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転生者殺しの転生者  作者: com
2章 ~東の大陸 アムーリタ~
14/18

VS 行動予知

 

「何を固まっている。早くそいつをよこせ」


 転生者は竜也に語りかける。

 冷静なその言葉のうちにはとてつもない憎悪が宿っているようだった。


「……もし渡したらどうなる?」

「殺すに決まっているだろう。そういう仕事クエストだ」


 竜也はギルドでの事を思い出した。


 ……魔族を殺す仕事クエスト

 今朝見たサキュバス討伐仕事(クエスト)か!?


「そいつは何度も人に危害を加えたそうだ。殺して当然だ」

「……こんな小さい子がそんなことするはずないだろ」

「貴様は馬鹿か? 魔族に大きさなど関係ない。ただ等しく人間に害を及ぼす」

「この街に住む魔族たちはそんなことはしない!」

「ふっ。どうやら貴様もあの街に毒されているようだな。だが貴様に私を止める権利などない。私はその街で仕事クエストを受けた。その街のルールに従ったまでだ」

「……」


 くそっ!!

 やっぱりカヤさんの言う通りまだあの街でも魔族を気に入らない人がいるのか!!

 こんな小さな子の討伐を依頼するなんて!!


「知るかよ!! 大人がこんな小さな子虐めてるのを見過ごせるかってんだ!!」

「虐めているのではない。殺すんだ」

「……」


 竜也は考えてる。

 この後どうするのかを。


 あいつの恩恵ギフトは……行動予知……か

 こちらの動きを予知できるみたいだな

 ……今はこいつに勝つよりも逃げることを考えないと

 この子の傷はかなり深い

 早く治療しないと死んでしまう!


 竜也は魔族の子が衰弱しきっていることがわかっており、転生者と闘い勝利するよりも逃げて早く治療することを選ぶ。


 ……幸いこの位置なら俺たちの方が街に近い

 足止めしつつ速攻で街に戻る!


「壁になれ!」

「なに?」


 竜也の命令により壁が作られ、転生者から姿を隠す。


「よし! 俺たちを運べ!」


 そして地面に命令し、街へと向かおうとする。


「貴様、転生者だったか。ただの人間相手に刃を向けるつもりはなかったが転生者ならばそうも言っていられないな」


 そういうと転生者は腰にある剣を抜き、そして振るった。


 ザンッ


「なっ!?」


 巨大な壁は転生者の斬撃により切り裂かれ崩れ落ちた。


 馬鹿な!!

 こいつの恩恵ギフトは行動予知じゃ?!

 まさかこいつもパワーアップしてんのか?!


 竜也は驚いたがそれでも自分の目的達成には支障がないことに安心する。


 あいつの武器は剣

 ならもうここまで離れているなら攻撃は届かない!


 竜也は相手の動きに警戒しつつもとりあえず逃げることはできることに安堵している。


「はっ!」

「え?」


 転生者はその場でもう一度剣を振るった。

 竜也は何をしているのかわからなかったが自身の身に何かが起こりそうになっていることが視えたので咄嗟に体を捻った。


「ぐあ!!!」


 竜也は突然血を吹き出した。

 斬られたのだ。

 竜也は予想外のダメージでその場に倒れる。


 ……な、何が?


「ほう。私の次元剣を初見で躱すとはな。流石は転生者といったところか」

「じ、次元剣……」


 竜也はただの剣だと思っていた剣を把握の眼で視る。


 次元剣……

 次元を斬る剣……

 その斬撃は次元を超えていく……

 ……間合いが存在しないのか?

 そんなものもあるのか……


 竜也はチート武器の存在に驚く。


「今の一撃で行動不能にしようと思ったのだがな。やはり転生者は一筋縄ではいかないようだ」


 転生者は余裕の表情で竜也たちに近づいてくる。


 ……間合いが存在しないんじゃ逃げても攻撃され続けてしまう

 逃げるのはきついな……

 恩恵ギフトを使って助けを呼ぶか?


 竜也は今度は街に助けを求める方法を考える。


 ……いや、待て

 俺が恩恵ギフトで派手に音をだしたりしてもルナたちは俺が修行してると思うよな

 くっそ、最悪だ


 竜也は自分が恩恵ギフトの修行をしていることを伝えていることを思い出した。

 竜也がどれだけ派手に行動しても特に気にされないだろう。


 ……となると街に向かうにはこいつ自体をどうにかしないとダメだ

 こいつから剣を引き離すか、もしくは行動不能にするか

 どちらにせよ闘いは避けられない……か……

 ……あー、くそ

 やりづらいな


 竜也は立ち上がり転生者と闘うことを決めるがどうにも戦意が湧いてこない。


「私には人を斬る趣味はないんだ。あまり貴様を斬りたくはない。大人しくそいつを渡してくれ」

「こんな小さな子を斬る趣味はあるみたいだけどな」

「先刻も言ったはずだ。魔族に大きさなど関係ないと」


 ……ちくしょう

 引き下がるつもりは毛頭ないみたいだ

 闘うしか……ない!!


 竜也は闘う覚悟を決めた。


 ……俺だって本当は女と闘う趣味なんてないっての


 その女の転生者と。


 傷付けない方法とか考えてる暇はない!

 心を鬼にして闘わないと!


「やつを拘束しろ!」

「……ふん」


 竜也の命令により女の周りからいくつもの土の触手が現れ、女に襲いかかる。

 しかし女は先ほどの行動を見て、そして今の竜也の行動を予知しどのような攻撃が来るかわかっていた。

 女は素早く剣を振るうと全ての触手は切り刻まれた。


「くそ! なら! 弾丸となってやつを撃ち抜け!」


 竜也は今度は無数の小さな土の塊を女に向かって打ち出した。


 これなら予知したところで躱しきれないだろ!


 竜也は黒人との闘いで自身の微弱な予知の弱点を思い出していた。

 予知しても体がついてこなければ躱すことがてきないという弱点を。


「……」


 女は無言でそして余裕を持って背中に背負った盾を構える。

 すると盾からバリアのようなものが発せられる。


 ……まさかあれも!?


 土の弾丸がバリアに命中すると、バリアは土の弾丸を跳ね返した。


「なっ!? ヤバ!? ぐあ!!!」


 竜也は跳ね返ってきた弾丸を避けようとするが自分の弱点をついた攻撃を躱しきることはできない。


 ……くっ

 ……なんだよあれ


 竜也は把握の眼で今度は女の持つ盾を視る。


 ……女神の鏡

 あらゆるものを跳ね返す盾……

 まだそんなチート装備持ってたのか……


 竜也は相手の装備を見落としていたことに怒りを感じる。


 俺は馬鹿か!

 なんで相手を完全に把握しようとしなかったんだ!

 ……まだまだ闘いに対しての考えが甘いな


 竜也は自分を責めつつも把握の眼で女を今度は見落としがないように視る。

 どうやら他に特筆すべきものはないようだ。


 ……とはいえどうする?

 間合いの存在しない武器に攻撃を全て跳ね返す盾……

 不意を突こうにもこちらの行動は予知される……

 考えろ!

 早く街に戻らないと!


 竜也は相手の強さに辟易し、さらに小さな魔族のタイムリミットが近いことに焦る。


「もういいだろう。貴様に私を倒すことはできない。早くその魔族を渡せ」

「……嫌だね」

「わからぬな。何故それ程傷付きながらそいつを助ける? 貴様には関係ないことだろう」

「……さあな。俺だってわかんねえよ。ただこの子を助けたいと思ったんだ。助けるって決めたんだ。……1度決めたことをやり通すのってかっこいいだろ?」

「……くだらぬ。そんなことで私と、転生者と闘うなど。所詮貴様も同じということか」

「……?」

「貴様も覚悟はできているようだな。……ならば気は引けるが私もそれに応えよう。貴様を……本気で……斬る」


 女は今までも鋭い眼光をしていたが、さらにそこに竜也に対する明確な殺意が宿った。

 竜也はそれにたじろいだがすぐに闘いに移る。


「やつを拘束しろ!」

「……同じ手を」


 竜也は先ほどと同じように命令を下す。

 女はそれに対応するべく周囲に警戒した。

 しかし今度は女の足元から土の触手が現れる。


「……むっ」


 女は若干反応が遅れたが剣を少し動かしただけで土の触手は切り崩された。

 そしてその間に竜也の命令により横から襲いかかる巨大な土のハンマーに盾を構える。

 ハンマーを盾で受けると衝撃は全てハンマーの方に跳ね返り、それに耐えきれず土のハンマーは砕け散った。


 ……やっぱり物理も跳ね返すか!

 それに剣もあの程度の動きで斬撃になるのか!

 ……だけど見逃さなかったぞ!

 こいつの恩恵ギフトの欠点!


「はあ!」

「あぶね!?」


 女は剣を振るい竜也に斬撃を飛ばす。

 今度はそれを把握していた竜也はギリギリ躱すことができた。


「!? やはり斬撃の軌道を読めるか」

「弾丸のように浮き上がれ!」


 女の足元から土の弾丸が放たれる。


「……舐めるな」


 女はその無数の弾丸を目にも留まらぬ速さで躱す。

 そして躱す動きの中でも竜也へと斬撃を飛ばす。


「マジか!? くっ! ってぇ!」


 女は無数の弾丸を避けながら竜也へと斬撃を飛ばし続ける。

 竜也も斬撃をすんでのところで躱し続けるが何度かかすり、傷を増やしていく。


 くそっ!!

 あの弾丸を躱すこと自体おかしいのに、それに加えて攻撃までしてくるなんて!!

 闘いに慣れてるなんてレベルじゃねえぞ!!


 しばらくの間その攻防が繰り広げられたが、遂に弾丸が止まった。


「はあ……はあ……」

「ようやく止めたか。当然だ。ただ貴様の傷を増やすだけだからな。それとも私が先に音を上げると思ったか?」


 竜也は体に多くの傷を刻まれ、血をかなり流し息を切らしていた。

 一方、女は全く息は乱れていない。


 ……バケモノかよ、この女

 ……今までどんな闘いくぐり抜けてきやがった


 竜也は相手の無尽蔵の体力に苦笑いを浮かべる。


 ……だけど、やはりそうか

 俺の予想は間違っていないみたいだ

 こいつの恩恵ギフトの欠点……


 竜也は勝ち筋が見えたが全く安心できていなかった。


 ……これは賭けだ

 ダメなら別の方法も考えなきゃいかないが……


 竜也は倒れている小さな魔族を見た。


 ……どちらにせよ時間がない!!

 ……間に合ってくれ!!

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