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転生者殺しの転生者  作者: com
1章 ~旅立ち~
6/18

VS絶対防御 1

 

 くそ!

 なんてタイミングだ!


 竜也は負傷者が2人いる状況で新たな転生者が現れたことに動揺する。


「答えろ……。そいつを殺ったのはてめえらか……?」


 黒人はもう一度同じように問いかける。

 竜也は狼狽えつつ、この状況について考える。


 どう考えても闘いは避けられない……

 闘うしか……ない!

 ……こいつの恩恵ギフトはなんだ?


 竜也は把握の眼で黒人を視る。

 やはり人間相手であるのでハッキリと視ることはできないが、恩恵ギフトについて少しだけ視ることができた。


 絶対防御……?

 なんだよ、それ……


 竜也は相手の恩恵ギフトを視て、またも苦笑する。


 名前からしてどう考えてもチートだろ!

 たぶんこっちの攻撃が全く受け付けない恩恵ギフト……

 ほんと……ふざけてやがる……


「さっさと答えやがれ!!!」


 竜也たちが何も答えないのに対し、黒人は先ほどと違い大声で叫ぶ。


「……そうだ」


 竜也は相手との闘いに思考を巡らせながら淡々と答える。


「……なんて……こと……だ。俺様の……仲間を……。がああああああああああ!!!!」


 !?


 黒人は悲しい表情を見せていたが、急に吠え、竜也たちに突進してくる。

 竜也は相手が何をしてくるかハッキリと視えてはいなかったが、悪寒がしたため防御をとる。


「壁になれ!!」


 竜也の命令により再び大きい土の壁が出現する。

 しかし、黒人は全く慌てる様子もなく、そのまま突進し、そして土の壁をぶん殴った。


 ズガァァァァァァァン


「なっ!?」


 竜也は驚かざるを得なかった。

 上級魔法を防いだ壁が素手で砕かれたからだ。


 ヤバい!!

 やられる!!


 竜也は想定外のことに次の行動をとることができない。

 しかし黒人は竜也たちなぞ見向きもせず、男の死体を抱き抱える。


「おぉ……。ミツル……。安らかに眠ってくれ……」


 黒人はミツルという男の死体を抱き抱え、涙を浮かべながら手で十字を描き、祈りを捧げる。


 ……今のうちに!


 竜也は今がチャンスと思い、オリガとガライを戦線から離脱させようとする。


「オリガとガライさんを家まで運んでくれ!」


 オリガとガライが横たわっている部分の地面が蠢き、2人を運んでいく。


「ルナ! お前も逃げろ!」

「……いや」


 竜也の言うことにルナは首を横に振る。


「2人を早く治療しなきゃダメだろ! こいつは俺が引き受けるから行ってくれ!!」

「…………わかった」


 竜也はガライの容態を心配し、ルナに少々声を荒らげながら言う。

 ルナは少し悩むが、同じ気持ちだったのか、すぐに頷く。


「……死なないで」

「できればそうするよ」


 ルナは心配そうな声を残しガライたちの元に急いで向かった。

 竜也は冗談を言うように少し笑う。

 そして竜也は黒人の方に視線を戻す。


 こいつの恩恵ギフトは絶対防御のはず……

 どうやって壁をぶち破ったんだ……?

 ていうかなんで日本語喋ってんだ……?


 竜也は2つの疑問について考えるが、予測程度しかできない。

 黒人は祈り終わったのか、ミツルを優しく寝かしつけると竜也の方に向き直った。

 凄まじい殺意を剥き出しにして。


「……あんた、日本語……わかるんだな」


 竜也は相手の動きを見逃さぬよう注視しながら話しかける。


「…………当たり前だ。この世界では違った言語でも意思の疎通ができるようになっている」


 黒人はゆっくりと答える。

 その様子からは絶対的な余裕が垣間見える。


 なるほどね

 それにしてもこいつ、自分の恩恵ギフトに絶対の自信があるみたいだな

 この状況で俺の質問に答えるなんて

 ……それなら


「さっきのすごいパワーだな。力の実でパワーアップでもしてんのか?」

「……その通りだ」


 黒人はまたも答える。

 とても落ち着いた声で。


 ……マジでそうなのかよ

 あんなレベルまでパワーアップできんのか……

 身体能力に加えて絶対防御という恩恵ギフト……

 どうする……


 竜也は絶望しながらも策を練る。

 黒人はさらに話し続ける。


「……俺様は身体能力が極限まで強化され、そして絶対防御という恩恵ギフトを持っている。あらゆる攻撃が効かず、さらに自身にダメージを負うほどの力を出しても何ともない」


 つまり、こっちの攻撃が効かないだけじゃなく生き物が自分自身を傷付けない為の無意識の力のセーブを外してるってのか……!?

 なんだよ、そのチートは。

 ……それにふざけてやがんな

 自分の恩恵ギフトをわざわざ教えるなんて


 竜也は相手がリミッターを外した動きをできること、さらにそれを相手に教えることに焦りを覚える。


 恩恵ギフトについて教えたところで何もできないと思ってやがんのか……

 どんだけ自信があんだよ……


「……俺様たちは無敵だった。……どんなピンチも一緒にくぐり抜けてきた。……ミツルと共に。……それを……それを……。てめえは……ミツルを……ミツルをおおおおおおおおおお!!!!」


 来るか!?


 黒人はゆっくりと話していたかと思うと、急に叫び、怒り狂い始める。

 そして竜也に素早く近づき殴りかかる。


 速い!?


 黒人は竜也に瞬時に近寄ると連続でパンチを繰り出す。

 竜也は把握の眼でぼんやりと黒人の動きが視えており、ギリギリで回避を続ける。

 が、予知することができてもあまりの速さに回避が追い付かず腹に拳がめり込む。


「ごあ!!」


 竜也は小さい呻き声をあげ、吹き飛んだ。


「う……あぁ……」


 竜也は今までに味わったことのない激痛に悶え苦しむ。


 ……ヤバい

 ……一撃で……これかよ……

 ……次くらったら……終わりだ


 悶えながらも竜也は黒人の動きを視る為に睨むように視界にいれる。


「楽には殺してやらない。苦しんでから死ねええええええ!!!!」


 黒人は竜也を即死させないよう加減をしながら攻撃していた。

 黒人は吼えあげる。

 竜也は相手が叫んでいる間に攻撃を仕掛ける。


 くらえ!!


 竜也はガライの家を出る時に拝借していたクナイを黒人の胸目掛けて投げつける。

 クナイは黒人の心臓に向かって飛んでいく。

 しかし黒人は全く回避する様子がない。


 ガキンッ


 クナイは黒人に命中したが、弾かれる。


 やっぱり……ダメか……


 竜也はわかってはいたが、攻撃が通じない事実に絶望する。


「……言っただろ。俺様は無敵なんだよおおおおおおお!!!」

「くそ!! 壁になれ!!」

「無駄だああああああ!!!」


 竜也は再度壁を作る。

 しかし黒人はまたも素手で壁を打ち砕く。


(!? 壁がもう一つ!?)


 黒人は壁を砕いたその先にも壁があることに少しだけ驚く。

 が、すぐにまた殴りかかり、壁を破壊する。


(……いない!?)


 黒人は2つの壁を破壊したその先に竜也がいないことに気付いたと同時に周りに多数の壁が出現していたことに気付く。


(……隠れたか)


 竜也は壁で目眩しをしている間に多数の壁によって身を隠した。


 ……どうする!!

 ……攻撃が効かないやつに勝てるのか?!


 竜也は身を隠しながら考える。


 ……いや、何か弱点があるはず

 ……あいつはさっきピンチをくぐり抜けてきたと言っていた

 ……つまりピンチに陥ることがあったということ

 何か……何かあるはずだ!!


 竜也は予想にすぎないが確信を得たように考える。

 もはやそう考えなければこの状況と痛みで諦めてしまいそうだからだ。


 とにかく情報を集めないと……!

 隠れてるだけじゃダメだ!!


 竜也は意を決してもう一度攻撃を仕掛ける。


「どこだ!!! どこにいやがる!!!」


 黒人は叫びながら壁を破壊し続ける。

 竜也は把握の眼で相手の位置を視る。


 ……よし

 ……いくぞ!!


「やつを貫け!!!」


 竜也は目の前の壁に命令を下す。

 壁から土が槍状になって黒人の背後から向かっていく。


「!? 甘いわああああ!!!」


 しかし黒人は即座に振り向き土の槍を殴り砕く。


「……ダメか!!」

「そこかあああああああ!!!!」


 黒人は槍が伸びてきた方に突撃し壁を砕く。


「……くそが!!」


 黒人は壁を砕き竜也を探すが、またもおらず、悔しそうに吼える。

 竜也は攻撃を防がれた瞬間にすぐにまた身を隠していた。


 背後からの、しかもほとんど音もしてなかった攻撃に気付くのか!?

 あいつ、相当戦闘経験がある!!

 神経が研ぎ澄まされてるって感じだ!!


 竜也は相手との力の違いに動揺が隠せない。


 ……マジで絶望的な状況だ

 ……戦闘経験の差

 ……恩恵ギフトの相性も悪い

 こんなのに……勝てるのか?


 竜也は徐々に諦めの色が強くなっていく。

 勝てるビジョンが全く見えてこず、悪い部分ばかり見えるせいでネガティブな感情がどうしても振り払えなくなる。


 ドゴォォォン

 ドゴォォォン


「コソコソ隠れてんじゃねえ!!!」


 黒人は壁を破壊し続けている。


 ……この状態もいつまで保つかわからないぞ

 ……どうする、どうするどうするどうする!!


 竜也はいつ見つけられるかわからない状況、見つかれば殺される状況に冷静さを失う。

 ほとんどパニックに陥り、考えているようでも思考は定まっていない。


「……リュウヤ」

「うわ!!」


 そんな状態だったので自分に近づいてくる者に気付かなかった。


「ル、ルナ!! なんでここに!」


 そこにはルナがいた。


「ガライさんたちは?!」

「……もう、大丈夫」


 ルナは相当急いでここに来たのか、かなりの疲労の色が見える。


 治療するには早すぎないか?

 それにすごく辛そうだ


「あいつは強すぎる!! 逃げるんだ!!」


 竜也はかなり焦りながらルナに言う。


「……村を、守る。……逃げちゃ、ダメ」


 ルナは途切れ途切れに話す。


「そんな状態じゃあいつと闘うことなんてできない!! いいから逃げるんだ!!」

「……大丈、夫。……闘える」

「……あいつには勝てない!! 強すぎるんだ!!」


 竜也はもうほとんど諦めていた。

 あの黒人には勝てないと。


「……わたしは、リュウヤを、信じる。……さっきも、勝てた」

「……さっきとは違うんだよ!!」


 竜也は取り乱しながら言う。

 すると竜也の手を優しく握りルナは笑いかける。


「……それでも、信じる。リュウヤは……村を、私たちを……守ってくれるって……」


 とても純粋な笑顔。

 その心が洗われるかのような笑顔に竜也は見惚れ、そして落ち着きを取り戻した。


 …………そうだ

 ……そうだった

 俺は、ルナを、この村の魔族たちを守るために闘ってたんだ

 ……諦める訳には、いかないよな


「ごめん、それにありがとう、ルナ」

「……?」


 竜也は諦めかけていたこと、そして再び闘志をくれたルナに謝り、礼を言う。

 ルナはよくわかっておらず首を傾げる。


 ……もう一度考えるんだ!

 あいつの弱点を、あいつに勝つ方法を!!


 竜也は落ち着きを取り戻した頭で今までのことを思い返し何か突破口を探す。

 そして一つだけ小さな違和感を見つける。


 そういえば、あいつ……なんで……?


 竜也はその違和感について考える。

 そしてある結論に至る。


 もしかすると、あれがあいつの弱点……!?


 竜也はついに突破口を見つけた。


「……ルナ、あいつに勝つ為に力を貸してくれ!」

「……うん」


 竜也たちは勝負に出る。

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