【第二十一話】「丘の下に見える市街地」
ルリアがラチッタの一員として一緒に旅をするようになって、一週間が経過した。いくつかの街を周り、そのたびにラチッタの仕事の依頼は増えてきていた。
晴天の草原。魔法で念入りにマジックの道具の補修をしているルリアを遠巻きに眺めるメンバーは、穏やかに話していた。
「最初は魔女と一緒に旅とか正直ちょっと恐かったけどさ、なんか普通の人間と変わらないよな」
「いやいや、むしろ一生懸命さは人間以上。仕事マジメだし」
「しかしなんでニューラ市に行きたがってるのかね、あの子」
「あそこ栄えてるし、なんか用でもあるんじゃね」
「まぁそのへんはどうでも良いか。使える道具が増えて仕事も増えたし」
しみじみと言う。
「ああ、そうだな。やっと俺たち、ずっとその日暮らしだったから忘れかけてたけどさ、本来やりたかったことってこういうことなんだなって思い出したよ。俺はみんなの笑顔の中心になりたかったから、親の反対押し切ってここに入ったんだって。ずっと忘れてたけど、思い出した」
「そうだな、俺もだ」
柔らかなそよ風が吹く。
***
翌日。
馬車に揺られた一行はいよいよニューラ市へと入った。
丘の下に見える市街地は、信じられないほどの人々がごった返し、活気ある商店街に全員の目が釘付けとなった。
「宿屋はこっちよ」
そうレヴェカが案内し、無事到着する。
***
ルリアはみんなと一緒に荷物の積み卸しをしていると、お頭に肩を叩かれた。
「?」
「お前はやらなくていいぞ」とお頭。
「え……」
ルリアは数秒考え込んだ後、焦るように早口で話し出す。
「えっと、すみません。私なんかヘマしましたか。これからは気をつけるんで許してください!」
レヴェカが横から「違う違う」と笑う。
「?」
「ルリアさぁ、ずっとニューラに来たがってたでしょ?」
「……はい」
「だからここにいる間はあなたは休暇。宿屋はもちろん私たちと一緒に取ってあるけど、昼間はやりたいことしてていいから」
「いいんですか!? ……でもみんなは忙しいのに私ばっかり……」
「いいのよ。だって人一倍働いてくれたんだもの。それに今忙しく仕事ができてるのはあなたのお陰だし」
大男も言う。
「まぁのんびりしてこいよ」
ルリアは目を輝かせた。
そして、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます!!」
***
持ち物を小さな鞄だけにしたルリアは早速、意気揚々と街の中を歩くことにする。
噴水のある中央広場は、買い物帰りの人や待ち合わせの人など、多くの人で賑わっていた。
その隅に大きな地図を発見し、早速ミヤが以前教えてくれた図書館の場所を確認することにする。




