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転生者殺しの転生者  作者: com
1章 ~旅立ち~
10/18

お父さん

 

 次の日、竜也はルナについていくことをガライとオリガに伝えた。

 ガライは大いに喜び、オリガは素直に喜ぶことはなかったが内心はとても嬉しかった。

 竜也たちはルナが完全に回復してから旅立つことを決め、それまではその準備をすることにした。


「……えっと、これでいいんですよね?」

「……あぁ! 正解だ! 竜也殿は物覚えがいいな!!」


 竜也はガライからこの世界の文字を教わっていた。

 ゴドス文字はどうやらウィゾンでは共通の文字であるようで、覚えておけば何かと便利だと思ったからだ。


「はああああああ!!!」

「!? いてっ!!」


 オリガからは戦闘技術を学んでいた。

 自身の恩恵ギフトだけに頼っていてもこの先の転生者との闘いは乗り切ることができないと思ったからだ。

 体術、剣術などを実戦形式で教わっていた。


「いてて……。少しは手加減しろよ」

「ご、ごめん……。ってなんで私が謝るんだ!! あんたが弱いだけだろ!!」


 さすがに人間の竜也とオーガのオリガとでは身体能力に差がありすぎたが、それでも竜也は目覚しい速度で成長し、多少ではあるがオリガへと近づいていた。


「……これはネリブの実。毒があって食べられない」

「そうなのか」


 そしてルナからはウィゾンの色々なことについて学んだ。

 この世界の物や地理など、ルナが知っている様々なことを教わった。


 ヒョイッ


「……もぐもぐ」

「え!? お、おい!」

「……嘘。……実は甘くておいしい」

「……」


 何度もからかわれながら。


「すまねえ、リュウヤさん。この木運んでくれるか?」

「わかりました。……村まで行くんだ」


 その合間には支配の眼を使い村の復旧作業を手伝っていた。

 竜也はあまり村の魔族たちには心を開こうとしなかったが、ルナたちと距離を縮めたこともあり、少しずつではあるが徐々に馴染んでいった。

 そして数日ほど経ち、ルナはすっかり回復していた。


「……いよいよ、明日出発するんだな」

「はい」


 出発前日の夜、ガライと竜也は2人で話していた。

 ルナとオリガは既に一緒に眠っていた。


「……この家も……寂しくなるな」

「……あの、ガライさんは本当にいいんですか?」

「ん? 何がだ?」

「2人が旅立ってしまうこと。それに転生者と一緒に……ですよ? 不安じゃないんですか?」

「……まあ、不安じゃないと言えば嘘になるな。でも心配はしてねえ。俺が信じた竜也殿がついてるからな」

「……」

「それにな、娘ってのはいつかは家を出ていくもんだ。少し早い気もするが。それでも胸張って送り出すのが親ってもんよ」

「……」

「俺はもう2人を竜也殿に託したんだ。覚悟は決まってる。……2人を頼みます、竜也殿」

「……はい。任せてください」


 ガライの思いを竜也は受け止めた。


「…………1つ、心残りはあるがな」















 -------------















 次の日の朝、竜也たちはミツルたちが乗ってきたクルーザーへと向かった。

 竜也たちを見送るため村の魔族たちが集まっていた。


「いよいよだな! リュウヤさん!」

「元気でなああ!! オリガあああ!! ルナちゃーーーん!!」

「2人に何かあったら承知しないからな!!」

「くそぉ…。ルナちゃんだけじゃなくオリガまでつれていくなんて……」

「爆ぜろ!! リュウヤ!!」

「……なんか変な声も混ざってるような」


 魔族たちの激励の言葉(?)に竜也は嬉しく思った。

 前までの竜也ならこのことを嬉しくは思わなかっただろう。

 しかし少しの間ではあったが、竜也は魔族たちと楽しく過ごしたことで心を開き、大切に思うようになっていた。

 大切な人たちからの言葉を素直に喜ぶことができるようになっていた。


「じゃあ、行ってくるな。親父」

「ああ。元気でやるんだぞ」

「……行ってきます。……ガライさん」

「……ルナも元気でな」


 ……結局ルナはガライさんを父親とは呼ばなかったな


 竜也は前日ガライと話していたことを思い出した。



『……ルナはな、俺を父と呼んでくれなくてな。やはりどこか遠慮していたんだろう。……心残りはそれだけだな』



 ……


 竜也は寂しそうに3人を見ていた。

 そしてクルーザーを動かす準備をした。


 燃料も入ってるし、いざとなったら俺の恩恵ギフトでなんとでもなるだろ

 ……よし


 準備が整うと竜也は2人をクルーザーに乗せ、出発することにした。


「では、そろそろ出発します」

「……ああ、わかった」

「うおおおお!! 3人とも達者でなああ!!」

「頑張ってこおおおおおい!!」

「いつでも帰ってこいよおおお!!」

「……行こうか」

「……ああ」

「……」


 オリガとルナは俯いたままだった。

 皆の顔を見るのが辛くなったのだろう。

 竜也はそれを察してすぐに出ることにした。

 エンジンをかけ、船を動かす。

 船は徐々に島を離れていく。

 皆の声も離れていく。

 遂にこの島ともお別れだ。


 ガライは突如走り出した。

 無我夢中で走り、海に入ってもなお体を進め、少しでも船に近づこうとした。

 そして涙を流しながら大声で叫んだ。


「オリガああ!! ルナああ!! おめえらは俺の自慢の娘だあああ!! 愛してるぞおおおお!!!」


 その声にオリガもルナも涙がとめどなく溢れた。

 そして立ち上がり、号泣しながら島の方へと顔を向ける。


「行ってくるよおおお!! 親父いいいい!!」

「……」


 手を大きく振りながら叫び返すオリガに続き、ルナも遅れて叫ぶ。


「……私も、私も!! 大好きだよお!! ……お父さああああああん!!!」


 竜也たちは家族と別れを告げ、旅立った。

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