好きな人。
ピピピピピピ♪
『んんっ〜』
ピピピピピピピピピピピピ♪
『うわぁ!もう、うるさいなぁ。』
…正直、朝は弱い。
1回の目覚ましなんかじゃ、当然起きない。
今日は学校がお休みだったため、雪乃と遊びに行く約束をしていた。
雪乃に好きな人ができたと言われても、〝誰か〟は教えてもらえていなかったのだ。いや、怖くて聞けなかった。
でも、やっぱり気になって、今日聞くことにした。
待ち合わせ場所に10分遅れで到着したあたしは、もちろん雪乃に怒られた。
でも、あたしが何度も謝ると笑いながら許してくれた。
あたしたちは、早速公園へ行き、ブランコに乗りながら〝恋バナ〟を始めた。
話題はもちろん、雪乃の好きな人についてだった。
…
『雪乃の好きな人って誰なの?』
あたしは覚悟を決めて、雪乃に聞いた。
『…えっ!?』
あまりに突然だったため、雪乃は物凄く驚いていた。
でも、すぐに呼吸を整え話し始めた。
『うちの好きな人は…』
心臓の鼓動が速くなるのを感じる。
うっっ。どうかアイツの名前でありませんように。
…
『…んじ』
…え?あたしが予想していた名前とは違う名前。
緊張のあまり、よく聞き取れなかったが、そんなの関係ない。
確かに雪乃は、アイツとは違う名前を口にした。
雪乃の方を見ると、顔を真っ赤にしていた。
あたしは、その場の沈黙を壊すように
『そ、そうなんだぁ!』
とあえて元気に言ってみた。
すると、雪乃は
『琴音は?琴音は…好きな人いないの?』
と聞いてきた。
…あたしの好きな人?
今までは、聞かれても心を許した数人にしか言っていなかったこの話題。
雪乃には伝えられる気がした。
あたしは、顔を赤く染めながら、
『渉だよ。』
…そう呟いた。