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転生者殺しの転生者  作者: com
1章 ~旅立ち~
7/18

VS絶対防御 2

 

「ルナ、聞いてくれ」


 竜也は相手の恩恵ギフト、そしてその弱点についての考察をルナに話し始める。


「あいつの恩恵ギフトは絶対防御。あらゆるダメージを負わない能力みたいだ」

「……」

「もし本当にそうならお手上げだけど、あいつには恐らく弱点がある」

「……弱点?」


 ルナは絶対防御という恩恵ギフトに驚きはしたが、それでも竜也は勝てると信じており素直に話を聞く。


「ああ。あいつはピンチになったことがあるようなことを言っていた。つまり絶対防御でさえもピンチになりうる何かがあるということ」

「……」

「そしてもう一つ。あいつは背後からのほとんど気配もしないような攻撃に気付くほど神経が研ぎ澄まされていた」

「……魔族と闘ってきた転生者なら、普通じゃないの?」

「別の恩恵ギフトならな。だけどあいつの恩恵ギフトは絶対防御。そもそもダメージを受けないのなら相手の攻撃に対して神経を張り詰めるような闘いをするはずがない」

「……そっか」

「この2つのことからあいつの恩恵ギフトには穴があると予想できる。ダメージを負う部分が存在するってことだ。そしてさっきの反応を見るに、たぶん背中側のどこかだと思う」

「……そこまで、考えられるなんて、リュウヤ、すごい」

「……まだ推測でしかないけどね」


 ルナは竜也の考えに感心する。

 竜也はルナが笑って褒めてくるものだから少し照れ臭くなって視線を逸らす。


「……んで、ここからが本題。たぶんあいつはまだルナが戻ってきたことに気付いていない。今がチャンスだ」


 竜也はもう一度真面目な顔に戻り作戦をたてる。


「ルナの最強の攻撃魔法ってどんなもの?」

「……風の、上級魔法。相手を、切り刻む」

「……威力はどれくらい?」

「……人間ならひとたまりもない」

「よし! 十分だ!」


 竜也は光明が見えたことに表情が明るくなる。


「作戦は単純明快。俺があいつの注意を引きつけるからルナは背後から魔法を放ってくれ」

「…………」


 竜也の作戦にルナの顔は少し曇ったように見えた。


「……わかった。任せて」

「頼んだぞ。俺も……ルナを信じてるから」

「……」


 2人は作戦を実行に移す。









 --------------










「いい加減に姿を見せやがれええええ!!!」


 黒人はなおも怒り狂い、壁を破壊し続ける。

 なかなか姿を現さない竜也に怒髪天を衝く勢いだ。


「いいぜ!! 姿見せてやるよ!!」

「!?」


 突然の竜也の声、そしてその意味に驚く。

 そして周りの壁が全て崩れ始めた。

 黒人は背後に神経を注ぎながら竜也を探す。


「……舐めてんのか?」


 黒人は自分の正面に現れた竜也を見て顔を歪ませながら言う。

 竜也は土の鎧、そして土の剣を装備し臨戦態勢を取っていた。


「大真面目だよ」

「……それが舐めてるっていうんだ!!!!」


 黒人は叫びながら竜也に凄まじいスピードで迫っていく。


「壁になれ」

「壁、壁、壁!! それしかできねえのか!!!」


 ズガァァァン


 黒人は悠々と壁を破壊し、竜也に襲いかかる。


 今だ!!


 ボゴォ


 壁が破壊された音がした瞬間、黒人の背後の地面からルナが飛び出てくる。

 支配の眼によって地中に空間を作り潜んでいたのだ。


「ゼノガ・シルグ!!」


 ルナから中が暴れ乱れる風の塊が放出される。

 黒人は壁を破壊してもまた次の壁があるという同じ手をまた使われたことに竜也に対しての怒りが頂点に達し、気付くのが遅れた。


「!? しまっ、ぐおおおおおおおおお!!!!」


 黒人がルナの魔法に気付き、振り向こうとした時には既に命中していた。


「がああああああああああ!!!!」


 黒人は壁に叩きつけられ、壁と風の塊に押しつぶされながら背中を切り刻まれていく。


「やった!!」


 竜也は作戦が成功したことに歓喜の声をあげる。

 やがて音がしなくなると支配の眼を解き、自身の装備と壁を消す。

 見ると黒人は背中のみから血を流し、倒れていた。


「……か、勝った」


 竜也は一気に体から力が抜け、その場にへたり込む。

 だが、その後すぐに黒人は立ち上がった。


「そんな!?」


 竜也はものすごい威力の上級魔法を受けた相手が死んでいなかったことに驚愕する。


「……ごめん、リュウヤ」


 ルナは力尽きたように倒れていた。


「……許さん。許さんぞおおおおおお!!!!」


 黒人はダメージは負っているものの、まだまだ力が残っているようで叫びながらルナの方を向いた。


「魔族が……この俺様にいいいいいい!!!」


 ヤバい!!


 黒人はターゲットをルナへと変え、襲いかかろうとする。

 竜也はそれを感じ取り慌ててルナを守ろうとする。


「壁で守りながらルナを遠くに運べ!!!」


 竜也の命令により多数の壁が出現し、さらに地面がルナを運んでいく。


「がああああああああああ!!!!」


 黒人は我を失い、ただ目の前の壁を破壊し続ける。


 ……怒りで周りが見えていない!

 絶好のチャンスだ!!


 竜也はこれを好機と見て攻撃を仕掛ける。


「やつの心臓を貫け!!!」


 土の槍が黒人の心臓目掛けて伸びていく。

 黒人は気付いていない。


 ……死ね


 竜也は今までにない恐ろしく冷酷な眼、そして殺意を持ちながら攻撃を仕掛け、そして完全に殺したと思った。

 そして黒人の背中へと命中した。


 ボウ

 ガッ


 なんだと!?


 竜也は驚愕した。

 命中する前に黒人の体が鈍く光ったこと、そして土の槍が当たったのにも関わらず刺さることがなく槍がボロボロと崩れ落ちたことに。


 何が起きた!?


 竜也は驚きながら、冷酷な眼で黒人を睨む。

 黒人はしばらく放心状態だったが攻撃されたこと、そして自身に何が起きたか気付くと喜びの笑いをあげた。


「……フフフ。……フハハハハ!!! 恩恵ギフトが、恩恵ギフトが進化した!! フハハハハハハハ!!!」


 ……恩恵ギフトが……進化……?


 竜也は新たな事実に苛立ちを覚える。


 ……恩恵ギフトは……進化するのか

 ……随分タイミングよく進化しやがったな


 竜也は相手のレベルアップのタイミングの良さが気に食わなかった。


「フハハハハ!!! 礼を言うぞ!! お前のおかげで俺様はさらに進化することができたんだからな!!!」


 黒人は竜也に向かって叫ぶ。

 しかし、竜也は全く聞いていない。


 ……これで完全にダメージは受けなくなったか

 ……なら次の方法だ

 ……やつを倒す、いや、確実に殺す方法を


 竜也は先ほどのパニックが嘘のように冷静に、そして冷徹に考える。


 ダメージを与える方法は無意味

 何かを与えることでは殺せない

 …………なら、与えないことで殺す


「俺を運べ」


 竜也は次なる作戦を決めると地面に命令し、今までにない速さでその場を移動する。


「……おいおい、逃げるなよ。お礼がしたいんだからさぁ!!」


 黒人は離れていく竜也を追う。

 その様子は再び余裕を持っており、まるで小さな子供を追いかけるように距離をあけながら追いかける。


 ……


 竜也はそれを無感情に見ていた。











 ----------------










 竜也は目的の場所に着くと眼を解除し、止まった。

 黒人もそれに合わせて歩みを止める。


「フハハ!! ついに観念したか!!」

「……」


 黒人は竜也が諦めたと思ったのか、笑いが止まらない。

 しかし竜也はその黒人を無視する。


「……なんとか言ってみろ!!!」

「俺に従い、浮かび上がれ」


 黒人はその態度が気に入らず竜也に怒りをぶつけるが、竜也はやはり無視し、あるものに命令を下す。


「……は?」


 黒人は竜也の頭上に浮かび上がったものを見て目を丸くする。


「……そんなものでどうするつもりだ!! フハハハハ!!」


 黒人は笑う。

 竜也の頭上に浮かんでいる巨大な水の球体、海の塊を見て。


「たかが水で俺様がダメージを受ける訳ねえだろうが!!!」

「やつを包み込め」


 黒人はついに痺れを切らし竜也に突撃するが、それを読んでいた竜也は水の塊を黒人へとぶつけた。


「グボォ」


 黒人は少々面をくらったが、やはりダメージを受ける様子はなく、予想通りのことに笑いがこみ上げてくる。

 しかし、おかしな点に気付く。


(!? 形が崩れねえ!?)


 黒人は水の塊がまるで水風船が割れるように壊れると思っていたが、実際はそうではなかった。

 黒人の体を取り込んだ状態で、なおも球体を維持していた。


(ヤバい!!)


 黒人は事の重大さに気付き、水の球体から出るようにもがく。

 しかし、どれだけ力強く腕を振り回しても、足をばたつかせても、水の球体はそれを嘲笑うかのごとく黒人を球体の中心に取り込み続けた。


「お前の恩恵ギフトは強い。こちらから何も与えることができないんだからな。だが、お前が人間であることに変わりはない。酸素を奪えばお前はやがて死ぬ」


 竜也は凍りつくような冷ややかな眼でもがく黒人を見ながら言う。


「ま、もう何も聞こえてないだろうがな」


 そして冷酷な笑みを浮かべた。

 相手の死を確信して。


「ごぼぼぼぼ……」

「……」


 黒人は数分もがき続けたが結局どうすることもできず、やがて力尽きた。

 竜也は念には念を入れて黒人の動きが止まってからも10分ほど黒人を閉じ込め続けた。

 より確実に死んでもらう為に。


「……もういいだろう」


 竜也は勝利を確信し眼の力を解いた。

 そして黒人が死んでいることを確認する。


 ……死んだか

 ……俺の……勝ちだ


 闘いが終わった安堵感からか、体から一気に力が抜け、意識が遠のいていく。


 まだ……ダメだ

 ……他に……仲間が……いるかもしれ、な……


 そして竜也は気を失った。

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