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遅くなりましたが、風太を更新しました~(^ ^;)
ちょっと短くてすいません。
連休明けの五月。
今日もみごとな五月晴れだ。
早朝5時には起きて支度をし、風太を連れて浦安にある超有名なアミューズメント施設へと向かう。
なんと今日は、車でお出かけなのだ。
さすがに風太を長時間電車に乗せるには不安がある。
そこで、レンタカーを借りることにした恭介である。
「車の運転は久しぶりだなぁ」
「きょうすけ、くるますき?」
「ん?ああ、まあそうだな。学生時代はよく運転したんだがな。実家住まいだったからよく親の車を借りていた」
「じっか・・・?」
「俺の父さんと母さんの家だよ」
「おとうさん・・・おかあさん・・・」
ふと、風太が何やら遠くを見やるような目をする。
もしかすると親のことを考えているのかもしれない。
そういえば、風太は捨て猫だったのだ。
まだ雪の残るバレンタインデーの日、段ボール箱の中に入れられた風太がみゃあみゃあと鳴いていた。
ひょっとしたら親猫から引き離されて捨てられたのかもしれない。
「風太は車に乗るのは初めてだな?どうだ、乗り心地は」
もしも風太が捨てられる前のことを覚えていたとしたらあまり楽しい話題ではないだろうと、慌てて話の矛先を変える。
風太には嫌なことを思い出させたくないのだ。
せっかく楽しみにしていた遊園地である。
それを台無しにはしたくない。
「んっとね・・・ふうた、くるますき。とってもらくちんなの」
「そうか」
「きょうすけは?」
「俺は、そうだな。車は嫌いじゃないな。今日みたいに平日で道が空いてるとすいすい進むし」
「すいすい」
「そう、すいすいだ」
すいすいという言葉の響きが面白かったのか、風太が「すいすい」と何度も口に出しては繰り返している。
同時にふわふわの尻尾が揺れる。
ご機嫌な証拠だ。
風太が幸せなら、恭介はもう何も言うことはないのだ。
天気も良く渋滞もない。
楽しい一日になるに違いない。
ゴールデンウィーク明けの平日は、さすがにどこも空いている。
都内から浦安までそうはかからないだろうと踏んだ恭介の予想は、まさにドンピシャだった。
6時過ぎに家を出たのだが、この分だと順調に8時ごろには到着しそうだ。
午前中に目ぼしいアトラクションを回り、昼はレストランで食事をする。
午後もまたアトラクションを回り、最後に土産物屋に寄ってから早い時間に園を後にする。
これが恭介の立てた計画である。
「うん、我ながら完璧だな」
予定通り開演時刻ちょうどくらいに到着する。
駐車場もさほど混み合うことなく、希望の場所に停めることができた。
風太の手を繋ぎ、入場券を買いに行く。
今日の風太の装いは熊のキャラクターのイラストが入った白いTシャツにスカイブルーのパーカー、デニムのサロペットにパーカーと同じ色のスニーカーだ。
動き回ると暑いかもしれないと、サロペットは膝丈のものにした。
膝小僧を丸出しにするのは心もとないので、白いハイソックスを履かせている。
もちろん、ニット帽も忘れていない。
クリーム色のキャップは猫耳型で、風太のふわふわの耳がうまくフィットするようになっている。
興奮状態の風太は少しでも油断するとつないだ手を振りほどいて走り出してしまいそうな勢いである。
嬉しくてたまらないのだろう、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら歩いている。
絶対に勝手に一人で走り出したりしないこと、恭介の言うことをちゃんと聞くこと、知らない人が話しかけてきてもついて行ったりしないこと。
出かける前も、また途中の車の中でも散々言い聞かせてあるが、気持ちが昂るとつい暴走してしまうのが風太である。
子供だし、元は猫だからしょうがないのかもしれないが、不安でたまらない恭介なのだ。
「いいね、風太。勝手に一人でどこかに行ったり、走り出したりしちゃダメだぞ」
「うん」
大きな瞳をきらきらさせながら、風太は初めて見る遊園地の光景に心を躍らせている。
こんなに嬉しそうにしているのを見ると、やはり連れてきて正解だったと思う恭介だ。
「さてと、じゃあまずは・・・」
「ぞうさん!ふうた、ぞうさんにのりたい!!」
「ああそうだった、ダンボだな」
「ぞうさんにのるの~」
先を急ごうとぐいぐい恭介の手を引っ張る風太に引きずられるようにしながら歩く。
一週間ほど前からどのアトラクションをせめるか、二人で計画を立てていた。
ローラーコースター系は、まだ小さい風太を乗せるには不安がある。
だがこの空飛ぶダンボは二人で乗れる上に、3歳児以上を対象にしているから安心だ。
平日の早朝だからそれほど混んではいないだろうという大方の予想を裏切って、園内はそれなりの人出である。
さすがは日本一のアミューズメントパークだ。
若者のグループ連れやカップルも多い。
家族連れの姿があまりないのは、連休明けで休める親は少ないからだろう。
幸いお目当てのダンボはそれほど並んでいなかったため、比較的すぐに恭介たちに順番が回ってきた。
「ほれ、風太。ちゃんと座れよ」
「うん!」
座席はちょうど大人が二人座れるくらいのスペースになっている。
恭介たちのほかには、カップルや女性同士など大人が多い。
平日だから子供は学校に行ってるのだろう。
「あ、ねずみさん!」
「んん?」
「あそこ、ねずみさんがいる!」
風太の指さす方向は回転するダンボの乗り物の中心で、そこにはねずみが指揮棒を持って立っている。
どうやら、あのねずみの指揮によってこのダンボの乗り物が回るという設定のようだ。
「ねずみさん、いっぱいいるね」
「そうだな。でもあのねずみは有名なねずみとはまた別のやつだぞ」
「そうなの?」
「ああ、有名なやつは後でショーをやるから、見に行こう」
「うん!」
おしゃべりをしているうちに、そろそろとダンボの乗り物が動き始める。
しばらくすると空中に浮いて、ゆっくりと旋回し始めた。
「うわぁ~~~」
目をくりくりさせながら、風太が下を見下ろしている。
落ち着きなくキョロキョロとあたりを見回し、すごいね、高いねと嬉しげに目を細める姿に、恭介の心は温かくなる。
やはり連れてきてよかった。
毎日家の中に閉じ込めてばかりで、風太には申し訳ないと思っていたのだ。
たまにはこうして、子供らしい遊びを経験させてやりたい。
もっともっといろんなものを見せてやりたい。
「ふを~~~~~」
くるくると空中を旋回するダンボに乗った二人の頬を、爽やかな五月の風が撫でていく。
可愛らしい声を上げて喜ぶ風太の横で、恭介も「気持ちいいな~」なんて思わず声を上げる。
「楽しいか、風太」
「たのしい~~~」
「よかったな」
「きょうすけは?」
「俺も楽しいよ。おまえが楽しければ俺はいつだって楽しいんだ」
今日一日、思う存分風太を遊ばせてやろうと思う恭介だった。




