第8話「チェイス・ザ・ロサンゼルス」後編
2014年8月17日
アメリカ合衆国
カリフォルニア州ロサンゼルス
「ん……」
私はフライパンで何かを焼いているジューという音といい匂いで目が覚めた。その少し後で、目覚ましを設定していた時間にスマートフォンが鳴ったから、私はすぐにそれを止めた。昨夜は確か、アキヒコと一緒に日本史の勉強をしていて……ああ、途中で寝ちゃったのか。ちぇっ、しくったわ。計画では勉強中に色仕掛けでオトすつもりだったのに。ううん!まだチャンスはある!頑張るのよ、ジェニファー!
『ジェニファー?起きたかい?』
はっ!アキヒコが来ちゃった。どうしよう、まだ寝起きで髪もボサボサ!
「お、おはよう!今起きたとこ!」
『オーケー。もうすぐ朝食が出来るから、準備が出来たら来てくれ』
アキヒコの足音が遠ざかる。私は急いで寝癖を直し、そのまま寝ちゃって少しシワになった服も調えた。よし、これでいい。ベッドの淵に置いてあったスマホを取ると、さっきは気付かなかったけどメッセージと着信が入っていた。全部グリフからだわ。着信は20件、メッセージも30分おきに2時まで送られていた。
―――はぁ。昨日は友達の家に泊まるからって言っておいたのに、何これ?しつこすぎ。好きだったときはこれくらい何とも思わなかった、いいえ。むしろ心配してくれてるって思って嬉しかったけど、そうじゃないとここまでしつこく思うのね。
私はメッセージアプリを起動させ、グリフにメッセージを返した。たった一言だけ。
「よし!」
私は荷物をまとめて部屋を出た。
同時刻
ニードルスの倉庫
倉庫内では男たちが慌しく動いていた。この倉庫を引き払うために片付けをしていたのだ。荷物をバンに積み込み、リサーチした書類などはドラム缶に火をくべて焼却。リーダであるニードルスもパソコン内の証拠を消す作業をしていた。そのときである。彼のスマートフォンから「ギャー!」と女性の悲鳴が聞こえた。これはジェニファーからのメッセージを受信したときの着ボイスであった。趣味悪すぎである。ニードルスはジーンズのポケットからスマホを取り出し、メッセージを確認した。そこにはただ一言―――
『Good-by』
「な、なんだと……!?」
ニードルスはスマホを操作してジェニファーに電話をかける。
『ハロー?』
「や、やぁジェニファー、おはよう。今メッセージを見たんだけど、何かのジョークかい?」
ニードルスはそれまでの荒っぽい口調ではなく、ジェニファーといるときのいい人ぶった口調に切り替わる。
『いいえ、グリフ。ジョークじゃないわ。本気よ』
「……え?で、でも一体なんだって……」
『いろいろ考えたんだけど、あなたと一緒にいても将来が見えないの。もう終わりにしましょう』
「い、いや、何を言っているんだい?君は僕のことを応援してくれるって言っていたじゃないか」
『本当にごめんなさい。それじゃあ』
「ちょっ……!ジェニファー?もしもし?もしもし!?」
ニードルスの問いにジェニファーが答えることはなかった。電話を切ったからである。
「あ、あのアマ!!調子に乗りやがって!!」
ニードルスは怒りを露にし、スマホを床に叩き付けた。コンクリートに叩き付けられたスマホが派手な音を立ててバラバラになる。元々証拠隠滅のために処分する予定だったので問題はないが。
「こっちが下手に出りゃいい気になりやがって!!ただ殺すだけじゃ足らねぇ!!犯して犯して犯しまくって、絶望のドン底に叩き落してから殺してやる!!クソアマがぁッ!!!!」
「グリフ!落ち着いてください!リーダーのあんたが冷静にならなきゃ計画も進まない!」
「うるせぇッ!」
激怒ニードルスは暴れ、手が血まみれになるのも構わずに目に付くものを手当たり次第に破壊した。暴れるニードルスにそれを宥める仲間たち。こんなのがリーダーで、よくここまでやってこれたものだ。
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再び純の家
私はアキヒコが作ってくれた朝食に舌鼓を打っていた。朝食はウメボシと呼ばれる果実の漬物の入った、ライスに和風スープをかけた「オチャヅケ」と、塩焼きのサーモン。それとキューカンバーの塩漬け。私はそれらをスプーンとフォークで食べたけど、アキヒコはさすが日本人ね。器用にチョップスティックで食べていた。実は私、日本史を勉強して日本が好きなくせに、未だにこれだけは使えない。どうして日本人に限らず、極東に住む人はみんなコレを普通に使えるの?それだけでも尊敬するわ。そんな話をアキヒコにしたら―――
「いや、俺だって最初はなかなか使えなかったよ。こればっかりはひたすら練習だね。1回使えるようになると、逆にスプーンやフォークの方が面倒なくらい」
「うーん。頑張る!」
「うん、その意気その意気。あ、ジェニファー。今日は何か予定ある?」
「今日は土曜日だし、特に予定はないわ」
「じゃあ今日は俺の買い物に付き合ってよ。まだこっちに来て1週間しか経ってないから、いろいろお薦めの店とか教えてよ」
え?もしかしてこれってデートのお誘い?断る理由がない!
「うん!行く!」
私は急いで出かけるためにオチャヅケを急いで食べたが、急ぎすぎたせいでむせちゃった。物凄く恥ずかしかったけど、アキヒコはそれを見て笑ってくれたからいっか。
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昼過ぎ
「おお……これがサンタモニカ・ピア」
ジェニファーに街を案内されていた純は、ロサンゼルス郡のリゾート地であるサンタモニカ市で最も有名なサンタモニカピアへ来ていた。かなり巨大な桟橋で、レストランに露店、小規模ながら観覧車やジェットコースターなどがある遊園地がこの桟橋にある。
「いやぁ、アメリカって感じがするね」
「何それ?」
純が桟橋から海を眺めていると、ジェニファーが笑いながら尋ねる。
「いや、ここは映画とかゲームに出てきたからね。自分がそこにいると、ここはアメリカなんだな、って思って。しかし、木の桟橋に遊園地って凄いね」
「ふふ。昨日のアキヒコじゃないけど、確かに知らない人から言われるとそう思うわ。よく建築法に引っかからないと思うわ」
「よし!昼も食べたし、ここの写真も撮りまくった。ちょっと街の中を歩こうよ」
「そうね。ところでアキヒコ。その箱は何?工具箱みたいだけど」
そう言ってジェニファーは純が右手に持っていた平たい箱を指す。
「ああ、これ?さっき君がトイレに言ってる間に買ったんだ。なかなか良さそうな工具だったし、安かったんでつい買っちゃった」
「へぇ。でも何に使うの?」
「車の整備。趣味で車をいじってるからさ」
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「いいか?あいつがジェニファーを奪った男だ。あの2人を拉致して、ジェニファーに口座番号を言わせるんだ。何としても」
メインストリートでジェニファーを見つけたニードルス。報告どおり、嬉しそうに男の腕にしがみついてデートを楽しんでいるようだ。男―――純もこっちに気付く気配は全くない。それをニードルスはバンの中で睨んでいた。
「あの男はどうするんだ?」
「あいつも拉致して、ジェニファーの目の前で殺せ。ジャップだかチンクだか知らないが、俺たちの計画をブチ壊しやがって!」
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「アキヒコ。短期留学だから、あと半月で帰っちゃうんだよね?」
純はジェニファーに、大学の夏期休暇中に短期留学していると話していた。勿論アメリカの大学にも夏休みはある。というより、新学期が9月からなので、その関係で日本より長い。だが夏期休暇中でも大学では夏授業を行っているので、そこで勉強するために渡米してきた。という設定にしていた。当然、ジェニファーがこの夏授業を受講していたのも調査済み。
「ああ。でも向こうへ戻って少ししたら、必ずまた来るよ。それまで待っててくれるかい?」
「ええ!勿論よ!」
「あ。それとも1回日本へ来てみないかい?いろんな所へ連れて行ってあげるよ」
「アハ!それも楽しそう」
ジェニファーが純の腕に自分の腕を絡める。嬉しそうな表情のジェニファーに、純は少し難しい顔。
(マズったなぁ。こっちが思ってる以上に惚れられちまった。なんか騙してるみたいで罪悪感が……。いや、実際騙してるんだが……ん?)
異様な気配を感じ取った純は工具箱を持つ右手に力を入れた。
「……ジェニファー」
「ん?なぁに?」
「すまないがちょっと腕を放してくれ。でも、俺から絶対に離れるなよ」
「え?一体なに……」
次の瞬間、大型のバンが歩道に横付けし、後部座席から覆面を付けた男が3人ほど降りてきた。しかもその手にはハンドガンが握られている。だが純はそれに動じることなく、工具箱のチャージングハンドルを親指で引いた。すると工具箱は一瞬でサブマシンガンに早変わりする。
この銃の名はマグプルFMG-9。元はアレスというメーカーが1970年代に開発したものであるが、マグプル社がこの銃の「偽装して持ち歩ける」というコンセプトを受け継いで開発した銃である。
そのFMG-9を展開した純は素早く構え、男たちに向けてフルオートで発射。その銃声に周囲の人々は逃げ惑い、ジェニファーは頭を抱えてその場にしゃがみ込む。男たちを倒すと、純はジェニファーの手を引き、踵を返して走り出した。まだバンの中にいたお陰で銃撃を受けなかった男たちがそれを追う。そして1人の男が走りながら持っている銃を構えてトリガーを引いた。
「ギャアッ!」
悲鳴を上げたのは銃を撃った男だった。暴発したのだ。男はその場にしゃがみこみ、指の吹き飛んだ右手を押さえている。純はその男に振り返り、FMG-9を発射。右手を押さえていた男が倒れた。
(ケチってサタデーナイトスペシャルなんて使うからそうなるんだ、バカが)
サタデーナイトスペシャルとはいわゆる安価で低品質の小型拳銃のことで、ジャンクガンとも言われる。1960年代に、アメリカ国内でチンピラやマフィアのケンカなどで安物の銃を使用し、負傷者が続出。それが土曜の夜に集中していたので、医者が「土曜の夜は大混雑だ」と揶揄したことから、この名が付いたと言われている。その特徴は隠し持つのに適した小型拳銃で、大抵は聞いたこともないような中小企業が製造しており、いずれの銃も作りが雑で精度も品質も悪い。だが意外と需要が高く、犯罪者が「100ドル盗むのにその何倍もする銃を持っても意味がない」と購入したり、低所得者層が自衛用として購入するケースもある。銃の脅威が身近にあるアメリカだからこそ、こういった物も一定の需要があるのだろう。
ちなみに1981年に起こったロナルド・レーガン大統領暗殺未遂事件で、犯人のジョン・ヒンクリーが使用したリボルバーもサタデーナイトスペシャルの一種であった。
「アキヒコ!?あの人たちは一体何!?なんであなたまで銃を……」
「今は説明してる暇がない!黙って着いて来てくれ!」
「そんなことが出来るわけないでしょ!?一体なんなの!?」
「……狙われているのは君だ」
「えッ!?」
追っ手の銃撃を避けながらサンタモニカ・ピアの駐車場に着くと、純はジェニファーを助手席へ促し、車を発進させた。FMG-9の安全装置をかけ、折りたたんで再び工具箱状態にしてから後部座席に投げ、ホルスターからUSPコンパクトを抜いて運転する。
「ここ数年アメリカで騒がれている結婚詐欺事件。グリフ・ニードルスはその詐欺師だ」
「グリフが……?ウソでしょ?」
「本当だ。その証拠も……ぐッ!!」
突然純が顔をしかめて左の脇腹を押さえる。押さえた手を見ると、血が付着していた。
「ちッ!」
「アキヒコ!もしかして撃たれたの!?」
「ああ。でも掠めただけだ。皮膚を少し持って行かれただけで、見た目ほど酷くはない」
「でも、血が凄いわ。病院に……」
「そんなヒマはない。奴らはすぐに追いかけてくるはず……ほらな、おいでなすった!掴まってろ!」
純のSUVの前に、1台のバンが道を塞ぐように交差点から出てきた。先程のバンとは車種が違うがニードルスの仲間だろう。だが純はその手前の路地に入ってやり過ごす。路地から再び大通りに出て、海岸沿いの道路を走らせる。だがバン2台も純を追う。
「クソッ、しつこいな!ジェニファー、後ろのバッグを取ってくれ!」
「え!?ええ……」
ジェニファーがバッグを後部座席から取ると、純はそれを開けて中から黄色いマークの手榴弾を出すように指示した。
「手榴弾!?」
「大丈夫、ただの発煙手榴弾だ」
ジェニファーから発煙手榴弾を渡された純は車の窓を開け、ピンを抜いて安全レバーを解除。数秒後に発煙手榴弾から黄色い煙が出てくるが、純はまだ手を離さない。出てくる煙の量が少ないからだ。だがすぐに煙が勢いよく噴出したので、同時に純は手を離して発煙手榴弾を落とす。あっという間に煙が周囲を覆い、追走するニードルスたちのバンはブレーキをかけて停車した。その隙に純は交差点を右折して姿を消した。追跡を撒かれたニードルスはまたも悪態をついたが、パトカーの音を聞いてすぐに撤収した。
純とジェニファーの乗るSUVはそのままロサンゼルスから出た。
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5時間後
カリフォルニア州ヒドゥンバレー
ロサンゼルスから脱出した純とジェニファーは、追跡を撒くためにフリーウェイをひた走り、しばらく走ってからフリーウェイを降りて再びロサンゼルス方面へ走る。そしてサンタモニカ山地を抜け、山間部にある田舎町、ヒドゥンバレーへ。その町の中の一軒家のガレージに純は車を停めた頃には、既に日は暮れていた。周りは牧場ばかりで民家も少なく、人通りも殆どなかった。
「よし、着いた」
「……ここは?」
「俺の隠れ家だ。来るのは久しぶりだから埃っぽいかも知れないけど」
純が家に入って電気を着けると、僅かではあるが埃が舞っている。純がFMG-9をテーブルに置くと、更に埃が舞った。
「痛ッ……ジェニファー、ウォルマートで買った物の中に水が入ってるはずだから持って来てくれるか?車の中に置いて来ちまった」
純は棚から救急箱を取って椅子にドカっと座り、Tシャツを脱ぎ捨てた。そして撃たれた脇腹に手を当てる。純の言ったとおり銃弾は脇腹を掠めただけで内臓に損傷はない。だが掠めただけとはいえ銃で撃たれたのだ。痛いものは痛いし、出血も完全には止まっていない。
「アキヒコ。これでいい……って、その身体……!」
ガレージから戻ったジェニファーが見たのは上半身裸で撃たれたところを押さえる純。だがその上半身に刻まれた無数の傷跡に、ジェニファーは言葉を失った。
「ハハ。こんな稼業をやっていれば、イヤでもこんなカラダになるさ。水を……」
純はジェニファーから水を受け取ると、傷口にかけて乾いた血と裂けたTシャツの繊維を洗い流し、救急箱から消毒液を出して傷口にかける。「うぅッ!」と少しうめくが痛みを堪え、粉末状の止血剤を傷口に振り掛ける。最後にガーゼをテープ留めして応急処置完了。
「アキヒコ。あなたは一体……」
「本当は自分の正体は言いたくないんだが、状況が状況だから仕方ないな。俺はUCLAへの短期留学生じゃない。あの詐欺師連中を始末して君を保護するよう、君の父親から依頼を受けた殺し屋だ。あの連中が詐欺師だという証拠がなかったから、君に近付いて利用させてもらった」
「……証拠は?彼が、グリフが殺人犯だっていう証拠」
「もちろんあるさ」
純はジーンズのポケットからスマートフォンを取り出し、ボイスレコーダーアプリを再生した。
『ああ。アイツは今シャワーを浴びている。うまく行った。もう少しだ。後はあの女にうまいこと言って、金を下ろさせればいい。もう2、3日の辛抱だ』
『ですね。でも大丈夫っすかね?あの女の父親、ハリウッドでも有名なメイクアップ・アーティストでしょ?厄介なことになりませんかね?』
『問題ない。あのオヤジは俺とジェニファーのことを認めていない。駆け落ちでもしたことにして行方をくらませばいい。始末したって、いつもみたいに山奥に埋めれば行方不明で終わりだ』
「ちなみに喋っている相手は、ここ最近君をストーキングしていた髭を生やした東洋人の男だ。ワザと君にバレるように後を尾けて、君とニードルスが同棲するよう仕向けたんだ。勿論、君が両親には相談しないことを計算してだ」
純はバッグから写真を取り出し、ジェニファーに渡す。写真には純が言ったとおり、ニードルスと東洋人の男が街灯の下で話しているのが写っていた。更に音声は続く。
『しょうがない。明日だ。明日決行する。お前たちは車で待機して、俺が合図を出したら強盗を装って部屋に入ってくるんだ。それで金を下ろさせ、手に入れたら始末しろ。俺はその間にこの部屋を引き払う準備をする』
純はアプリを終了させ、スマートフォンをポケットにしまう。
「君を利用したことは本当にすまないと思っている。だがお陰でアイツらの悪事を―――」
「ハハ、そっか。また騙されちゃったんだね」
「え?」
写真を持つジェニファーの腕がだらりと下がり、その拍子に持っていた写真も落としてしまう。そして脱力してその場に座り込む。その顔は自虐的な笑みを浮かべていたが、目からは涙が溢れていた。
「私って本当、男運ないなぁ。今まで付き合った男はみんなダメ男ばっかりだったし、グリフに至っては私のお金欲しさに言い寄ってきたわけだし、やっといい男性に逢えたと思ったら、私を利用するために近付いてきた殺し屋さんだし……」
「騙して俺が言えることじゃないけど、あんたは美人で頭もいい。まだ若いんだし、きっといい男が現れるさ」
純が椅子から立ち上がり、床に座り込んですすり泣くジェニファーの頭を撫でる。
「本当にすまなかった」
「ッ!」
突然ジェニファーが純の手を払いのけ、突進してきた。咄嗟のことに純は反応できず、そのまま押し倒されてしまう。
「いデッ!何するんだ!?」
「そんなに優しくされたら、忘れることなんて出来ない。あなたと一緒になれなくてもいい。でもあなたを忘れたくない。だから今だけでいい。今夜だけの関係でいい。私を抱いて。過去の男たちやグリフのことを忘れさせて!お願い、アキヒコ……」
ジェニファーの涙が頬を伝って純の顔にポタポタと落ちる。
(本当に惚れっぽい人だな。たった2日しか経ってないのにここまで……。でも、やっぱり気持ちには答えられない)
「ゴメン、ジェニファー。それは出来ない」
「ッ!」
純は自分を押さえつけるジェニファーの手をどかして起き上がる。そして恥ずかしそうに人差し指で頬を掻きながらポツリと一言―――
「俺、本当に女性経験ないからさ。だから君が過去の男を忘れるほど満足させることなんてできないよ?」
「―――プッ!」
純の突然の告白に、ジェニファーは吹き出してしまった。そして大声で笑う。そんなジェニファーを見て、純は顔を真っ赤にする。
「なッ!そんなに笑うことないだろ!?」
「アハハハハ!ううん、ごめんなさい。映画とかの殺し屋さんて、クールに敵を倒して、クールに女の人を抱くじゃない?そんなイメージを持ってたから、なんかおかしくて……」
「あ~!言うんじゃなかった。もっとマシな言い訳が思いつけば……」
「ならアキヒコ。お姉さんが手取り足取り教えてあげましょうか?」
ジェニファーが四つんばいになって純に近づく。シャツの隙間から覗く谷間に目が釘付けになるが、理性で耐えて目を逸らす。
「い、いえ。遠慮しときます。ハジメテは好きな女の子とシタいんで……」
「フフ。ウブなのね。やっぱり殺し屋さんぽくない……」
「シッ!」
突然純が表情を一変させ、人差し指を立てる。まだジェニファーには聞こえていないが、車がこちらへ近付いていた。数は2台。車種は恐らくバン。
「ジェニファー、奴らが来た。地下室へ隠れるんだ」
「で、でもどうしてこの場所が……?」
「多分君のスマホをGPS検索したんだろう。こうなるだろうと思って放っておいたけど、見事に引っかかってくれたな」
「え?」
「俺が受けた依頼は、君の保護と奴らの抹殺だ。君を守って終わりじゃない」
そう言って純はTシャツを着て、バックサイドホルスターからスタームルガーと予備のマガジンを抜いた。
「これを持って地下室へ隠れるんだ。使い方は……」
純から差し出されたスタームルガーを受け取ると、ジェニファーは慣れた手つきでマガジンを抜いて残弾確認をし、再びマガジンを装填した。
「この銃なら、パパが担当してた映画の小道具で見たことがある。その時に少し触らせてもらったわ。実弾射撃も、少しだけ経験がある」
「さすが。でもそれは本物だから扱いには気を付けて。22口径で反動も少ないから、君でも扱えるはずだ。それとこれも」
純が次いで渡したのは先程の写真とフラッシュメモリー。
「この中にはさっきの会話の録音データが入ってる。地下室の奥を進んで行くと、山の反対側に出る。地下室に隠れて1時間以内に俺が迎えに来なかったら、そのデータを持って警察に行くんだ。いいね?心配するな。必ず奴らを仕留めて、君を実家に送って行くから」
「わかったわ。気をつけて、アキヒコ」
「ああ」
純がジェニファーを地下室に案内し、ドアを閉めようとしたその時だった。ジェニファーは閉まろうとするドアを足で止めて顔を出し、純にキスをした。気を使って唇ではなく、頬にである。
「おまじない。必ず迎えに来てね」
純の返事を聞かずに、自らドアを閉めて鍵をかけるジェニファー。突然のキスに頬をさすって呆然とする純だったが、すぐに我に返り、ニードルスたちと戦う準備を始めた。
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「おまじない。必ず迎えに来てね」
アキヒコが何か言おうとしてたけど、私はそれを無視してドアを閉めた。恥ずかしくなって、顔なんて見れたもんじゃないわ。でもすぐに足音がして、アキヒコは行っちゃった。
「はぁ」
私は暗い地下室で座り込んだ。床はコンクリート。ホットパンツを穿いてるから、太ももから体温が、徐々にコンクリートに奪われていくのがわかった。
「なんであんなこと言っちゃったんだろう」
私はさっきの自分の言葉を思い出していた。顔が真っ赤になるのが暗くてもわかる。だって熱いんだもん。慌ててトリガーを引かないよう、ピストルは床に置いた。
「もしアキヒコが抱いてくれたら、どうなってたのかな……って、タイミング的に途中でグリフたちが来て中途半端に終わってたかもね、フフ」
私が自嘲気味に笑っていたら、外から銃声が聞こえてきた。始まった―――
多分アキヒコが勝つんだろう。さっき見た、彼の体に無数に刻まれた傷跡。きっと彼はこんな、いえ、それ以上の修羅場を何度もくぐって来たんだろう。だからグリフたちなんて簡単に倒しちゃうはず。そして私を迎えに来て、パパの依頼どおり私を家まで送り届ける。それはいい。今回のことで1人暮らしはもうこりごり。でも―――
「うぅ……」
泣いちゃダメ。彼のことは忘れなきゃ。私と彼では生きる世界が違うもの。でも―――
「これで最後にするから、今だけは、泣いてもいい?」
私は声が漏れないように、シャツの裾を噛んで泣いた。
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「……」
純は隠れ家の屋根の上でニードルスたちを待ち伏せた。装備はフィラデルフィアで使用したMSR。それとアイアンサイトと兼ねた持ち手を外してダットサイトを取り付けたFMG-9とUSPコンパクト。更に夜間で今夜は新月。純は暗視ゴーグルを装着していた。
ここで少しダットサイトの解説を。今まで純が使用していたMP7A1、敵から奪ったVK-6、そして今純が使用しているFMG-9にはダットサイトが装着されていた。これは一言で言えば、形は小さなスコープである(スコープの形状をしていないタイプもあるが)。だがスコープのように倍率はないし、十字線もない。スイッチのつまみを回すとダットサイト内部に光源(LEDなど)が照射され、前方のレンズに投影される。この投影された光点を標的に合わせて狙う。では、ほとんどの銃器にはアイアンサイトが搭載されているのに何故、わざわざダットサイトを装着する必要があるのか。
アイアンサイトは銃の前方のフロントサイトと、後方のリアサイトからなる。これを指を使ってわかりやすく例えると、まず右手の指で丸を作り、目の前に持ってくる。左手は人差し指を立てて腕を伸ばす。右手で作った丸を覗き、左手の指を丸の中から見えるように配置する。これがアイアンサイトの原理である。
リアサイトを覗いてその穴越しにフロントサイトを見て、その直線上に標的を合わせる。対してダットサイトは、覗いて光点を標的に合わせるだけ。なのでより素早い照準が可能になるのだ。その差は僅かでしかないが、銃弾飛び交う戦場では、その僅かな一瞬が生死を分けることもある。なので現在、先進国の軍や警察がアサルトライフルやサブマシンガンを使用する際は、ほぼ全員がダットサイトやその発展型であるホログラフィックサイト(ホロサイト)を使用している。だがダットサイトの弱点として、光源を使用するためにバッテリーを必要とするのでバッテリーの寿命や、バッテリー不使用タイプも光源となるトリチウムに寿命がある。なので不測の事態に備え、脱着可能なバックアップ・アイアンサイトを装着しているおり、中にはダットサイトの邪魔にならないよう、折りたたみ式の物もある。
「……来たな」
光を増幅するナイトビジョンゴーグル特有の緑色に広がる視界の先にバンが見えた。数は2台。まっすぐこちらへ向かっている。
「戦闘開始」
純がMSRのトリガーを引くと、銃声が闇夜に響いて338ラプアマグナムが発射された。弾丸は1台目のバンのフロントガラスを貫通。そのまま直進してリアガラスも貫通。更に直進して後続のバンのドライバーの頭を吹き飛ばした。ドライバーを失ったバンはバランスを崩して横転。何回か転がってから停止した。
素早くボルトを操作して次弾を装填。次は先頭のバンを狙うが、後続がやられたからか、撃たれまいと右に左に蛇行している。
「その程度じゃ俺の弾は避けれねぇよ」
再び発射。銃弾はフロントグリルを貫いてエンジンに直撃。金属の塊であるエンジンを貫通することは出来なかったが、エンジンルーム内で兆弾。暴れまわった弾丸は最終的に真上へ飛び、運転手を直撃。兆弾で勢いを失いつつあった弾丸は運転手の臀部から体内へ侵入して背骨を粉砕し、喉の辺りで止まった。全身に伝わるショックのあまりに死亡したドライバーを失い、こちらのバンも暴れだした。だが助手席のニードルスがハンドルを操作し、なんとか止まることには成功した。
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「クソ、屋根からの狙撃だ!迂闊に外へ出ると殺られるぞ!」
(だがなんて腕だ。GSPが示す家まではあと300メートルはある。それをこんな暗闇で正確に撃ってくるなんて……あの東洋人、バケモノだ)
「よし。1人ずつだ。全員で援護射撃をするから1人ずつ車から降りて物陰に隠れるんだ。うわっ!」
また銃声。横転したバンから這い出る男たちを、純が撃っているのだ。銃声は5回。恐らく後続のバンに乗っていた6人は全員殺されただろう。ニードルスはそう推測した。そしてその推測は当たっていた。後続のバンの乗員は全滅していた。残りは5人。
「いいか。まずはお前からだ。準備しろ」
ニードルスの指示で、後部座席の男たちも各々の銃を準備する。ニードルスはホルスターから22口径のハンドガン、オリンピック・アームズ社のホウィットニー・ウルヴァリンを抜き、仲間たちも各々のサブマシンガンやショットガンに弾を込める。髭の東洋人はスライドファイア・ストックを装着したアサルトライフルを持っていた。
カリフォルニア州では法律で、フルオート射撃が可能な銃器を一般市民が所持することはできない。なので射撃時の反動を利用した擬似的なフルオート射撃が可能なスライドファイア・ストックという特殊なストックも存在する。
「いいか?……今だ!撃て!」
ニードルスの声で射撃が開始され、1人目がバンから飛び出した。
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「危っぶね……」
援護射撃の弾幕を避けるために、屋根に隠れる純。これでは狙撃できないと判断し、MSRはそのまま屋根に置いて行くことにして、FMG-9に持ち替えた。
(しかしさっきの、フルオートっぽかったな。銃声からして5.56ミリのアサルトライフル。多分M16系統。にしては連射速度が少し遅いから……成る程、スライドファイアか)
法律で禁止されているはずのフルオートのトリックを見抜き、純はまずこのライフルの男を最初のターゲットに決めた。
純の推理は正解であった。髭の東洋人が持っているのは5.56ミリ弾を使用するライフル、M16のスポーターモデル。さらに前述の通りスライドファイア・ストックも装着している。
純は屋根から家の裏側、ニードルスたちがいる方とは反対側から飛び降り、顔だけ出して覗き込んだ。視線の先では男たちが開いたドアを盾にして各々の銃を撃っている。300メートルも離れているので、正直言ってライフル以外は有効射程外だ。だが最大射程内ではあるので、運悪く当たることもある。昼間に撃たれた、まぐれの1発がいい例だ。そして純のFMG-9も拳銃弾を使用するサブマシンガンなので有効射程外。なので純はこっそりと側面から回り込んで仕掛けることにした。銃声が途切れた一瞬の隙を突いて家から離れ、草むらに身を潜める。そして身を晒さないよう腰をかがめて移動し、見つかることなくニードルスたちの側面を取ることに成功した。
髭の東洋人がM16から空になったマガジンを抜き、新しいマガジンを装填しようとしていた。タイミングを見計らっていた純は装填される前に立ち上がってFMG-9のトリガーを引く。バースト射撃で発射された9ミリ弾が東洋人に命中。恐らく死んだことにも気付いていないだろう。撃たれた反動で回転しながら崩れ落ちた。
「何!?横からだと!!」
ニードルスが驚いている間に、更に1人が撃たれた。
「ちくしょう!もうやってられっか!!」
「お、俺もだ!命のほうが大事だ!」
ニードルスを除く2人が銃を捨てて逃亡した。だがそれを見逃す純ではない。それぞれの胸に2発、頭部に1発ずつ銃弾をくれてやる。
「……う、うわぁぁぁぁぁ!!!!」
純の居場所がわからないので適当に撃ちまくるニードルス。だが純はそれに動じず、まずニードルスの右手を銃ごと吹き飛ばし、次いで左肩、そして左右の太ももをそれぞれ撃った。ここでFMG-9は弾切れ。純はFMG-9をその場に置いてニードルスに近付く。
「グッ……がぁぁぁぁぁぁ!!」
撃たれて倒れるニードルス。だが諦めの悪いこの男は逃げようとせず、這って仲間の銃を拾おうとしていた。そして仲間の持っていたショットガンを掴んだ次の瞬間、現れた純がニードルスの手をショットガンごと踏みつけた。左手の指が何本か折れた。
「がぁぁぁぁぁぁ!!」
痛みにのた打ち回るニードルス。純はそれを見下しながら、ショットガンを取り上げる。バンのヘッドライトで周囲が明るいので、ナイトビジョンは外していた。
「これで5人分」
純はショットガンのフォアエンドを引いて装填し、ニードルスの右ひざに押し付けてトリガーを引く。ショットガンに装填されていた弾種はダブルオーバック。シェルに内包された9発の鉛弾がニードルスの足を吹き飛ばした。痛みに声も出ないニードルス。
「今ので6人分……と言いたいが、俺はお前たちみたいな女を騙して殺すようなサディストじゃない。これで8人分にしてやる。これで最後だ」
純はショットガンを放り投げてからホルスターからUSPコンパクトを抜き、安全装置を解除してニードルスの額に狙いを定める。
「た……助けt……」
「Hasta la vista,baby(さっさと失せろ、ベイビー)」
映画の台詞を引用してからUSPコンパクトのトリガーを引く。周囲にこだまする銃声。力なく倒れるニードルス。目を見開いたまま動かなくなった標的を見ながら、純はUSPコンパクトをホルスターに戻した。
「ターゲット死亡確認」
純は置いてきたFMG-9を回収し、隠れ家に戻った。ニードルスたちに撃たれたせいで、木製の家屋はボロボロになっていた。「こりゃこの隠れ家はもう使えないな……」と呟く純。次いで屋根に置いたMSRも回収し、家に入る。
「ジェニファー!もう終わった!出てきていいぞ!」
荷物を纏めながらジェニファーに声をかけるが、返事がない。まさか―――
ホルスターからUSPコンパクトを抜いて急いで地下室へ向かう。ドアを開けて電気を着けると、そこには倒れているジェニファーが。急いで駆け寄る純。
「クソ!なんで撃たれて……って……」
だが撃たれたにしては血も出ていないし、規則的に呼吸もしている。
「なんだよ、寝てるだけか。にしても―――」
地下室にいたとはいえ、あれだけの銃声の中で寝てるとは。それだけ疲れていたのか、それとも神経が図太いのか。
「いや、どう考えても疲れてたんだよな」
純はジェニファーの側に置いてあったスタームルガーを回収し、ジェニファーを起こさないように静かに抱きかかえて地下室を後にする。ジェニファーを後部座席に寝かせ、荷物を積み込んで隠れ家を出てロサンゼルスのベインズ邸へ向かった。
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翌朝
「ん……」
私はフライパンで何かを焼いているジューという音といい匂いで目が覚めた。その少し後で、目覚ましを設定していた時間にスマートフォンが鳴ったから、私はすぐにそれを止めた―――あれ?なんか昨日もこんな状況で目が覚めたような。でも違うのは、ここはアキヒコの家じゃなくて、久しぶりに見る実家の自室。ん?実家?むくりと起きると、私の体から何かが落ちた。拾い上げると、1枚のメモ用紙だった。書いてあったメッセージに私は言葉を失った。
「……ッ!?」
私はすぐに飛び降りてリビングへ走った。待って。まだ伝えていないことがあるの。行かないで―――
「アキヒコ!!」
リビングへのドアを開けると、そこには新聞を読むパパと、朝食を作っているママの姿があった。2人ともこっちを見て、驚いた顔をしている。
「「ジェ、ジェニファー?」」
「パパ……ママ……!」
2人に抱きしめられて、私はまた泣いてしまった。
「……ということがあったの」
落ち着いてから、私は今までの出来事を両親に話した。グリフとのこと。アキヒコとのこと。全て。
「2人とも、すまなかった」
そう言ってテーブルに手をついて謝るパパ。アキヒコに依頼したことはママにも内緒だったみたい。
「彼との約束とはいえ、ママにも黙っていてすまなかった。そしてジェニファー、大変なときに側にいてやれなくてすまなかった」
「ううん。もしパパが彼に依頼せずに自分で行動していたら、私は……いいえ、もしかしたら3人とも死んでたかもしれないんだもん。彼に依頼したパパの判断は、間違ってなかったよ。それとパパ、ママ。私もごめんなさい。私がパパとママに反抗的な態度ばかりとっていたから、こんなことになってしまったの。今住んでいる部屋は解約します。もう1人暮らしはいいや」
「何を言っているんだ。悪いのはパパとママのほうだ」
「そうよジェニファー。仕事を言い訳にしてあなたを蔑ろにしていた。だからあなたに寂しい思いをさせてしまったし、今回みたいに怖い目に合わせてしまった。本当にごめんなさい」
「パパ……ママ……」
私は何をしていたんだろう。こんなに2人に愛されているのに、それをわかろうともしないで―――
「……あら?ジェニファー、それは何?」
私が持っていたメモ用紙にママが気付いたから、私はそれをママに渡した。くしゃくしゃになったメモ用紙を広げて中を見るママ。それを覗き込むパパ。
「これは……日本語?」
「そのようだな。ジェニファー、これは?」
「多分、彼からのメッセージ」
「そうか。ということはやはり彼は日本人なのかな?戦争中に、日本の軍隊にとても凄い腕を持つスナイパーの噂を聞いたことがあるが……」
「どうかしら?彼のようなお仕事の方なら何ヶ国語も話せるんじゃない?にしてもジェニファーを置いていくだけで帰ってしまうなんて。私も一目会ってお礼を言いたかったわ」
「いや、それはできないよ。彼は余程のことがない限り、依頼人とは二度と会わないから。で、ジェニファー。なんて書いてあるんだい?」
「……『俺のことは早く忘れろ。そして幸せになってくれ。サヨウナラ』って」
「なッ!?……ハハ、やられたな。私は娘のハートを撃ち抜いてくれなんて依頼はしていないぞ?」
「まぁ、パパったら。でも……」
「いやそれは……」
私を助けてくれてありがとう。私、絶対に幸せになるから。
さようなら、アキヒコ。
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数年後、ジェニファーは父の紹介でイケメンハリウッド俳優と交際し、結婚。3児の母となり、全米ベストカップルと言われるほど仲睦まじい夫婦となるのだが、それはまた別のお話。
――― 一方その頃 ―――
ロサンゼルス空港国際線ターミナル
「やっべ!早く帰らないと結維に殺される!」
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また、8話投稿に合わせて銃器解説を更新致します。
次回より新章突入です。




