主人公はもぐもぐ系女子
前回の続きとなります。
それは忘れもしない雨の日ーー…。
親から拾われた身ではあるが不自由なく、拾われた先で少女は幸せに暮らしていたのだ。
少女は疑いもしなかった。
世界は優しい人が多くいて。
争いなどないのだと…。
そんな少女の成熟していない甘い考えは、全て雨の日に流れ消えていった。
少女は誰とでも打ち明けられる自由で、明るい子だ。
しかし少女は、その『雨の日』を境に自由を捨て、復讐を誓う。
少女は思いやりのある優しい子だ。
しかし、少女は『雨の日』を境に、世界が不平等であることを知る。
少女を拾い、育てた【人】は優しい人物だった。
だが、少女はその人物が取り巻く環境を。境遇を知る由もなかった。
少女は世界の無常さを知る。
少女は固く誓うのだった。
強くあることを。
だから少女は、自身が知らない。踏む行ったことのない世界へ足を踏み入れたのだった。
ーーそして、これは少しの月日が経ったころ。
海のさざ波を掻き消さんばかりの民衆の声。
それは決して誰かを称える声でなければ、嘆きの声でもない。その場に響くのは罵声や怒号で、大人の男が放つせいか威圧感を与えていた。
そんな中…。
「なら私と勝負をしなさい!」
幼げな少女の高らかな声が港の小さな広場に響きわたる。
少女が生きていくうえで、一等大切にしている言葉がある。
それは……。
「《腹が減っては戦はできぬ!》私が勝ったらここの食事代を支払いなさい!」
生き生きと輝く笑顔とエメラルドの瞳。
愛らしいその顔には似つかわしくない。口元のよだれが彼女の貪欲な空腹状態を表し。
更には緊張感のない、怪物の唸り声のような音が彼女の腹部から鳴り響いた。