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転生者殺しの転生者  作者: com
1章 ~旅立ち~
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VS無限魔法 2

 

「ふざけたことぬかしてんじゃねえ!!」


 男は竜也に対し恐ろしいまでの怒りをぶつける。


「人間が、しかも転生者が魔族を守る?! 寝ぼけたこと言ってんじゃねえぞ!!」

「ふざけても寝ぼけてもねえよ! 俺は本気だ!」


 男のあまりの怒りに竜也は内心少し怯みながらも強気に叫ぶ。


「てめえはこの世界に来たばかりで何も知らねえだろうがな、魔族ってのは皆殺しにするべき存在なんだよ!!!」

「ああ、確かに知らないさ! でも、この人たち、この村の人たちを殺すのは許せねえ!」


 竜也たちにルナたちは呆気にとられていた。


「……へっ、今謝ってやれば許してやる。俺は寛大なんだ。転生したてで混乱してるんだろ? さあ、謝れ!!!」

「嫌だね!!さっさとこの島から出ていけ!」

「~~~~っ」


 男は竜也を新しい戦力として迎え入れようと思っていたが、竜也の態度についにブチギレた。


「ふざけんなあああ!! てめえもろとも全部ぶっ壊してやる!!!ウェオ・シルグ!」


 魔法により風を纏った男は宙に浮きながら素早く竜也たちから距離をとった。


「ゼノガ・イフルイド!!!」

「壁となって俺たちを守れ!!」


 男が魔法を唱えようとしていることが視えた竜也は支配の眼によって地面に命令を下す。

 先ほど放たれた火の玉とは比べものにならないレベルの炎の塊が放出される前に竜也たちの前に巨大で分厚い土の壁が出現した。


 ドゴォォォォォォォォン!!!


 炎の塊は土の壁にぶつかると大爆発を起こした。


「!?」


 男は自身の上級魔法が防がれたことに驚く。


「ちっ!さすがに転生者なだけはあるな」

(……やつの恩恵ギフトはなんだ? 俺と同じ魔法系統か? ……それとも操作系か?)


 男は驚きはしつつも、すぐに分析を始める。


(……恐らくやつの光っている両目が恩恵ギフトだな。目ということは視覚が鍵か。俺の姿が見えないこの状況はラッキー……か? いや、俺自身に何かできるならさっきそうしたはず……)










 -------------










「ふぅ。なんとか防げたな。」


 竜也は相手の攻撃を防ぎ、一段落ついたような面持ちだ。


「すまない! 助かった! 竜也殿!」


 竜也のすぐ近くにいたガライが嬉しそうに竜也の肩を叩く。


「やはりおめえさんを信じてよかった」

「えぇ、まあ、どうも」


 いや、まあ、成り行き上こうなっただけなんですけど


 そんなつもりはなかった竜也は素直にガライの礼を受け入れることができなかった。


「わ、私はまだ信用してないからな!!」

「……」


 オリガは焦ったように言う。

 ルナは何も言わない。


「とはいえ、これからどうする? やつは魔法を何度か使っている。上級魔法も使ってきたしそろそろ疲れていそうだから一気に叩くのが良いと思うのだが」


 ガライは竜也を信じきっているようでなんの警戒もなしに竜也に尋ねる。


「いや、それではダメです。やつは転生者で、その恩恵ギフトは無限魔法。詳しくはわかりませんが恐らく魔法を無限に使えるはずです」


 竜也はガライの提案に対し冷静に答える。


「なに!? そうなのか!? 何故そんなことがわかるんだ?」

「そうだ! お前本当はあいつの味方なんじゃないか?」


 ガライたちは竜也が相手の能力を知っていることに驚いた。


「その説明は後で。今はあいつを倒しましょう」

「た、倒すと言っても魔法を使い放題なやつに勝てる方法などあるのか?」


 ガライは不安そうに尋ねる。


「大丈夫です。俺の予想が正しければ、俺とあいつはこの上なく相性がいいはずですから。……俺の作戦聞いてくれますか?」


 竜也は3人に作戦を説明し始める。


「…………という感じです」

「かなり大雑把な作戦だが大丈夫なのか?」

「というより前提がおかしいだろ! お前にそんなことできんのか?」


 竜也の作戦にガライやオリガはあまり納得していない。


「信じてください、としか言えないです。俺だって失敗すれば殺されるかもしれません。そんな状況で失敗する作戦をたてるはずがないでしょう」

「……むぅ、それもそうだ」

「親父!」

「……私は、やる」

「な、ルナまで!」


 ガライとルナが納得したことにオリガは納得していない。


「転生者の言うことなんか聞いちゃダメだ!」

「……私たちじゃあいつにはまず勝てない。……少しでも可能性があるならそっちにかけたい」

「うぅ……」


 オリガはルナの言うことに反論できなかった。


「……お願い、オリガ」

「………もう、わかった。ルナがそう言うならそうする。ただしお前を信じたわけじゃないからな!」

「それで十分だよ」


 竜也は了承してくれた3人に笑いかける。


「それじゃあみんな! 俺に命を預けてくれ!」









 ------------









(……なかなか仕掛けてこねえな)


 男は周囲に警戒しつつ考える。


(作戦を考えているのか? それとも逃げたか? ……いや、逃げ場なんてねえか)


 ズガガガガガガガガガ


「む!?」


 突如目の前にあった壁から男を挟んで新たな巨大な2つの壁が出現する。


(……何のつもりだ?)


 すると男の体に地面が絡みついた。


「なに!?」


 それと同時に初め男の魔法を防いだ壁が崩れ落ち、竜也が全速力で向かってくる。


「うおおおおおおお!!!!」


「舐めるな!! スプル・シルグ!!」


 男から強力な風が吹き荒び、絡みついていた土を振り払う。


「ヒャハ!! 自分で自分の逃げ場を失くしやがって!!! ゼノガ・イフルイド!!!」


 きた!!


 竜也は男が魔法を唱えようとした瞬間に2つの壁の支配を解いた。

 男の杖からは炎の塊が放たれる。


「「はあああああああ!!!」」


 すると2つの壁に隠れていたオリガとガライが同時に男の左右から切りかかる。


「なに!?」


 男が驚いている間に竜也は炎の塊に命令を下す。


「上に逸れろ!!」


 竜也の支配の眼により炎の塊は軌道を変え、上空へと飛んでいった。


 やっぱり!

 人間自身には通用しなくても放たれた魔法になら通用するみたいだ!







『作戦はこうです。俺があいつに隙を作り、その間に2人にあいつに近づいてもらってその隙を同時についてください。』







(完全に捉えた!)

(いける!)


 オリガとガライは勝利を確信し、剣を振る。

 しかし、


「舐めるなって言ってるだろ!!」


 男は杖を2つに分解し、それを二刀流の如く使い2人の攻撃を受け止め、さらに目にも留まらぬ速さで2人を殴り飛ばした。


「ぐお!」

「がっ!」


 ガライとオリガは地面にたたきつけられ、悶える。


 そんな馬鹿な!!

 オーガの攻撃を魔法使いが受け止めるなんて!!


 竜也はあれほどの体格差で、しかも魔法使いは非力だと思っていたので驚きを隠せない。


「ヒャハハハ!!! だから舐めるなって言ってんだよ!!! 俺は力の実で強くなってんだよ!!」


 男は相手の作戦を打ち破ったので笑いが止まらない。


 力の実?

 この世界そんなパワーアップアイテムもあんのかよ!!


 竜也は驚いている。

 が、狼狽えているわけではない。


「ヒャハハハ!!! もうお終いか?!」


 笑い続ける男に竜也は落ち着いて話し始める。


「……いや、今のでわかったよ。お前の弱点」

「あぁん? 俺の弱点だぁ?」


 男は自分に弱点があると言われ腹を立てる。


「俺はなぁ、魔法が無限に使えるんだよ!! さらに身体能力も高い!! そんな俺に弱点なんてあるはずねえだろ!!」

「その魔法が問題だ」


 竜也は挑発的な笑みを浮かべ説明する。


「確かに魔法を無限に使えるのは強力だ。でも、ただ使うことができているだけだ。お前の性格からして常に全力で魔法をつかっているはずだが威力は変わっていない。全く同じ強さだ」


 竜也は把握の眼により男の魔法に込められた魔力が常に一定であることを視ていた。


「恐らく魔法は込める魔力によって威力が変わるはずだ。だがお前はそれができない。お前にはそもそも魔力という概念が存在しない。ある決まった威力の魔法をただ使うことができるだけ。やはりお前の恩恵ギフトは無限魔力ではなく無限魔法であるということだ」

「ヒャハハハ!!! まあ、正解だぜ? だからどうしたっていうんだ?!!」


 男は竜也に己の力を見抜かれてもなお笑い続ける。

 そんなことわかったところでどうしようもないと思っているからだ。


「つまりお前の力には上限がある。その上限を超えた攻撃にお前はなす術がないのさ」

「なんだと?」


 男は竜也の言うことに腹を立てる。


「さっきどうやって俺の魔法を避けたかは見えなかったが、俺の攻撃を避けたり受けたりしかできてねえてめえごときがどうやって俺より強い攻撃をしかけるんだ!! 調子に乗るのもいい加減にしやがれ!!」

「試してみるか?」


 竜也の挑発に男は完全にキレた。


「だったら、見せてやる!!! この俺の力を!! 全部全部全部ぶっ壊してやるよ!!!」


 そう言うと男は杖を上に掲げた。


「エクセレス・サモニエド・イフリートォォォ!!!!!」


 男の杖から凄まじいまでの炎が放たれていき、徐々に形を作っていく。

 そして、恐ろしく巨大な炎の魔人が召喚された。


「さあ!!! どうする!!! 最上級の召喚魔法だ!!! 手も足も出ないだろう!!!」


 ……想像以上にヤバいな、これ

 でも、やるしかない!!


 竜也は恐ろしいまでの巨大さに怯むが、己の力を信じて行動をとる。


「ヒャハハハ!!! この村、いや、この島ごと破壊してやる!!!」

「炎の魔人よ!!! 俺に従いその動きを止めろ!!!」


 ピタッ


 竜也が命令を下すと、村に拳を振り下ろそうとしていた魔人の動きが止まる。


「……は?」


 男は何が起きたか理解できていない。


「……成功した!」

「……な、何が起こったんだ!! 動きやがれ!!」


 男の命令は届かず魔人はビクともしない。


「てめえ何しやがった!!!」

「魔人よ、その男を攻撃しろ!!」


 竜也は男の問いに耳を傾けず、魔人へと命令する。

 魔人は体の向きを変え、男に拳を振り下ろそうとする。


「……ちくしょう!! こんなことで俺を倒せると思うな!!」


 男は瞬間に頭を切り替え、防御のために魔法を唱える。


「エクセレス・サモニエド・セルシウス!!」


 男は今度は巨大な氷の魔人を召喚し、相殺しようと試みる。


「ぐおおおおおおおおお!!!!」


 男は氷の魔人を操り、炎の魔人とぶつかり合う。


「今だ!!!」


 竜也が男と話している間に距離をとって体制を整えていたオリガとガライが再び男に切りかかる。


「「うおおおおおお!!!」」

「!?」


 男は自分の魔法を相殺していて動けない。


(今度こそいける!!)

「くそがああああああああ!!!」


 今度こそ勝てると思うオリガ、そして怒りの叫び声をあげる男。

 勝負は決まるかと思われた。

 しかしここで偶然にもぶつかり合う2人の魔人の破片がオリガとガライに直撃する。


「ぬお!!」

「があああ!!!」

「!?」

「そんな!?」


 ガライは体が凍りつき、オリガは燃える。

 男と竜也はあまりに都合のいい展開に驚く。

 その間に2人の魔人は完全に消滅した。


「……ヒャハハハ!!! 天は俺に味方した!!! これでてめえの作戦も終わごぉぉ」


 ピンチをくぐり抜け、竜也の作戦に打ち勝ったと思った男は完全に油断していた。

 自身の背後から放たれたルナの矢に気付かず、喉を貫かれた。






『相手は転生者で戦闘経験も豊富、恐らく1度目も2度目も失敗するでしょう。ですが相手の性格だとその後に最大の隙が生まれるはずです。そこをルナに十分な距離をとってもらってから射抜いてもらいます』






「ごぼぉ、ごばぁひゅがぁ……」


 回復魔法を唱えようとするも、喉が潰され声が出ない。


「ごぁぁぁ」


 男はすぐに力尽き、倒れ込んだ。


「…………」


 そして動かなくなった。


 か、勝った……


 竜也は男が動かなくなったのを見て安堵した。

 しかし、すぐにオリガとガライが傷付いていることを思い出し2人に駆け寄る。

 ルナも一緒だった。


「大丈夫か!?」

「……私はなんとか。親父の方を……」


 オリガは火傷を負っているがそれほどの傷ではないようだ。

 ガライを見ると全身が凍り地面にへばりついている。


「どけ!!」


 竜也は氷を支配の眼でどかすと把握の眼でガライの容態を伺う。


 オーガで体は頑丈みたいだけど、ダメージは大きい。

 なるべく早く治療しないと!!


「ルナ!! オリガ!! ガライさんを治療しなきゃ!!」


 竜也が2人に言うと、2人共素直に首を縦に降る。


 よし!

 眼を使ってガライさんたちを家まで運ぼう


 竜也がケガ人たちを運ぼうとすると声が聞こえた。


「てめえら……なに……やってやがんだ」

「!?」


 竜也は驚き、声のした方を見る。

 そこにはオーガと思うほどの体格の黒人がいた。


「そいつを殺ったのは……てめえらか……?」


 死んだ男を指差しながらゆっくりとした、しかし明らかに怒りが込められた声で黒人は話す。

 ここで竜也は思い出し、気付いた。

 無限魔法の男は何度か俺たちと言っていたことを。

 仲間がいたということを。


 そして、視た。

 その黒人もまた転生者であることを。

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