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思い出と記憶の外にある世界
あなたが
一番愛した世界
海洋に隣接した都市
文明が沈む前は
みな神を愛し
互いを慈しみあっていた
忘却された記憶は
潮の香を懐かしみ
同時に嫌う
ぼくは
再会できない家族を思い
長く長く苦しんだ
力を得るために
たくさんの教えを学んだ
すこし歪んでいたかもしれないが
その歪みさえも包括して
師や先輩は導いてくれた
何度も生まれ変わり
ときには詩を愛し
ときには神秘を好み
憧れる芸術に
止まらない涙を経験した
優しさとは
痛みを忘れる空
般若とは
稀なる貴酒
喫煙はエジプトを思い出し
珈琲はナイルに溺れる