人は才能がなかったために必死で努力したと語る。
・ただ、本当に薬師として身を立てることに専心しすぎたためか、薬師の腕として該当する以外の能力が壊滅的。いわゆる薬師馬鹿。このため家事全般から仕事に関わる雑務まで、ハナが物心つくや否や彼女に丸投げするという毒親的な所業にも出ている。
・ハナを引き取ったのは彼女の出生後すぐであり、引き離された母親に代わって育ててきた。ただし上記のとおり親であるという意識は薄く、あくまで師弟の間柄で、呼び名も最初から「師匠」(数年前まで「しーしょ」)と教えている。とはいえ彼女なりに愛情は注いでおり、ハナを特別扱いしているとのこと。
・《洞》との関係において重大な秘密を抱えていた。5年半もの長い診療行脚の中、一向に里へ帰ろうとしなかったこととも関連する。また、ハナの母親が行方知れずであることともかかわりがあった。
・ハナの母親とは幼馴染だったらしい。
「《濁》の女/ノルハ」
・《濁》は《洞》の中でも特に毒劇物の取り扱いに精通した一党。読みは「だみ」。薬と毒との境は曖昧とされるが、彼らは一般に毒性が高いとされるものを積極的に研究する。また必ずしも薬として運用することを目的としない。ゆえに薬師の里でも日陰者として扱われていた。
・ノルハは《濁》の一員の女性。ナーシャと同年代で、《洞》の薬師としては同期らしい。見習い時代は実力も同等で、一方的に意識していたとのこと。
・若いながら発言力は強い方らしく、《濁》の若者衆で構成された《大棘》の追跡隊の中においては、指揮者のように振る舞っている(単に仕切り屋である節も)。
・左目の周辺に痣がある。生まれつきのものではなく、薬の調合中に事故で負ったもの。
「刺獣」
・《大棘》の本来の持ち主。巨大な白い獣。不死とされる。読みは「しじゅう」。
・外見は、現実世界の馬に酷似。ただ足がより長く、体躯も一回り以上大きい。額に刀剣状のツノが生えており、これが《大棘》と呼ばれる。
・目と眼窩が頭部になく、口腔の奥に単一の眼球がある(舌がない)。視力の有無や、呼吸や摂食時の状態などは不明(不死であるため、呼吸や摂食が不要とも考えられる)。
・首を自在に伸縮させることができ、伸びた首をヘビのように動かせる。岩を砕くほどの顎の力と歯の強度も併せ持ち、敵対者には咬みついて攻撃する。
・《呪詛》の産物、あるいは《呪詛》の影響で変容した獣とされる。不死であることもその所以。また、発光する瞳には弱度の催眠作用がある。
・《大棘》にあたる部位が欠損した場合、その部位の行方を追い続ける習性がある。おおかたの位置がわかるコンパスのようなものが体内にある。またいかなる仕組みか、雷雨を伴って現れる。
「ヘティア」
・痩せさらばえた女性。老いたような白髪が特徴。実年齢は若い様子も見て取れる。
・動作が緩慢で、喃語を発し、虚ろな表情をしている。なぜか刺獣と行動を共にしている。
・目の色がハナと同じ。
「姉」
・士人の姉。血は繋がっていない。元奴隷で孤児。
・死病に侵されており、余命があと十数日もないとされる。秘薬・アムリタを必要としており、それを探しに出かけた弟を病床で待っている。
・ナーシャによれば、治療にアムリタが必要ということは、彼女の命を脅かしているものは《穢れた水》と呼ばれる古代の遺物である。残っていることはあり得ないとされているが……。
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本日15時頃、第二章第一節掲載予定。【済】