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梅雨の中日か、今朝はスッキリ晴れて清々しい7月上旬である。

猫の風太は朝はだいたい8時ごろに起きる。

本当はもっと早くに目が覚めているのだが、恭介がそれくらいの時間にならないと起きないのでしかたなく一緒に布団に入っているのだ。

8時を過ぎると恭介が起き出し、朝食の準備をする。

風太の大好きな魚が出ることもあれば、トーストと卵焼きの日もある。

本当は毎日魚を食べたい風太だが、恭介を困らせたくないので我慢している。


今朝は昨夜の残りのシチューとパン、トマトとキュウリのサラダだった。

キュウリがあまり好きでない風太はトマトだけを食べた。

朝は必ず一杯のコーヒーから始まる恭介は、今朝もゆっくり味わうように黒い液体を流し込んでいる。

猫舌の風太は熱い飲み物は苦手で、いつも大抵水か牛乳だ。


「久しぶりに晴れたなぁ。今日は布団でも干すか」

「おふとん?」

「ああ、布団を干すとふかふかになるぞ」

「ふかふか!ほっとけーき!!」

「はは、確かにホットケーキもふかふかだな」

「ふうたほっとけーきすきなの」

「そうか」


風太の目がらんらんと輝く。

ああ、これは後で焼いておやつに出してやらないとだめだな。

食べ物のことになると凄まじい執着を見せる風太は、はやり猫の習性が強いのかもしれない。


「今日のおやつはホットケーキだな」

「やったぁ~!」


ちゃぶ台の周りを飛び跳ねながら回る風太を、恭介は愛おしそうに眺める。

やはり戸建に住んで正解だと、こういう時しみじみ思うのだ。

マンション住まいだと下から苦情が来るに違いない。

だけどこうして喜びを体中で表現する愛らしい風太を、うるさいから止めなさいと叱る気持ちにはどうしたってなれない。

思う存分飛び跳ねさせてやりたいと、風太に関してはつい甘くなってしまう恭介だ。


「さてと、もう食べ終わったな。片付けるぞ」

「あ、ふうたがする!」


いそいそと食卓の皿を片付けようとする風太に、思わず笑みがこぼれる。

ここ最近の風太は、やたらとお手伝いをしたがるのだ。

おそらくテレビか何かの影響なのだろう。

おうちの手伝いをしましょうとかなんとか、そういうのに風太はすぐに影響されるのだ。


「ふうた、いいこ?」


小首を傾げながら見上げてくる風太の柔らかな髪を、くしゃくしゃと撫でてやる。


「ああ、いい子だ」


目を細めて嬉しそうに笑う風太はやっぱり可愛い。

一緒に洗い物をする。

シンクに届かない風太のために、ちょっとした台を作ってやった。

板を釘で打ち付けただけの簡単なものだが、それにちょこんと乗って洗い物をする風太の後姿をカメラに収めてはにやついてしまう。

揺れる尻尾が可愛らしい。

ご機嫌なとき、風太の長いふわふわの尻尾がゆっくりと揺れるのだ。


「さて、じゃあ布団を干そうか」

「おふとん!」


敷布団と掛布団を庭の物干しに干す。

物干しが高い場所にあるため風太の背では届かないのだが、手伝いたそうにしている風太に無理とは言えず、抱え上げて布団を触らせる。

既に恭介が干した布団を風太が両手でぽんぽんと触るだけなのだが、それでも手伝った気になるらしい。

満足そうに微笑む風太の頭を撫でてやると、さらに笑みが深くなった。


「そろそろタオルケットだけでもいいかもなぁ」


梅雨時期は多少気温が下がることもあるため、まだ薄手の掛布団で寝ている恭介たちだが、さすがに今日みたいな日は扇風機をかけないと日中はかなり辛いだろう。

風太は猫だからか、あまり冷房を好まない。

よほど暑い日は別として、なるだけ自然の風と扇風機で乗り切るようにしている。

もっとも、この家は風通しがいいおかげでマンションと比べるとかなり涼しいのだが。


「まあでも、そろそろ開けっ放しにしとくとヤバい時期だからな」

「やばい?」

「ん?ああ、まあ・・・」

「やばいの?」


そう、暑くなると外から色んなものが飛んで入ってくるのだ。

都会育ちの恭介は虫が苦手だ。

カナブンやバッタなど、猫の風太が喜ぶような虫たちは恭介にとって百害あって一利なしなのである。

だが、蚊取り線香を焚いても大丈夫なのか。

猫や小動物を飼っている家では、殺虫剤などはよほど気を付けないとまずいことになる。

風太は人間の姿かたちを取ってはいるものの、元はといえば猫なのだ。

蚊取り線香くらいなら大丈夫かもと思いつつ、不安でまだ一度も使っていない。


「ふうた、ほっとけーきたべたいなぁ・・・」


恭介の思考を遮るかのように、風太が呟いた。

居間の柱時計を見やるとまだ11時にもなっていない。


「まだお昼前じゃないか」

「でもお・・・」

「ホットケーキはおやつに出してやるから、それまで我慢しなさい」

「おやつ・・・」

「そう、おやつ食べるだろ?」

「ふうた、いまたべたい」

「今食べたら昼飯が入らなくなっちゃうぞ」

「ううーーー」


ピンクの唇を突き出して不満そうに唸る風太に、つい苦笑いが漏れる。

ふかふかの布団からホットケーキをイメージしてしまい、それが頭から離れないのだろう。

だったら、今日はランチを外で食べてはどうだろうか。

最近近所にできた洒落たカフェレストランで、確かパンケーキを出していたはずだ。

猫耳キャップを被らせて大きめのベストで尻尾を隠してしまえば、外に出ても大丈夫だろう。

風太も慣れっこになったのか、そとでは帽子を取らないという言いつけをきっちり守るようになったし。


「じゃあ風太、今日はお外でごはんにしよう。ホットケーキもそこで食べよう」

「ほんと?」

「ああ、美味しいホットケーキが食べられるぞ」

「うわぁ~~~いっ」


喜びにぴょんぴょん飛び跳ねる風太を縁側で眺める。

今日も良い日になりそうだ。




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